モーリー・ロバートソン トランプ大統領とアメリカ消防士組合の対立を語る

モーリー・ロバートソン トランプ大統領とアメリカ消防士組合の対立を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんが『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でドナルド・トランプ大統領とアメリカ最大級の労働組合・消防士組合の対立について話していました。
(モーリー)今回は5月4日のツイートを紹介しましょう。他ならぬトランプ大統領のツイートです。

(モーリー)「24/7/365」、こういう言い回しって日本語でありますかね? 「24時間、7日(1週間)、365日(1年)」っていうことで、つまり「昼も夜も」っていう意味です。

(プチ鹿島)まあ「四六時中」っていうことですね。

(モーリー)そして「Great(偉大なる)」って入ってきます。これは「Make America Great Again」の「Great」ですよね。じゃあ、日本語です。これ、トランプ大統領のツイート。「今日、5月4日は国際消防士記念日である。他人の命を救うため、自分の命をかけ、365日24時間体制で働き続ける彼らのことを私は忘れない。敬愛する消防士諸君、偉大なる消防士諸君に感謝を。ありがとう!」っていうことなんですよ。

で、これだけだとほのぼのニュースなんですね。ところがこれには背景がありまして。どす黒い背景がいつものようにあります。要は、アメリカの最大級の労働組合である消防士組合とこの直前、トランプさんは大ゲンカしているんですよ。

(プチ鹿島)フフフ、そうなんですか(笑)。

(モーリー)そうなんですよ。なので、これは実は個人個人の消防士をべた褒めすると同時に、消防士組合に対する当てこすりでもあるわけです。「お前らなんかいなくたって、俺には1人1人の消防士がついているぜ!」っていうことを誇示しているわけです。それを簡単に説明すると……。

アメリカ最大級の労働組合、消防士組合が(2020年大統領選挙の)野党民主党の最有力候補と目されるバイデン前副大統領を支持すると表明したんですね。つまり「トランプさんはダメだ。我々の価値観にそぐわない。バイデンさんは我々組合と長い付き合いを持ってきて、最も信用できる候補なので、その人を組合として支持します」と。

つまり、組織票を大動員して、自分のいる州で勝たせる。そういう方向で行くと言っていたんですね。それに対してトランプ大統領は反発して、消防士たちが個人としてトランプさんを支持すると述べているツイートをなんと20分で60件近くリツイートしているんです。

(プチ鹿島)そういうことか。

(モーリー)たとえば「私は消防士。なんで消防士がバイデンなんかに票を入れなければいけないんだ? 私はトランプだ!」みたいな。「消防組合がなんと言おうと、トランプ以外に2020年に勝てる候補はいない!」みたいに礼賛するツイートをトランプさん自身がザーッとツイートしたんですよ。

(プチ鹿島)トランプさん自身が探してやっているわけですか?

(モーリー)彼のスタッフがやったんだと思います。トランプさんにエゴサする能力はまだないんじゃないのかな?

(プチ鹿島)でもトランプさんの意志でですよね?

(モーリー)そうですね。それで、なぜここまでして消防士組合と戦わなきゃいけなかったのか、簡単に説明します。消防士組合っていうのはアメリカ最大級の組合で、非常に組織票がある。そして消防士っていうのは公務員ですよね。で、実は覚えてらっしゃるかもしれませんが、去年の年末、公務員の給料が支払われないという事態があったんですよ。

(プチ鹿島)あったあった!

モーリー・ロバートソン アメリカ政府部分閉鎖の影響を語る
モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でドナルド・トランプ大統領が求めるメキシコ国境に建設する壁の予算を巡る対立のため発生したアメリカ政府部分閉鎖の影響について話していました。 Factbox: D...

(モーリー)それは「メキシコとの国境に壁を作れ! その予算を組め!」って言ったら、中間選挙で民主党が多数派になった下院がそれを拒否したため、それに対して政府の部分閉鎖で対抗をした。結局、それで割を食ったのは公務員だったんですね。アメリカの連邦公務員。だから、安定志向の公務員で働いて頑張っているのに、給料が支払われない。食べるに困る数週間があった。そのことがトランプさんのアキレス腱になっているのがひとつ。

そしてもうひとつ、トランプさんが恐れていると思われる……これは私の見立てですが、トランプさんが怖がっているのは、他の労働組合にも連鎖をしていくこと。たとえば、アメリカの自動車組合。どうして反トランプになり得るのか? 「偉大なるアメリカ!」って言っている自動車のワーカーもいます。レイオフされた労働者がオハイオ州やペンシルバニア州で「中国と貿易戦争すれば仕事が戻ってくる」って言われたからそれを信じて投票をした。

ところが、実際に中国に対して輸入品に関税をかけましたよね? そうなると、輸入する自動車のパーツが高くなるんですよ。アメリカで作った車の価格がどんどん高くなる。消費者が遠のく。またレイオフが起きる。組合に入っているにもかかわらず、クビを切られる。「ワーッ!」ってなっているわけですよ。なので、実はトランプさんのこの不透明な米中貿易戦争に対して懸念を持っている自動車ワーカーはいっぱいいる。これがこの狼煙に追随して、いろんな組合が「最低賃金を守れ! 中産階級を守れ!」って言い出すと、ニューディールに戻っていくことになるんですね。

なのでトランプさんの見せている劇場、トランプ劇場の要となる部分っていうのはみんなが熱くなっているということ。それが急に冷めて、「結局は自動車の部品の値段が高くなっただけだぞ? これ、アメリカのGDPが萎縮して、消費者心理が冷え込むぞ?」って働いている人たちが思い始めると、組合は一斉にそっぽを向きますよね? その連鎖を恐れているのだと思います。

(プチ鹿島)なるほど!

(モーリー)なので実は労働組合というのがトランプさんの2020年の再選に向けてのひとつのアキレス腱であるということがあらわになっているということ。さらに興味深い側面がもうひとつ、ありました。この60個あまりのリツイートされたツイート、アカウントは53個あったんですね。中には複数のツイートをリツイートした場合もある。で、ある人がこれらのTwitterアカウントが本物のアカウントかどうかを調べる「Bot Sentinel(ボット警備員)」というようなサービスがあるんです。そこにこれらの50個あまりのアカウントを全部調べてもらったところ、58%の確率でボットであったと。

で、なぜボットであると判定されたのか? いままで、一度も消防についてツイートしたことがないアカウントがいきなり「私は消防士だけど、組合なんかどうでもいい。トランプさんしかいない!」って。いままで消防士の日常を全くツイートしていなかったアカウントがいきなり出てくる。中にはアイコンもなしのデフォルトのタマゴアイコンのもあったらしいです。あと、名前が変な名前……ただの文字の羅列で自動生成されたようなものとか。などなど、ヤバいものが多い。

で、トランプさん本人はエゴサもできないだろうし、たぶん「Bot Sentinel」の存在も知らないから。側近が一生懸命ボットを……もしかしたら日頃から自分で自分を礼賛する自画自賛用の部隊を動員したのかもしれない。だけど、非常に信憑性が低いっていう側面も出してしまっていて。トランプさんを信じている人にとってはこれのファクトはどうでもいい。ファクトフリーなんでファクトはなくてもトランプさんを支持し続ける。でも、組合に入っている人はこれをどう見るのかな?っていう。これが今後のポイントになると思います。

<書き起こしおわり>

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