プチ鹿島とモーリー・ロバートソン「政治家の闇営業」を語る

プチ鹿島とモーリー・ロバートソン「政治家の闇営業」を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

プチ鹿島さんとモーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で「政治家の闇営業」問題や自民党の広報戦略、そして参議院選挙前に自民党内で配布された冊子『フェイク情報が蝕むニッポン』などについて話していました。

(プチ鹿島)まず、じゃあ私から。なんと言っても参院選公示日の前日ですよ。だからこれ、テレビの見方として面白いのが明日以降、地上波がどれだけ……大きな象が目の前にいるのに見えないふりをするのか? だって選挙の時に選挙の話をするのって僕、むしろ求められていることだと思うんですけども。

(モーリー)そうですね。何年か前までは(公示日後は)ネットでもツイートひとつしちゃいけないっていう状態だから。異様なルール、そもそもおかしなルールを潔癖に押し進めていくと、最後はみんな沈黙してしまうしかないという。

(プチ鹿島)だから僕は投票日まで選挙を見守る、そのひとつの視点になればいいなと思ってこちらです。「政治家の闇営業って最近多くない?」っていう。

(モーリー)「政治家の闇営業」ですか?

(プチ鹿島)そう。じゃあ、まず6月7日のスポーツ新聞の記事を見てみましょう。先ほどからチラチラと話題に出ている「乳首ドリル」のネタですね。吉本興業の新喜劇のメンバーが首相官邸を訪問したっていう。で、実はその1ヶ月ぐらい前でしたっけ? 安倍さんがよしもと新喜劇の舞台にたってG20のアピールをして。そのお返しとして来たというんですよ。

吉本興業のメンバーが首相官邸を表敬訪問

(プチ鹿島)で、いいじゃないですか。ほのぼのとしていて、ニュースになって。で、僕はこれ、翌日にどういう風に報じられるのかな?って思っていたら、普段舌鋒鋭い新聞も「官邸で首相、衆参同日選挙あんのかい、ないのかい?」みたいな。西川きよしさんがおっしゃったギャグをそのまま見出しにして。そのまんま報じていたわけですよ。となると、これはやっぱりよしもと新喜劇のメンバーの方を呼んでこれだけマスコミで報道してもらうっていうのはプラスしかないじゃないですか。

(モーリー)そうですね。批判が出てこないわけだし。

(プチ鹿島)ねえ。だから「なんで官邸に呼んでいるの?」とか「予算委員会を開催するのを長期間拒んでいるのに、なんでこういうタレントとばかり会っているの?」とか、そういう批判的な論調っていうのは実はネットにしかなくて。いわゆる大メディアの新聞……朝日新聞も毎日新聞もそうでした。「解散あるのかい、ないのかい?」みたいなそういう報道一色だったので僕はこの営業というのは官邸側からすると大正解だったなと思ったんです。

一方で、もちろんいま「闇営業」っていう言葉がすごくブレイクしていますんで、それとセットで僕は言っているんですけども。じゃあ、政治家にとっての「正規の営業」ってなにかというと、それは政策を提示して論議をして信を問うっていうのがたぶん正規の営業だと思うんです。だから、それをやっていればこういうようなタレントさんと会ったりとか、インスタで「○○さんとお食事をした」とか、女性誌のViViに広告を出すとか。

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そういうのは全然、それがサイドのものであればいいんですけど。むしろそっちの、あえて言うんですけども闇営業的な、裏営業的なものの方がメインになっているし。むしろ、皮肉なことにそっちの戦略の方が、特に若者には受けているという現実があるという。そこをね……。

(モーリー)そうですね。現状が日本が抱えている様々な問題が長期的にしか解決できない。構造の中に宿痾のように溜まった……高齢化、年金が足りない、防衛をどうするのか? などなど。

(プチ鹿島)年金2000万円問題でも、あれだけ具体的に数字を出したらあれだけの大騒ぎになっちゃうわけですよね。みんな、実は薄々知っていたわけじゃないですか。

(モーリー)そうそう。だからその長い間、政治で統治する側も、その政治を民主主義というプロセスで投票で選ぶ側も、ともに目の前にあり膨らみゆく象を何世代も無視してきたんですよ。安全保障、移民を入れるのかい、入れないのかい? 研修生という名前をつければいいとか。そういうグチャグチャな……。

(プチ鹿島)憲法を変えるのかい、変えないのかい? みたいな。全部乳首ドリルに収束していくわけですね。

(モーリー)そうなんですよ。だから逆に乳首ドリルでみんなで笑えるっていうのはうっすらと無意識になにか自分たちのこれまで逃げてきたものを非常に間接的に、フグの毒抜きされた形で突きつけられているという、くすぐられる笑いがそこにあると思うんですよね。

(プチ鹿島)これはじゃあ、象徴的な1枚ですね。

(モーリー)ただ、お笑いとかコメディーが果たしうる、シェイクスピア以降のイギリス的な伝統っていうことになると、やっぱりコメディアンっていうのはたとえばホワイトハウスの夕食会。そこではその時の大統領を弄り倒すコメディアンがいて。それをいかに紳士的に大統領が耐えられるのかということで根比べになるわけですよね。で、そういうことはこういう場面ではないので、もう少し癒着ではなくて、辛辣さ。それによって、辛辣であるからこそお互いを尊敬し合う、コメディーと政治の距離感っていうのがほしいですね。

(プチ鹿島)まあ、懐の深さっていうんですかね。だから僕、今日の朝日新聞が実は朝刊で書いていて。「若者を狙う首相のSNS術」という。つまり、タレントと会った時にハッシュタグとかでそのファンに刺さるようなものをつけて、すごく若者のいいねを獲得しているっていうんですよ。それで面白いと思ったのが政府関係者のコメントとして「安倍さんは新聞を読まない層を重視している」っていう。つまり、「新聞を読まない人たちはSNSで自分が掴み取った情報こそが真実だと信じる傾向にあるから……」って。

(モーリー)で、「そもそも新聞が真実を伝えてないとしたらどうする?」みたいな。あ、ちょっと待った。話を場合分けをちゃんとしたいんだけども。ええと、新聞を読んでいて新聞を信じきっている人。新聞を読んで、どの新聞を読んでも物足りないから、みんな避けているんじゃないか?っていうような、この番組を見ているようなスタンスの人。そもそも情報弱者で……。

(プチ鹿島)だからもちろん、新聞を読むのが正義でもないし、正しいことでもないんですよ。ただ、いろんな論調を頭に入れるよりは、SNSでスターとの写真を載せてるInstagramにいいねを押す方が、なんか安倍さんの印象がいいねっていう。

(モーリー)そういう人こそ、安倍さんとしてはぜひ育てたいですよね。

(プチ鹿島)だから、それを狙ってるという、そういう記事なんですよ。

(モーリー)おおー、正しい!

(プチ鹿島)そういう風に安倍さん周りの人が証言をしている。これ、すごいことですよ。

「若者を狙う首相のSNS術」

(モーリー)そこが面白いの。安倍政権の面白いところは露骨に「いや、ネトウヨも大事だと思っているし、無知な人も大事だと思っているし。そういうところをうちは掴んでいって固定層にしますよ」っていう宣言をするわけ。それに対して野党は批判はするけども、自分らはそれをやらないんだよね。そこがなんか、すごい。

(プチ鹿島)そう。野党は党によってはインスタもやっていないっていうんですよ。だから面白いのはここでなにを言いたいかというと、ここで出たのは新聞ですけども、新聞でも週刊誌でもなんでもいいですよ。なにかを読んで自分の中である程度考えて……っていう、それまでの所作ではなくてフワッとしたものを取りに行った方がよっぽどそっちの方が支持率や政権運営には……。

(モーリー)で、複雑なことを考えたくない人にとってはその「フワリ」が中途半端な責任感で「投票はしておいたぞ。社会的な役割は果たした!……なんのことかはよくわからいけど」みたいなのとお互いにWin-Winなんですよ。無責任であってほしい自民党と、無責任のままでいたい、情報を咀嚼したり議論をしたくない人たちのニーズが合致しているわけよね。だからかつては政治に対して、あまりにも右翼と左翼がうるさいから。改憲とかそういうお話になってくると、もう面倒くさいから口を開かないでおこうということで「ノンポリ」っていう人たちがいましたよね。それとは違って……。

(プチ鹿島)そうそう。だからこれ、「SNSで自分が掴み取った情報は真実だと思う」っていう、そこを拾いに行っているんですけども。そうは言っても、その論争は見ていない層ですよね。インスタとかの発信とかだから。

(モーリー)それがね、3.11の後でTwitterのまとめ、Togetter。すごかったですよね。

(プチ鹿島)ですよね。3.11でTwitterがブレイクした感、ありますもんね。

(モーリー)そうですよ。ところが最近、Togetterを読みに行くのはその3.11以降の政治的議論のOBたちなんですよ。私の印象からするともう年齢で、あのシーンがくたびれちゃったから。Twitterの中で政治論争をいちいち、「このTwitter内有名人はこう言った。この活動家はこう発言した。この政治家はそれにこう言った」みたいな……あの、どうでもいいわけじゃん? それを5年前にさかのぼって「ああ、あの時にこういうやつがいたな」とか。

そういうのをいちいち拾いに行く人はいないっすよね? なので、まさにTwitterが議論のプラットフォームとしてはもう老朽化しているわけ。なので、いちばんお気楽になんかなんとなくうっすらといいことを言っている人に、いいねをつける。「共感する!」って声は出さない。いいねをつける。ここを安倍政権が取りに行っているのだとしたら、正解だと思います。

(プチ鹿島)だから本当によく考えてみればそうなんですけども。みんな、それぞれお仕事とか毎日を暮らしていく上でずーっと政治の記事を追っているのか? 政治のニュースを見ているか?っていうと、そうじゃないじゃないですか。でも、なんとなくは見ている。じゃあ、そのなんとなく見ている。もしくは「ネットニュースでいいよ。俺は見ている」っていう人たちに向けて広報を発信するっていうのはむしろ僕はあえて「闇営業」って言いましたけども。むしろそれが「闇・裏」じゃなくなってきているっていう。

(モーリー)それで投票する人が増えたら、むしろ闇票ですよ。

(プチ鹿島)だからむしろ表の営業になっちゃってきているっていう、そこなんですよ。

(モーリー)いやー、庶民の気持ちがわからないようなことを暴露する発言をこれからするんですけども。私、今朝ラッシュアワーで地下鉄に乗ったんですよ。いやー、すごかった。

(プチ鹿島)でも、あれが日常なんですよ。会社勤めの人たちの。

(モーリー)渋谷でロケをやったんだけど、そのためにタクシーが来ない時間になっちゃったから。「ああ、うちからこうやって乗っていった方が永田町乗り換えでそのまま行くとすぐだな」って思って。結局、時間は間に合ったのね。ところが、普通にラッシュアワーじゃないですか。そうするとみなさんの奪われている時間と窮屈さ。そしてプライバシー、スマホへと逃げこんでいるわけだよね。だけどそこで、たとえば新聞の読み比べをする余裕はないよ。あんな、こんなになった状態で……いいねをつけるのが精一杯だよね。

(プチ鹿島)ましてや、新聞一紙をちゃんと読んでいるなんてないですよ。

(モーリー)俺は思ったの。そこにいる人をランダムにつかまえて、「ちょっとここで立ち止まって、あなたの出勤時間はどうでもいいから議論をしましょう。あなたはどうしてこういう風に自分の時間を奪われ、しかも飲みに行って、そして家に帰ってからのちょっとしかない時間でテレビなんか見ているんですか? あなた、自分で自分の人生を生きていないでしょう? この生き方を変えるにはどうしたらいいと思いますか?」っていう議論をランダムにそこにいるおっちゃんとやろうと思って、やめた。うん。

(プチ鹿島)それは痴漢よりもすごいですね(笑)。

(モーリー)フハハハハハハッ! 「しかも、見てください。あの東京新聞の広告。あれは、俺です! この俺が言っているんです! マスコミを信じてはいけない!」みたいな(笑)。

モーリー×東京新聞

(プチ鹿島)それを言いたいために電車に乗ったんじゃないでしょうね?(笑)。

(モーリー)あのね、電車で必死で……表参道とかでちょっと私のやつが流れるらしいんですよ。だけど動き出したんでわからないからとりあえず動画モードにして、シャーッて青が動いたんで「あれは俺かな?」みたいな。そういう感じで。

(プチ鹿島)いいですね。モーリーさんをそういう、いわゆる世間のど真ん中に放り込むロケっていいですね。

(モーリー)大変でした。普通の勤め人の方、本当にご苦労さまだと思います。あんな責任感のあること、俺にはできない。だけど、そういう話をしに来たんじゃなくて、そういう風に自分の時間を制限されているわけなんだよね。その中でここにある議論はしないし。「これがポイントです」なんて気づく人はいないわな。

(プチ鹿島)あともうひとつ。実は自民党が議員たちに配った冊子が話題になっているっていう。モーリーさん、ご存知ですか?

(モーリー)知ってる。

(プチ鹿島)ちょっと見てみましょうか。たとえば野党の党首の顔をすごく歪めて描いていたりとか。

(モーリー)それって小林よしのりさんが自分と政治的に意見の違う朝日新聞の論説委員の顔を歪めて描いていったっていうのが2000年代ごろから始まったトレンドで。それがあれですよね。『嫌韓流』とかそういうところに受け継がれていったひとつの戯画化ですよね?

(プチ鹿島)だから小林よしのり風的なものが実は自民党の「これをマニュアルにして演説してください」っていうのにあってという。

(モーリー)それを実際に若手議員たちに配ったんでしたっけ? 自民党の本部が。

(プチ鹿島)配った。しかもこれ、版元のテラスプレスっていうところがよくわからないところだっていう。

(モーリー)で、しかもテラスハウスというところをバズフィードという媒体が追ったのを私もチェックしていたんですけども。Twitterの公式アカウントはあるんだけども、あまり目立ちたくないアカウントなんだよね。

テラスプレスの冊子

(プチ鹿島)そうそうそう。

(モーリー)身内だけで見てほしいTwitterアカウントで。普通、こういった激烈な野党を悪くいうようなサイトだったらクリックとかでそういうビジネスモデルがあるわけ。だからそうやって一生懸命煽るような見出しを出したり、多少歪めてフェイクニュースっぽいのを流したりするのが常套手段なのに、「見てほしくない」と言わんばかりにフォロワーの数も全然伸びないところで粛々と、なにかデータバンクのようにやっているわけよ。

(プチ鹿島)いやー、面白いなー!

(モーリー)だから自民党の選挙対策と情報戦を研究している私設シンクタンクみたいな人たちがお互いの連絡手段としてTwitterをやっていたのかな? みたいな。

(プチ鹿島)そうですね。なんかこの番組のパンフとかも作ってほしいですよね。

(モーリー)もうぜひ! 2人ともすごい歪んだ顔になっているか……逆の方がいいと思うの。もし、いま自民党でそういう闇営業をしている若手の人がいるんだったらその人にいまここで直接訴えかけたい。ええとね、いま、乗り換えるなら私たちですよ。自民党は今日、これから話す理由でどんどんとこの先、弱くなる。どんどん求心力がなくなっていって、最後はイギリスのブレグジット騒動みたいに極右と穏健が分裂して意味のない政党になって与党じゃなくなる可能性があるわけ。だから55年体制が足元からほころぶ可能性があるわけ。その時、誰が残るのか? この2人(モーリー&プチ鹿島)なんですよ。この2人を、いつも小林よしのりさんが最後に自分をかっこよく描くじゃないですか? 「ゴーマンかましてよかですか?」って。自分がすごいハンサムに描かれているのね。そういう風に俺たちを描いてください!

(プチ鹿島)「水ロバかましてよかですか?」(笑)。

(モーリー)2人でキラーン!って(笑)。

(プチ鹿島)CMの後でモーリーさん、さらに爆弾を用意しています!

(モーリー)イエーイ!

<書き起こしおわり>

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