モーリー・ロバートソン ニュージーランド銃乱射事件を語る

モーリー・ロバートソン ニュージーランド銃乱射事件を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でニュージーランドのモスクで発生した銃乱射事件について話していました。

(モーリー)今日はCNNの公式Twitterからツイートをお届けします。どうぞ。

(モーリー)日本語の訳です。「ニュージーランド警察はテロの調査について最新情報を更新し、50人目の死者が出たと発表しました」と。しばらくは49人って言っていたんですね。「……さらに50人はケガをしています」ということなんですけども。この事件のあらましを説明しましょう。まず、3月15日にニュージーランドのクライストチャーチという非常におだやかな、銃犯罪も少ない街なんですけども。ニュージーランド全体も銃犯罪が少ない。そんなクライストチャーチのモスク2ヶ所で男が金曜礼拝の参加者たちに銃を乱射しました。このツイートでは50人目の死亡者が出たことを伝えているわけですね。

で、最初の発砲現場となったアルヌール・モスクでは42人。そこからおよそ5キロ離れたリンウッド・モスクでは8人が死亡。合計で50人が死亡しています。で、非常にニュージーランドは安全なイメージがあるんですけども。この事件はニュージーランド史上で最悪の銃乱射事件として、アーダーン首相は警戒レベルを最高まで引き上げたという風に発表をしています。そんな中、容疑者となる人はだいたいこういう時、銃乱射事件では最後に自分で自分を撃ったり、あるいは撃たれるまで待って、ある種自殺も込みで乱射する人が多いんですね。

ところが、今回はあえて捕まっているわけなんですね。で、容疑者とされる男はオーストラリア出身の28歳。若いです。彼は殺人容疑で訴追されて、裁判所に出廷しました。この期間は早かったです。そうすると、言葉を発することはなかったんですけども、あるジェスチャーをメディアに向けてやった。それが話題になっています。これです。

(モーリー)問題になるのはこれなんですけども。なんかちょっと不思議な手付きですね。「OK」みたいな手付きなんですけども。実はこれ、「ホワイトパワー(White Power)」を意味しているらしいんですよ。っていうのはこの指。「OK」の「K」の部分。これが「W」にも見えます。そしてこの○の部分と線を足すと「P」になる。だから「WP(White Power)」という暗号だという説が有力なんですね。

(プチ鹿島)うん。

(モーリー)で、ホワイトパワー。このOKマークが白人至上主義をなぜ意味するようになったのか?っていうのをちょっとネットでさかのぼって追跡すると、実はオルト・ライトと呼ばれる白人至上主義の人がいっぱいいる。トランプ応援団の人たちがアメリカのネットの中でリベラルの人たちが「トランプさんは白人至上主義なんじゃないか?」っていう疑惑で騒いでいたので、その人たちをいたぶるイタズラとして「OKというマークは実はホワイトパワーなんだ」というミームを広げよう運動があったんですよ。つまり、これをやったらリベラルが勘違いして騒いでくれるから。

(プチ鹿島)うんうん。「釣り」みたいな。

インターネットのミーム

(モーリー)誰が「OK」をやっていても、「それは実はホワイトパワーのジェスチャーなんじゃないか?」って疑わせるためにおとりとしてこれをミームで広げようっていうネタがあったんですね。で、それが今度は「8Chan」っていうアメリカの2ちゃんねる式の掲示板があるんですけども。なんでも書き込める掲示板。そこではこういうジェスチャーがネタとして扱われている。だから、容疑者の彼はそれを白人至上主義へのメッセージ兼ネタとしてやっている。で、他に「キュネル」という、やはりこれもネオナチに関するジョークや反ユダヤ的な風刺を言ってもいけないという風に欧米社会ではされているわけですよ。反ユダヤが違法になっているから。

そこで、「ハイル・ヒトラー」はやっちゃダメなんですよ。ところが、デュドネ(Dieudonné)というアフリカ系フランス人のコメディアン……どぎついお笑いで知られているお笑いの人なんですけども。彼は下向きのハイル・ヒトラー、「キュネル(Quenelle)」。こういうの。

(モーリー)これだと手が上に向いてないからハイル・ヒトラーじゃないけど、なんとなくヒトラーですよね? で、これをギャグとしてやったんですよ。「鉤十字とかやったらいけないから、俺はこれ行くわ!」って。そしたら彼、フランス中で全部公演中止になったのね。そうすると、スポーツ選手が「それはやりすぎだ!」っていうことで試合の最中にこのポーズをやって連帯を示したりっていう騒ぎが何年も前にあったんですよ。

(モーリー)ですから、なんていうのかな? 「白人至上主義っていうのはネタだよ。そのネタにあなたは反応するの?」っていう形を使っていろんなシンボルやミームを拡散しているんですよ。スレスレを狙っている。それに対するオマージュがここに見て取れるわけです。そして、容疑者の彼は74ページにも渡る犯行声明をインターネットの8Chanなどに投稿していたんですけども。今回の事件を起こすきっかけとしてヨーロッパを旅行していた2年前、世界の見方が変わったという。で、どうもボスニア・ヘルツェゴビナとかセルビアにも行っているんですね。で、そこの行った場所っていうのは民族浄化がユーゴ内戦中にあった場所でもあるんですよ。

そして彼が参考にしていたと思われるいろんな極右文献……ヨーロッパにイスラム系の難民や移民がどんどん入ってくる。そして彼らは出生率が高いので、もともとフランス人やオランダ人、ベルギー人などの白人たちが少子化傾向にある中、移民で来る人たちがどんどんと増える。シリアから来た人、100万人。この人たちが次世代までに子供を5、6人産み、さらにそれが5、6人とネズミ算的に人間が増えていく。これこそが白人に対して仕掛けられたスロー・ジェノサイドなんだという極端な短絡的な結論を出すような文献っていうのが陰謀論者の間で結構読まれているんですよ。そしてそれがまた8Chanで面白がられている。

容疑者の世界観

そこで、この容疑者の世界観っていうものはどうも白人たちが遺伝で淘汰される前に、私は宗教戦争を起こす。こうやって世界のどこか平和なところでムスリムに対して無差別テロを起こせば、世界の別の場所でムスリムの誰かが報復のテロをやってくれる。そうすると、また世界のどこかで終わりなき報復合戦、暴力の連鎖が起きていくという、それを期待するフシがこの容疑者にはあるわけですね。ですから、そこにはファナティシズム、白人至上主義に傾倒した一匹狼の狂信というものも見られます。

しかし、それよりも僕が危機感を持ったのは、ソーシャルメディアがいまの仕組みではAIを使ってもたぶんコントロールできない、こういうネタとしての差別ネタ。あるいは「反ユダヤを言っちゃいけない」ということに対する過敏すぎるコンプライアンスをいじるネタ。と、見せかけて、本当はユダヤ人や非白人、あるいはムスリムを淘汰してしまいたい人たちが自分のメッセージを「おいおい、ネタだよ。ジョークだよ」って言って。

(プチ鹿島)「シャレがわかってねえな」とか言いながら。

(モーリー)「これはシャレだよ」と言いながら、極端な発想を広める。そして100万人がそれを読んだ時、100万人に1人の一匹狼がそれを行動に起こすという、危険なサイクルが取り出されてるんじゃないかと思いました。

<書き起こしおわり>

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