町山智浩 頭脳警察・PANTAを語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さんと頭脳警察とPANTAさんについて話していました。

(仮)BRAIN POLICE RELAY POINT 2018

(頭脳警察『世界革命戦争宣言』が流れる)

(町山智浩)これ、かかったのって大変なことですよ!

(宇多丸)ということでいま、お聞きいただいているのは頭脳警察の『世界革命戦争宣言』。

(町山智浩)はい。これは歴史をたどりますと、いわゆる旧左翼と呼ばれる日本共産党、日本社会党が革命を目指すのをやめて、1950年代に選挙で議席を取ることで政権を握るという路線に変更したことに反発した人たちが「武装革命路線を継続する」と。で、彼らのことを新左翼もしくは極左と呼んだんですが。その中から出てきた赤軍派の委員がですね、1969年に宣言した「世界革命戦争宣言」を朗読しているんです。

(宇多丸)うんうん。

(町山智浩)これを朗読しているのは頭脳警察というバンドのボーカルでギターのPANTAさんなんですね。1971年のライブからでした。大変なものをかけてしまいました!

(宇多丸)町山さん選曲ですけどね(笑)。でもまあ、今日はぜひぜひその頭脳警察の世界、教えていただきたいと思います。

(町山智浩)はい。いいのかな? はい(笑)。

(宇多丸)フフフ、いろんなことを考えながら、行ってみましょう。今夜の特集は、こちら! 町山智浩プレゼンツもうすぐ結成50周年記念 頭脳警察歌謡祭2018! いや、僕もドキドキしました(笑)。

(町山智浩)ずげードキドキしています、いま。

(宇多丸)でも、歴史的1曲として、歴史的な話でもありますから。というわけで改めて……。

(熊崎風斗)改めまして、今夜のゲストをご紹介させていただきます。TBSラジオ『たまむすび』でもおなじみです。アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんです。よろしくお願いします。

(宇多丸)お願いします!

(町山智浩)はい、めちゃくちゃ緊張しています。

(宇多丸)町山さんがいつになくものすごい固くなっているという。町山さんは10月15日(月)以来の登場です。その時にはスターリンのお話をしていただきました。

(町山智浩)はい。遠藤ミチロウさん、あの後に膵臓がんであることを告白されまして。公表されて闘病中です。みなさん、応援してください。

(宇多丸)で、その時の解説も本当に素晴らしかったんですけども、今回は頭脳警察特集ということで。なぜ、頭脳警察を今回やろうと思われたんですか?

(町山智浩)頭脳警察は来年で結成50周年なんですよ。

(宇多丸)うわーっ、ひっくり返っちゃいますねー!

(町山智浩)50周年ですよ!

(宇多丸)ライムスターは来年で30周年なんですよ。これ、かなりすごいことだと思っているんですよ。ラップグループとしてはちょっと世界的にも異例だと思うけど……なんだけど、いやー、まだひよっこでした!

(町山智浩)はい(笑)。

(宇多丸)全然ひよっこでしたー!

(町山智浩)世界的にも50周年で現役のバンドって本当に数えるほどじゃないのかな?って思いますよ。しかも、オリジナルメンバー。それでいまもものすごく精力的にライブを続けているという。

(宇多丸)ガンガン活動もしていて。なおかつ、頭脳警察。先ほどもお聞きいただいたような曲も含む、そういう攻撃的な、アグレッシブなスタンスでやっているという。

(町山智浩)っていうか頭脳警察、日本一の問題バンドですよ。

(宇多丸)それが50年の長寿バンドにもなっている。

(町山智浩)誰もそんなことは予想しなかったでしょうね。当時は。

(宇多丸)という、ちょっと勇気の出る話でもあって。なのでぜひ今日は町山さんに頭脳警察についていろいろと教わりたいんですけども。町山さんはまず頭脳警察をいつ知ったんですか?

(町山智浩)僕自身が知ったのは1975年です。レコード屋さんに行くと、その頃は僕は中学生でお金がなかったんで。中古レコード屋さんに行ったんですね。新宿とか神保町の。そこに行くと、カウンターの内側に飾ってあったのが頭脳警察のファーストアルバムなんですよ。で、頭脳警察のファーストアルバムというのは3億円現金強奪事件の犯人とされるモンタージュ写真がジャケットになっているんですよ。

(宇多丸)有名なジャケですよ!

頭脳警察1(紙ジャケット仕様)
Posted at 2018.12.3
頭脳警察
SPACE SHOWER MUSIC

(町山智浩)有名なジャケなんです。これがLPレコードで中古レコード屋さんの内側に飾ってあったんですよ。で、75年から76年にかけてレコード屋さんに行くと、そこに値段が入っているんですけども、それが20万円とか30万円とか。

(宇多丸)ああーっ! その時点でそんなに、もうプレミアがついちゃっていた?

(町山智浩)そうなんですよ。で、僕ははじめて、とんでもないレコードがあるな!って思って。

(宇多丸)たしかに。そんなだったら聞いてみたいって(笑)。

(町山智浩)そう。すげーのがあるな!って。それが頭脳警察。だから僕、聞いてはいないんですよ。

(宇多丸)すでにその時点で伝説化されていたっていうことですね。

(町山智浩)そうなんです。だからちょっとこれから、頭脳警察の最初の頃の歴史について説明をしますと、1950年にリードボーカルでギターのPANTAさんとボンゴ、パーカッション担当のTOSHIさんが生まれて。だから今年で68歳ですね。で、1969年に頭脳警察を結成するんですが、その前にPANTAさんはホリプロのオーディションを受けてグループサウンズっていうかアイドル系で出てくるはずだったんだけど、やめちゃったんですね。PANTAさんってすごくハンサムなんですよ。ところがやめて、TOSHIさんと一緒に頭脳警察というバンドを結成します。

(宇多丸)はい。

(町山智浩)頭脳警察というバンド名はフランク・ザッパというロックミュージシャンの『Freak Out!』っていうアルバムに入っている『Who Are The Brain Police?』という曲。「頭脳警察っていったい誰なんだ?」っていう曲がありまして、そこから取ったものです。

(宇多丸)ああ、それの日本語完全直訳というか。めちゃめちゃ頭脳警察ってかっこいい名前だな!って。

(町山智浩)かっこいい名前なんですよ。すっげーバンド名自体がかっこいいんですけど。で、そういうバンド名はポリスよりも早いよね。

(宇多丸)たしかに、たしかに。ちょっと皮肉な。

(町山智浩)で、その1969年ごろっていうのはすごい70年安保というのがありまして。で、1970年に日米安保条約が自動更新されるんで、それを阻止しようとすることで、もう日本中がすごいデモの嵐だったんですよ。いま、時代状況を説明していますけども。というのはその時、ベトナム戦争がちょうど起こっていたので、日本はそのベトナム戦争に米軍に対する協力という形でベトナム戦争に加担する感じになっていたんですよ。だからベトナム反戦運動で70年の安保条約の自動更新に対する反対運動がすごく高まっている時で。もう僕はまだこの頃は小学生だったんですけども。そこらじゅうでデモ、破壊……もう東京はめちゃくちゃな状態でした。

(宇多丸)69年だと東大の試験がない年ですよね?

(町山智浩)そうです。安田講堂事件とかがあった後ですけども。で、さっきかけた『世界革命戦争宣言』っていうのはその69年9月に行われるんですね。で、そこから赤軍派と呼ばれる人たちが武力闘争をするため、銃を手に入れるために交番を襲撃したり、銃砲店を襲撃したり、山にこもって銃の訓練をしたり、大変な事態になっていく。ゲリラ戦に転じるんです。ちなみに漫画『ワイルド7』のコンクリート・ゲリラはこれを背景にしています。

ワイルド7 1970-71 コンクリート・ゲリラ [生原稿ver.]
Posted at 2018.12.3
望月 三起也
復刊ドットコム

(宇多丸)ふんふん。

(町山智浩)で、10月21日に国際反戦デーっていうので2年連続で新宿がめちゃめちゃに破壊されるっていう状況があって、そのあたりで頭脳警察が出てくるんですよ。実際はね。で、1970年にはその赤軍派の一派がよど号という航空機をハイジャックして北朝鮮に行くという事件があって。それの1ヶ月後に頭脳警察はステージデビューをします。で、そのデビューの後、レコードもまだ出していない状態で5月に日劇ウエスタンカーニバルという、まあいろんなグループサウンズが出てくるショーがあったんですね。まあアイドル系なんですよ。それはナベプロさん、渡辺プロがやっていて。そのステージ上で頭脳警察のPANTAさんはペニスを出してマスターベーションをしてしまったと。

(宇多丸)そんなものすごい芸能ど真ん中な場所で、当時のロックマンの流儀というか。

(町山智浩)はい。それこそだからショーケンとかスパイダースとかタイガースの沢田研二さんとかがバーッといる中で、まあおちんちんを出して。で、週刊誌に出て「頭脳警察っていったいなんなんだ?」っていうことになるわけですよ。それでね。

(宇多丸)でもまずよくそこにブッキングされていましたね?

(町山智浩)なんらかの間違いだと思いますよ。で、やらかす。いきなり最初、それですよ。頭脳警察っていう名前が世間に知れ渡ったのは。で、1971年5月に日比谷の野音でライブをやるんですけど、それがさっき聞いていただいた『世界革命戦争宣言』なんですよ。あれも曲っていうよりはただ朗読しているだけですけども。赤軍派の『世界革命戦争宣言』をね。で、とんでもないバンドですよ。で、その後8月に三里塚で成田空港の建設に対して反対する人たちを支援する幻野祭というフリーコンサートがあって。そこでまた『銃をとれ』という歌を演奏するんです。『銃をとれ』、お願いします。

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頭脳警察『銃をとれ』

(町山智浩)はい。『銃をとれ』なんですけども。

(宇多丸)すごい。かっこいいサイケロック。

(町山智浩)ものすごいサイケデリックでかっこいいんですけど、この歌の歌詞がとんでもないのは、さっき言ったみたいに新左翼というか極左の人たちの中のもっとも先鋭的なグループが「実際に銃をとって武装革命を起こせ!」って言っている最中にこの歌を歌っているわけですよ。

(宇多丸)要は、いまこれを聞くと「これは比喩表現なのかな?」って思うけど、それが比喩的に響かない時代っていうか。

(町山智浩)「本当に銃をとって撃て!」っていう時代にこの歌を歌っていて。これ、だから詩的な表現として言っているようには当時は響かなかったわけですよ。本当のことを言っているという。大変な時代なんですよ。想像できます?

(熊崎風斗)いや、想像できないですね。まさにこの歌詞の通りのことが行われていたという。まさにそういう時代ですよね。

(町山智浩)そう。まさにその後、実際に銃でハイジャック事件があって。1972年にはあさま山荘事件っていうのがありまして。で、赤軍の銃撃によって死者3名、負傷者27名っていう大変な銃撃戦でゲリラ戦状態になるんですよ。そこにこの歌を歌っているんですよ。『銃をとれ』って。大変な歌なわけですよ、もう。許されない世界ですよね、これね。

(宇多丸)うんうんうん。

(町山智浩)で、あさま山荘事件のわずか1ヶ月後にこの頭脳警察のファーストアルバムが出る予定だったんですが、発売中止ですよ。

(宇多丸)やっぱりそういう赤軍派に心情を寄せたような歌を歌っていて。実際にだってもうね、日本中がテレビに釘付けみたいな。

(熊崎風斗)そんな大問題になっている時に。

(町山智浩)それでこの歌だから、そりゃあないだろうと。で、このファーストに入っている曲は全部ヤバいんですけども。とりあえず1曲、『戦争しか知らない子供たち』をお願いします。

頭脳警察『戦争しか知らない子供たち』

(町山智浩)はい。すごいですね! フルコーラスかかりましたね!(笑)。

(宇多丸)ねえ。町山さんが本当にうれしそうにね(笑)。でも当然これは替え歌なわけですよね?

(町山智浩)替え歌なんです。これ、元の歌は知っています?

(熊崎風斗)『戦争を知らない子供たち』ですよね?

(町山智浩)はいはい。ジローズが歌っていた歌で反戦ソングなんですよ。で、その頃に反戦歌っていうのが非常に流行っていまして。まあベトナム戦争がありましたので、新宿の西口のところの広場がそういう反戦歌をうたう広場になっていたんですね。で、フォークゲリラと言われる人たちが戦争に反対して愛を歌う歌を歌って集まっていたんですよ。で、それが1969年に警察が入って解散させられたりしているですけど。PANTAさんや頭脳警察は「愛と平和とかふざけんじゃねえよ!」っていう人なんですよ。この人たちは。

(宇多丸)うんうん。

(町山智浩)だからもういきなり「パイプ爆弾 ダイナマイト」って、本当にパイプ爆弾がそこらじゅう、東京中で爆発しているような世情の中でこれを歌っちゃうという。で、「戦争を知らないなんて、そんなわけねえだろ? その後も朝鮮戦争やベトナム戦争が続いているじゃねえか! 俺たちも戦っているんだ!」っていう歌を歌ってしまうという。そりゃあこのファーストアルバム、ダメだろう。発売中止だろうっていう。

(宇多丸)たしかにね、「戦争を知らない」って言っているけど、戦争は起こってるだろ!っていうその欺瞞はありますよね。

(町山智浩)そうなんですよ。

(宇多丸)知らないふりをしてるだけじゃねえか!っていうね。

(町山智浩)で、またね、この歌は過激な歌詞だけじゃなくて、歌詞の中にインカの初代皇帝の名前が入っていたりするんですよ。

(宇多丸)ああ、あれですね。「○○○・カパック」ですね。

(町山智浩)カパックさんの名前が入っていたりするんで。ありとあらゆる意味で全くダメなものだったんですけども。

(宇多丸)これはぜひみなさんね、ググッてみよう!

(町山智浩)ググッてみよう! で、ファーストがダメになったから、2でそのダメじゃないバージョンを出そうっていうことで、スタジオ録音で……だからファーストは全部ライブなんですけども。スタジオ録音でセカンド・アルバムを録音するんですが、それがすぐに録音されて、5月に発売されるんですけど、発売後1ヶ月で発売中止(笑)。回収。

頭脳警察2(紙ジャケット仕様)
Posted at 2018.12.3
頭脳警察
ビクターエンタテインメント

(宇多丸)出てから回収?

(熊崎風斗)5月に発売して、ダメに。

(町山智浩)ダメ。それはやっぱり歌詞がダメで。「マリファナだけが俺のなぐさめ」とか入っているんで、これはダメだろうっていう(笑)。

(宇多丸)フフフ、それ、出す前に気づくだろう?っていう(笑)。

(町山智浩)出す前にダメだろうっていうね(笑)。それで、もう本当に大丈夫なやつだけを出そうということで、サード・アルバムが10月に発売されるんですけど、そのやっと聞けたサード・アルバムの1曲目が『ふざけるんじゃねえよ』。お願いします。

頭脳警察『ふざけるんじゃねえよ』

(町山智浩)はい。これが『ふざけるんじゃねえよ』。

(宇多丸)『頭脳警察1』『頭脳警察2』で結局出せなかったという流れで考えて1曲目って思うと、この鬱憤がたまっている感じと……。

(町山智浩)そうそう。だから『イムジン河』を出せなかったフォーク・クルセダーズが『悲しくてやりきれない』を出したんだけど。あの人たちはレコードが出せなかったから、『悲しくてやりきれない』っていうことなんだけども、頭脳警察の場合はレコードが出せなかったから、『ふざけるんじゃねえよ』ってなるっていう!(笑)。

頭脳警察3
Posted at 2018.12.4
頭脳警察
ビクターエンタテインメント

(宇多丸)さっきからもう少年町山さんがキャッキャキャッキャと。でも、わかります。すごい痛快だし、その文脈は別にしてもすごく痛快だし、譜割りの感じとかもめちゃめちゃ、逆に現代的だなと思って。かっこいいと思ったりしました。

(町山智浩)あのね、これね、宇川直宏くんがやっているDOMMUNEっていうのでこの間、日本のパンクの名曲をものすごい長くDJでかけまくるっていうのをやったんですよ。ついこの間なんですけども。で、その中でこの『ふざけるんじゃねえよ』をかけたんですよ。そしたら、どんな日本のパンクよりもパンクだった。

(宇多丸)うんうん。

(町山智浩)で、この頃はまだ「パンク」っていう言葉は存在しないんですよ。パンクっていう言葉が出てくるのはもっと70年代後半以降なんですね。世界に。

(宇多丸)だし、輸入で入ってくるものだから。

(町山智浩)そうなんですよ。だからパンクができるよりもはるか前にパンクを作っちゃっていたのが頭脳警察。なんで、よく「パンクの元祖」と言われることが非常に多いですね。で、この『ふざけるんじゃねえよ』の歌詞もいままでずっとレコードが出なかったくせにね、歌詞が「まわりを気にして生きるよりゃ ひとりで勝手きままにグラスでも決めてる方がいいのさ」っていう……「グラスって何のグラスだろう? ワインとか飲むやつかな?」とかいろいろと思う人もいると思うんですけども。

(宇多丸)ああ、この歌詞上の「………」は(笑)。

(町山智浩)そういう非常にすさまじいことをやっていたのが頭脳警察なんですが。ただ、僕自身は実はリアルタイムでは知らないんですよ。僕にとってのPANTAさんって、ソロになってから。1970年代後半にソロになって。で、80年代に爆発的に人気が出てくるんですね。で、そのきっかけはいろいろとあるんですけども、宇多丸さんは知っていると思いますけど、やっぱり『狂い咲きサンダーロード』なんだよね。

(宇多丸)ああ、なるほど。そうか。きっかけは石井聰互監督の。

(町山智浩)石井聰互監督の『狂い咲きサンダーロード』が1980年に公開されて。そこでPANTA&HALのね、『ルイーズ』と『つれなのふりや』がすごく印象的なシーンでかかるんですよ。『つれなのふりや』なんて主人公がボロボロに体をリンチされて、病院から出てくるところでかかるんで、すごく印象深いんですよ。で、すごいっていうのがあって。で、PANTA&HALっていうソロのバンドをやっている時はもうまったく、いま聞いていたようなパンクとは違う世界だったんですけども。非常に音楽的に幅が広い、それこそニューウェーブロックからサンバなんかもやるし。『マラッカ』っていう曲はサンバなんですね。

(宇多丸)ふんふん。

(町山智浩)あと、歌詞がすごくて。まず『16人格』っていうレコードを出すんですけど、それは実際に16人格だった人、シビルっていう人がいて。その人と同じように、その16人の人格にPANTAさんが分かれて16曲を吹き込むというコンセプトアルバムだったり。あとは『クリスタルナハト』っていうアルバムをPANTAさんはソロで出すんですけど、それは有名なナチによるユダヤ人弾圧、ホロコースト自体をテーマにした壮大なジャーナリスティックな叙事詩のようなアルバムで。しかもその歌詞がものすごく、その当時のホロコーストについてのいろいろな歴史的事象を歌詞の中に入れ込んでいるんで、歌詞を全部理解するためには1冊、本が必要なんですよ。

(宇多丸)ふんふん。

(町山智浩)で、その本がPANTAファンクラブで出たりしていたぐらいの世界で。だからT・S・エリオットっていう詩人がいて、その人の詩を理解するためにはその背景にあるギリシャ神話とか聖書だとか歴史全部を知らないと意味がわからないっていうぐらいの高度な歌詞の歌をいっぱい作っていたんですね。PANTA&HALでは。で、その一方でアイドルに曲を提供したりもしていて。岩崎良美さんとか荻野目洋子ちゃんとかね。あとは大ヒット曲では石川セリさんの『ムーンライト・サーファー』。あれはもう普通にベストセラーになって。

(宇多丸)面白いな、そのスタンスが。これだけ過激な、すごくザ・60年代末から70年代っていう空気の中で濃厚に先鋭化したところで来たPANTAさんとか頭脳警察が、80年代以降になって人気を博しだすっていうのは面白いですね。その構図が。

(町山智浩)すごいポップな、さっきの『つれなのふりや』なんかレゲエだしね。だからそういう、非常に幅広い音楽性を……。

(宇多丸)なんかその時代性を突き抜けた、抜けのよさがありますよね。さっきの『ふざけるんじゃねえよ』も、なんかそういう党派性とか時代性を突き抜けた、いつの時代の若者が聞いても溜飲を下げる。

(町山智浩)そうそう。時代がまったくないですよ。もう永遠にムカムカしている時は聞くといいと思うんですけども。で、僕自身がPANTAさんのライブを初めて見たのは、1981年大晦日から82年の元旦にかけてのニューイヤーロックフェスティバルなんですよ。で、この回のニューイヤーロックフェスは本当に歴史に残るすごいニューイヤーロックフェスで。僕、本当に行ってよかったんですけども。これ、出たバンドはすごいですよ。PANTA&HAL、シーナ&ザ・ロケッツ、カルメン・マキ&OZ、ルースターズ、アナーキー、白竜、ARB、ザ・モッズ、ザ・ロッカーズ、ザ・スターリン、子供ばんど、ビートたけし、松田優作、沢田研二。

(宇多丸)おおーっ!

(町山智浩)ものすごい、もう頭がガーン!って来ましたよ。

(宇多丸)アングラからメジャーまで。しかも全部尖った人っていうね。

(町山智浩)全部尖っていて。スターリンとか、客席も破壊されちゃっているし。すごかったです。で、僕はアナーキー、スターリン。そのへん全部ぶっ続けで見ているんですよ。その時。モッズも。もう完全に持っていかれちゃったんですけども。これ見なかったら僕、宝島に入らなかったですね。

(宇多丸)ああ、それぐらいですか。へー!

(町山智浩)僕の人生に影響を与えましたね。僕、これを見なかったら漫画家になっていたと思いますけども(笑)。で、ここで見てすごいかっこよかったんですけども。それから、頭脳警察のセカンドが再発になったりするんですよ。ちょっと後に。で、頭脳警察を後追いで聞いていったんですけども。ただ、PANTA&HALではものすごくポップなことをやりながら、頭脳警察ではものすごく、まあプリミティブな音楽をやるっていうところの二面性がすごく面白くて。

(宇多丸)はい。

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