(辰巳JUNK)一応テイラーも反論したんですけども……これのカニエ冤罪疑惑はこの10年戦争のプロットツイスト、どんでん返しだったんですね。そのスピーチ乱入事件より7年間続いていた「被害者テイラー・スウィフト」のイメージが大崩壊しました。「嘘をついて冤罪でハメた」っていうことでもうね、優等生ポップスターのテイラーの評判がガタ落ちしてしまって。
(渡辺志保)そうですね。ちょっとダーティーな感じになってしまったという。
(辰巳JUNK)それでもうテイラーさんは闇堕ちしてしまいます。2017年の楽曲『Look What You Made Me Do』。邦題だと「私にこんなマネさせるなんて」っていう(笑)。
(渡辺志保)「誰のせいやねん?」というところで、「お前のせいだぞ」と(笑)。
テイラー、闇堕ち
(辰巳JUNK)この曲はもう憎悪のオンパレードになってまして。まあたぶんカニエのこととかを「あなたのことは大嫌いだ。私はもう誰も信じない。お前らが私をこんな風にさせたんだ!」と。
(渡辺志保)これ、そっくりそのままさ、カニエも同じことを言いたいだろうね、これね(笑)。
(辰巳JUNK)フフフ、2人とも結構似ているんで(笑)。で、決めゼリフがなんか電話に出る寸劇みたいなのが入ってまして。「もしもし? ただいま、かつてのテイラーは電話に出られません。彼女は死にましたので……」っていう(笑)。
(渡辺志保)ああ、もう自分で過去の自分を殺めてしまったという。
(辰巳JUNK)もうオールドテイラーは死んだという。
(渡辺志保)だってミュージックビデオにも歴代のテイラーちゃんが出てきて。当時の衣装を……VMAの衣装を着たテイラーちゃんなんかも出てきて。それで「お前ら、全員死んでる」っていうね、そういうストーリーのすごいミュージックビデオでしたもんね。
(辰巳JUNK)それでアルバムも『Reputation(評判)』っていうタイトルで。かなりブラックな感じになってまして。トレードマークは「ヘビ」なんですねそうね。これの元ネタっていうのはもともとキム・カーダシアンが例の映像をリークした際に使ったヘビの絵文字で。たぶん旧約聖書かなんかが元ネタかな?って思うんですけども。卑怯者を表すのがヘビなんですね。
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(渡辺志保)そうですね。ちょっとSnitchっていうかね、タレコミしたやつ、チクったやつみたいなね、そういう意味でも使えますもんね。だってテイラーちゃんはこの時にヘビのマーチャンとかめっちゃ作っていましたよね。その指輪とかすごいグッズを作ってて。だから「ああ、開き直ったんだ!」って思って。
(辰巳JUNK)そうなんですよ。開き直って、逆に自分でヘビのモチーフを使うことでキムエに対抗する。「もうお前らの攻撃なんて効いてないぞ!」みたいなことかもしれないですけども。で、たとえばコンサートとかだと邪悪なヘビの巨大な像とかを置いて。ブラックの衣装でなんか絶唱してましたね(笑)。
(渡辺志保)ああ、していましたね(笑)。
(辰巳JUNK)ということで、カニエ事件によりもう完全闇堕ち。評判ががた落ちということでヘビになったテイラーさん。それを出した曲が『Look What You Made Me Do』ということで。
(渡辺志保)ちょっとじゃあここでその曲ね、実際に聞いてもらいましょう。たぶんこれまでのテイラーの楽曲とはちょっとトーンも違う感じに仕上がってますので。みなさんびっくりされるかもしれません。こちら2曲目も辰巳JUNKさんから曲紹介をお願いします。
(辰巳JUNK)はい。もう闇堕ちしました。『Look What You Made Me Do』、どうぞ!
Taylor Swift『Look What You Made Me Do』
(渡辺志保)はい。いまお届けしたのはテイラー・スウィフトで『Look What You Made Me Do』。闇堕ちしたテイラーはいかがでしたでしょうか? というわけでアルバム『Reputation』をリリースしたところまでいま、うかがいましたが。いよいよ次は第3章でございます。どうなっていくのでしょうか?
(辰巳JUNK)はい。第3章、闇堕ちしたテイラーはどうなったかということで。「戦士は剣を捨て、愛の旅路へ……」ということで。新アルバム『Lover』を発売いたしました!
Universal (2019-08-23)
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(渡辺志保)壮大ですね(笑)。というわけで2019年。本当につい先日ですよね。
(辰巳JUNK)はい。つい先日に発売されまして。面白いのがこのリードシングルが『ME!』っていう曲だったんですけども。このビデオの始まり。攻撃的な怖いヘビが、なんとカラフルな蝶となって空を飛ぶ变化を映していまして。
(渡辺志保)転生してる!(笑)。
(辰巳JUNK)これが表していること。ヘビはテイラーのメタファーなので。
(渡辺志保)そうね。『Reputation』であれだけね、ヘビ祭りだったから。
(辰巳JUNK)ということで、闇堕ちから一転、博愛キャラに転身しました。もうビジュアルも前作のダークな黒から色とりどりなレインボーに変わりまして。様々な愛をテーマにしたアルバム。かなりおとなしめっていうか、寛容みたいな感じのサウンドになっておりますね。
闇堕ちから一転、博愛キャラに転身
(渡辺志保)そして、驚くべきことにやっぱり数字が……彼女はやっぱり数字を持っているんだなっていうことに私は今回、びっくりはしないけども。改めて「すげえ!」と思ったところで。8月23日に発売されて、発売5日間ですでに75万枚とかね、売れているっていう。ここ3年でもいちばん売れてるアルバムの数になってるっていう。
(辰巳JUNK)その前が闇堕ちの『Reputation』っていうことで。
(渡辺志保)ねえ。自分で自分の記録を塗り替えて、さらにいままでドレイクのアルバム『Scorpion』が持っていた記録もこの『Lover』で塗り替えたっていう。だからみんな待ってたんですね。こういうテイラーを。
(辰巳JUNK)でも、売り上げは一応『Reputation』からは下がってるんですけれども。ストリーミングに開放しても、やっぱりピュアセールス。アルバムで買うっていう人がかなり付いてることがわかる数字ですよね。
(渡辺志保)ねえ。すごいですよね。
(辰巳JUNK)で、この『Lover』の中ではヘビ事件などで傷ついたテイラーの再起、葛藤、癒し、愛を巡る旅路が描かれておりますね。たとえば1曲目『I Forgot That You Existed』。
(渡辺志保)「あなたの存在なんて忘れていたわ」っていう。
(辰巳JUNK)結構これも上から目線的な感じですが。
(渡辺志保)なので私はこの「あなた」がカニエのことを指すのか、もしくはここまで華麗に転生してるから『Reputation』のこと自体をなかったことにしたいのか、どっち?って思っちゃったんですけど。はい。
(辰巳JUNK)あと、もうひとつあるのが元カレのDJ、カルヴィン・ハリスへの無関心宣言じゃないかっていうことないんですけども。とりあえずですね、歌詞が「あなたの存在を忘れてたわ。それって私にとって致命傷になると思ってたんだけど、実際はすごいいいことだった。とっても平和で静寂を手に入れたし、これは憎悪じゃない。無関心なのよ」という。余裕な感じのアティテュードという。
(渡辺志保)なるほどね。しかも歌詞の中にご丁寧にドレイクの名前までね、ネームドロップして。そこに私は結構びっくりしました。
(辰巳JUNK)まあたぶん、その有名な恋人とか失恋について歌うスターということで共通点を茶化したフックで。またはドレイクさん、カニエさんと喧嘩したので。カニエへのイヤミで出した説もあるんですけども。
(渡辺志保)うんうん。いずれにせよ意地が悪い。イヤミくさいですよね(笑)。
(辰巳JUNK)結構ウエメセで「これは憎悪じゃない。無関心だぞ」と、結構嫌な感じもあるんですけども。実はこの曲はアルバムのラストにつながってるんですね。最後の曲『Daylight』のラストの語りでは、この「憎しみじゃない」みたいな表現が再登場してるんですよ。そこでテイラーが語っているのが「私は憎悪している者じゃなくて愛する者で定義されたい。ただ私は……」と。まあ、ここでテイラーが行きついた答えっていうのはぜひ『Lover』を聞いてほしいんですけども。まあ、やっぱりその愛する者(Lover)ということで。かなり愛が重点的になったアルバムなんですけども。
(渡辺志保)はい。
(辰巳JUNK)でも一応言っておきたいのは彼女はいまでも戦ってまして。今年6月、アーティストの権利について元々いたレーベルとあとスクーター・ブラウンという大物……そのレーベルの新しいオーナーみたいなのを批判しました。で、その中ではかつてスクーターさんが契約していたカニエとキムを執拗な長期的に渡るいじめ加害者として辛辣に批判しています(笑)。
(渡辺志保)ガチ裁判になりそうなほどのね(笑)。
(辰巳JUNK)まだ10年戦争の遺恨は続いていくということで。
(渡辺志保)この後、どうなってしまうのかというね。
(辰巳JUNK)ただし結構この『Lover』で重要なのは、憎悪にさよならしたことなんですね。
(渡辺志保)「ヘイトはもうたくさん」という感じですかね。
(辰巳JUNK)志保さんもおっしゃっていたように、前作の『Reputation』へのさよならなんじゃないか、みたいな感じなんですけども。やっぱりその『Reputation』というのは憎悪とかのシンボルでもあったので。そこからさよならして、「愛を大切にしよう」というテイラーの進歩・成長を表すアルバムなんですね。たとえば前に言った『Daylight』でも「もうマントと剣は捨てよう。朝が来たから」と宣言しておりますね。
(渡辺志保)ほう!
(辰巳JUNK)ついにね、復讐の戦士は武器を捨てて、真実の愛を手に入れたんですよ。
(渡辺志保)「朝が来て、虹が出て……」みたいなね(笑)。
(辰巳JUNK)ドリームズ・カム・トゥルーということでね(笑)。まあ、ちょっと思ったのはこのアルバム『Lover』から教訓を得るとするならば、「優雅な生活こそ最高の復讐である」ということで。