東村アキコと宇多丸 スマホ特化型漫画と漫画の未来を語る

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漫画家の東村アキコさんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。現在取り組んでいるスマホ特化型漫画「ウェブトゥーン」と漫画の未来について宇多丸さん、宇垣美里さんと話していました。

(宇垣美里)突然ですが、ここである重大なデータを発表します。全国出版協会が今年2月に発表した調査結果によりますと、2017年の漫画単行本と漫画雑誌を足した全売上はおよそ4330億円。そのうち電子書籍の漫画単行本と漫画雑誌の売り上げは合計1747億円。まだ漫画界全体の半分以下ではあります。が、漫画の単行本に限って言えば、紙の漫画の単行本の売り上げは前年比マイナス14.4%の1666億円。それに比べて電子書籍の漫画単行本は前年比プラス17.2%の1711億円。つまり紙の単行本より電子書籍の単行本の方が既に多く売れているのです。

(宇多丸)なるほど。そうなんですね。ということで日本の漫画の歴史が大きく動くタイミング。この新時代、東村アキコ先生、どんな風に思われているでしょうか?

(東村アキコ)もうね、あの、大変!

(宇垣美里)アハハハハハッ!

(宇多丸)大変?

(東村アキコ)ヤバい!

(宇多丸)ヤバい! 大変! そんなヤバいという危機感、これをもとに本日やる特集でございます。激動の時代を迎える漫画界の最前線、今夜は一緒に考えていきます。題して「人気漫画家東村アキコが挑む、新たな漫画表現とは何か?」特集。

(宇垣美里)大ヒット作の数々で知られる漫画家の東村アキコさんがいま、新たに挑戦しているのがスマホに特化したウェブトゥーンと呼ばれる新しい漫画のスタイル。韓国を筆頭に今、日本の若い世代でも主流になりつつあると言われているのがこのスタイルなんですが、日本のマンガ界のトップランナーで初めてこのスタイルに挑戦した東村アキコさんに詳しく解説していただきます。

(宇多丸)はい。改めてよろしくお願いします。

(東村アキコ)よろしくお願いします。

(宇多丸)いらしていただいて光栄でございます。ということで東村さん、数々のヒット作がございますが、ご紹介をお願いします。

(宇垣美里)東村アキコさんは宮崎県のご出身です。金沢美術工芸大学卒業後、1999年『フルーツこうもり』で漫画家デビュー。そして2007年から始まった育児エッセイ漫画『ママはテンパリスト』が100万部を超える売上で大ヒット。その後、2008年から連載が始まった『海月姫』はテレビアニメ、テレビドラマ、実写映画化されるなど大ヒット。その後も『主に泣いてます』『東京タラレバ娘』などが次々とテレビドラマ化され話題を呼びました。または2015年に完結した自伝的作品『かくかくしかじか』は2015年マンガ大賞を受賞するなど高い評価を得ているということです。

(宇多丸)はい。ということで僕はまさにその『かくかくしかじか』、もうガツンと感動を受けまして。

(東村アキコ)ありがとうございます。

(宇多丸)で、もう宇垣さんはめちゃめちゃいろいろと他にも……。

(宇垣美里)大好きなんです!

(宇多丸)で、その漫画に関連しているのかな? こんなメールも来ていまして。(メールを読む)「今日のテーマには全く関係なく、一応漫画の話といえばそうなのですが、多分先シーズンから『とり野菜みそ』のホームページに東村先生が登場されていて、石川県出身なのかなと思って調べたら違っていたからなぜだろうとぼんやり思っていたところ、今シーズンその謎が解けました。私は富山県に住んでるので、とり野菜みそは家にありましたが、豚バラと白菜鍋に使うことを知らなくて、先生の漫画を読んで食べたくなり作ってみたところ大ヒットで。今シーズンはもう何度も食べています。この美味しさを教えていただきありがとうございます」というね。

(東村アキコ)あれね、1年前に発表したの。あの漫画。1年前にTwitterに全部のっけた時、全然バズんなくて。「ダメだ、こりゃ」って思っていたら1年後、なぜかバズるっていう。だからね、WEBはわかんない! 本当に。

(宇多丸)フハハハハハハッ!

(宇垣美里)フフフ、あれを見たら本当に食べたくなっちゃって。

(宇多丸)やっぱりそれもWEBのヤベえっていうね。ヤバいところ。

(東村アキコ)忘れた頃になんかね、やっと最近みんな言ってきてくれて。

(宇垣美里)「いま、これがヒットするんだ」みたいな感じなんですね。

(東村アキコ)そうなの。去年無風だったんですよね。不思議ですよね。ありがたいですけども。

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忘れた頃にバズるWEB、ヤバい

(宇多丸)いま、そういう意味ではWEB的な受け手のスピードとかって、やっぱりかつての紙媒体中心だった時の諸々とは違うっていうのが漫画の面でもそうですかね?

(東村アキコ)もう先が全然読めないですね。読めないし、なにが正解でなにが不正解かもわかんないし。たぶん、私じゃない若い漫画家さんの一作とかで十分ホームグラウンドのみんなが言っている割合とかもクルッとひっくり返っちゃうんじゃないかなって思ってます。

(宇多丸)ああ、一発なにかが出れば、日本の状況も。

(東村アキコ)作品で変わったりもするんじゃないかなって思っていますね。

(宇多丸)なるほど。で、ですね、本題に行く前にまず東村さん、掟ポルシェさんとお友達っていう?

(東村アキコ)昔からすごい友達で。うちにアシスタントに来たこともありますよ。お金がない時に。

(宇垣美里)アハハハハハハッ!

(宇多丸)これ、すごいですよね。掟さんのバイト歴の中でもそんなのが……。

(東村アキコ)そう、来ました、来ました。真面目にやっていましたよ。

(宇多丸)ああ、そうですか(笑)。まあ、あの人は真面目ですからね。で、ひょっとしてその流れなんですかね? なんか僕のやっていたイベントなんかにも……。

(東村アキコ)なんか若い時、行ってた。14年ぐらい前ですかね? なんか渋谷の地下の薄暗いところで……。

(宇多丸)三宿WEBですかね。きっと。

(東村アキコ)アイドルの音楽をガンガン流すクラブイベントをやっていた時、よく行っていました。

(宇多丸)それはたぶん三宿WEBでやっていた申し訳ないとっていう……。

(東村アキコ)そう。申し訳ないと。行ってました。

(宇多丸)ありがとうございます。じゃあ、たぶん私がDJをやっている時に。

(東村アキコ)もうなんか不良のたまり場っていうかね。なんか怖かったです。当時私、オタクだったんで。

(宇多丸)でもたぶんその時は僕もルックスが、いまはこんな帽子かぶって、多少はソフトに見えるようにしていますけども。本当にスキンヘッド、サングラスで上下が革で。

(東村アキコ)怖かったっす。

(宇多丸)で、当時は赤ワインのボトルをこうやって持ってラッパ飲みしながらこうやっている勢いだったんで。

(東村アキコ)私は「ああ、ライムスターの人やな」ってわかってますよ。「クマのPVの人やな」って。

(宇多丸)クマ!?

(東村アキコ)クマのアニメのPV、あったでしょ? 最初、ライムスター。

(宇多丸)クマのアニメのPV?

(東村アキコ)クマちゃんのCGの。間違いない。間違いない。私、テレビで見てたから。「あのグループの人や!」って思って。

(宇多丸)自分がいま、首ひねってます。「あれ? そうだっけ?」って。なんかと混ざってません?(笑)。

(東村アキコ)クマちゃんが3匹、CGで……PVあったでしょ? もし間違っていたら私の夢です。

(宇多丸)認識していただいていた。ああ、それは恐縮でございます。

(宇垣美里)(スタッフから聞いて)「『MASTERMIND』ですかね」って。

(東村アキコ)そうそうそう!

(宇多丸)ああ、それは相方です。Mummy-DとZEEBRAっていうラッパーがやっている、別のスピンオフ的な。

(東村アキコ)仲良しグループでやったみたいな? ああ、あれがすごい好きだったんですよ。

(宇多丸)たしかに。『MASTERMIND』はいい曲ですね。ありがとうございます。

クマちゃんのPV『MASTERMIND』

(宇垣美里)フフフ(笑)。

(宇多丸)ということで、狼藉とかを働いてなければよかったんですけどね。さあ、そんなこんなで本題に行きましょう。そんな東村アキコさんですが……。

(宇垣美里)そうなんです。先週の水曜日に最新コミックス『偽装不倫』の1巻が文藝春秋社より発売されました。内容といたしましては婚活に疲れた30歳の鐘子は癒しを求めて韓国へ一人旅に向かう中、飛行機の中で運命的に偶然出会ったイケメンの韓国人青年に「人妻」と偽って自己紹介したことから事態はこじで、あれよあれよ……というようなラブコメディーとなっています。今作は東村アキコさん初のフルカラー長編コミックということなんですけれども、なぜフルカラーかと申しますと、この作品が連載されていたのがWEB 漫画サービスXOY。現在はXOYがLINEマンガに統合されたため、LINEマンガでもともとフルカラーで連載されているからということなんですね。

(東村アキコ)ややこしくてごめんね(笑)。

(宇垣美里)いえいえ。XOYの時から見てました。

(宇多丸)僕もXOYで拝読しました。で、このLINEマンガもXOYも、要はスマホで読むために特化した……要するにコマの流れとかも縦にスクロールしていくという、スマホに特化したコミックで通称これでが「ウェブトゥーン(WEBTOON)」と呼ばれております。そこで今夜は東村さんにウェブトゥーンについてお話をうかがうというのがメインテーマです。主に前半は東村さんにウェブトゥーンに……だっていまね、第一線を走られていて、すでに成功をされているのに、あえてそのウェブトゥーンに挑戦した理由。そして後半は紙のマンガとウェブトゥーン、描いてみてわかったその違い、そして今後、わんないですけどどうなっていくのかな? なんていうお話を……。

(宇垣美里)未来なんかをね。

(宇多丸)というお話をうかがっていこうと思います。

(宇垣美里)それではさっそく前半です。東村アキコはなぜウェブトゥーンに挑戦したのか?

(宇多丸)ということで、改めてウェブトゥーンとは何か?っていうところから……。

(東村アキコ)あのね、もう私が今日、日本におけるウェブトゥーンの定義を私がいま、このラジオに出て。このテーブルの上でいま、決めます!(キッパリ)。

(宇多丸)フハハハハハハッ! 強いですね!

(宇垣美里)ありがとうございます!

(東村アキコ)曖昧なんですよ、日本では、いま。曖昧だけど、いま決めちゃいます。「縦スクロール、フルカラーのWEB連載している漫画」。もういま、宣言します。

縦スクロール、フルカラー、WEB連載

(宇多丸)WEBで連載されていて、縦スクロール、フルカラー。逆に言うと、これの定義から1個でも外れていたらウェブトゥーンとは言わない?

(東村アキコ)まあ、白黒でやりたいっていう作家さんもいると思うけどね。まあ、別に白黒でもいいけど、ちょっとは色をつけてっていう感じにしましょうか? まあ、だってね、もう画面なんだからカラーでもいいわけでしょ? 印刷代、インク代もかかんないわけだから。だったらカラーの方が読んでいるhと、いいでしょ?っていうところで。ちょっとぐらい色をつけようっていうのを推奨したいなって。

(宇多丸)昔は当然印刷代がかかるから、カラーとかは手間がかかったわけですけども。で、しかもその縦書きで……だからもともとある日本のページをめくって横書きの漫画の形式を電子書籍に置き換えたものは、今回話そうとしているウェブトゥーンとは違うということで?

(東村アキコ)そうですね。あれはスマホでも読めるように紙の漫画をスキャンしてデータ化しているっていうもので。ウェブトゥーンは最初からスマホとかパソコンで読むために意識的に描くというものなんで。紙は飛ばしてやっているという感じですね。

(宇垣美里)このウェブトゥーンの本場が韓国ということなんですけども、さらに私、見ていて思うのが、全然連載の回によって、週によって量が全然違うなっていう。

(東村アキコ)あれね、私がサボっているだけ。

(宇垣美里)アハハハハハッ!

(宇多丸)『偽装不倫』も回によって割とあっさり終わる時もね。

(東村アキコ)あれ、もう単純にサボりです。本当はもうちょっと長くないとダメなんです。本当はこれぐらいやってねって言われているんだけど。けど、なんかもう出し逃げっていうかね。「今回はこんなもんで!」っつってね。よくないですけど(笑)。

(宇多丸)ただ、紙の漫画週刊誌だったらちょっとそれはありえない感じですよね?

(東村アキコ)そうそう。だって紙だとさ、ページが決まっているわけだから。台割っていうのが決まっているから。もう1ページ減ろうものなら大事でね。代原(代理原稿)を用意してっていうことになりますけども。ウェブトゥーンだと「ちょっと少ないな」って思われても別に特に怒られもしないし。私もね、いろいろあるからさ。子供が風邪ひいたりとかあるから。いいでしょ?っていうところで。

(宇多丸)あとは回によっては本当に「このページ数、そんなにいらないよ」とか「もっとほしいよ」とか。当然中身によってもね。

(東村アキコ)ああ、そうそう。だからすごい長い時もあるんですよ。すごい短い時もあれば、「もういいところまで行っちゃおう!」とか思ってすごい長い時も……それはやっぱり私は描いていて楽ですよ。「ここで終われる」っていう。いままではページ数との戦いでしょう? 「○ページに収めなきゃ」とかね。「2ページ増やしてもいいですか?」って言っても、そんなのはダメなわけだから。だから私、ストレスはすごい減りましたけどね。

(宇多丸)中身に応じて長さを変えることができるというのも特徴だと。これ、いつごろ、どこで生まれ、流行っていったものなんですか?

(東村アキコ)韓国の若い漫画を描く子たちが自分の漫画を……まあ、どこの国でもそうだけど、発表し始めたんですよね。縦スクロールとかカラーで。で、それを「まとめてここでみんなで見せ合おうよ」っていう場所を作った会社があって。YLABっていう会社なんですけど。そこで主にウェブトゥーンって呼ばれ始めたんで。割と漫画におけるストリートっていうか。割と自然発生的に生まれて。誰か大人が仕掛けてこういうものを作ったとかじゃないんですよね。で、それが私、すごいいいなと思っているんですけど。

(宇多丸)はいはい。たしかに既存の出版社側だったら、やっぱり元にあるフォーマットに当てはめさせようとしそうですもんね。いかにも。でも、そうじゃないところがさっきおっしゃったような新しい漫画の形式みたいなものを。

(東村アキコ)そうですね。本当に、私から見ているとその韓国の若い漫画家さんたちが、友達同士で始めたことがいつの間にかこういう風にひとつのジャンルになっているっていう感じが見ていてします。

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