モーリー・ロバートソンさんとプチ鹿島さんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でシリアで行方不明になり、身柄を拘束されていた安田純平さんが解放された件についてトーク。3億円とも言われる身代金をカタールが支払った意味について話していました。
(プチ鹿島)いやー、どうもどうも。
(モーリー)いやいや、どうもどうも。
(プチ鹿島)モーリーさんね、ありがたいことに水曜日。最近大きなニュースが飛び込んでくるようになりました。
(モーリー)本当ですね。
(プチ鹿島)今日もまた、安田純平さん。解放ということで。
(モーリー)本当に解放されてよかったと思います。命をとりとめたということで。
(プチ鹿島)ひとつ聞いていいですか? 読売新聞の夕刊に「カタールが3億円ほどの身代金を出した」っていうんですけども。これ、どういうことですか?
解放へ「カタールが身代金3億円」…監視団体 : 読売新聞
https://t.co/bM1dZMO6c8— 満州中央銀行 (@kabutociti) 2018年10月24日
(モーリー)カタールにとってよほど都合のいい3億円だという見方も成り立つと思います。
(プチ鹿島)カタールがなんで都合がいいんですか?
(モーリー)サウジとの関係で……。
(プチ鹿島)ほう。ここでまたサウジが?
(モーリー)サウジにいま、カタールは禁輸措置を受けていて。ずっと締められており、国際社会は小さな国、カタールの声を1年以上に渡ってサウジとの関係を優先して聞いてこなかったんですね。
(プチ鹿島)世界はつながってますね!
(モーリー)そうなんです。ですから解放されたことはもちろん喜ばしいことなんですけども、そこで日本の外務省がどう尽力したかとか、いつ日本で第一声が聞けるのか?っていうことに興奮したり、あるいは「自己責任で行ったのにけしからん!」っていう声もすでにネット上ではあるわけですよ。要は安田さんをめぐってリベラルVS保守の代理戦争みたいなものがすでに、いつものように……。
(プチ鹿島)またいつものように。
(モーリー)始まるわけ。で、その興奮にこの番組をご覧の方は飛び込んでしまう前に、一歩引いてここに働いている力学、図式はなんなのか?っていうのを見つめるチャンスがあればいいなと。
(プチ鹿島)じゃあ、たとえばカタールは今回のサウジアラビアのあの事件、あったじゃないですか。あれがあったから動いた可能性もある?
(モーリー)サウジのメディアはとても焦っていて。サウジの英語版の国営メディアがずっと発信を続けているんですね。アル・アラビアとか。その中で当初、「(ジャーナリストを)殺害をしたのはカタールとトルコの陰謀だ!」って言い張っていたんですよ。
(プチ鹿島)ほう!
(モーリー)「えっ、私たちが人なんか殺すわけないじゃないか。これはカタールと組んだトルコがサウジを陥れるために仕組んだ広範囲な陰謀なんだ」っていう説をしばらく流していたの。それで逃げ切れなくなって。証拠とか音声証拠とかを出されて。で、とうとう内部で誰かがやったらしいっていう話にいま、切り替えているんですよ。そうすると、カタールからすると、チャンス!
(プチ鹿島)はー! トルコはトルコで昨日のエルドアン大統領の見事な狡猾な演説もあった。じゃあ、カタールはカタールで……っていう可能性もということですか?
(モーリー)いまからが本当のトルコと連携したカタールの陰謀が始まるんじゃないの?っていう風に見ております。ですから、当然人1人が死んだことをこの中東の地域ではどうしても人の命が安くなってしまうので。それに対して国が動くっていうのはみんな渋々動くわけですよ。そういう文化というか土壌の中で、カタールが手を上げて人道的に救出をしているわけですよね? しかも、「テロリストとは交渉しない。お金を払わない!」っていう西洋の一応暗黙の了解を押し切って、自らお金を大盤振る舞いしている。それには、どういう風に……もちろん、日本に外交上の恩を売ったりもしています。
(プチ鹿島)まあ絶対、それもありますよね。
(モーリー)それもあるんだけども、サウジがとても怖い、凶悪な側面を持った王国であるという印象が日に日に……サウジが言い逃れをすればするほど、これが浸透していくわけですね。
(プチ鹿島)もう可視化されちゃってね。
(モーリー)そしてこの裏で、カタールに本拠を置くアル・ジャジーラはせっせと、毎日サウジ皇太子の裏を暴く番組を流し、「サウジへの投資は考えものじゃないかな?」っていうような特集を組んだり。やられたら、やり返す!
(プチ鹿島)なるほどね! この番組もアル・ジャジーラで放送をされればいいですけどもね。
(モーリー)そうですね、はい(笑)。
(プチ鹿島)ということで、『水曜日のニュース・ロバートソン』、スタートでございます。
(中略)
(モーリー)あの、カタールはですね、実は大きな砂漠のあるサウジと陸路でつながっているんですね。そしてカタールに入る食料をはじめとした日用品はすべてサウジを経由するので、サウジがそこの元栓を止めてしまうと禁輸状態。兵糧攻めになってスーパーから商品がなくなってしまう。そして人々が困る。完全に依存をしているんです。
(プチ鹿島)うん。
サウジアラビアとカタールの対立・禁輸措置
(モーリー)ところが、カタールはしばらくはサウジと仲が良かったんですが、最近いろんな理由でサウジと仲違いをしたんですね。そして去年ぐらいにサウジの政府が「カタールはいろんなテロリストを支援している。そしてそのカタールの近くにあるイランとガス田を共同開発して、イラン寄りになっている!」って。イランはサウジの敵なんです。なので、「敵についているだろ!」っていうのでいきなり経済制裁を加えて、そこに周囲の、親分サウジに子分として追随している隣のアラブ首長国連邦(UAE)、そしてエジプトも同調して、みんなでカタールをいじめようキャンペーンをやったんです。
そして欧米の国々はその時、「これは中東の国同士のことだから……」ってあんまり入っていかなかったんですね。「サウジがいじめをやっている!」ってカタールは必死で訴えていたんだけど、みんなサウジは石油をいちばんくれるし、アメリカの仲間になってくれるからっていうんで、カタールを見捨てていたわけ。
(プチ鹿島)お金も出してくれるし。
(モーリー)そう。そして、今回カショギさんっていうサウジの事実上亡命状態にあった記者が、どうもサウジが送り込んだ人にトルコで殺されたという事件が明るみになるにつれて、サウジは政府が慌てちゃったんですね。そして最初は「いや、うちがやったんじゃなくて、カタールと(ジャーナリストが殺された場所のある)トルコ。この2つの政府が陰謀でサウジを陥れるためにやった計画なんだ」という、露骨な嘘を言ったんですよ。そしてその後、今度は領事館の外でカショギさんの婚約者の女性が待っていたんですね。その婚約者のための書類を取るため、呼ばれて総領事館に行って消えちゃったわけです。すると、ずっと待ちぼうけを食らった人が警察に電話をしたわけですよね。「出てこない」ということで。
そのトルコ人の婚約者のことを「実はこの人、テロとつながっている」っていうニュースをサウジ側が流し始めたんですよ。でも、この未来の夫を殺された人……その被害者の方が「実はテロとつながっている」って、サウジはあらゆる嘘キャンペーンを始めていたんですね。そしてそれに対して世界のニュースは「これは絶対に嘘!」みたいになっちゃったわけですよ。で、だんだんサウジの分が悪くなって、最後はアメリカのトランプ大統領もサウジがかばえなくなって、「たしかに向こうが殺したんだとやっぱり思うな」って話を変えてきたわけ。
そのタイミングをずーっと待っていたカタールが「ほーら、いままでサウジは周り中に迷惑をかけてきていて。うちらもサウジの被害者なんですけども。あっ、ちなみに日本人の人質、見つかりました!」って。
(池澤あやか)アハハハハハハッ! なるほど! ああ、最後のひと押しみたいな?
(モーリー)プラス、サウジがカタールに対して流している情報。「こういうテロリスト集団は全部カタールの金が入っているんだ!」って言っていたんですよ。カタールは「いや、サウジの金が入っているんだ」って言うんですよ。で、わかんないじゃないですか。わからないから、もしかすると両方とも本当の可能性があるわけ。カタールが実際に間接的に資金援助していたその団体に3億円で話をつけたのかもしれない。しかも、人質を解放して「よかったね!」って。でも、その3億円は実はテロ資金にもなっているのかも……。「身代金」という形を通して。
(プチ鹿島)だからこれって、今回のニュース、いろんな論点とか見方があると思うんですけど。サウジはいままでだったらそのやり方で押し通せたわけでしょう?
(モーリー)そして「裏にはイランがいる!」って言いさえすれば、欧米のメディアはみんな「イラン、怖い! 核武装している、北朝鮮とつながっている。怖い!」っていうんで。「イランが来たぞ!」っていうホイッスルを吹けばみんな、もうサウジの言うことにガチッとなってくれた。
(プチ鹿島)そういうひとつのセレモニーがあったんだけど、一方で僕ら全部可視化されて、そういうニュース。今度、そういう態度で出てくるかもしれないっていうのは全部読めるわけですよね。だからそういう意味で、デカい意味のアラブの春かな?って思うんですけどね。同じですよね。全部丸見えっていう。
(モーリー)そしてアラブの春をいちばん嫌っていたのはサウジだったんです。サウジのいまの皇太子は「私は民主化を進め、女性の運転も許しています。男性と女性が一緒に映画館に行くことも許しました」っていう。なんという大盤振る舞いな心優しい民主主義的な、女性にも優しい皇太子が裏では「ああ、そいつの首、はねといて」みたいな。で、そこを隠蔽しなくてはいけなくなったので「いやいや、これはカタールとトルコ。そしてその裏にはイランがいる!」っていうニュースを懸命に流していって。
(プチ鹿島)いままでだったらそれでOKだった。
(モーリー)で、カタールはそれをニヤニヤしてずっと待っていたんですよ。タイミングを。それでこのタイミングで「いまかな?」っていうことで。「あっ、安田さん、いたよ。3億円、払っておいたよ」って言っているわけです。
(池澤あやか)へー! 本当に払ったかも怪しいところではあるんですか?
(モーリー)いや、払ったとは思います。それは主張しているんで。
(プチ鹿島)でも、払ったとしても、ある意味日本には「貸し」と言ったらなんですけども。これからのまた経済のつながりができるわけですよね?
(モーリー)そして日本は3.11の地震・津波と原発事故の後、火力発電所をフルに稼働させなきゃいけなくなった際にカタールからいっぱい燃料を買っているんだよね。高い値段で、長い年数の縛りで。「お得意さまでもあり、使える駒でもある日本、最高!」ってカタールの人、思っているかもしれないよ。
(プチ鹿島)先週の時点ではトルコ、すごくしたたかだなって。それと、振り回されているかもしれないアメリカ、サウジって言っていたら、やっぱり当事者の話になってきましたよね。
(モーリー)そうですね。そしていまのいま、カタールは引き続きサウジに締められ続けているんですよ。イランと仲良くしたということに対するヤキを入れられているわけね。そうするとサウジはいい顔をしなくちゃいけないから、最悪「皇太子がやりました」って。国王だけは守って、皇太子は辞任。カタールへの禁輸措置をちょっと緩める。それでみんなで手打ち……ていうようなシナリオも浮かび上がってくるわけです。
(プチ鹿島)だからこれ、サウジの話にも続けて言うと、昨日トルコのエルドアン大統領が演説をすると。そこで注目されたのは、サウジの皇太子の名前を出すのか、出さないのか?
(モーリー)そしてその後ろに国王が指令したのかどうか、それも言うかどうかですよね。
(プチ鹿島)そしたらまあ、もちろんサウジを責めているんだけども、見事に皇太子の名前は言わなかった。それでサウジはちょっと一安心するところもあったわけでしょう? それで貸しを作って、これから長いことゆすられるかもしれない。
(モーリー)ゆすられる。それで、先週の続きをちょっと申しますと、トルコはそうやってサウジの被害者なわけですよ。いわば、自分の国の中にある領事館でトルコに滞在していたサウジ人が殺されたわけだから。だけど、あんまり言わないことによってトルコの通貨であるリラをサウジのお金で買い支えてもらうの。
(プチ鹿島)ああ、モーリーさんがいち早く言っていた。
(モーリー)そうすると、アメリカが別途トルコにヤキを入れるために経済制裁をして、トルコのリラが暴落していて、困っていたんですよ。トルコはほとんどの生活必需品、大事なものを輸入しているんで、買うと自国通貨が安いと輸入品の値段は上がりますよね。だからみんな困っていたから、そのタイミングでこっそりアメリカと手打ちしたんですよ。拉致していたアメリカ人牧師を「はい、帰すよ」って。
(プチ鹿島)三角トレードですね。
(モーリー)トルコもアメリカに人質解放って。
モーリー解説が地上波に「輸出」
(プチ鹿島)モーリーさん、これをいち早くスカパー!のこの番組で言って、なんかその後に地上波でも似たような解説が……。
(モーリー)そうですね。地上波でも似たような解説があちこちでなされていて。
(プチ鹿島)シェアされてますよ!(笑)。
(モーリー)そうですね。だからスカパー!で最初に出たネタがあっちこっち、地上波に輸出、引用されているということで。いいことじゃないでしょうか。
(プチ鹿島)で、モーリーさんはモーリーさんで地上波で今度は大麻を解禁するっていうね。
(モーリー)これまただんだん複雑になっていって、わけがわからないと思うんですけども。先週の金曜日に日テレの朝の『スッキリ』っていう番組。私はレギュラーなんですけども。辞めさせられることを覚悟でカナダが大麻を解禁したんですが、それについて比較的中立な、「大麻は絶対にダメ!」っていうのではない、どっちかというと中立の意見を解説したら、自分も結構ヤバいかな?っていうところまで言ったんですけど、終わった後に大拍手になって。
(池澤あやか)ああ、そうなんですね! たしかに地上波で結構、割と冒険されるタイプなんですね。
(プチ鹿島)地上波で大麻を解禁した男です!
(モーリー)フフフ、地上波で「大麻」という話題を解禁したのね(笑)。この番組から始まっていること、結構あるということで(笑)。
<書き起こしおわり>