モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で、Twitter社内にジャマル・カショギ氏をずっと監視し続けていたサウジアラビアの協力者について話していました。
(モーリー)どんどん新しい情報が入ってきているこちらの話題です。ニューヨーク・タイムズ、10月20日のツイート! 「Saudi Arabia silences dissent online by swarming critics like Jamal Khashoggi with trolls. It also appeared to groom a Twitter insider to spy.」。
Saudi Arabia silences dissent online by swarming critics like Jamal Khashoggi with trolls. It also appeared to groom a Twitter insider to spy. https://t.co/hJlooJJeZI
— The New York Times (@nytimes) 2018年10月21日
(プチ鹿島)ほう。
(モーリー)すごいっすよね? 「troll」という言葉。「Twitter」「insider」「spy」ですよ。ということで、日本語訳はこちらです! 「サウジ政府に批判的なジャマル・カショギの殺害はムハンマド皇太子と彼のアドバイザーが主導したものだと注目が集まっている。Twitterエンジニアの従業員を籠絡・懐柔しユーザーアカウントを監視させていたと思われる」っていう。
(プチ鹿島)ええーっ!
(モーリー)中の人!
(プチ鹿島)これはじゃあ、もう世界中っていうことですか?
(モーリー)特にジャマル・カショギ専用のモグラが1人、いたらしいです。で、この人の入社したタイミングは数年前なんですよ。で、アラブの春って2010年から11年にかけて起こったじゃないですか。その時、サウジ王室が民主化の波が起きてしまうと絶対王政のサウジっていうのは真っ先に倒れる立場にあるんで、それを必死で止めたんですね。細かいことを言うと、エジプトでクーデターが起きた時。民主的選挙の結果に不満を持った軍がクーデターを再度起こした時にもサウジマネーがいっぱい動いたとされている。つまり、民主主義を食い止め、つぶし、王政で安定するのが中東」とアメリカに納得させるっていう工作、宣伝を陰に陽にやつ続けてきた。そのタイミング、2013年、14年ごろにTwitterになぜか入社している人がいるんですよ。アリ・アルザバラさん。エンジニア。
(池澤あやか)ふーん! 入社時点でもう買収されていたんですか?
(モーリー)もしかしたら……いまはわからないのね。もともと善意でTwitterで求職を。求人欄から入っていいお仕事をしていたのが、途中から電話がかかってきて。「君、サウジの人間だろ? サウジの政府だけど、ちょっと仕事してみない? しなければ、家族はどうなるかわかるね?」みたいな風に、かわいそうな人だったのか……2013年にTwitterに入社したアリ・アルザバラさん。それとも、最初からグルーミングされてサウジの工作員としてシレーッと求人欄から応募したのかな? どっちなのかな? いずれにしろ……。
(プチ鹿島)いずれにしろ、中にいた。
(モーリー)彼はカショギさんのアカウントをジーッと偵察をして、なにかがあったらサウジ政府にそれを送っていたと思われる。
(プチ鹿島)マンツーマンでつけるっていうことですね。
(モーリー)そしてアメリカ政府はそれを自分の通信傍受で見つけちゃったんでTwitter社に連絡。「おたくにこのアルザバラさんっていうサウジ人がいるんだけど、あれ、サウジの情報機関に情報流していたの、知ってた?」っていうとTwitterが「えっ? 知りませんでした」と。それで彼を急に休職状態にして調べたんだけども、結果を公開しない。アルザバラさんは辞めました。それで辞めた後、アルザバラさんは再就職をしなければいけないんですね。サウジ政府に再就職しました。
(池澤あやか)あれっ!?
(モーリー)もともといたところに出向先から帰ってきたのかな? みたいな。で、殺されたタイミングなんですけども、カショギ記者がサウジの派遣した特殊部隊に殺されたという疑惑。なぜこのタイミングなのか? このTwitterで監視していたこと以外に、皇太子が直轄しているサイバー部隊がトロール・ファームっていう特別な建物の中からみんなで1日中、いろんなbotを動かして、カショギさんの個人攻撃をbotがしまくる。
(プチ鹿島)ほう。
カショギ氏を攻撃するbot軍団
(モーリー)そしてカショギさんは朝起きると、夜中ずーっと自分を攻撃するツイートが溜まっているのを見て、朝メンタルをやられるので。お友達が心配して繊細な彼に朝イチに起きる頃に電話をかけるんだって。「今日、大丈夫?」って。「大丈夫だよ、botだから」みたいに。でも彼は落ち込むんだって。「みんなに悪口を言われている……」って。わかんないから。ということで、彼を精神的に追い詰める専用botがいっぱいサウジの特殊機関で作られていたらしい。
(池澤あやか)まあでもbotは誰でも作れますからね。私でも作れますからね。
(モーリー)悪口bot。で、その悪口botをTwitterに通報しますよね? 「悪口を書かれています」って。そうすると、すぐに乗り換えるんだって。それでTwitter社はそれでなかなか察知できなかった。で、このタイミングなんですけど、実はそのbotのことを「ハエ」って呼んでいたんですよ。サウジに人格攻撃をされている人は「サウジがハエの群れを送ってきた」って。それでカショギさんはカナダにいるベンチャーに5000ドル相当を送金して、それを迎え撃つbot軍団……ハチの軍団っていうのを作ったらしいんですね!
(プチ鹿島)カショギさん個人で!?
(モーリー)ハエVSハチの戦いが起こって、そのタイミングで彼は暗殺をされているので。たぶん自分たちの作戦が相殺されることにサウジが焦った可能性があるのと、あとはワシントン・ポストのコラムニストをしていたので、その記事が普通はサウジの側で英語の記事を読めるのは一部のエリートじゃないですか。ところが、ワシントン・ポストはわざわざアラビア語翻訳版を出していたんです。つまり、サウジではTwitterは禁止していない。なぜなら、だってムハンマド皇太子が民主化を進めているから、「Twitterを禁止するなんて……あれは中国がやることだろ? うちは民主主義だよ」って言っているわけですよ。だからTwitterは禁止できないけど、そこにトロールが埋めていくわけ。ところが、アラビア語のワシントン・ポストの記事。翻訳版が載ると、サウジ王室への批判が載るわけですよ。
(プチ鹿島)まあ外からのね。
(モーリー)そして、今回のこれが見つかっちゃって、サウジ王室はさっき言いましたように「カタールとトルコの陰謀だ!」とか「石油を止めたらどうなるか、わかっているのか!」っていうような社説記事を流したり。
脅したり、すかしたり。でもそれが上手くいかなかった。結局、いまは皇太子がクロだって判定されかけている。そのタイミングでサウジがPR作戦を思いつきました。「そうだ! これをなんで思いつかなかったんだろう?」って。ということで、こういうことをやったんです。
Saudi Crown Prince Mohammed bin Salman meets slain journalist Jamal Khashoggi’s son, Salah.
Prince Mohammed has come under mounting pressure, with critics suspecting he ordered the high-profile operation or at least knew about it: https://t.co/bFSmSo709t pic.twitter.com/PfWgFujRCp
— Los Angeles Times (@latimes) 2018年10月23日
この方、殺されたカショギさんの息子です。息子に皇太子本人と王様が呼び寄せて面会して哀悼の意を表したの。「お父さんが亡くなって本当に悲しみを深く感じております」って。殺した本人、もしかしたら首をはねたさせた本人が。
(池澤あやか)ええっ! だからあんなに暗い顔をしているんですか?
(モーリー)暗い顔をしていますよ。でも彼はもともとお父さんにいろんな嫌疑がかかっていた段階で、すでに国外に出る許可を政府から剥奪されていたので、彼は人質なんですよ。
(プチ鹿島)だから国内にいるっていうこと?
(モーリー)国内にしかいられないんですよ。
(プチ鹿島)だから、招かれたら当然、ここには行かなくちゃいけない。
(モーリー)行かなくちゃいけない。そしてそれを実際にサウジのお抱えカメラマン。国営の人たちが撮っていて。動画もあるんですけど、ここらへんに防弾チョッキを着た治安部隊の人が彼をずっと睨んでいるんですよ。睨まれながら、「下手なこと、するなよ?」みたいに。それで恨みを心に持ち、悲しみにくれている人が父を殺害したと思われる人。そしてその父上に国王陛下と皇太子だからお辞儀をして悔しそうにして。握手まで求められている。この「握手をした」ということで、「はい、これでチャラね」って。この彼の家族にはサウジ王室からねぎらい金は行くから、いいじゃないの? お金がもらえたからってやったら、それを見て世界の人たちは「おぞましい……」と思い。
Son of murdered journalist Jamal Khashoggi meets Saudi Arabia's king and crown prince.
For more on this story, head here: https://t.co/CyJNZG6MFj pic.twitter.com/pp1EtiUOnZ
— Sky News (@SkyNews) 2018年10月23日
(プチ鹿島)そうですよね。
(モーリー)そしてたぶん、サウジの国内で家族を逮捕されたり尋問されたり拷問されたり殺されたりしている人、結構いるわけ。絶対王政だからね。怖い王政だから。するとその人たちの恨みがもう沸点に来るわけですよ。「この野郎!」って。
(プチ鹿島)「またこんなことをやっている」と。
(モーリー)またやっている。何も変わっていない。なのにアメリカはこんなサウジをずっと応援し続けて、武器を渡し、石油を買っている。こんな王室を支えているアメリカが悪いってなって、王室とアメリカに怒りが向かう。たまたま90年代にその怒りが沸騰して結成されたのがオサマ・ビン・ラディンのアルカイダだった……。
(プチ鹿島)うーん。
(モーリー)アルカイダ2.0! いま、皇太子ご自身がトリガーを引きました! といったところでございます。
(池澤あやか)でも日本だったら文春あたりがこの話題を……。
(モーリー)文春の首はもうはねられているから。
(池澤あやか)ああ、この国ではもう文春の首、はねられているんだ。
(モーリー)文春はむしろ被害者を非難する特集を組んでいますね。
(プチ鹿島)サウジの文春だったら……っていう。
(モーリー)ということでございます。なのでご覧のみなさん、これを1回よーく口の中でグルグル動かした後でゴックンしてみて。味わい深いから。以上でございました!
<書き起こしおわり>