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町山智浩 映画『ナイチンゲール』を語る

町山智浩 映画『ナイチンゲール』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2020年3月17日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ナイチンゲール』を紹介していました。

(町山智浩)それで今日、実は紹介しなきゃならない映画があって。というのは3月20日。つまりあと3日後に公開の映画だったので、いどうしても紹介しなければならなかったんですが。ちょっとコロナの話で引っ張ってしまったのですが、すいません。急いでやります。それは『ナイチンゲール』という映画です。『ナイチンゲール』って言っても、看護婦さんとかそういう話じゃなくて。これ、ナイチンゲールっていう声のいい鳥がいますよね? その話なんですけども。オーストラリアの映画です。これは歌の上手い女性が主人公の映画なんですが。これね、各地の映画祭で上映されるためにお客さんが途中退席してパニックになっちゃったという、とんでもない映画なんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)「見ていられない」ということで。これ、すさまじい映画なんです。オーストラリアの黒歴史を暴いてしまった映画なんです。で、ナイチンゲールという人はこの映画の中では歌の上手なえアイルランド系の人妻なんですけれども。彼女はオーストラリアのタスマニア島に住んでいます。時代は1820年代から30年代ぐらいなんですね。で、その頃というのはイギリスがオーストラリアをまず支配して、その後にそのタスマニアというオーストラリアの南の方にある島。そこを占領しようとしたんですね。

(赤江珠緒)メルボルンのちょうど向かいぐらいにある島ですね。

(町山智浩)そう。タスマニアデビルとかがいるところですけども。そこを占領しようとして、そのタスマニアに住んでる先住民のアボリジニの人たちと戦争があったんですよ。それを「ブラック・ウォー」と言うらしいんですけども。僕はこの映画の中で初めて知りましたが。で、そこに……オーストラリアっていうのは流刑地だったので、ヨーロッパで犯罪を犯した人たちがみんな連れてこられて開拓をさせられていたんですね。で、このナイチンゲールと呼ばれている歌の上手いアイルランド出身の女性はですね、何かの犯罪を犯してタスマニアまで流刑にされて。そこで結婚をして、子供もできたんですけども。そこを支配しているイギリス軍の軍人にレイプされたりして、無理やり奴隷みたいにされてるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これはね、その当時アイルランドがイギリスにとっての植民地だったっていうこともあるんですね。で、差別があってアイルランド人をそういう風に扱ってたんですけども。そこで、とうとう彼女は自分の赤ん坊と旦那さんをその軍人に殺されてしまうんですよ。で、殺された後にですね、なんとかその軍人を追いかけようとしたら、もういなくなっちゃったんですね。で、島の反対側まで彼らが逃げていっちゃうんですよ。

それで「どうしよう?」っていうことになって、島について元々すごく詳しくて何でも知っているアボリジニの青年をお金で雇って。ガイドとして彼と一緒に山の奥に入っていった夫と子供の仇の軍人を追いかけるという復讐の旅に出るんですよ。だからこれね、オーストラリアのタスマニアが舞台の映画なんですけども、基本的には西部劇ですね。

(赤江珠緒)うん、そうですね。復讐を誓ったっていう。

西部劇的な作品

(町山智浩)だから西部劇でもよくある、復讐を誓って旅に出て。それで西部だからよく知っているその地元の先住民のインディアンの人と一緒に復讐の旅に出るみたいな映画っていっぱいあるんですけども。これはタスマニアなんで見たこともないような風景なんですが。ただこれね、その彼女の仇になるその軍人っていうのはものすごく悪いやつでね。信じられないぐらい悪いやつなんですよ。で、逃げながら途中でアボリジニの人たちを見つけるわけですよね。そうすると無差別に殺すしね、そのアボリジニの人が女の人だともうレイプするしね。ひどいんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)それであまりにもひどいから、お客さんが「こんなもん、見られないわ!」って出ていっちゃったらしいんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういう感じで?

(町山智浩)はい。この作品って映画祭で30人が出ていったっていう記録もあるんですが。30人ってすごいですよ。で、この作品の監督は女性監督で、この前に『ババドック』という映画を撮った人なんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)ジェニファー・ケントという人なんですが。この『ババドッグ』という映画は1人のシングルマザーが赤ちゃんを抱えて暮らしてるんですけど、そのうちにその精神状態が非常に不安でおかしくなって。「赤ちゃんが殺されてしまうんじゃないか?」っていう妄想に取りつかれていくっていう映画だったんですね。で、これは結構子供を育てたことのある人だったら「自分の子供が死んじゃうんじゃないか?」という恐怖っていつも持っていたと思うんですよ。赤ちゃんの時に。

(赤江珠緒)うん、そうですね。もうあまりにもちょっと生命体として弱い感じがするから、不安ですもんね。

(町山智浩)そう。落っことしたら死んじゃうじゃないですか。で、ちょっと病気になったりすると本当に怖いじゃないですか。それがだんだん、1人きりで誰も助けてくれないから恐怖になっていくっていうホラー映画だったんですよ。それを撮っている人なんで、すごく女性としてその自分の子供の大切であるとか、女性が1人で生きていくってことの厳しさってものを分かっている監督なので。

オーストラリアの暗い過去

だから彼女が言っているのは「その当時のことを本当に私はいろいろ調べたんだけども。女性がどれだけ酷い目にあわされたのか。アイルランド系の人たちがどれだけ差別されたのか。アボリジニの人がどれだけ虐殺されていたのかということを調べて。これは全部事実です」という風に言ってるんですよ。で、いろんなところで賞を取ってるんですけども。これ、いいのはね、このアボリジニの青年とナイチンゲールさんは最初、仲が悪いっていうか、全くコミュニケーションが取れないんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)アボリジニの人と一緒に話もしたことがないし。野蛮人だと思って差別をしているし。で、彼らの方は白人ことは全部もうとんでもない侵略者だと思ってるから。それで全く仲が悪いんですけども、2人で旅をしていくうちにだんだんだんだんと友情というか絆が生まれていくという。そのへんはすごくいい話なんですよ。ただね、「すごいことをオーストラリアはしてきたんだな」ってことがよく分かる、結構怖い映画でしたよ。

(赤江珠緒)それはもう完全に黒い歴史と言いますか。「見たくない」っていう側の人が出てくるのもわかる話ですね。今の話を聞くとね。

(町山智浩)そうなんですよ。オーストラリアってその後も酷くて。アボリジニっていうもの自体を消滅させようとして、子供たちをみんな親から無理やり引き離して白人のところで育てて、アボリジニの文化を忘れさせてアボリジニっていうもの自体を完全にこの世から消そうとしたこともあるんですよ。

(赤江珠緒)同化政策みたいな?

(町山智浩)そう。それって結構最近なんですよ。戦後ですよね。第二次大戦後です。1960年代ぐらいまでそれをやっていたんですよ。そう考えるとまあ酷いなと思いますが。オーストラリアでもコロナでね、トイレットペーパー騒ぎが起こっているみたいですけどもね。という、結構強烈な映画なんですが。こういうのはね、たぶんなかなかネット配信とかテレビで放送とかされないので。ぜひ3月20日からのヒューマントラストシネマ渋谷での上映に行っていただけるといいかなと思います。

(赤江珠緒)そうですね。日本では3月20日から見ることができるということで。今、町山さんがおっしゃったヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国公開でございます。

『ナイチンゲール』予告編

(町山智浩)でもいつまで映画館で行けるのか、わからないですね。もう。

(山里亮太)こっちもそうなるかもしれないですね。

(町山智浩)もう俺、映画館に行けなかったら本当、どうやって生きていったらいいのか、わからないですよ。

(赤江珠緒)町山さん、翼をもがれるみたいなところもありまよね。

(町山智浩)うん。でも「映画館はバイキンの巣だぞ」とか言われるとドキッとしますよね。

(山里亮太)密閉された空間ではあるからね。

(町山智浩)ねえ。そこでいっぱい食べたりしているじゃないですか。で、ベタベタといろんなところを触ったりしているし。

(赤江珠緒)まあね、生活をしていくとなると全てがね。

(町山智浩)で、アメリカは今、お寿司屋さんが大変ですよ。みんなね、お寿司が怖くなっちゃって。ねえ。アジア人が素手で触ったものを生で食べるっていう。それ、ビビるでしょう?

(赤江珠緒)そういった事態になっているんだ。嫌ですね……。

(町山智浩)今、アメリカは本当に大変です。もう僕、しばらく日本にも行けませんしね。もう大変です。ということで来週はちゃんと映画の紹介ができるんでしょうか?

(山里亮太)そういうことですよね。

(赤江珠緒)町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

<書き起こしおわり>

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