モーリー・ロバートソン 東京医科大・女子受験者問題と日本社会の性差別主義を語る

モーリー・ロバートソン 東京医科大・女子受験者問題と日本社会の性差別主義を語る AbemaTV

モーリー・ロバートソンさんがAbemaTV『けやきヒルズ』の中で東京医科大学が入試の際に女子受験者を一律減点し、入学者の男女比を調整していた問題についてトーク。

(徳永有美)いやー、これは本当にいろんな議論を巻き起こしていますけども。モーリーさん、海外の反応はどうなっていますか?

(モーリー)はい。さっそくこの騒動が起こっている真っ只中に日本語でフランス大使館がTwitterでこのようにツイートしました

(徳永有美)こちらです。

(モーリー)「フランスの大学医学部に占める女子学生の割合は、2000年の57,7%から2016年には64,1%に上昇しました。そして、2021年には医師のパリテ(男女同数)が実現されそうです」という。で、これは最後、エスプリの効いた皮肉だと思うんですけども。「皆さん、是非フランスに留学に来てください」。そしてさらにエスプリがあるのは「#一律減点 #東京医大 #医学部」って、目立つようにわざとやっている(笑)。

(徳永有美)フフフ、ちょっとかわいさすら感じますけども。

(モーリー)で、その下にデータがグラフとして細かく添付されています。

(徳永有美)そうですね。この主要学部の女子学生の割合が載っているんですけども。まずモーリーさん、このニュースはどのように受け止めてらっしゃいますか?

(モーリー)あの、もし裁量で「うちは男子を余計に取る」っていうことをあらかじめ宣言していたのであれば、その裁量に対する社会の批判はあるとは思うんですけども。そのルールをはっきりと透明にしておけば、女子学生が受験する時には「ああ、倍率かけられているんだ」っていうことで。それでも根性で受けるっていう人も出てくるとは思います。ですけど、それを隠してフェアであるべきはずの点数の部分で加点や減点をしていた。これはまあ、およそ不正行為になってしまいますね。はい。

(徳永有美)大前提として、やはり東京医科大学は不正行為を行ったということになるとは思うんですけども。でも、このフランス大使館の言葉もありますけど、結局なぜこのように日本の場合は女性が採用されにくいのか? なんでこのような現状になっているのか?っていうことを考えなきゃいけないですよね。

(モーリー)そうですね。これは医療の現場だけではなく、かつては女性を正社員にしない時の根拠として「出産をするから」「育児が大変だから」。もうひどい場合には――これは実際に私が18歳の時に会社のお偉いさんのオヤジさんから聞かされたお話なんですが――「女性は生理があるから、毎月PMSなどで不順になる。そして気分の上がり下がりもあるから、周りに迷惑がかかる。それは本人も辛いだろう?」って。

(徳永有美)それ、私たちも言われました。

(モーリー)えっ、言われた!?

(徳永有美)言われました。

(モーリー)俺はそれをね、ハーバードにその言われた通りを持っていったんですよ。そしてハーバードの1学期目にポロッとそれを同級生の女性に言ったら、食堂であるにもかかわらずみんなの前で怒鳴りつけられましたね。「バカーッ!」って言われて。そんな辱めを受けて鞭打たれて始めて意識が変わっていきました。だから私もその失敗を受け売りしたクチでございます。

(徳永有美)だから、そのいまの日本の労働環境の中で女性を増やせばいい問題なのか? これが女性差別ということで、女性を増やせば済む問題なのか?っていうと、やっぱりそこがまだ整っていないじゃないですか。

女性の労働環境を「あえて整えない」

(モーリー)そうですね。で、「整えない」っていうのは逆に言うと、男性が有利になる既得権を守るために「あえて整えない」っていう作為が感じられるんですよ。たとえばフランスなどはシングルマザーでもどんどん快適に社会保障が受けられて、育児とキャリアも両立して、いきいきとできる。そして日本と欧米がちょっと違うのは、欧米は移民を積極的に受け入れるのでたとえばヘルパーさんがやってきて育児を肩代わりしてくれてお母さんが働けたり。ところが、日本はそういうところにつながる移民というものもあるからマズいので、とにかく何も動かさない状態で女性に一方的にがんばってほしいということを「女性が輝く」という……そこに矛盾があるんですよ。

(徳永有美)そうなんですよね。

(モーリー)そういう中では、女性は子供を産みたくならないでしょう? 負荷をかけられていて。

(徳永有美)そうなんですよね。だから「差別」という言葉だけがクローズアップされちゃうとこういうことなんですけど、でも「平等」っていうことも考えないといけない。男女の平等でいうと、女性はやっぱり子供を産むこともありますけども……。

(モーリー)で、産んだ後、どうしてその子供を女性だけが育てるのか?っていう前提で、男性が育児に参加する。その他の家事も諸々を。

(徳永有美)そうですね。家事も含めて。

(モーリー)その諸々を少しずつ変えていって。それこそ、あえて使いたいんですけども「生産性」が社会全体で上がり、生産性という経済だけではなくてお互いに理解し合える、心が広い寛容な社会が生まれるんですよ。これが大事。

(徳永有美)本当。

(モーリー)で、それをなんかある意味、昭和のある時点で止まってフリーズ。固まってしまった……道徳観とすら言えるのかな? 男女の役割に対する固定観念。これをいまの2018年、若い女性に押し付けて将来の選択肢を制限するというのは一言でいうなら、英語で言いますけども「セクシズム(Sexism)」ですよ。まあ、「性差別主義」と言われても仕方ないと思います。

(徳永有美)だから現状はずっと日本の脈々としたそういう流れがある中、「差別はいけない」ということで男性と女性を一緒にしようとする。でも、そこで男女平等の限界というものも新たに突きつけられているような気もするんですが。

(モーリー)そうですね。構造の中に格差がある限り、それは構造の中に差別が「エンベッド(Embed)」ですね。中に内包されているので。それを変えるしか道はないと思います。

(徳永有美)そんな中、日本でも独自の取り組みをしている病院というのがあります。こちら、愛育病院なんですけども、出産後2年間は当直を免除されるということなですね。当直というのは主に夜間や休日、祝日の出勤となります。だから負担も大きいということなんですけども。そういうことが免除される。それから、不公平感を減らすために、この当直料を引き上げるということですね。それから院内に保育園を設置する。それから週3日から4日の時短勤務、週1日の在宅勤務制度というものを取り入れているということなんですけども。

(モーリー)はい。

(徳永有美)まあこのような形で出産ですとかいろんな事情から出られない女性に対しても守る制度がちゃんと整っているということですね。

(モーリー)そこらへん、ちょっと付け加えたいんですけども。実はニュージーランドの女性の首相。産休していました。その間、執務をやり続けました。そして、戻ってきました。

(徳永有美)やり続けたんですか!?

(モーリー)やり続けた。ほとんどやり続けた。でね、なんの途切れもなかったですよ。ですから「産休」というものが「途切れる」っていうその概念もニュージーランドの女性首相は突破してくださっています。

「産休」の概念を変えるニュージーランド女性首相

(徳永有美)見習いたいですね!

<書き起こしおわり>

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