モーリー・ロバートソン ニュージーランド女性首相の妊娠・出産を語る

モーリー・ロバートソン ニュージーランド女性首相の妊娠・出産を語る 文化放送

モーリー・ロバートソンさんが2018年1月30日の文化放送『The News Masters TOKYO』の中でニュージーランドの女性首相が妊娠を発表。そのまま公務を続けて、出産後6週間のみ公務を休職すると発表したニュースについて話していました。

(小尾渚沙)では、気になるテーマにフォーカス。去年の10月に就任したニュージーランドの女性首相、ジャシンダ・アーダーン首相はパートナーとの間に第一子を妊娠していることを明らかにしました。出産予定日は6月で、出産後6週間は公務を休職する予定です。

(タケ小山)ということで、一国の首相が出産で公務を休職するというのは滅多にない例ですが。これ、この問題が出るということはモーリーさん、今朝はジェンダー問題ということですか?

(モーリー・ロバートソン)そうですね。やっぱりグラミー賞で白いバラをつけたりとか、あれはセクハラとか「#metoo」じゃないですか。これはこの番組でいろいろお話させていただいていて。それがどうも、欧米というかニュージーランドを含めた西側世界では、その「(男女間の)待遇そのものの格差を完全にイコールにしよう」という方向性が感じられますね。一国の総理大臣にあたる首相が妊娠を公表し、公務を休まない。そして出産の前後で6週間産休をとって、また公務に復帰するということ自体がすごいなという。

(タケ小山)これね……。

(モーリー・ロバートソン)日本ではそういうことがいつ起きるんだろう? みたいな(笑)。何十年後でしょうか?(笑)。

(タケ小山)まあ、日本に女性初の首相がまず生まれなきゃいけないし。

(モーリー・ロバートソン)そうそうそう。しかも30代とかでね。(ニュージーランド・ジャシンダ・アーダーン首相は1980年生まれの37才)。

ジャシンダ・アーダーン首相

(タケ小山)プラス、30代とか、お子さんを身ごもれる年齢で首相になるというところまで行くと……。

(モーリー・ロバートソン)少子化の日本でそれをどう考えるの?っていう。すごすぎて別世界のようで。

(タケ小山)この話ってたぶん、日本で起きるとしたら何年後ぐらいなんですか? すぐ起きる可能性もあるんですかね?

(モーリー・ロバートソン)いやー、どうなんだろう? いままで総理大臣になった人でいちばん若い人って誰でしたっけ? 田中角栄とかかな? 50代?(※最年少は伊藤博文の44才。戦後の最年少は第一次安倍政権の安倍晋三の52才)。

(タケ小山)角栄さんも……。

(モーリー・ロバートソン)ぐらいかな? とにかく、だいたい首相というのは若くても50代後半だったり、還暦前後だったりっていうイメージなんですよ。男性で。そこで、女性の総理大臣で30代で。で、「妊娠しました!(Instagram)」みたいな、そういうのってちょっと想像できないですよね?

(タケ小山)できない、できない。

(モーリー・ロバートソン)いま、ギャルの人が20年後っていう感じ? とか、そういうイメージなんですけど。すごいなって思ったんですけども、どうもこれってどっちかっていうと企業にとっては福利厚生みたいな領域ですよね。それがどんどん究極にまで完全な五分五分に、男女で押し進められているという動きが。

(タケ小山)そうか。モーリーさん、そっちに行くんだな。

(モーリー・ロバートソン)だから、「#metoo」っていうのはセクハラ(への抗議)だったんだけど、そもそも「#metoo」の問題のひとつに、そういう強制する性的行為だけじゃなくて、上司が男性で部下が……たとえば、映画監督が女優に仕事を振るか振らないかを、恋人になることと引き換えに。そこで、「なんで男性だけが監督で女性が(キャスティングを)お願いする側なの?」っていう、構造への疑問が「#metoo」から横滑りした形で派生して。最後はこれ、「やっぱり賃金の問題じゃない?」っていう話になってきているんですよ。

(タケ小山)まあ、そうでしょうね。だって仕事を勝ち取りました。その次はなにが来るって言ったら、同じぐらい給料はほしいっていうね。

(モーリー・ロバートソン)そうですね。だから話がどんどん前に進んでくると、そもそも女性は歴史的にずっと専業主婦だったりお母さんだったりしたのが、20世紀に職場に進出して。それでいまは完全に待遇を同じにするということは、「出産も含めて人格を肯定しなさい」ということになって。そういう準備が社会にあるのかどうかが問われているわけですね。

(タケ小山)そういうことだ。

企業に男女同一賃金証明書取得を義務付けるアイスランド

(モーリー・ロバートソン)たとえば、最先端を行っているヨーロッパの北の端っこにあるアイスランド。そこでは、男女の賃金同一に証明義務が今年から発生しました。義務付けです。違反企業は罰金。1日5万6千円払わされるの。それが嫌だったら、同一賃金の証明書取得をしなさいということなんですよ。

(タケ小山)これは……企業の雇用主の方にしたら、大変だよね。

(モーリー・ロバートソン)ですよね。だから、アイスランドがなんでそれをできたのか?っていうと、もう長い時間をかけてジワジワといわゆる男女の生産性をイコールにして、もう子育ての段階から男女に格差がないように国ごとがんばってきた証でもあるんですよね。

(タケ小山)へー!

(モーリー・ロバートソン)ところが、いまそれをいきなり日本でやりましょう。明日からやりましょう!ってことになると、たぶん企業として躊躇してしまうでしょう。「企業の役員の数も男女でイコールにしろ」ってなったら、「ええーっ、でもこれって女性だけに下駄を履かせるの? 経験が浅い人を『女性だから』っていう理由だけで、そういうポストにつけるとリスクがあるじゃん!」ってことになるわけですよね。

(タケ小山)なる。

(モーリー・ロバートソン)だから、それは長期的にしかこういうことはできないわけよ。それで、日本の繁栄モデルの60年代、70代とかの半導体とか家電とか自動車で日本がどんどん押していった時代を見ると、女性たちはパートさんが多かったんですよね。専業主婦のお母さん。ということは、収入は旦那が主軸で自分は副収入でやっているから、ちょっと気楽にレイオフしても別にストライキとかそういう話にはならない。それはアメリカではできないけど、日本ではできるということで、グワーッと(日本が)安くできる。だから、食い込んじゃったわけよね。

(タケ小山)そういうことか。

(モーリー・ロバートソン)雇用調整が可能ということが。アメリカは雇用調整が自動車業界とかはだんだんできなくなっちゃっている時代に、日本はそういう家電とかでガガン!って行ったから、それがジャパン・アズ・ナンバーワンというあの時代を生んだんだと思うんですよ。でも、それを逆に言うと、そもそも「定年まで働きたい」っていう女性がほとんどいなかった。ということが、意識の違いがあったわけ。ところがいま、それから40年ぐらいたって、一生、生涯働きたい女性が男性と同じぐらい出てきちゃったらどうなるの?っていうことなんですよね。

(タケ小山)モーリーさん、でもそれ、なるかな?

(モーリー・ロバートソン)わかんない。これはね、意識の問題だよね。文化もあるしね。で、やっぱり専業主婦がいい。ある年齢までは働くけど、結婚や出産に際して子育てに専念するということを選択する人もいるし、そのために国も子育て支援とか働き方改革を日本目線でやってきたわけですよね。

(タケ小山)だから僕は思うんだけど、このニュージーランドの女性首相が首相になった時に、どこまでの……まあ、日本語で言うと「責任感」っていうことになっちゃうけど。普通だったら欧米だったらレスポンシビリティーって、普通にこの職を得るためには、ある程度のものは犠牲にしているというのはかならずあるじゃないですか。

(モーリー・ロバートソン)そうそう。だからその通年を、彼女は打ち破っちゃったわけよ。で、問題はこういうこと。次の段階。これでお子様が生まれました。6週間後に復帰する。いい政治をやった。そしたらみんな、開いた口がふさがらないというか。「ああ、ヤバい。パラダイムが壊された!」ってことになって。その事例になって、今度は政治家だの世界の国際企業でどんどんどんどん「産休付きで現役のままがんばってください!」っていう風土になっちゃうわけですよ。それが日本にも押し寄せた時、日本社会はそれをどう吸収するのか?

(タケ小山)そうか……。

世界的な流れを日本社会はどう吸収するのか?

(モーリー・ロバートソン)そうですよね(笑)。ちょっとお互いに走り去った背中が見えなくなるぐらい遠くなっちゃっているんですけど。結構これ、日本で働いている女性やガンガンやっている人、すごく多いわけ。だからこの人たちにも「いずれは……」っていうチョイスを迫っているのがいまの状況。ところが、「いずれ」ではなくて、「一生お願いします!」ってニュージーランドは言っているわけですよ。これ、どうなるんだろうね?っていう。

(タケ小山)モーリーさん、いつもこれ、難しい問題を投げて、そのまま投げ捨てていくから!

(モーリー・ロバートソン)アハハハハッ! みんなに考えるきっかけをね、与えたいだけで。

(タケ小山)でも、そういう時代が来るんだと。

(モーリー・ロバートソン)だからたとえばだよ、東京大学。「○年後に男女の入学者を同じ数にするために……」って。アファーマティブ・アクションってアメリカであったじゃないですか。いろんなマイノリティーに対して、その人たちに下駄を履かせてでもある一定の数値を人口比でやるっていう。ところが、男女の人口比ってたしかいま女性の方が多いんですよね? だったら「東大入学者を女性51人に対して男性は50人にする」っていうことになる? で、それをいま受験している人……(センター試験で)ムーミン谷で怒っている人たちがいるんですよ? その問題で3点上がったか下がったかって。でもその人たち、「いや、それは置いておいて、なんと言っても国公立大学は51%は女性にします」って言われた日には、「うわーっ!」ですよね(笑)。

(タケ小山)でも、いま話しをしている内容っていうのはそういうロジックだもんね。

(モーリー・ロバートソン)そうやってでも。それは一時的にはコストはあるじゃないですか。学力は低かったのに、女性だというだけで入る人がいて、その反面泣いている男性が出る。ところが、それを何年かかけて続けて、こういう投資によって社会が吸収してよくなっていくという、こういう考え方なんですよね。

(タケ小山)わかりました……。一旦曲に行きましょう。

(モーリー・ロバートソン)そうですね(笑)。落ち着きましょう(笑)。

<書き起こしおわり>

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