町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で実在の女性ジャーナリスト、メリー・コルビンさんの伝記映画『ア・プライベート・ウォー』を紹介していました。
The most powerful weapon is the truth. Rosamund Pike and Jamie Dornan star in #APrivateWar. Coming soon to theaters. pic.twitter.com/uxVDGec8EG
— A Private War (@aprivatewar) 2018年8月27日
(町山智浩)今日はですね、『ア・プライベート・ウォー(A Private War)』という映画についてお話します。これは実在の戦場ジャーナリストでメリー・コルビンさんという人の伝記映画です。これ、写真を見ていただくとコルビンさん、どういう人か一発でわかるので。そちらの手元にありますかね?
(赤江珠緒)ああ、ありますね。なんか豪快な女性っていうイメージですね。黒い眼帯を……。
This is a great great book; we are very lucky @Channel4News to have @lindseyhilsum as our colleague friend correspondent and mentor to so many and a she has written a great biography of another remarkable woman, Marie Colvin pic.twitter.com/7eFmblsEON
— Ben de Pear (@bendepear) 2018年10月28日
(町山智浩)そう。片目に海賊みたいな黒い眼帯をつけているんですよ。『コータローまかりとおる!』に出てくるようなね。
(山里亮太)フハハハハハハッ!
(町山智浩)海賊のようなね。この人は戦場に行ってロケット弾を食らって片目を失ったんですね。
(赤江珠緒)ああ、そうなんだ。へー!
(町山智浩)はい。非常にヨーロッパとかアメリカでは有名な人で。ただ、2012年2月20日にシリアのホムスという街で政府軍の砲撃を食らって56歳で亡くなりました。
(赤江珠緒)ああ、戦場で亡くなっているんですか。
(町山智浩)はい。この人はとにかくありとあらゆる戦場に80年代から行っている人なんですね。チェチェン紛争であったり、コソボ紛争であったり、イラク湾岸戦争であったり、スリランカ内戦。東ティモール独立戦争……まあ、そういったところの現場に行って、「ここから先は行っちゃいけないよ」というところの内部に入って。というか、この人の場合にはかならず……政府軍と独立派の戦闘があったり、政府軍と民間人側の戦闘になったりした時にかならず、弱い方に入っていくんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)包囲されて非常に危険なところの領域を越えて、そこのひどい戦場の中にいる人々の声を拾いに入っていくという人だったんです。このメリー・コルビンさんという人は。で、片目を失って、命も失ってしまった人なんですけども。その人のすさまじい生き方を描いた映画がこの『ア・プライベート・ウォー』という映画です。で、これはメリーさんを演じているのがロザムンド・パイクという女優さんで、『ゴーン・ガール』の奥さん役をやった人ですね。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)『ゴーン・ガール』で最初、すごいかわいい奥さんっていう感じで出てきて、映画のちょうど半分から正体がわかっていくというあの奥さんです。あれでアカデミー賞にノミネートされていましたけど。で、今回は堂々の主役なんですよ。で、あの映画『ゴーン・ガール』とこっちを比べると演技がもう全然違いますね。もうこっちはね、ガラガラ声なんですよ。メリー・コルビンさん。メリー・コルビンさんってこの人、ドキュメンタリー映画が何本か残っているので声とか話し方とかが全部わかるんですね。ビデオがあるんで。
(赤江珠緒)ああ、はいはい。
(町山智浩)だからそれを見て徹底的に研究して。いつもガラガラ声でね、「あたしゃね、行くわよ!」みたいなしゃべり方で。チェーンスモーカーでタバコをいっつも吸いまくって、ウィスキーを飲みまくって。それで戦場を駆け巡っているんですけども。
(赤江珠緒)へー!
(山里亮太)豪快だな!
(町山智浩)豪快ですよ。だってジープとかで「行くわよーっ!」とかって戦場の中に突っ込んでいくんですけど。運転手がもう怖くて恐怖でゲロを吐いたりしているんだけど、「行くわよ、ゴーッ!」とかって言って。すごいんですよ、この人は。
(赤江珠緒)ワイルド!
(町山智浩)超ワイルドで。でね、まあ次々といろんな戦場に行くんですけど、この人が面白いのはそういうところに行く時も結構ブランド品を身につけているんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)プラダの服とか着ているんです。
(赤江珠緒)それはなにか、こだわりですか?
(町山智浩)そう。こだわりなんですよ。この人、塹壕とかに入ってものすごい戦闘状態になっていても、レースの下着とかつけているんですよ。エッチな。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、ちゃんとマニキュアもしています。この人。お化粧もしています。
(赤江珠緒)じゃあもうすごいおしゃれはしているだ。
(町山智浩)そう。セクシーさを忘れないんですよ、この人は。戦場でも。前でマシンガンとかバズーカ砲とかバンバン落ちているんですけど、そこは全然、きれいにしているんですよ。なおかつ、恋多き女で。モテるんですね。すごく男性から。どこに行っても。そう聞くと、面白そうでしょう?(笑)。
(赤江珠緒)そうですね。かなり魅力的な方なんですね。
(町山智浩)非常に魅力的な人ですね。で、この人がまずいちばん最初に手柄を立てたのは、1987年にイスラエルとパレスチナが非常に戦闘状態にあった時、ベイルートに入りまして。この人がまだ若かった頃ですけども、パレスチナ解放機構のアラファト議長にインタビューして。非常に気に入られて。まあ、アラファトさんって実は女性が非常にお好きだったんですよ。ご存知ですか?
(赤江珠緒)ほー!
PLO アラファト議長に気に入られる
(町山智浩)非常に美人の若い奥さんがいた人ですね。この人ね(笑)。で、メリーさんもすごく気に入られて。ものすごく気に入られて、その後の1993年にイスラエルとパレスチナがお互いを認め合って互いの、イスラエルの国家としての権利も守るし、パレスチナの自治権も守るっていう感じで歴史的な合意が行われた時、この人はアラファト議長の付き添いでいるんですよ。
(赤江珠緒)そこまで気に入られて? へー!
(町山智浩)そこまで気に入られてるんですよ。「あたしゃね!」とか「うるさいわよ!」とかって言う人なんだけども、女性的魅力もあって。両方あるというすごい方なんですね。この人ね。それだけじゃなくて、リビアのカダフィ大佐にも好かれちゃうんですよ。この人。
(赤江珠緒)カダフィ大佐!?
(町山智浩)リビアのカダフィ大佐って、まあ独裁者ですけども。彼女がもう本当に唯一、他の国の……特に英米のジャーナリストとして単独インタビューを許されているんですよ。でね、カダフィ大佐ってどういう人だか、知ってますよね? 独裁者で。女好きですよ。
(山里亮太)女好きなんだ。独裁者としてすっごい怖いイメージがありますけども。
(町山智浩)いや、独裁者は大抵女好きですけども。ただ、この人の場合の女好きはちょっと他の人とは違います。すごくたくましくて強い女の人が好きなんです。
(赤江珠緒)へー、カダフィさん、そうだったんですね。
(町山智浩)えっ、全然知らない?
(赤江珠緒)でもそういえば、カダフィさんの周りを囲んでいる女性兵士みたいな人はゴツい人が多かったですよ。
(町山智浩)そう! いやいや、美女軍団ですよ。全然知らないのか、そうか。カダフィはありとあらゆる人種の美女を集めて自分の近衛兵にしていたんですよ。
(赤江珠緒)そうですよね。
(町山智浩)だから黒人の人とか中東系の人とか白人系の人とかを集めて。全部美女ばっかりで身長がすごく高くて。それで戦闘能力も高い人をズラッと並べて自分の護衛にしていたんですよ。
カダフィ大佐と美女護衛たち
PHOTOS: Interesting Facts About Col. Gaddafi And His virgin Female Bodyguards Known As "The Amazonian Guard"
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— Africa Updates (@Africaupdatesuk) 2018年5月7日
(赤江珠緒)うん。それはたくましくて強そうな女性が好きだから?
(町山智浩)これね、おそらくこの人はね、昼間は独裁者ですけど夜は奴隷だったんじゃないかな?っていろいろと思っちゃうんですよ。
(赤江珠緒)ほほう(笑)。
(町山智浩)ちょっとその気持ち、わかるな!っていう風に思いますが。
(山里亮太)たしかにそういうお店ってね、立場の偉い人が多く来るって聞いたこと、あります。
(町山智浩)そうなんですよ。経営者とかね。出版社の社長とか……具体的に名前は出しませんが。そういう人がそういうところで踏まれたりしているんですけどね。カダフィもたぶんそうだったと思うんですが、それは置いておいて……だからこのメリー・コルビンさんみたいなたくましくてかっこいい、こういう人はまあカダフィさんに好かれるわけですよ。
(赤江珠緒)タイプだったんだね。
(町山智浩)ただね、夜に部屋に夜這いしてきたらしいですね。
(赤江・山里)ええーっ!?
(町山智浩)カダフィさんがね。で、逃げ出したらしいですけど。そのへんもこの映画の中に出てきますけどね。それとこの人ね、結婚した時も面白くて。男性に惚れられるんですけども。パトリック・ビショップっていうジャーナリストに。で、このパトリック・ビショップという人も戦場に行って、戦場で2人は出会っているんですよ。
(赤江珠緒)ふんふん。
(町山智浩)戦場で出会って、爆弾の音がしたらしいんですよ。ヒューッ!って落ちてくる音が。で、パトリック・ビショップは最初、「ヒューッ!って落ちてくる音で近くに落ちてくるのか遠くに落ちてくるのか、俺は聞き分けができるぜ」っていう風に威張っていたらしいんですよ。そしたら本当にヒューッ!っていう音が来て。その時、「うわーっ、爆弾が落ちてくる!」って思ってビショップさんが床に頭を抱えて伏せて怯えていたら、爆弾は遠くに落ちて。で、「あれっ?」って思ったらそのメリーさんがスクッと立ったままニヤニヤと笑いながら見下していたらしいんですよ。そのビショップさんを。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)だから彼女の方が知っていたんですよ。爆弾が落ちる音を。
(赤江珠緒)はー! それが、でも結婚?
(町山智浩)それで惚れているから、このビショップさんも夜は奴隷系の人だと思いますけども(笑)。
(山里亮太)ゾクッと来たんでしょうね。
(町山智浩)見下されていてゾクッと来たんでしょうね。ニヤニヤ笑いながら見下ろしているんでね。ゾクゾクッと来たんだと思いますけども。なんの話をしているんだ?(笑)。
(赤江珠緒)フハハハハハッ! まあでも、相当強い女性だったんですね。
(町山智浩)この人はすごい人だったんですね。うん。まあ、豪快な人なんですよ。ただね、私生活ではあまりうまくいかなくて。結婚を2回して、流産も2回したりとか。それで普段はお酒とタバコでグチャグチャだったみたいですね。
(赤江珠緒)ふーん!