モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で、カナダで中国IT企業ファーウェイの孟晩舟CFOが逮捕された件について話していました。
(モーリー)今日はイギリスの経済紙・ファイナンシャル・タイムズの12月9日のツイートから行きましょう。「China sees ‘serious consequences’ for Canada for Huawei episode」。
China sees ‘serious consequences’ for Canada for Huawei episode https://t.co/98GC8NN01B
— Financial Times (@FinancialTimes) 2018年12月9日
(モーリー)で、この「‘serious consequences’」っていうのは中国側の言い分なので中国の含みのある言い方にあえて「”」を……つまり、カギカッコで「『』」っていうのがあるよね? だからちょっと「中国がなにかをほのめかしているぞ」っていう意味があったりするわけだ。で、その下。「China summons Canadian ambassador for ‘very evil’ arrest of Meng Wanzhou」。ここも「’very evil’」って中国側がカナダ大使を招聘して「とても邪悪なおたくの所業」みたいな。そういう中国式の言い方が、ちょっと英語に直すと不自然でおもろいというので、そういう面白さもあったりします。
ちょっと日本語を見てみましょうか? 「中国はファーウェイの件で『重大な結果を招くぞ。いいのか?』とカナダを脅している」ということですね。『重大な結果』。つまり、中国側の言い分を日本語の訳しても、ちょっとおもろい言い方をしていますよね? で、「北京のカナダ大使に対して『孟晩舟氏の逮捕は非常に悪意のある逮捕である』と抗議した」という。この「’very evil’」は「非常に悪意のある」で正しい翻訳なんですけど、「evil」っていうのは「邪悪」とかそういう意味なんですよ。「悪行」みたいに非難口調でおもろかった。ということで、それがそのまま英語になっているということなんですね。
じゃあ、ちょっと背景を簡単に説明しましょう。ファーウェイのCFO(副会長兼最高財務責任者)。なんでさ、日本語になるとCFOがこんなに長いんだろうね? 日本語、なんとかした方がいいよ。
(プチ鹿島)もうこれを日本語にしちゃえばいいんですよ。CFOを(笑)。
(モーリー)その孟晩舟さん。その方が、アメリカがイラン制裁をしているじゃない? そこを迂回して、銀行を騙して自分の系列会社にイランに送金をさせるのを、「なんでもない送金です」って言ってやらせたということが罪だという風にアメリカの司法省が訴えたの。なんでか?っていうと、そういう国に送金をすることを国際社会は禁じているからなんですね。そして、このアメリカ当局の要請を受けて同盟国のカナダ当局が彼女をたしか空港で捕まえたのかな?
で、日本もそれにならって、政府がファーウェイともうひとつ、中国の有力IT企業であるZTEの製品を政府調達から事実上排除した。これはなんでか?っていうと、ファーウェイのいろんな機械の中にどうも中国政府がスパイをする抜け穴が作られているっていう疑惑があるんですよ。だから日本の政府とか防衛省とかの中で使っているルーターとか。それがファーウェイだったら、大事な情報がそのまま中国にパケットを飛ばされている可能性があるわけ。だからアメリカはダメって言っているし、日本もそれにならってダメだと言った。
まあ、そういうことはあるんですけど、これに対して在日中国大使館はこういう風に日本に脅しをかけたんです。「両国の経済協力のためにはならない。強烈な反対を表明する」みたいな。で、そんな中、大きな動きが2つ、ありました。孟さんが8億5000万円の保釈金で保釈されたのね。で、この件と前後する形で中国がまるで報復のようにカナダ人の元外交官をパッと捕まえたの。なぜだろう? それは一応名目としては、最近中国が作った法律で、すべてのNGOは中国で活動する時に政府に登録をしなければならない。手続きがあるのね。その手続きをしないと、もう活動していること自体が違法っていう法律を作ったの。
でも、それはザルの法律で、そんなことをやっていたらどんなNGOでも、いつでも捕まえられるんですよ。登録しているのは少数だから。だから、いつでも出せる札を出して「あっ、法律違反。捕まえた」。で、その人についての情報は出さない。「さあ、どうなっているでしょうね?」みたいに。そうすると、カナダ側もパニックになるわけじゃないですか。そうすると、そのタイミングでカナダも中国も緊張する。出てきたのがトランプ大統領。そのトランプさんのツイート。BBCが伝えました。「Meng Wanzhou: Trump could intervene in case of Huawei executive」。
カナダ・中国の緊張が高まる中、トランプ大統領登場
Meng Wanzhou: Trump could intervene in case of Huawei executive https://t.co/au62I9irFe
— BBC North America (@BBCNorthAmerica) 2018年12月12日
(モーリー)トランプ大統領はこのファーウェイの件に関して「俺、介入できますけど? 俺が丸く収めてやろうか?」みたいな。「どれどれ、カナダと中国が問題を起こしているようだね? じゃあ、私が仲裁してあげましょうか?」みたいな。でも、そもそもカナダはアメリカの要望を受けて、アメリカの司法省がカナダの司法省にあたる当局に言って捕まえさせて、これから強制送還でアメリカに送ってアメリカで裁判にかける。下手をするとこれ、30年以上ブチ込まれる可能性があるわけ。
(神田朝香)えっ、そうなんですか?
(モーリー)そうだよ。それぐらい重い罪なの。イランに……って。北朝鮮とかイランに送金しちゃダメだっていう話なんですよ。それをどうも平然とやっていたらしいっていう。僕は孟さんがやっていた、あるいは孟さんが見て見ぬふりをしてやらせていたっていう可能性はあると見ていると思っているんですけど、とりあえずそれに対しての量刑が重すぎる。そして、当然こんな捕まえ方をこんなタイミングでするのは中国側に対する揺さぶりなわけですよね。そうすると、中国ではたとえばじゃあ、アメリカ人を捕まえるんじゃなくてカナダ人を捕まえたんだよ。カナダが協力したから。それで「大人の話し合いなら俺が出てくるよ」っていうので。
で、ここで1個だけ、最後にポイントを言いたいんです。もし、トランプさんが独自に話し合って決めた場合、それは自分の国の司法長官の決定を大統領権限でオーバーライドし、つい最近までセッションズっていう司法長官がいたけど、あれを自分でクビにしているよね? で、新しい司法長官はクビにされたくないから、黙って萎縮するんですよ。っていうことは、司法の独立性がなくなるということなんですね。アメリカの民主主義が縮まる。加えて中国としては、「本当にトランプはアメリカの習近平なんだな」っていう学習をしてしまうから、親分同士の手打ちで今後は米中の緊張を解決しようとする。
そうすると、安倍総理大臣や河野外務大臣は非常に、緊張して水を飲む方ですよね? だったら、トランプさんに習近平はゴマをすって、横で安倍さんに「バーン! オラァ!」ってなるわけですよ。こういう力学が東アジアに働くことを私は懸念しております。以上でした。
<書き起こしおわり>