宇多丸 藤井隆『light showers』とCMまとめ動画のすごさを語る

宇多丸 藤井隆『light showers』とCMまとめ動画のすごさを語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

藤井隆さんがTBSラジオ『タマフル』にゲスト出演。宇多丸さんが藤井さんの新作アルバム『light showers』と、その90年代CM風のプロモーション動画を絶賛していました。

(宇多丸)今夜はDJではなくスペシャルライブ。来週、9月13日にニューアルバム『light showers』をリリースする、ふじ……。

(藤井隆)(遮って)藤井隆ですっ!

(宇多丸)ああっ! どうも、ありがとうございます。

(藤井隆)こんばんは。よろしくお願いします。

(宇多丸)さすがでございます。

(藤井隆)恐れ入ります。

(宇多丸)(笑)。ということで藤井さん、つい先日、KICK THE CAN CREWの『復活祭』でご一緒させていただきました。

(藤井隆)夢のようでした。ありがとうございました。

(宇多丸)舞台上でも『Quiet Dance』を一緒にやらせていただいて。お互いのアグレッシブな土下座合戦を。

(藤井隆)ある一部の方には好評なんですけども。

(宇多丸)そして、その後も打ち上げもずっと付き合っていただいて。

(藤井隆)楽しかったですね!

(宇多丸)楽しかったですね。ちなみにあの打ち上げにご一緒していただいた倖田來未さん。あれからものすごい勢いでメールのやり取りをしていまして。

(藤井隆)あ、僕だってそうですよ。

(宇多丸)たったいまも「岐阜に移動する車の中で聞いてます」みたいな。

(藤井隆)うわっ、すごい。ちょっと! くださいよ、僕にも。僕は次の日の朝、LINEをいただきましてね。「あの後、結局宇多丸さんと最後まで。5時まで」って言ったら、「うわー、元気関係!」っていう返信が来ました。

(宇多丸)さすがのくぅちゃん節でございます。

(藤井隆)さすがでした。いま、もうくぅちゃん、ちょっとアツいですよね。

(宇多丸)ねえ。我々の中でね、倖田姉妹。misonoさんも含めて。

(藤井隆)misonoちゃんもね。

(宇多丸)楽しかったですね。お会いして、楽しい夜をすごさせていただきましたが、そんな藤井さん、あの傑作アルバム『COFFEE BAR COWBOY』からおよそ2年ぶりとなるセカンドアルバム『light showers』。ついにリリースということでございます。

(藤井隆)ありがとうございます。もう宇多丸さんにお届けしたくて今日はお邪魔させていただいております。

(宇多丸)もう、わかりきっていたことではあるんですけど、改めて言わせてください。あんた、最高だよ!

(藤井隆)いやー(笑)。

わかりきっていたけど、最高だよ!

(宇多丸)あなたは、本当に音楽家として、ミュージシャンとしていますごいレベルですよ! 前もそうでしたけどね。『COFFEE BAR COWBOY』の時点でそうでしたけど。いや、すごいですよ!

(藤井隆)本当に、いまこの状況を……私、本当に何の文句を言わせてもらうつもりも全くないですけど。ずっと立ったままなんで、もう本当どうこの話を聞いていいのかわからないです。

(宇多丸)(笑)。これから歌うというあれで、立たせたままで申し訳ありませんけども。

(藤井隆)本当にいつもそんなもったいないお言葉をいただくんですけども、このスタジオで歌うという行為が本当に誰のアイデアの、どういうことなのかイマイチわかっていなくて。この価値を。

(宇多丸)いやいや、生で歌うとやっぱり届きますから。

(藤井隆)緊張しますよ。本当に、これ。

(宇多丸)そりゃそうです。この距離で僕がいるっていうのもまた。

(藤井隆)そうなんですよ。

(宇多丸)僕、あっち向いてますから。歌う時にね。

(藤井隆)いや、それはそれでなんか寂しいですよ。あの、寂しい関係?

(宇多丸)くぅちゃん節、ありがとうございます(笑)。あの、やっぱり俺、藤井さんは前から……もちろん、『ロミオ道行』の時からそうなんですけど、なにがすごいって毎回アルバムごとにコンセプトをガラッと、まるっきり変わってくるじゃないですか。で、今回はやっぱり『COFFEE BAR COWBOY』からさらに変わって、ちょっとバキバキの音像というか。テーマはずばり「90年代」だったんですよね。僕はやっぱり藤井さんと80’sナイトをご一緒した時に、藤井さんのかける曲が80年代後半から90年代頭の4つ打ちという感じだったんですよ。

(藤井隆)あの、僕が本当にうっかりね、「80年代だ」って言われているのに90何年にリリースしたやつ……92年とかのを持っていってかけたら宇多丸さんが……。

(宇多丸)80’s警察が(笑)。

(藤井隆)「おいおいおい、これは92年のリリースです。オリジナルは80何年ですけどリミックスはこれ、92年のはずです」「すいませんでした……」って。

(宇多丸)うるせえぞ!っていう(笑)。

(藤井隆)「すいません」っていう。いや、あれはありがたかったです。勉強になりました。

(宇多丸)でも、藤井さんのそのラインもお好きなところも。『COFFEE BAR COWBOY』が80’sだとしたら、今回は90’sっていうのがすごく。

(藤井隆)いちばん最初にプロデュースを冨田謙さんにお願いしようって決めたんですけども。で、引き受けていただいて、「どういうのにしましょう?」っていう話になった時に、結局僕がMDでダビングしたりとか、いろいろと音楽を……CDを好きなだけ買ったりとか、よくよく音楽を聞いていたのは90年代じゃないかなと思って。で、テレビのコマーシャルとかでも深夜にガンガン出稿量の多い音楽のCMがあったりとか。あと、CDをリリースしただけでもCMになったりとか。そういう、音楽をテレビで聞いたのがすごく大きかったなって思って。

(宇多丸)うんうん。

(藤井隆)で、90年代がすごく好きだっていうのをお話して。そこから、それをキーワードに「CMソングっぽいもの」とか、「サビが強い」とか。そういうのからスタートしたんですね。

(宇多丸)なるほど。そもそものコンセプトがそこだったんですね。

(藤井隆)だから別に90年代のシンセサイザーを使っていますとか、そういうことでも特になく……まあ、曲によっちゃあるんですけど。まあ、イメージとして。

(宇多丸)でもそれをまさに、そのさらに……もちろんアルバムもすごいんですけど、アルバムのサンプル版はいただいていたんだけど、武道館でブツをいただいたじゃないですか。で、最初の発売版のブツをいただいた時に僕はパッと見てですね、「ちょっと藤井さん! すごいじゃないですか、タイアップの数! なんなんすか、これ全曲タイアップついてるじゃないですか!」なんて驚いたら藤井さんがね、ニヤリとされて。「宇多丸さん、よく見てください。本当の企業、1個もないです」って。

(藤井隆)ニセのタイアップが10曲(笑)。

ニセのタイアップが10曲

(宇多丸)で、「ええっ! そ、そんなこと、許されるんですか?」っつったらね、「許されないです」って。

(藤井隆)はい。一応でも弊社の法務の人と話し合いを何度も重ねて、GOもいただきまして。でもね、昔、90年代のアルバムのジャケットの1/4ぐらいの大きさでタイアップのステッカー、貼っていたじゃないですか。

(宇多丸)ありましたね。うらやましい!

(藤井隆)これをやりたかったんです。だから本当に音楽を作るのはもちろんなんですけど、それ以前にいちばん最初にイメージしていたのはこれだったんですよ。

(宇多丸)このね、ガワのところから。

(藤井隆)はい。ガワの方からスタートしたというのも事実です。

(宇多丸)で、さらに僕はもう最初は迂闊にもこれを見て、「いやー、よくできてるな。各企業のロゴもそれらしくできていて……」って。でも、ロゴどころじゃなかったんですね。皆さん、これぜひいますぐご覧になれるので見てください。YouTubeで見れますが、このアルバムの要するに全曲のトレーラービデオ。『藤井隆 “light showers” CFまとめ』というものがあって。要するに全曲がパロディーというか……。

(藤井隆)ニセのCMです。

(宇多丸)ニセのCMで、そのタイアップソングとしてアルバムの曲が流れるという。で、その1個1個が、たとえばカメラのCMであったりとか通信カラオケ、目薬だったりとか、エステだったりとか。もう1個1個が「ああっ、あったあった!……と、思われる!」っていう感じ。あと、スキーのね、ビクトリア風のというか。

『藤井隆 “light showers” CFまとめ』

(藤井隆)ねえ。僕、高野寛さんになりたかったんです。

(宇多丸)(笑)。高野さん。そうかそうか。当時のね。その、まさにそういうのを1個1個。あと、架空の映画のね。

(藤井隆)『まばたき』という映画のね。

(宇多丸)しかも、恐ろしいことにその『まばたき』という映画の出てくるURL。公式ホームページのところに飛ぶと、本当にその映画の予告編が出てくる。公式サイトが現れる。あるいは……。

『まばたき』(架空映画)


http://mabataki-movie.com/

(藤井隆)それはでも、僕のアイデアではなくて。一緒にやってくれた高村さんっていうちょっとクレイジーな人のご意見で。「やってみます? これ、本当に誰かのぞいてくれるんですかね?」なんてところからスタートですよ。

(宇多丸)いや、本当に頭おかしいですよ。あと、そのエステの電話番号にかけると本当にそれがかかるとか。

(藤井隆)スマート・ワン(Smart One)。

(宇多丸)本当にね、おかしいですよ!

(藤井隆)でも、やっぱり僕は子供の頃にCMディレクターになりたかったので。今回10本撮っていい。監督できるってやっぱり夢のようでしたし。すごく燃えましたし。で、やりたいことは本当にできましたし。10本作ってから、なんか、要は編集の最後の締切日があったんですけど、その締切に頭とケツにフタをつけたくなりまして。

(宇多丸)ああ、あれね! 要するにCMがただ並んでいるだけじゃなくて、あたかも録画したかのような。

(藤井隆)提供クレジットを。

(宇多丸)当時のVHSとかに録画したものかのように、その手前の番組と、その後のニュースが始まるというくだり。

(藤井隆)それをどうしてもやりたくなって。締切日にお願いして。もう無理やり一生懸命……。

(宇多丸)あれを見て本当に藤井隆さんという人のトータルアーティスト性というか。もう現代アートですよ、完全にこれ。現代アートですし。

(藤井隆)もったいないお言葉を(笑)。そんなことを言う人、宇多丸さんだけですよ。

(宇多丸)僕とかコンバットRECというね、まあしょうもない……。

(藤井隆)RECさんね。それはでも、頭に浮かんでました。

(宇多丸)しょうもない男と昔――もう10年以上前ですよ――に、やっていたCMイベント(『TVの国からキラキラ』)があって。これですよ。これの……まさに俺たちの夢ですよ。「あの中に入りたい」って。入ったわけですからね。

(藤井隆)言いたかったセリフを言えました。「ジャンパー当たる!」って。言いたかったんですよね。

(宇多丸)(笑)。だからぜひ皆さんね、これを今日放送が終わった後にぜひYouTubeでチェックしていただきたいと思います。藤井隆という男の底知れぬアーティスト性。そして底知れぬクレイジネス。これをですね、思い知れ、お前ら!

(藤井隆)(笑)

(宇多丸)ちょっとね、実はこの間、お話を聞いてね。僕はちょっと怒っているんですよね。藤井隆さんのアーティスト性、僕はこの番組で繰り返し言ってきたのに、まだ世の中にはよくわかってない、ナメた態度を藤井さんに取りくさる……。

(藤井隆)いいんです、僕は。本当にお耳汚しな話をしてすいません。

(宇多丸)本当ですか? 取りくさる野郎がいると小耳に挟みまして。僕はもう本当に「殺す!」と。「この”殺す”は物理的にもだ!」っていう。

(藤井隆)それだけはもう阻止しますけども。でもほら、僕がこういう自分の音楽とかミュージックヒストリーを語っても誰が興味あんねん?って言われるじゃないですかー!

(宇多丸)(笑)。いま、ものすごい殺意がスタジオに充満してますけども。

(藤井隆)もう、そちらの台本通りにやったんですけど……って、言われるじゃないですかー。

(宇多丸)(笑)。藤井さん、顔! 顔!

(藤井隆)だから僕、赤坂好きなんですよね。

(宇多丸)ぜひ、だから今日のスタジオライブ、そして作品も当然、買って聞いていただいて。そしてYouTubeの映像を見て、藤井隆という男の真価、改めてみなさんに認識していただきたいと思います。ということで藤井さん、すいません。スタジオライブ、よろしくお願いします。

(藤井隆)がんばります!

藤井隆 スタジオライブ

(スタジオライブおわり)

(宇多丸)やったー!

(藤井隆)ありがとうございました。結果、楽しかったです。

(宇多丸)「結果」ってなんですか?

(藤井隆)いや、本当に緊張していたんで。

(宇多丸)緊張していた。ああ、ああ。途中ね、ご自分のCDのパッケージを持ってこられて、タイアップを確認しているのがよかったですね。

(藤井隆)企業さんですから。

(宇多丸)そうですね。いちばん間違えちゃいけないところですからね。リアームさん(腕時計ARBE)のね、あのCMなんかは堂島孝平さんも一瞬出られていたりとかして。

(藤井隆)そうなんですよ。ありがたかったです。他事務所さんなんですけど、本当のことを言うとその日の朝に、なんの内容もなかったんですけど電話をしちゃったんですよね。で、「今日、なにをしているんですか?」っていう話し合いをして。で、実はビデオのいちばん最後に撮ったのが『Dark Night(作詞・作曲:堂島孝平)』だったんですね。で、「今日、最後撮るんですよ」なんて言ったら陣中見舞いに来てくださって。

(宇多丸)ああ、なるほど。

(藤井隆)で、「ちょっとお願いします」なんて。ナイスガイですよね。本当にね。

(宇多丸)リアームのコマーシャルもいいですよね。「なにをやっているんだ?」っていう感じがね(笑)。

(藤井隆)あれね(笑)。だから本当はね、僕は自分が出るつもり、なかったんですよ。全く、1本も。でも、それは本当にダメだってすごい高村さんに言われて。

(宇多丸)まあ、やっぱりそれはそうですよ。

(藤井隆)でも納得行かなかったんですけどね。でもまあ、「じゃあ……」っつって。本当は歩道橋の上で男の子と女の子が……大卒の方が大学を卒業した時に記念に買う腕時計で。それをペアウォッチにしていただく腕時計のブランドなんですけど。若い男の子と女の子の追いかけ合いがしたかったんですけど。じゃあ、自分が出るってなって若い女の子も変なんで。なんか刑事と犯人なのか、上司と部下なのか。なんかわかんないですけど、ちょっと追いかけ合いをしている。

(宇多丸)で、手をバッと掴んで時計がバッてやるのがなんかね。で、ビルの屋上で。危ないな! みたいな感じがね。でも、そういうのも含めて素晴らしいんで。ぜひ。もう、最高です! これも含めて。やっぱり、あとCMの流れで聞くと、今回のこのアルバムのキャッチーさが際立って、それもすごいいいなと思いました。

(藤井隆)本当にうれしいです。がんばってよかったです。

(宇多丸)いや、もう最高の作品だと思いますので。そこも含めてみなさん、味わっていただきたいと思います。先ほど言いました『藤井隆 “light showers” CFまとめ』へのリンクは番組公式Twitterの方で紹介しておきますので、ぜひみなさんチェックしておいてください。本当にすごいんで、これは。特に出だしの数秒と終わりの数秒も絶対に飛ばさないで見てください。これももうポイントなんで。これこそまさにコンバットRECとやっていた世界なんで。

(藤井隆)(笑)

(宇多丸)そのビデオに録画してある感とかね、そういう感じですね。

(藤井隆)うれしいです。そんなに理解していただいて。

(宇多丸)最高です!

<書き起こしおわり>

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