町山智浩 2018年アカデミー賞 直前予想を語る

町山智浩 2018年アカデミー賞 直前予想を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で目前に迫った2018年アカデミー賞の受賞作品や受賞者を予想していました。

(海保知里)今日は3月5日に発表されるアカデミー賞の直前予想をお願いします。

(町山智浩)はい。現地時間、アメリカでは3月4日の放送なのかな?

(海保知里)日本だと月曜日なんですよね。

(町山智浩)アカデミー賞があって、その授賞式の中継番組に僕が出るんで日本に来ているんですけど。これ、アメリカでやった方がいいような気がするじゃないですか。

(山里亮太)まあ、現場でね、そのまま。

(町山智浩)でも、現場だと入れないんですよ。いままで、僕はアカデミー賞で現場に行っていたんですけど、あれは会場の中はアカデミー会員しか入れないんですね。で、その裏に記者が入れるところがあるんですけども、そこはもう完全に質問とか全部コントロールされるから。ちゃんとした形では解説ができないんで、日本に来た方ができるんですよ。

(山里亮太)はー! より自由に「本当はこうなんです」って言いやすいという?

(町山智浩)そうなんです。だから、ずっと日本に来てやっているんですけど。今回、アカデミー賞はすごく日本でも盛り上がると思っているんです。っていうのは、いつもアカデミー賞ってあんまり日本では盛り上がらないんです。

(山里亮太)たしかに、ワイドショーとかでパッと取り上げられるぐらいですかね。

(町山智浩)っていうのは、作品賞とかにノミネートされるものがほとんど日本で公開されていない。だから、なんだかわからないっていう状態だったんですけど、今年はちょうど公開されるているで、結構盛り上がるという。で、今回本命と言われているのがギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』という映画なんですね。

作品賞の本命『シェイプ・オブ・ウォーター』

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(山里亮太)ええ。

(町山智浩)これ、12部門にノミネートされていて、作品賞は本命だろうと言われているんですけど、これは3月1日から日本公開ですから。

(山里亮太)いよいよ!

(町山智浩)だから見れるということで、いままでと全然違う感じですよ。

(山里亮太)そうか!

(町山智浩)で、対抗と言われているのが『スリー・ビルボード』。

(山里亮太)いま、ちょうど公開中ですね。

作品賞の対抗『スリー・ビルボード』

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(町山智浩)いま公開中。2月1日から公開しているから。だからみんな日本の人たちは見比べて「どっちだ!」っていう風に。「私はこっちの方がいいと思う」とか、そういう風にアカデミー賞を楽しめるので、すごくいい状況になっていますね。

(海保知里)だからこの週末、映画好きの方たちは大忙しという。「あの映画を見て、この映画を見て、それから……」ってなりますよね。

(山里亮太)1日には『ブラックパンサー』も始まりますもんね。

(町山智浩)『ブラックパンサー』も始まりますね。とにかく『シェイプ・オブ・ウォーター』と『スリー・ビルボード』は両方見てもらって判定してもらうといいと思うんですよね。

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(山里亮太)そうか。自分もアカデミー会員ではないけど、審査の1人として感じること、できますもんね。

(町山智浩)そうそう。いままでは他人事だったけど、今回はいろいろと楽しめると思います。で、ギレルモ・デル・トロ監督はこの間、日本に来てね。僕もいろいろと一緒にお付き合いしたんですけども。彼が今回、ものすごく気合いが入っているのは、アカデミー賞史上はじめての怪獣映画、怪人映画のアカデミー賞受賞になるかもしれないっていうのが特撮ファンとかにとっては歴史的な快挙なので。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)いままでどんなSF映画でも、アカデミー賞ってとったことがなかったんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)『2001年宇宙の旅』も作品賞にノミネートされていたんですけど、作品賞はとっていないんですね。やっぱりそういうSFっぽいもの、オタクっぽいもの、アニメっぽいもの、特撮っぽいものははっきり言ってアカデミー賞から排除されてきたんですよ。ずっと。ましてや怪獣とかね。でも今回ははじめてそれに対して大逆転の可能性があるという。

(海保知里)へー!

(町山智浩)ただ、作品賞は『スリー・ビルボード』がとる可能性がちょっとあるんですよ。

(山里亮太)『スリー・ビルボード』が対抗で。

(町山智浩)対抗で来ているんですけど。っていうのはまず、『シェイプ・オブ・ウォーター』っていうのは半魚人と女性の恋物語なんですけど、ちょっとバイオレンスがすごいんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)グチュグチュの、グチャッ!っていうシーンがあるんですね。グロテスクな感じで。それと、ちょっとエッチなところもあって。ちょっとアカデミー賞の会員はお年の方が多いので。60才以上の方がかなり多いので「うわっ!」って思う。しかも怪獣っていうので。『スリー・ビルボード』の方がいわゆる普通のドラマなので、作品賞では票を集めやすいかなっていうところがあって。まあ、難しいんですけどね。ただ、監督賞はたぶんギレルモ・デル・トロ監督は絶対にとると思います。

(山里亮太)おおーっ!

(町山智浩)絶対にとると思います。作品賞でどうなるか?っていうことで、みなさんに見ていただきたい。

(山里亮太)はー! どちらも見ておきたいですね。発表前に。

(町山智浩)で、今回、女優賞とか男優賞がものすごくガチガチで、逆転の可能性があんまりないんですよ。

(海保知里)ああ、そうなんですか?

(町山智浩)圧倒的に強い人たちが多くて。主演女優賞は『スリー・ビルボード』で怖い怖いお母さんの役をやったフランシス・マクドーマンドがまあとるだろうと。すごいんでね。とにかく、自分の娘を殺した犯人を見つけてほしいということで、暴れまわるんですよ。それがほとんどだから『アウトレイジ』な感じで。たけしさんのような感じですね。

主演女優賞 フランシス・マクドーマンド(『スリー・ビルボード』)

(海保知里)フフフ(笑)。

(山里亮太)ガンガンに暴力的な。

(町山智浩)ガンガンに、もう金的蹴りとかするんですけど、男にも女にも金的蹴りっていう。効くのかどうかわからないんですけど……(笑)。

(山里亮太)「金」が果たして……?

(町山智浩)なんでもいいや!っていう感じで暴れまわっているんで。まあ、彼女がとるでしょう。主演男優賞はゲイリー・オールドマン。この人はベテランなんですけども、『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』という映画でとるだろうと言われているんですよ。でもこれ、写真があるんですけど……。

(山里亮太)はい。手元にありますね。いま。

(町山智浩)もう全然違うんですよ。ウィンストン・チャーチルと。似ていないんですよ。

主演男優賞 ゲイリー・オールドマン(『ウィンストン・チャーチル』)

(山里亮太)似てないですけど……でも、これは仕上げた後なんですか?

(町山智浩)これは特殊メイクでウィンストン・チャーチルというイギリスのその頃の首相を演じているんですね。これ、ダンケルク撤退作戦というのがあって。

(山里亮太)この前、ちょうど映画でもやっていましたよね。

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(町山智浩)『ダンケルク』ってあれ、ダンケルク撤退作戦の兵隊たちの動きしか見せてないんですね。で、じゃあイギリスの政府の方はどう動いていたのか?っていうのを描くのがこの『ウィンストン・チャーチル』なんですよ。だから両方見ると、「ああ、現場ではこうなっていて、政治の場ではこうなっていたのか」っていうのがよくわかるんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、「兵士たちが何十万人もフランスのダンケルク海岸に追い詰められている。彼らを救うためにドイツ、ヒットラーと妥協をするのか? それとも妥協をせず、全員撤退させて戦争を続けるか?」っていう究極の選択を迫られるのがウィンストン・チャーチル首相なんですね。で、この映画は全く似ていないゲイリー・オールドマンを……ゲイリー・オールドマン、この人は顔が細長いじゃないですか。

(山里亮太)ちょうどいま、2枚並んで写真がありますけど、全く違う印象ですね。

(町山智浩)チャーチルっていうのは丸顔なんですよ。で、太っていて。だからこれを特殊メイクでチャーチルに変身させたのが日本の特殊メイクのアーティストなんですね。辻一弘さんっていう人で。この人はアカデミー賞にいままでも2回ノミネートされていて、今回が3回目なんですけども。これ、すごいのは2時間ある映画で、ウィンストン・チャーチルは最初から最後までずっと出ているんですよ。ほとんど1人芝居なんですよ。ほとんどクローズアップなんですよ。それなのに、特殊メイクが全然わからない。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)全くコンピューターグラフィックスを使っていないんですよ。だからこの映画自体を可能にするには、この辻さんの特殊メイク技術がなければこの映画自体は成立しなかったんですよ。

(海保知里)辻さんは希望されたんでしたっけ?

(町山智浩)「辻さんじゃないとできない」っていうことだったんです。

(山里亮太)ああ、向こうサイドが?

(町山智浩)そう。ゲイリー・オールドマンの方が。これはすごいですよ。特殊メイクショーなんですよ。2時間、これが特殊メイクだってことは君に見分けられるか? みたいな。ほとんど不可能に近いですよ。特殊メイクって人間の皮膚と皮膚じゃないところの差がわかるんですよ。伸び方とかで。シワのリアリティーとか毛穴の感じとかで。でも、全くわからないですから。

(海保知里)へー!

(山里亮太)辻さんっていう方は海外でそんなに、もともとすごい評価が?

(町山智浩)この人はね、もともと特殊メイクアーティスト界の神様と言われているディック・スミスという人がいまして。その人に師事していた人で。もう、王道なんですよ。いちばんの名人の弟子ということで。で、これがウィンストン・チャーチル役でゲイリー・オールドマンが主演男優賞をとって、それで辻さんが特殊メイク賞をとるだろうと言われています。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)あと、助演女優賞と男優賞なんですけど助演女優賞は前に紹介した『アイ、トーニャ』っていう映画のトーニャ・ハーディングを徹底的にしごくお母さんの役をやったアリソン・ジャネイさんがとるだろうと言われているんですけども。

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(海保知里)はい。

(町山智浩)これ、お母さん自体のビデオがこの映画の中に出てくるんですよ。そうすると、そっくりなんですよ。本当に。

助演女優賞 アリソン・ジャネイ(『アイ、トーニャ』)

(山里亮太)へー!

(町山智浩)ものすごくわかりやすくそっくりだから、この人っていう感じでこれはとるだろうと。で、『スリー・ビルボード』のサム・ロックウェルっていう俳優さんが暴力的で差別的な警官を演じてるんですけど、この人が助演男優賞を世界中の映画賞で全部とっていますから。

(山里・海保)へー!

助演男優賞 サム・ロックウェル(『スリー・ビルボード』)

(町山智浩)まあ、これはとるだろうと。で、最初はなんて嫌な、差別的なやつなんだろう!って思うと、実は人を差別したりいじめたりする人には、実はもうひとつ、自分が差別されるかもしれないという恐怖があるんだっていうことを多重的に描いていくんで、非常に深い話になっていますね。

(海保知里)なんか、最初と見終わった後でこの方の印象が変わりますものね。この警官役を見るとね。

(町山智浩)これもすごくよく、差別とか暴力っていうものがどこからわいてくるものなのか?っていうのがわかる、非常に素晴らしい演技でしたね。だからこれはとるだろうと。だから今回ね、もう絶対にとるだろうと思う人が全部とるんで。番狂わせがあんまりなさそうで。

(山里亮太)対抗はなさそうですか?

(町山智浩)対抗はね……結構今回はいないですね。もういま言った人たちがとるでしょうっていう感じなんですよ。で、脚本賞も『スリー・ビルボード』だし。脚本が圧倒的に面白かったんで。もう、どんでん返しが連続するような。で、脚色賞は『君の名前で僕を呼んで』だろうと。

(海保知里)はー。

脚色賞『君の名前で僕を呼んで』

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(町山智浩)これはやっぱり桃TENGAのシーンがですね……。

(山里亮太)桃TENGA?

(町山智浩)ちょっと桃をTENGAにしたりするんですけど。あと、これは主演男優賞がもしかしたら、この『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメが来るかもしれないと思うんですけど。彼、前にも言ったんですけど、本当に音楽もできて、あらゆる外国語をしゃべって。で、ゲイのセクシャルなシーンとか、あと好きな男のパンツをかぶってもだえたりとかですね。「そこまでやらなくていいのに……」っていうことまでやっているんで、もしかして主演男優賞はティモシーくんも来るかもしれないんですけど。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)まあ、ゲイリー・オールドマンにはちょっと……ゲイリー・オールドマンはこれ、全身特殊メイクでお風呂に入ったりするシーンもあったりしてすごいんですけど。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)そういう戦いなんですが、脚色賞は『君の名前で僕を呼んで』っていう話が、もともと非常に個人的な、原作者の若い頃に自分は同性愛を経験したかったんだけど、できなかったみたいな非常に複雑な話なんですけどね。で、それをひとつの映画の中に上手く盛り込んでいるジェームズ・アイボリーっていう巨匠の脚色の腕が評価されるだろうと思いますけどね。

(山里亮太)うーん。

(町山智浩)もう、すごいですよ。桃とかパンツかぶりとかですね。

(山里亮太)で、この映画の話をしている時に生まれたのが僕と町山さんのBLという。

(町山智浩)そうなんですよ。でも、やっぱりおかしいですよね。自分の名前で相手を呼びながらセックスするって。これ、どうなのかな?っていう。

(山里亮太)何度考えてもわからない?

(町山智浩)わかるんですよ。「ああ、こういうことなのかな」っていうことは分かるんですけど。映画を見るとわかります。

(山里亮太)僕らが勝手に置き換えてしゃべったからダメだったんですね。

(町山智浩)はい、そうなんですね(笑)。置き換えるものが悪かったというね。あと、長編アニメーション賞はこれは『リメンバー・ミー』というピクサーのアニメーション。

(海保知里)はい。

長編アニメーション賞『リメンバー・ミー』

(町山智浩)これはね、今回長編アニメーションの作品賞候補がちょっとよくないんですよ。

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(山里亮太)えっ? よくない?

(町山智浩)いままでね、アニメーションって長編とか短編とか全部そうなんですけど、アニメーションのプロの人に全部ノミネーションを選んでもらっていたんですよ。ところが今回、アカデミー会員全員に選ばせているんですよ。だから、みんなが知っている映画ばっかり入っちゃっているんですよ。長編アニメーション賞候補に。

(山里亮太)なるほど!

(町山智浩)だから『この世界の片隅に』が入っていないんですね。今回、作品賞候補に。いままでだったらたぶん入っていました。というのは、アニメーションのプロたちは世界中のアニメがライバルだから全部見ているんで、入るんですよ。アメリカで大規模で公開されていない作品も。

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(山里亮太)はいはい。

(町山智浩)ただ、今回はド素人の、アニメとか普段見ていない人たちも投票に参加しちゃっているんで、こういうマイナーな作品とかキャンペーンにお金をかけてしていないやつが入っていないんですよ。

(山里亮太)もったいない……。

(町山智浩)『ボス・ベイビー』っていうはっきり言って駄作が入っているんですよ。

(海保知里)えっ? あれが入っているんですか?

(町山智浩)そう。だからおかしいんですよ。

(山里亮太)ああ、赤ちゃんだけど中身がおじさんっていうやつ?

(町山智浩)そうそう。だからね、まあ次回からまた調整するかもしれないですけど、今回は『この世界の片隅に』が入っていないのは惜しいですね。

(山里亮太)これ、今回『この世界の片隅に』が入れなかったじゃないですか。じゃあ、次もう1回、来年度のアカデミー賞の時にって、そんなのは?

(町山智浩)それはないです。それはできないんですね。もったいないんですよ。まあ、そういうこともあります。しょうがないですね。アカデミー賞って実はしょっちゅうね、いろんなルールが変更されていっているんで。毎年毎年少しずつ違っているんで、まあそういう運の悪い時もありますね。

(山里亮太)運ですもんね。その中でやることになっちゃったっていうのは。名作なのにね。『この世界の片隅に』は。

(町山智浩)あとね、ちょこっと細かい映画の話をすると、外国語映画賞なんですけども。今年はこれも日本でもう公開中のチリ映画の『ナチュラルウーマン』っていう映画が行くだろうなと思うんですよ。

(海保知里)へー!

外国語映画賞『ナチュラルウーマン』

(町山智浩)これは、体は男性なんですけど心は女性の人がヒロインなんです。生物学的には男性ですけども。で、その一緒に住んでいた彼氏が亡くなってしまって。ところが、その彼氏が全部生活の面倒を見ていたので、住んでいた家も取られちゃうし。車も何もかも取られて。しかも、葬儀にも出席できないという、そのトランスジェンダーであるとかゲイであるとかいう人たちの結婚というものがいかに法律的に彼等の立場を守っているのか?っていうことがよくわかる作品なんですよ。

(山里亮太)ふーん!

(町山智浩)だから、日本なんかもすごくその立場を守ろうという方向に動いてますけども。地方自治体とか。それに反対している人たちもいるんですけど、なぜ、こういう同性婚であるとかパートナーシップにおける法的な権利の保護が必要か?っていうことが、『ナチュラルウーマン』を見るとすごくよくわかりますね。これ、いま公開中なんでぜひ見ていただきたいなと思いますけども。

(海保知里)はい。

(町山智浩)あとね、ドキュメンタリー部門はいま、日本でもNetflixで見えるんですけど。『イカロス』っていう映画があって。これが面白かった!

(山里亮太)ああっ!

ドキュメンタリー賞『イカロス』

(町山智浩)これね、ランス・アームストロングっていう自転車のプロの人がいたじゃないですか。で、あの人は世界中で自転車の大会で優勝をしたけども、ずーっとテストステロン(ステロイドホルモン)をドーピングしていて、それがバレたじゃないですか。でも、ずーっとテストステロンのテスト(検査)にはパスしていたんですよ。要するに、引っかからないような方法があるということを知った、自転車に乗っているアマチュアの自転車レーサーが、「じゃあ俺もドーピングしてみるぜ!」って、ロシアのドーピングのプロにたのんでドーピングをするっていう話なんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)ドーピングをして本当に世界選手権に彼は出場するんですよ。で、「ドーピングしたことがバレないというのはこういうシステムなんだ」っていうことを、この人は自分で試すんです。この人が自分で主演で監督なんです。この『イカロス』っていうドキュメンタリーの。

(山里亮太)面白い!

(町山智浩)で、途中から、ロシアのドーピング疑惑が問題化していくじゃないですか。オリンピックの方で。で、そのドーピングのプロ自体が実はそのドーピングに対して、「ドーピングをしていませんよ」というチェック機関に勤めていたやつなんです。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)インチキだったんです。だから彼は「これはいけない」っていうことがわかって、この『イカロス』っていう映画を通してそれを内部告発しようとしていたんですけど、それがオリンピック委員会の方で問題化されることで、関係者が謎の死をとげるんですよ。

(海保知里)ええーっ!

(町山智浩)で、今度はその監督が自分のために告発をしてくれようとしたそのロシアのドーピングのプロをアメリカになんとかして亡命させて脱出させようとするっていう話に後半はなってくるんです。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)ロシア政府に殺される前にということで。

(山里亮太)へー! 『イカロス』。

(町山智浩)すごい内容です。『イカロス』っていうのは太陽に挑んで落ちた英雄の話ですけど、自分にドーピングするということをイカロスにたとえているんですけど。これはいまNetflixでいま見れますけど、これがたぶんアカデミーの長編ドキュメンタリー賞だろうなと。だって自分で本当にバンバンドーピングしているんですよ。監督自身が。前に『スーパーサイズ・ミー』という映画でマクドナルドを1ヶ月食べ続けるというのがありましたけど、それのドーピング版ですね。この『イカロス』は。これはとるだろうなと。

(山里亮太)『イカロス』! これはもう見たい。

(海保知里)また週末、忙しくなる(笑)。

(町山智浩)アハハハハッ! 要するに、尿検査とかをするんですけど、尿検査をどうごまかしてきたか?っていうと、尿を取り替えちゃうというか、混ぜたりしちゃうんです。

(山里亮太)意外とシンプルな方法ですね。

(町山智浩)シンプルな方法で。それ、どうしてできたのか?っていうと、ドーピングの検査をする人が最初からドーピングをやっているからなんですよ。ロシアのドーピングの疑惑というのは本当に国ぐるみで、ソ連時代からずーっとやってきたことなんです。だからいままでのオリンピックの過去の記録とかも、非常に怪しいものになってくるということまで、全部描いていますね。

(山里亮太)へー! 危険な作品ですね!

(町山智浩)ものすごい危険な作品ですよ。ものすごい面白いですけどね!

(海保知里)本当に危ない作品ですね。

(町山智浩)まあ、これがとるだろうなと思いますけどね。まあ今回、アカデミー賞の中継はぜひ見ていただきたいのは、いまアメリカで大変な問題になっている「#metoo」やセクハラ疑惑。で、アカデミー賞をずっと仕切ってきたのはワインスタインっていう人で、その人はずーっと、もう20年ぐらいアカデミー賞を片っ端からとってきて。300もノミネートされていた男なんですよね。で、その人が糾弾されて消えて、今回はワインスタインがいないはじめてのアカデミー賞なので。当然、そのことは出てくるし。

町山智浩 ハーヴェイ・ワインスタイン セクハラ騒動の影響を語る
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(山里亮太)はい。

(町山智浩)それでジミー・キンメルという人が司会者なんですけども、ジミー・キンメルという人はトランプ大統領と徹底的に戦い続けているコメディアンなんですよ。毎週毎週、トランプのとんでもない失言をつついて遊んでいるコメディアンなんですけど。その話もあるし。それであと、アメリカではこの間の(フロリダ州の高校の)銃乱射事件に対して、高校生たちが立ち上がって。で、銃関係のところ、全米ライフル協会(NRA)からお金をもらっている議員たちを全部落選させろ! というところまで発展していますから。

(山里亮太)へー!

町山智浩 アメリカのお笑い芸人が政治的なネタを扱う理由を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でアメリカのお笑い芸人・コメディアンたちが積極的に政治的なネタを扱う理由について話していました。 (町山智浩)はい。町山です。よろしくお願いします。うちの近所のバークレーで今週末の27日に右翼大集...

(町山智浩)で、それに対して、全米ライフル協会といろいろと提携をしていたり、会員に対して割引とかをしているいろいろな企業が次々と、もうそれを止めると言っていまして。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)そうなんですよ。航空会社とかレンタカー会社がずーっと、全米ライフル協会に所属している人たちに割引をしていたんですけど、それをもう止めるって言っているんですよ。だからものすごい、いま国が動いている中でこのアカデミー賞が行われるんで。もう非常に政治的発言とかも多いとは思うんですけど、非常に面白いものになると思いますね。で、ギレルモ・デル・トロ監督自身はメキシコ人で、「メキシコ人を追い出せ!」っていうトランプの政策に対してはっきりと「NO!」と表明していますから。まあ、ものすごいスリリングなアカデミー賞授賞式になると思います。はい。宣伝しています!

(海保知里)フフフ(笑)。

(山里亮太)いやー、見たい! 結構みんなガンガン言いますもんね。そうか。いまの背景とか知っておくと、ジョークも伝わりやすいですもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。もうバンバンにジョークが出てくると思いますよ。一生懸命、いま考えていると思うんですけどね。ジミー・キンメルはね。

(海保知里)そうですよね。マット・デイモンと仲がよくてね。よくコントとかしていますよね。

(町山智浩)「仲が悪い」っていう。

(海保知里)っていう設定でやっているんですよね。

(町山智浩)だからジミー・キンメルがその時に付き合っていた彼女とマット・デイモンがエッチしているところをビデオに撮って、「お前の彼女を取ってやったぜ!」ってやったら、ジミー・キンメルが「復讐だ!」っつって、マット・デイモンの幼なじみのベン・アフレックとエッチしているところのビデオを流すという(笑)。


(山里亮太)フハハハハッ!

(海保知里)すごくないですか? あの番組、すごいですよね!

(町山智浩)だってジミー・キンメルの番組で「今日のゲストはマット・デイモンです」って言っていて、番組の最後までマット・デイモンに全然カメラが振られなくて。「あ、すいません。マット・デイモンは今日、ゲストで来ていたんですけど、今日は時間がないから彼は出られません」っつって。で、マット・デイモンが「おいおい!」っつったところで番組を切るとか。わざわざ呼んでやっていますからね(笑)。

(山里亮太)へー!

(海保知里)結構ね、海外の映像を探せば見れるんで。

(町山智浩)ジミー・キンメルのマット・デイモンいじりが今回もあるでしょうね。はい。

(海保知里)それもちょっと個人的には楽しみです。ということで、日本時間の3月5日。月曜日になるんですけど、町山さんにアカデミー賞の直前予想をしていただきました。あと、私はカードを前回……。

(町山智浩)そう! 間違えてね。

(海保知里)間違えたじゃないですか。(作品賞の受賞作品を間違えて発表した事件)。だから今回はもう、大丈夫か?っていう。

(町山智浩)作品賞のカードを間違えちゃって。あれ、だからそういうことがないように、会計事務所にわざわざ管理を任せていたのに間違えたっていう。まあ、あの間違えた人はクビになったようですけどね。

(山里亮太)そうでしょうね。

(町山智浩)だからあれで去年もやっていた司会者のジミー・キンメルが「これって俺のせいなの? 俺、やめた方がいいかな?」とか言っていたんですけど。彼は本当にそれでトラウマになったらしくて。ずっと1年間苦しんでいたというギャグもありますけどね。

(山里亮太)そしてその発表も間違えないかどうか……。

(町山智浩)そうそう。たぶんわざと間違えるとか、いろんなギャグを考えていると思います。

(山里亮太)ああーっ! 振りが違うもんね。

(海保知里)ということで、アカデミー賞授賞式、楽しみにしたいと思います。

<書き起こしおわり>

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