(加藤浩次)へー! これはだから世界的に……大畑さん、いまのモーリーさんの説明を聞いて、どういう感想というか?
(大畑大介)いや、ただただやっぱり自分たちの育ってきた環境の中では「大麻=悪」じゃないですか。だからそのメリットとかデメリット以前の問題で、「悪いもの」というイメージしかないんですよね。だから今回、このようなカナダもそうだと思うんですけど、いろいろな国、地域で解禁しているところ、あるじゃないですか。解禁してから、それ以前とかと比べるとどうしても犯罪が増えるんじゃないかな?っていうイメージがあるんですけど。
(加藤浩次)あとは仕事への意欲がなくなるとかね。
(大畑大介)そのあたり、現状はどうなんですか?
(加藤浩次)そういうデータって……たとえばオランダのアムステルダムとかも解禁ですよね?
(モーリー)そうですね。あれは「非犯罪化」という形で解禁していて、形式上は非合法なんですけど微罪。罰金対象にしかならないということで、普通にそこらへんで個人所持をやっているとわかってもおまわりさんが捕まえに行かないんですね。
(加藤浩次)ああ、そういうことか。
(モーリー)そういう風にしてそれで観光収入源になったんですけども。オランダの観光収入は相当数が大麻観光で成り立っていると言えます。
(加藤浩次)さらにいま、大畑さんの言った「治安」という意味ではどうなの?
(モーリー)治安は、オランダの場合はどちらかと言うと、一部で強化された品種改良した闇大麻も横行しているんですね。いわゆる非犯罪化の範囲で買える大麻があるんだけども、「もっと強いのあるよ」っていう風に売っているカルテル系があるんですよ。こことのせめぎ合いが起きているので、あらたな段階に話が突入しています。だけどいまのところは治安は維持されていると思います。あと、アメリカとメキシコの国境沿いの州なんですけども、ここは麻薬のカルテルがメキシコはすごいですよね? いろんなものを持ってくるんですが、ここで解禁を進めると実は一部では劇的に凶悪犯罪が減っている。
(加藤浩次)へー! そういうデータがあるんですか?
(モーリー)カルテルの影響力が途端に弱くなるので、カルテル由来、麻薬密輸由来の暴力犯罪が一気に減る。なぜなら、市場がちっちゃくなっちゃったから。
(加藤浩次)はー! でも、どう? 犬山さんとかは?
(犬山紙子)いや、私もそうなんですけど、日本で大麻のことを語るにあたってのちゃんとした知識がそもそもない気がするんですね。私もなんとなくフワッと「いや、アルコールとかタバコよりはそんなに依存性はないよ」っていう話は聞いたことがある。で、いま話を見ていると、あらたなドラッグへの入り口にもなったりもする。だからそのへんの正しい知識がちゃんと日本人に行き届いてから「じゃあ、ありか? なしか?」っていうことを。まずその議論の段階にも私たちは立っていないのかなっていう印象ですね。私はお酒がすごく好きで、お酒を毎日飲んでいるんですけども。
(加藤浩次)だからお酒と同じような感覚っていうことですか? カナダの人にしてみたら。
(モーリー)たとえば個人使用の範囲がどれぐらいが適量か?っていうのをお酒と大麻で仮に、同じ地点でヨーイドン!ってスタートした時に、年々どれぐらい、たとえば肝臓に負担があるのかとかどういう障害が出てくるのかっていうのを、これからまさに臨床で研究できるようになるわけです。
(加藤浩次)ああ、そういうことか。
(モーリー)いまのところは経験値。闇でみんな普通に半分以上の人がまあ、なんとなく使っていて……っていう状態が延々ダラダラ40年以上続いているわけですよ。その中の経験値で、たとえば大麻を吸った後で銃の乱射をした事件とかはないわけですよね。
(加藤浩次)ああ、ないんですか?
(モーリー)日本だと「覚せい剤が切れて包丁を振り回す」って結構頻繁に報道されていますけども。まったくその薬効……薬物の効能が違いますので。大麻がたとえば依存症になるのかどうかもまだわからない。「精神依存」っていうことは仮説で出ているんですけども、「精神的な依存ってなに?」っていうことになって科学的にグレイゾーンなんですね。ところが、大麻が凶悪犯罪と結びつく。あるいは先ほど出たゲートウェイ理論のように大麻をやったから次は覚せい剤に行くのか? それは実は同じ暴力団が日本国内で大麻で若者を釣って、実はそれは海老で鯛を釣る目的。つまり若者をまず大麻で気を緩ませて、本当の依存性のある覚せい剤漬けにするっていう手口があるんです。
(加藤浩次)はい。
(モーリー)ところがもし、仮に……これは想像上ですけども、大麻が解禁されていたり、医療大麻がOKというような日本があったとしたら、暴力団は覚せい剤で若者を非常に釣りにくくなるんですよ。
(加藤浩次)入り口がなくなるから?
(モーリー)そう。入り口をふさぐというため、まさにゲートウェイを閉じることが大麻の解禁であるという考え方も成り立ちます。
(加藤浩次)モーリーさんね、いまモーリーさんの言葉で「ああ、なるほど!」って僕が思ったのは、やっぱりカナダが解禁したことによって何年間か……ここから1年、2年、3年とどこまで続くかわかりません。ずーっと続くのかもしれない。何年かでいろんなデータというものが出てくるということですね?
カナダでいちばん直近に懸念されていること
(モーリー)そうですね。ですからいちばん直近で懸念されていて、カナダの当局も繰り返し宣伝しているんが「運転する時には絶対に大麻をやらないでください」という。酩酊状態で運転した時、どうなるのか? これ、人によって全然個人差があるということが過去の実験ではわかっているんですけども。もし、交通事故が激増したら、途端に覆ることになると思います。
(加藤浩次)ああ、なるほどね!
(モーリー)でも、それを飲酒運転と同様に規制をして、節度を持ちましょうっていうことで。いわゆるこれからは合法的なユーザーにあたるカナダ人が節度を持って1年、2年とつないでいけば、「あれ? お酒よりも運転の事故が少ないんじゃない?」っていうデータが出ることもありうるわけですよ。それをいまから調べようという。
(加藤浩次)そういうことですね。ここからデータが出てくる。ただ、日本ではこれ、菊地(幸夫弁護士)先生。違法であります。でも、中には若者の中に「じゃあカナダ、行っちゃおうぜ!」みたいな人も出てくるかもしれない。そこに関してはいかがでしょうか?
(菊地幸夫)はい。日本には大麻取締法という法律があります。所持などが禁じられています。で、その大麻取締法は太平洋を超えてカナダまでその規制の手は及んでいるんです。ただ、処罰は日本国内です。向こうで処罰はできませんから。ですから、いまモーリーさんからも説明していただいたように、たとえば大麻ツアーなんていうのは、日本からというのはないと思いますけども。旅行に行かれた方、たとえば周辺国からカナダに大麻ツアーに行こう。これ、帰国後に処罰をされる可能性がありますから、気をつけてください。ダメですから。
(加藤浩次)帰ってきてから罰せられる可能性は全然あるということですね。
(菊地幸夫)ダメです。ネット上には「向こうに行っちゃえば合法だからOK!」みたいな記事もありますから。それは間違いですから。で、留学などで向こうに住んでおられる日本人もダメです。日本に帰ってきたら処罰される可能性がありますね。
(加藤浩次)これは旅行客と一緒ということですね。
(菊地幸夫)そしてカナダの方。向こうで吸っている分にはもちろんOKです。だけど、日本に来ると大麻取締法がありますので。だからましてや日本での所持なんていうのはダメですし。そのへんは注意を……特に旅行とかですね、注意していただきたいと思います。
(加藤浩次)ここはしっかり覚えておいた方がいいですね。旅行客、留学、駐在などでカナダに住んでいる人もこれは日本に帰ってきたら罰せられるよということですね。春菜、どう? これ。
(近藤春菜)モーリーさんのお話を聞く前までは映像もショッキングでしたし、これはちょっとマズいんじゃない?って思っていたんですよね。街中、国中でフラフラした人が現れて、怖いなと思っていたんですけど。たしかに飲酒運転とかもそうですけど、そういう風に規制したり……大麻についてちゃんと知識を持たないとこのお話は「ダメ!」とか言えないのかなっていう風に、モーリーさんのお話を聞いて思いました。
(加藤浩次)うん。実際にカナダというのは本当に治安のいい国ということで有名だから留学生も多いわけですよね。そこで解禁になるということは、いろんなことに派生してくる。ただ今後、日本とか各国に対する影響っていうのは大きくなってきますよね。
(モーリー)そうですね。これはやっぱり北米全体で言うと何百万単位で日本の人たちは行き来をしているわけですよね。毎年。そうすると、たとえばアメリカでお仕事とかで滞在をしている人は、普通にそこでみんながやっているもので、たとえば経験をされる方もいるかもしれません。そして日本に戻ってきて大したことないのに日本では覚せい剤と同じ扱いを受けていることに違和感を感じて、だんだんと大麻取締法やあとはマスコミがやっぱり大麻を悪魔のように報道する傾向が日本にはありますよね? そうすると「なんだ、嘘じゃん」っていう風に実体験、皮膚感覚、肌感覚で嘘だと思ってしまう日本人が増えてくることのリスクはあると思います。
(加藤浩次)ああ、そうか。
(モーリー)そうすると、法律そのものが「なんだ、嘘の法律じゃん。だったら別にいいや!」っていう風に法律への尊敬がなくなってしまう可能性がある。もうひとつ、カナダやアメリカがそもそもいろんな劇薬が蔓延したからそれを止めるために大麻を解禁したという側面があることを申しましたけども、実は中国の闇工場で大量の合成麻薬がいま、密造されているということは報道されています。
(加藤浩次)へー! それは毒性が強いものということですか?
(モーリー)毒性が強いものですね。名前を挙げていくとケタミンとかフェンタニルなど、いろんなものがあるんですけど。非常に毒性が強くて中毒性も強いんですが。これがどうも中国の工場で場合によっては地元の役人が共謀した形で闇経済ができあがっている。主に輸出している。そうすると、日本は中国の真横にある国なので、いずれ……これがいまはたぶんアメリカなどに向かうものが通過しているだけなんですけども。これが日本の若者などに蔓延するというリスクは想定しなければならないと思います。
(加藤浩次)うんうん。
(モーリー)そしてそれがやってきた時、中国の麻薬組織というのはたぶん日本の麻薬取締の人員よりもはるかに多くの人たちが持ち込んできますので、取締りが追いつかなくなると思います。その時に若者が急に中毒性の高い薬物に何の麻薬の知識もないまま、「えー、大麻もケタミンもフェンタニルもシャブも同じなんでしょ? どうせ非合法なんでしょ? じゃあ、どれでもいいよ!」ってやってしまって蔓延するっていうのがいちばん僕は避けたいパターンなんですね。ですから、特に若い人には薬物に関する基礎知識、リテラシー。これを持っていただきたいと思います。
(加藤浩次)そこは大事かもしれないですね。うん。まあ、ただ日本ではまだ違法ですから。これは絶対にやったらダメなことなんですけども。こういった国、カナダみたいに解禁する国が出てくることによっていろんなデータ……犯罪が増えるのか、事故が増えるのか、仕事の意欲がなくなって労働力が減るのか。そのへんのデータもしっかり出てくる。そして我々も大麻の知識をしっかり持たなきゃいけないということですね。
(モーリー)そうですね。そしていままではマスコミの側で萎縮した部分があったと思います。やっぱり大麻の「た」の字を言っただけでどこかの役所から電話がかかってくるんじゃないか?っていうことで。麻薬の議論そのものを避けている部分があった。ところが、大麻と覚せい剤が違うということは今日、議論に出ましたけども。そこからはじめて、なぜ先進国でこのような解禁の動きがあったのか? それを知るための基礎データです。そして最後はタバコ、アルコールと比較する医療の臨床データ。これをマスコミが広く広報していくことが大事だと思います。
(加藤浩次)わかりました。モーリーさん、どうもありがとうございました。
(モーリー)ありがとうございました。
<書き起こしおわり>