モーリー・ロバートソン サウジアラビア人記者殺害疑惑を語る

モーリー・ロバートソン サウジアラビア人記者殺害疑惑を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

(プチ鹿島)さあ、モーリーさん、さっそく続きと言いますか。

(モーリー)もうね、頭の中がサウジでいっぱいになっちゃうわけですよ。もうめちゃくちゃですよね? だってさ、ギコギコギコッて切断して、持って帰って。それをトルコが見て聞いていて。出入りするのはずっと監視していたわけじゃないですか。それで結局サウジに「どういう取引なら応じるのか?」って聞いたらサウジが黙ったから自分からリークをし始めた。で、これがやっぱりアメリカはサウジと強固な同盟を結んでいて、アメリカのもっとも大きな同盟っていうのはサウジアラビアとイスラエルが中東をを抑えてくれているわけですよね。

(プチ鹿島)はい。だからあんまり強く出ることができない?

(モーリー)出れない。で、結局結論に飛ぶと、いま三者で腹黒い取引が行われようとしている。

(プチ鹿島)アメリカ、サウジ、トルコ。

(モーリー)で、どういう三角トレードか?っていうと……。

(プチ鹿島)「三角トレード」! お互いに利益があるわけですね。

(モーリー)それぞれに基本、利益がある。で、損をするのは人権であるとか、尻尾切りされた人間も損しますけども。要はアメリカは10兆円以上の武器をサウジが購入してくれるスケジュールがあるんですよね。

(ハヤカワ五味)そうですよね。やり取りしていました。

アメリカ・サウジ・トルコの腹黒い三角トレード

(モーリー)でもここでサウジの王室がクロだった。こういう人道に反することをやっていたってなったら、議会も含めてみんなで非難決議をして、制裁をするしかない。そうすると10兆円がパアなんですよ。そうすると、トランプさん。中間選挙が間近に迫っている状態で防衛産業の人たちっていうのは工場で職を失うわけですよね。それだけは絶対にしたくないから。トランプさんは結構FOXニュースとかに出演して「この一件のせいでこれだけのアメリカの国益を損なうつもりは私にはない!」ってはっきりと言っているんですよ。人道よりもアメリカ人の雇用が大事。

(ハヤカワ五味)アメリカ・ファーストだと。

(モーリー)そう。だからアメリカはこの腹黒さに応じて一緒にもみ消してあげることで、サウジからお金がもらえる。トルコが何をもらえるのか? このタイミングでトルコはずーっと拘束していた福音派のアメリカ人牧師(アンドルー・ブランソン)をシレッと釈放したんです。

(プチ鹿島)ほー!

(ハヤカワ五味)シレッとですね(笑)。

(モーリー)シレッと、特に理由もなく。

(プチ鹿島)このタイミングで。

(モーリー)この騒ぎの真っ只中に釈放して。しかもそれに対してトランプさんがいつものフライングで「トルコのエルドアン大統領、ありがとう!」ってツイートしたんですよ。Twitterで言っちゃったの。

(ハヤカワ五味)フフフ(笑)。

(モーリー)そしたらトルコのエルドアン大統領もTwitterで答えて「私がやったんじゃないよ。うちの独立した中立の司法がやったんだ。私はなにもしていないから」って。自分は独裁者じゃない。フェアな民主主義だって言い切っちゃってるわけよ。独裁者のエルドアンが。で、まるでトルコが素晴らしい人道の国にも見えるし、同時に福音派の牧師が帰ってきたから福音派。これは有権者でいちばん熱い人たち。だから雇用は作る。福音派は喜ぶ。これは2つ、トランプさんが取ったわけですよ。

(ハヤカワ五味)いいですね(笑)。

(モーリー)そして、サウジはなにをやるのか? トランプさんとトルコが一緒につるんで自分のもみ消しをやると、自分がしくじったこの暗殺。これについては「末端の者がやった」という。実際には皇太子の側近がやっているんですよ。皇太子のボディーガードみたいな人がやっているっていう風にニューヨーク・タイムズはさっきからずっと報じている。だけど皇太子は「えっ、寝耳に水だな。どうして彼がそんなことを……」って。「知らなかった」っていう風に。

(プチ鹿島)で、まあメリットっていうとおかしいけど、うるさいやつを消したという。

(モーリー)うるさいやつは消えてくれるし、サウジの王室は面目躍如で。皇太子は相変わらず「いやいや、僕は女性の人権を大切にする人ですよ。そんなこと、信じられない」って。

(プチ鹿島)で、まあ実際にオープニングでも言いましたけど、あれは「尋問中に起きた事故だ」みたいに。

(モーリー)まあ、間違って生きたまま切断をしたっていう。「あれ? 死んだと思ったから切断したんだけど、あれ?」みたいな。

(プチ鹿島)でもモーリーさん、いままでだったらその三角トレードでおさまってきたかもしれないじゃないですか。でも、やっぱり僕らそういうニュースとか途中のプロセスを見ているじゃないですか。どこまでそれはとぼけ通すんですか?

(モーリー)露骨に……いまの三角形でもうひとつだけ言いますと、トルコはなにをやるのか? 本当はこれでメンツをつぶされているわけだから。だからサウジが今後、たぶんアメリカとトルコが喧嘩して暴落したトルコリラ。これを買い支えてくれる!

(プチ鹿島)はー!

(モーリー)そしてアメリカも、「ああ、牧師を返したんだ。じゃあ、トルコの鉄鋼への制裁関税、解除ね!」。みんな儲かるんですよ!

(プチ鹿島)じゃあ、安倍さんも「消費税あげるの止めます」ってそのうち言うかもしれないですね。

(モーリー)ねえ。上手くいってるからね(笑)。だからそれぐらい、こんなに露骨にやっちゃった時に誰が犠牲者? まずは言論の自由でがんばっていたその記者はもちろん暗殺されて帰ってこない。そして今度はそれを言われた通り、忠実に。たぶん皇太子さまから言われた通りに忠誠心を尽くしてチームでノコギリを持ってやったわけですよ。ところが、「お前ら、勝手にやったな?」ってなって。

(ハヤカワ五味)「聞いてないよ!」ってことですよね。

(モーリー)そう。そしてもし彼らが処刑されたり罰せられたりしたら、それはそれでサウジは体面を保てるかもしれないけど、その人たちは情報機関にいて相当にランクの高い人たちなんですよ。その親族や周りの人たち、王室に恨みを持ちますよね? で、将来のテロも含めた不穏な動きの種をいま、植えてしまっていることになる。それといちばん大きいには、サウジもトルコもアラブの春に代表される民主化は大嫌い。そしてトランプの前のオバマは一応、ぬるいけどアラブの民主化は歓迎していた。その前のブッシュ政権はネオコンって言うんですけど、中東のイランとかそういう国々が全部アメリカ式の民主主義になるように……たとえばイラク戦争もやったわけじゃん?

大義名分は「民主化」なわけですよ。ところが、いまや独裁があることが前提でものを考えている。取引でしかない。「アラブの人たちや中東の人たちの人権? 聞いたことないなー」みたいになっちゃっているんですよ。お金次第で親分同士が取り決めをする。こういう風に地図が書き換わってしまいました。

(プチ鹿島)えっ、でもこれ、そういうお芝居が続けられるんであれば、それこそまたアラブの春って起きるんじゃないですか? その可能性はない?

(モーリー)あの、もしアラブの春がもう1回起きたら、実はエジプトで1回、アラブの春で政権が転覆して。選挙の結果、ちょっとムスリム同胞団という過激な宗教イデオロギーを持つ人たちがなったのね。それはマズいっていうことで、軍がすぐにクーデターをやって、元に戻しちゃったんですよ。その時、その軍に思いっきり巨額のお金で支えていたのは……サウジ。アラブの春をいちばん嫌がっているのはサウジ。最初にチュニジアで大統領、独裁者が逃げた時にその人を賓客として迎えたのもサウジ。逃げ場所をいつも提供するのはサウジなんですよ。

(プチ鹿島)はいはい。

(モーリー)つまり、サウジは王室と独裁と安定。これでしか中東は治まらないと思っている。そしてサウジの宿敵はイラン。イランさえみんなで攻めればそれでよし。ということで、アメリカの外交が非常にねじれた形になっていて、サウジとの持ちつ持たれつみたいなのでだんだんとトランプ政権が人道に全く興味がない。それがアメリカ・ファーストっていうものだって。

(プチ鹿島)まあアメリカ・ファーストって言っていれば言っているほど、むしろ世界中に影響を与えてしまっているという。

(モーリー)そうです。だからたとえばそういう「サウジの人の命が別にアメリカの国益にかなわないからどうでもいい」っていうのは「日本人の拉致被害者……それ、アメリカの国益にどう関係するの? アメリカの雇用を何万人生んでくれるの? 拉致被害者が帰ってきたら」っていうことをシンゾー・アベ・プライムミニスターにですね、たぶんトランプさん、突きつけていると思うんですよ。

(ハヤカワ五味)それは同じことですもんね。

(モーリー)そうなんですよ。だから別に、「サウジのある新聞記者、ジャーナリストが殺されて悲しかったね。でも関係ない」じゃなくて、これは日本人に直接降りかかってくる話だという。これ、そういうオチをつけて見た方が興味深いとは思います。

<書き起こしおわり>

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