モーリー・ロバートソン 2018年・日本のMetoo元年を語る

モーリー・ロバートソン 2018年・日本のMetoo元年を語る block.fm

モーリー・ロバートソンさんがblock.fm『Morley Robertson Show』の中で財務省福田事務次官のセクハラ問題などについてトーク。最近日本のテレビ番組等でセクハラ問題のご意見番になりつつあるモーリーさんが「日本のMetoo元年」という話をしていました。

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2017年 12/5号 [セクハラは#MeTooで滅ぶのか]

(モーリー・ロバートソン)どうですか、皆さん。ちょっともう春が深まって、そろそろ夏っぽくなってきた。でも東京は案外、ちょっと寒かったりします。色々な春の訪れとか春進行中ってのがあると思うんだけども、やっぱりこの日本列島セクハラ日和。どんどん連発して、セクシャルハラスメントにまつわる騒動が次から次へとメディアの中、そして政治の中で起きてますね。で、それについてなぜか、私は何かどんどんと総当たり的にいろんな視聴率が高い番組に出て、それについて一言、ちゃんと正論を言って回っているっていうことで。

去る日曜日に流れた『ワイドナショー』。それで元NHKの登坂アナが復帰するにあたって、過去のセクハラを振り返るということでも私は強めの意見を申しましたし。そして今日、木曜日ですね、日テレの朝『スッキリ』で財務省の福田次官でしたっけ? などと、テレ朝の不透明な対応についてもやっぱり、いろんな言っておかなきゃいけないだろうなっていうことを言ったんですよ。そしたらまあ、ネットを見る限りは概ね好評の反応いただいております。

つまり、ひとつわかったのは今年がたぶん日本の「Metoo」元年になるのではないかという、そういう印象を受けております。「Metoo」というのは、やっぱりその社会の中で女性の地位が低いことに由来して、その隙間にセクハラが起きる。つまりセクシャルハラスメントっていうのは、言葉でセクハラする場合もあるし本当に触っちゃう場合とかもあるんですけども、立場の強い男性が立場の弱い女性……例えば同じ会社の部下だったり、あるいは今回出てきている疑惑としては、権力の座にある財務官僚に対してテレビ局の女性記者がネタ、情報が欲しくて一対一で会食とかバーに行ったりしてる時に、そこで卑猥な言葉をぶつけられたのではないか。そして、それをまたあのテレビ局が記者クラブ体質で財務省との関係を悪化させたくないから、その女性記者に生贄になってもらおうとしてもみ消そうとしたんじゃないか疑惑とか。

こういうことが……そういう「権力が元々アンイコール、イコールじゃないから、その隙間にセクシャルなハラスメントが入ってくるんですよ」っていうことを繰り返し僕は言ってるんですね。で、これについて根源的な対応法っていうのは、やっぱり日本社会で一回女性の地位というもの下げ止まりにしてこなかったか? そしてそれは、「セクハラもね、男性の好意の内だし……」とか。まあ、いろんな逃げ方があるんですけれども。「セクハラをしたかもしれないけど、その人は元々いい人なんだ」論とか。あと、「そっちはどうなんだ」論。「Whataboutism」っていう逃げ方が最近、英語でよく話題になってるんですけども。

「そっちはどうなんだ」論で、セクハラの被害者である――だいたいは女性なんですけども――その人たちに対して「いや、でもあなたはその自分のセクシャリティーを使って、結局仕事を取っていた、情報を取って取材のツールにしていたんじゃないか」とか。ひどい場合には、もうこれは本当にセカンドハラスメントになるんですけども。被害を名乗り出た女性に対して、一般的によくネットであるのは、枕営業疑惑をかけるっていうことなんですよね。「そっちはどうなんだ」論の醜い形から、よりナイーブな形まで色々あるんだけれども、なかなか社会が「セクシャルハラスメントとパワハラが一体化している」というその現実と向き合いたくないってあるわけですよ。

セクハラとパワハラが一体化している現実

アメリカでもそれが長い間続いたんだけれども、なぜ「Metoo」ムーブメントが起こったかというと、アメリカの大物映画プロデューサーのハービー・ワインスタインが数十年に渡って若い女優たちを食い物にしていた。それに対して「いい加減にしろ!」ということで、ある勇気を持った女優が実名で告発したんですね。そうすると、ハービー・ワインスタインから被害を受けた人がどんどん……ユマ・サーマンから何からみんな、数十年分出てきて。

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そして、ハービー・ワインスタインはその後日談があまり日本では報じられていないんですけども。イスラエルの元モサド諜報部員がやっているダーティーなオペレーションの会社を雇って自分のイメージを挽回しようとして、自分を訴えようとしている女性たちに圧力をかけたり、ネガキャンを展開しようとしていたという。たしかブラックキューブという会社だったかな。で、その同じ会社が実はケンブリッジ・アナリティカという会社とつるんで、ナイジェリアの大統領選挙でもダーティーのオペレーションをしただのということで、だんだんとトランプさんのロシア疑惑にどっかで関連してくるような、そのサイバースペースの問題にもなってくるんですけども。

要はそういう、もうあらゆる方法でハービー・ワインスタインという人は自分が加害した相手、自分のセクハラの過去の被害者たちがどんどんと告発をしようとしたり、訴えを起こそうとしたり。あと、記事ですね。インタビュー記事で告発しようとしたりするのをもう、出来る限りの方法で握りつぶしていたという実態も指摘・報道されています。ですから、そういうハービー・ワインスタインの悪あがきがあったけど、彼はとうとう辞めざるをえず、今後刑事告発もされる可能性はあるんじゃないかな。そこらへん、ちょっとハービー・ワインスタインのその後は追っていないんですけども。元々ハービー・ワインスタインにまつわる事件、セクハラの連発っていうのが、実名で有名な女優たちが告発し、そしてそれで勇気を得た他の女優たちも続々と名乗りをあげたという。

そしてそれが、ツイッターやソーシャルメディアで連鎖をしてアメリカ中で、あるいは欧米中で、「自分たちは実は会社の中でセクシャルハラスメントを受けたけど、泣き寝入りをしてきた。もう泣き寝入りしません! 名前を出して戦います」と。中には、立場上名前は出せないけれども、やっぱり応援するという。そういう女性たちの機運が最近、大変上がったんですね。それがどうも日本では「Metoo」という形、ハッシュタグとしては火がつかなかったんですけども、先に韓国で政治家が目に余るセクハラをやっていた。そしてそれを実名で被害者が告発して、韓国の「Metoo」が先に激しく火がついた形になったように記憶しております。

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で、最近やっとある種、日本式の「Metoo」として、この一連の事件や報じられた騒動がですね、週刊誌報道がきっかけにはなっているんですけれども。そこが、自分から告白したアメリカの「Metoo」とは順番が違うんですけどね。それによって、特にメディア業界の中の女性たちは勇気を得ているんじゃないかと思います。もちろん今回、テレ朝の女性記者が、名前は出してないし、声もまだ現時点では出していないんですけれども、告発に踏み切った。自分の局内では握りつぶされそうになっていたそれを、週刊新潮に流したんですけども。それが、「自局の記者が他のメディアに情報をリークすることはテレ朝のコンプライアンス違反だ!」と。まるでそれによって懲罰を受けるべきだというような声も上がったんですけども、それはやっぱりセクハラの罪の方が大きいわけで。

そこにやっと、メディア業界の女性たちが声を出せる最初の足がかりが出来たような気がいたします。僕は個人的にはそれを応援していて。逆にね、反論ももちろんあるんですよ。「じゃあ今後、濡れ衣をかぶせて『私はセクハラ受けた』と女性の側で告発さえすれば、それを主張さえすれば、中身がうやむやになるから。それが嘘であったとしても、男性の側が何らかのけじめをつけて辞めなきゃいけなくなって。逆に『セクハラを受けたって言うけど、いいか?』っていうレバレッジで、女性が男性を脅迫する機会もあるじゃないか」。

サイクル自体を社会が見直さなければいけない

もちろんそういうハニートラップのような悪い心がけする人もいるかもしれませんし、逆に割り切って自分のお色気も差し出して、それによって競争相手である他の若いきれいな女性記者よりも先に出世する、階段を駆け上がる若い女性記者っていうのもいるかもしれないけれども、このサイクル自体を社会が見直さなければいけないっていうのが「Metoo」だと思うんですよね。そして、それには記者クラブ体質。そもそも官僚がメディアに情報を流すチャンネルが極めて限られているので。そこから別の形でリークや非公式な情報を得ようと思ったら、特に若い女性をテレビ局などが優先的にあてがって、気持ちよくなったオヤジの官僚たちがなにか、多少のハラスメントを酒のつまみにしながら情報を提供してくれる。このサイクル自体を断ち切った方がいいんじゃないか?っていうところを突きつけたら、なんか言ってよくなったんだよね。2018年の現在。

で、先週かな? 元NHKの登坂アナウンサーに対して僕は多少詰めていく発言をした。その中で、「どうしてフジテレビはちゃんと身体検査をしなかったんだ? ショーン・Kの時もしなかったけど、今回もしなかったよね?」っていうことをなじったら、「Metoo」やセクハラの問題よりも、出演者。元『ユアタイム』のモーリー・ロバートソンが自分にそのプラットフォームを与えてくれたフジテレビに出演しながらフジを強く批判し、そしてフジがそれをある種の器の大きさで自分たちへの批判も収録番組で削除せずに流したという。これ自体がニュースになったんですよ。

だから、「お前、いい神経しているな」と。で、記事の中には関係者――いつも匿名の関係者なんですけども――それが「こんなことを言い続けると、モーリーは消される危険性もあるんじゃないか」みたいな。もう、消してくれ!っていう感じですよ。2018年、平成30年ですよ。「Metoo」が来ている時に、その体質そのものを批判できないメディア。そんなメディアは続けられるの?っていうところを突きつけているわけね。そうすると、いつの間にかご意見番、学級委員、きちんと言っておくべきことを言う人という立場にモーリーさんがですね、バブルアップを日々していて。毎回毎回緊張と思い切りはたしかにあります。でもなんかね、黒っていうよりも白。そして人々の希望を与える、そんなヒーローになりつつあるモーリー・ロバートソンが今日は邪悪な音をお届けします。

<書き起こしおわり>

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