(辰巳JUNK)で、その後にカニちゃんは謝ったんですよ。で、テイラーちゃんもそれを受け入れる形で解決したはずだったんですけども……2010年になんとテイラーが『Innocent』という曲を発表します。
(渡辺志保)「無垢、純真」というような意味ですね(笑)。
(辰巳JUNK)その歌詞が「32歳はまだまだ成長途上よ。あなたが何者かは過去の行動では決まらないから。あなたはいまでもイノセント(無垢)なのよ」っていう。
(渡辺志保)これはもう「許し」っていうことですかね?
(辰巳JUNK)いや、ニューヨーク・タイムズとかは「すごい礼儀正しいイヤミだ」っていう評価を(笑)。
(渡辺志保)たしかにね。「あんたはもうバカのまま」っていう風に言ってるのとほぼ同義っていうことなんですかね?
(辰巳JUNK)それか「あんた、もう32歳だけど変われるからがんばりな」みたいな上から目線のね、「変われよ」みたいな。まあ、これで音楽業界がざわつきまして。皮肉みたいな感じの歌だったんでカニエさん、激怒!
(渡辺志保)まあね。こういうの、いちばん嫌だろうね。きっとカニエは。
(辰巳JUNK)そう。ストレートな批判でもなないし。それで、謝罪を撤回してしまいます。で、怒ったカニエさんは当時のアルバムですね。名作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』で開き直りまくり。たとえば「ゲス野郎に乾杯をしてくれ」とか「俺はオバマの国の醜態と呼ばれている」とか。
(渡辺志保)ああ、もう自分で言っちゃうみたいなね。
(辰巳JUNK)もう完全にバトルの方向に入っちゃいまして。でもポイントっていうのは全然ジャンルは違うんですけど、テイラーもカニエもすごいいい曲なんですよ(笑)。
(渡辺志保)そこがやっぱりすごいところですよね。これすごいレベルの低い小競り合いだったら誰もね、目を向けないですけども。でも、やっぱりお互いに音楽に関しては天才だから。すごい高次元のところで戦ってるっていうね、そこの醍醐味が。
(辰巳JUNK)すごすぎ、みたいな。で、アメリカ、世界の頂点に立つポップスターとラッパーの高度な音楽バトルがここで開幕いたしました。すごい。で、豆知識で、私はこれ個人的にすごい好きなエピソードなんですけど。やっぱり被害者のテイラーも転んでもただでは起きない女なんですよ。で、ローリング・ストーン誌の取材によるとカニエにスピーチ乱入された悲劇の場面の写真を家でトロフィーと一緒に飾っているらしいんですよ(笑)。普通、トラウマになるのに(笑)。
(渡辺志保)アハハハハハッ! そうですよね。「思い出したくない!」みたいにね。
(辰巳JUNK)それを飾って、しかもその写真立てに書かれたポエムみたいなやつが「人生は小さな障害物でいっぱいね」っていう(笑)。
(渡辺志保)フフフ、小さくねえけど、すげえな!
(辰巳JUNK)そのトラウマものの事件すらもパワーに変えていく。スターの器が半端ない。
(渡辺志保)すごい! 半端ない! でも本当にこんなことをさ、19歳のテイラーちゃんがこんなね、カニエ・ウェストに乱入されて。で、繰り返すようですけどカニエ・ウェストって当時も本当になんかね変わり者みたいな。ちょっと常識外れの困ったちゃんみたいな扱いであったことは変わらない。そのカニエに乱入されて、まあ普通だったら「よよよ……」みたいな。これでちょっと「かわいそうな私」みたいなと同情を集める作戦に舵を切ることもたぶんできたと思うんですよね。でも、そうじゃなくて戦うことを選んだっていうのがやっぱりね、すごい!
(辰巳JUNK)フフフ、カニエさんもテイラーさんも戦うファイターなんでね。
(渡辺志保)じゃあ、その後はどういう展開になったんでしょうか?
(辰巳JUNK)その後も複雑な関係を続ける中で、テイラーさんはニューヨークに引っ越しまして。カントリーっていうよりも都会のポップスターに転向いたしました。これも結構カントリー界隈から批判を受けたんですけども。一方、カニエさんはキム・カーダシアンとご結婚なさり、いろいろ人生が変わっていく中、2015年。因縁の場所……そのMTVのVMAでなんと電撃和解を果たします。
(渡辺志保)なんと!
カニエとテイラー電撃和解
(辰巳JUNK)で、これもびっくりだったんですけど。その時にカニエさんが大統領選挙への出馬を表明しまして。
(渡辺志保)そうなんですよね。「2020年に、大統領選に立候補する」というトンデモ発言をしていましたね。
(辰巳JUNK)それはいま、2024年に延期されたらしいんですけど(笑)。で、その際もやっぱり「カニエ、相変わらずヤバい!」みたいな感じだったんですけど。テイラーさんの場合、「私が副大統領になる」と立候補をしまして。すごい完全な仲良しになりました。
(渡辺志保)フフフ、だってカニエがテイラーにお花とか贈ってましたもんね? すごいきれいなね。
(辰巳JUNK)そう。超デカい白いやつを。
(渡辺志保)それで「わあ!」みたいな。それをSNSに上げて「ありがとう、カニエ!」みたいなね、そういうなんか「あ、よかったな!」っていう。ここでその相反する2つのパワーが同じ方向に向いていって。「すごい素晴らしい!」と思った矢先に、でもやっぱりそれだけでは済まなかったという。
(辰巳JUNK)みんな、もうわかっていたことですが……翌年、カニエさんが衝撃の新曲を発表。『Famous』という曲。その中の恐ろしいライン「俺はあのビ*チとやれるかもな。俺が有名にしてやったんだから」っていう。
(渡辺志保)なるほど。これは……(笑)。
(辰巳JUNK)で、もちろん炎上いたしまして。
(渡辺志保)これはもう、テイラー・スウィフトのことを言ってるっていうのがもうねあからさまだったという。「あの援助なったからお前は有名になったんだろう?」っていうね。
(辰巳JUNK)でも、もうテイラーの友人たちも抗議して、本人もグラミー賞のスピーチで女性の足を引っ張る男性を揶揄して批判をしたという。まあ完全に決裂いたしまして。再度、「カニエはテイラーをいじめた最低野郎だ」という構図に戻ってしまいました。
(渡辺志保)まあね、この「ビ*チ」呼ばわりしてしまったということがね、ひとつ致命傷になってしまったところだし。当時、この『Famous』が入っているアルバム『The Life Of Pablo』がリリースされた翌日ぐらいに、もうテイラーのお兄さんはカニエのスニーカーYeezyをゴミ箱に捨てる動画とかね、わざわざInstagramでアップしていて。「おおっ!」って思ったんですけども。
(辰巳JUNK)はい。抗争ですね。
(渡辺志保)抗争がまた始まった。
(辰巳JUNK)しかしながら、また新たな展開が来まして。カニエの妻、キム・カーダシアンさんが「テイラーは嘘をついて被害者演技をしている」と告発。それで証拠の映像として、カニエとテイラーが電話してその歌詞についてを話す映像をリークしたんですよ(笑)。
(渡辺志保)そうそうそう! スナップチャットとInstagramでリークしちゃって。
キム・カーダシアンの告発動画リーク
(辰巳JUNK)その映像では、その歌詞について説明するカニエさん。で、それを褒めて。「みんなを驚かせましょう」とか言ってるテイラーの音声が……(笑)。
(渡辺志保)カニエがテイラーに直接、「こういう曲を作ってて、こういう歌詞なんだけどいいかな?」って前もって聞いてるんですよね。
(辰巳JUNK)そう。ちゃんと。「歌詞なんかよりも友達が大事だから確認したかった」というカニちゃんのイノセントな……(笑)。
(渡辺志保)で、テイラーもそこで「すごくいいと思う! みんなをびっくりさせちゃおう!」みたいにノリノリだったのに……っていう。で、その現場にいたキムっていう。しかもちゃんとそれを録っているキムっていう(笑)。「絶対これ、あとで何かしら使ってやろう」っていうのがあったんでしょうね。「これ、言質を取ってやろう」みたいなね。
(辰巳JUNK)それで、このビデオはいろいろと議論を呼んだんですけど。「編集されてるんじゃないか?」とか。まあやっぱり、これで生まれたのが「テイラーが嘘をついてカニエをハメた」という疑惑。これでアメリカでは大騒ぎになりました。
(渡辺志保)そうよ。だから本当にここでまたそのテイラー VS キムエ夫妻。キムとカニエ夫妻としてね、新たな構図が生まれたということで。大変でしたね。