町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でマーベルコミックス原作でアメリカで大ヒット中の映画『デッドプール』を紹介していました。
(町山智浩)今日は『デッドプール』というタイトルの大ヒットしているアメリカ映画を紹介します。これですね、マーベルコミックスというスパイダーマンとかX-メンを出している漫画のシリーズのキャラクターなんですが。デッドプールと言うのは。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)日本ではね、『デップー』と呼ばれて漫画ファンから愛されているんですけども。これ、写真がありますよね?
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)この真っ赤なコスチュームを着ていて、背中に刀を2本、背負っていますけども。
(赤江珠緒)あ、これ刀だ。
(町山智浩)刀なんですよ。あと、二丁拳銃を持っていてですね。その二丁拳銃と、背中に背負った刀で敵をガンガン殺していく、赤い忍者のようなキャラクターがデッドプールなんですね。ただ、スーパーヒーローって呼ばれると、このデップーさん本人はですね、『たしかに「スーパー」だけど、俺、そんなにヒーローじゃないよ』って言うんですよ。
(赤江珠緒)ふーん。
(町山智浩)で、どうヒーローじゃないか?っていう話を今日はしたいんですけども。まず、このデッドプールの映画のメインテーマを聞いてください。ジュース・ニュートンの『夜明けの天使』です。
(赤江珠緒)美しい曲ですね。
(町山智浩)すごい爽やかな歌でしょ?これね、もう日曜日の朝みたいに爽やかで、キラキラした曲なんですけど。これが『デッドプール』でいちばんオープニングでかかるんですね。でも、画面に映っているのは強烈に血みどろでですね、下品で。もう『ゲスの極み』としか言い様がない映像なんですよ。
(赤江珠緒)ええーっ!?
(山里亮太)あ、なんか面白そう。もう、その時点で。
(町山智浩)だからもう、僕の大好物なんですけど。こういう映画は。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)で、あまりにもゲスいんで、アメリカではR指定で。18才未満は見ちゃいけない映画なんですよ。漫画が原作にもかかわらず。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)それで大ヒットしてるんですけど。で、この『デッドプール』がR指定になった理由が3つ、あるんですけど。ひとつはね、アクションが血みどろで残酷でバイオレントなんですよ。徹底的に。
(赤江珠緒)ええ。
血みどろバイオレンスアクション
(町山智浩)で、要するに刀を使うんで、敵の腕とか足とか首とかをバンバン切り落とすんですね。で、それだけじゃなくて、このデップー本人もゴリゴリ身体をいろいろ切断されちゃうんですよ。
(赤江珠緒)えっ?主人公が?
(町山智浩)そう。このね、デップーっていう主人公は改造手術で不死身になっているんですね。それで、腕とか足とかを切られても、トカゲの尻尾みたいに新しいのが生えてくるんですよ。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)だから容赦なくガンガン切ったりするんですね。で、それがすごくリアルにゴリゴリ切るんで、子供には見せられないっていうことになっているんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、まあそのへんで容赦ない映画なんですけど。そうそう。ちなみに『デッドプール(Deadpool)』っていうキャラクターの名前は何か?っていうと、これね、博打のことなんですよ。
(赤江珠緒)博打?
(町山智浩)これね、ギャンブルのことで、やっちゃいけないんですけど。要するに、『誰がいちばん先に死ぬか?ダービー』ってやつで。知り合いとか有名人のリストを作って、この中から、誰が先に死ぬか?っていう順位をつけていくっていう、オッズをつけていくっていう遊びがあるんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、その死にそう番付のことを『デッドプール』って言うんですね。
(赤江珠緒)ああ、そういう言葉があるんですね。へー!
(町山智浩)あるんですね。ネットを見ると、『Deadpool』でいっぱい出てきますよ。芸能人とか。要するに、誰がいちばん最初に死ぬか?ロックスターでとか、そういうのがあるんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、みんなでお金を賭けるんですよ。倍率をつけて。ものすごい不謹慎なんで、やっちゃいけませんよ。これね。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)もちろんやりませんよ、そんなの(笑)。
(町山智浩)だからこれ、『デッドプール』っていう名前で殺し屋である主人公が自分を呼んでいるのは、要するに『俺に目をつけられたらお前は死ぬぜ』っていう意味なんですけどね。だから、こういう博打はよくないんでね。真似しちゃいけないんですけど。まあ、いろいろありますよね。だから。有名人カップルの破局ダービーとかね。似たようなものではね。
(山里亮太)それはいいな。
(町山智浩)有名人逮捕ダービーとかね。誰が最初に逮捕されるか?とかね。そういうのは、やらないように。まあ、いいんですけど(笑)。
(山里亮太)そうです。やりませんよ。やらない例として出してますからね。いま。
(町山智浩)そう。やらない例ですからね。とにかく不謹慎な映画なんですよ。この『デッドプール』っていうのは。
(赤江珠緒)どうもそうですね。はい。
(町山智浩)でね、R指定になった2つ目の理由はね、エロ描写なんですよ。でね、大人なんですよ。この映画、すごくね。このデップーっていう主人公にはヴァネッサっていうすごい強くて美人の恋人がいるんですけど。エッチ描写がね、かなりモロですね。この映画は。
(山里亮太)ええーっ!?
(町山智浩)あの、ビーチクとかも見えますから。はい(笑)。でね、このヴァネッサっていう非常に素敵なヒロインのテーマソングがあるんで、ちょっと聞いてもらえますか。ニール・セダカの『カレンダーガール』です。
(赤江珠緒)ああー、はいはい。
(町山智浩)はい。この歌は昔のオールディーズのヒット曲なんですけど。この歌詞はね、『僕の彼女は1年中最高だよ』っていう歌詞なんですね。『クリスマスも最高だし、ハロウィンも最高だし』っていう歌詞なんですけど。で、このデップーの彼女のヴァネッサっていうのはすごくノリが良くてですね。1年間の年中行事にちなんだプレイをしてくれるんですよ。
(赤江珠緒)ほう(笑)。
(町山智浩)ハロウィンプレイとか、クリスマスプレイとかね。
(赤江珠緒)えっ?えっ?
(町山智浩)だからたとえば、先週、国際女性デーでしたよね。世界で男女平等の日だったんですけども。その日に、このデップーとヴァネッサがどんなエッチをするか?っていうシーンが出てきますけど。いろいろ想像するといいと思うんですね。映画を見る前にね(笑)。
(赤江珠緒)はー!なるほど。
(町山智浩)そう。あと、1年中いろんな日があるでしょ?それにちなんだエッチをするんで、『カレンダーガール』っていうようなことになっているんですよ。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)そう。だからほら、毎月23日はほら、『ふみ(文)の日』だとかなっているじゃないですか?
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)ねえ。そういう時は踏んでもらったりとか、そういう話ですけど。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)そっちの『踏み』なんですか?手紙じゃなくて?
(町山智浩)それでですね、R指定になった3つ目の理由っていうのはね、これ、言葉なんですね。日本だとちょっとあれなんですけど、アメリカだともう絶対に『F-U-C-K』って言葉が映画に2回以上出てきたら、これ全部R指定になっちゃうんですよ。
(赤江珠緒)そうなんですね。
(町山智浩)そう。厳しいんで。で、それがもう何十回も出てくるとんでもない映画なんですね。『マザーファッカー』とか、もうバンバン出てくるんですけど。で、しかもですね、このデップーっていう主人公はものすごくおしゃべりなんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、普通のおしゃべりじゃなくて、戦っている最中、戦闘中もずーっとジョークを言い続けているんですよ。『舌、噛むぞ』とか思うんですけど。
(赤江珠緒)戦闘中も?それ、珍しい。
(町山智浩)戦闘中もですよ。人をバンバン切ったり撃ったりしながら、ベラベラしゃべっているんですよ。ずっと。で、なんて言うかね、いまそっち、午後3時ですよね?
(赤江珠緒)はい、そうです。
(町山智浩)だからラジオなんでデップーのセリフの引用はちょっとね、自粛するんですが・・・(笑)。
(山里亮太)そんなこと、言うんですか?どんなこと!?
(町山智浩)深夜だったら言ってもいいんですけどね。そう言えば、関係ないけど深夜のTBSラジオの宇多丸くんの番組に出て、下ネタばっかり言ったらめちゃくちゃ、YouTubeとかで『下ネタうるさい!うるさい!』ってコメントしてるやつがいて。深夜のラジオで下ネタ言えなかったら、いつ言うんだよ?バカヤロー!と思いましたけど。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)まあ、それは置いておいてですね。いまは言いませんが、どういうジョークが出てくるか?っていうと、そのジョークそのものは問題がないから言いますよ。『ゴックン』『フィスト』『顔面騎乗』っていうこの3つのネタが出てきますが。はい。それ以上は言いませんが。
(山里亮太)(笑)
(赤江珠緒)単語で言う分にはね。なるほど。はい。
(町山智浩)単語で言う分には別に問題ないですね。はい。おしゃれなね、大人のジョークの映画ですけどね。はい。でね、ただこの『デッドプール』っていう映画は画期的でね。ものすごいのはこの下品でエッチで暴力的っていうことじゃないんですよね。ポイントは。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)『第四の壁を破る』っていうのをずーっとやる映画なんですよ。
(山里亮太)第四の壁?
第四の壁を破る映画
(町山智浩)『第四の壁』っていう演劇用語があるんですけど。ええとね、たとえばね、ディカプリオの映画で、僕も紹介した『ウルフ・オブ・ウォールストリート』っていう映画、ありましたね。
(赤江珠緒)ええ。
(町山智浩)あそこでディカプリオが赤いフェラーリを運転しながら観客の方を見てですね、『僕の乗っていたフェラーリは赤じゃなくて白だったよ』とか言うんですよ。
(赤江珠緒)ああー!
(町山智浩)観客の方を見る。まあ、具体的にはカメラの方を見てるんですけど。観客に話しかけることを『第四の壁を破る』って言うんですよ。
(山里亮太)『ハウス・オブ・カード』とかも。
(町山智浩)そう!『ハウス・オブ・カード』。その通り!『ハウス・オブ・カード』でね、主人公のケビン・スペイシーがね、『いまのシーン、見た?』とか言ったりするんですね。観客にね。
(赤江珠緒)急に観客に向かってね。
(町山智浩)そう。あと、『マネーショート』でもね、登場人物が突然観客に向かってね、『いまの場面は実際とは違うんだけど、わかりやすいように脚色したからね』とか言ったりするんですけど。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)それをね、『第四の壁を破る』っていうんですよ。っていうのはね、舞台で背景が第一の壁で、右と左側が第二・第三の壁っていう風に考えるんですね。で、第四の壁っていうのは客席側なんですよ。でも、そこには何もないものとして。要するに、観客はいないものとしてお芝居するんですね。普通ね。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)でも、これを時々破って観客に話しかけちゃうっていう、まあ演出方法があるんですね。これは結構昔からあって、歌舞伎とかもでありますし、シェイクスピアでもありますけど。突然、『ちょっと自己紹介させてもらいます』ってキャラクターが自己紹介したりね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)昔ね、『不良番長』っていう映画で、お客さんに『あ、みんな、どうしたの?来てくれてありがとう』とか言ったりするんですよ。梅宮辰夫さんが。
(赤江珠緒)(笑)。不良番長が。
(町山智浩)そういうことがあるんですけど。で、それをね、このデッドプールはずーっとやっているんですよ。
(山里亮太)ずっと?
(町山智浩)ずーっとなんですよ。戦って敵を倒した時、『ちょっといまの見た?かっこよかったでしょ?』とか言ったりするんですよ。
(赤江珠緒)へー!あ、面白い。
(町山智浩)めちゃくちゃなんですよ。それで、『話がちょっとわからなくなったよね?』とか言うんですね。『だからちょっと、順を追って最初から説明するとね・・・』とか言いながら、映画を巻き戻したりするんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、もっとひどいのは、カメラが要するに撮っているわけじゃないですか。そのデッドプールをね。映画の中にはカメラは存在しないんだけど、実際は現場では撮影しているわけですよね。カメラを。すると、デッドプールはそのカメラに触っちゃうんですよ。
(山里亮太)あ、へー。
(町山智浩)で、アングルを変えちゃうんですよ。無理やり。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)むちゃくちゃですよ。この映画。
(赤江珠緒)へー!『もっとこっち撮って!』みたいな?
(町山智浩)もうなんでもアリですね。この映画ね。でね、あとね、面白いのはカメラに触っちゃうっていうことは、これが映画なんだってことを中に出ている登場人物たちは知っているわけですよね。だから、『X-メンシリーズ』っていう別のアメコミの映画シリーズがあって。で、X-メンからお呼びがかかるっていうシーンがあるんですよ。デッドプールにね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、『X-メンのリーダーのプロフェッサーXに会いなさい』みたいなことを言われると、デッドプールが『マカヴォイとスチュワート、どっち?』って聞き返すんですね?で、それは映画版の『X-メン』でプロフェッサーXっていうキャラクターの若い頃を演じている俳優がジェームズ・マカヴォイっていう俳優で、歳をとってからのプロフェッサーXを演じている俳優がパトリック・スチュワートっていう俳優なんですよ。
(赤江珠緒)うんうんうん。
(町山智浩)だから、『どっちのXに会うの?』って聞くんですけど。デップーは。その俳優名を言っちゃうっていうのは、禁じ手じゃないですか。映画では、絶対。ねえ。だって、別のキャラクターをみんな演じているわけだから。そういうことを言っちゃうんですよ。この映画は。
(赤江珠緒)踏み込んだ映画ですね。たしかに。
(町山智浩)かなりめちゃくちゃなんですね。こういうこと、昔ね、日本ではね、TBSのテレビがよくやっていましたね。テレビドラマで。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)あの、久世さんが演出していた『ムー』とか、『寺内貫太郎一家』とかではもうやっちゃうんですよ。そういうことを。視聴者に向かって話しかけたりとか。で、樹木希林さんとかが俳優名を言っちゃったりっていうのをよくやっていて。あと、松田優作さんがやっていましたよ。結構、テレビドラマで。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)その役を演じている俳優さんの私的な問題とかをいきなりアドリブで言っちゃうんですよ。っていうようなことをやっていて、それをハリウッド映画でやっていて、大当たりしているんでね。大変なことになっていますけど。で、あまりにもこれが当たったもんだから、すごく心配している人もいるんですよ。
(赤江珠緒)ええ。
(町山智浩)同じマーベルコミックス原作で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っていう映画がありましたが。あれを監督したジェームズ・ガンっていう人がね、『「デッドプール」はたしかに面白いんだけど、これがヒットしたからって他のハリウッド映画がみんな真似したら困る』って言ってるんですよ。
(赤江珠緒)まあ、そうですよね。
(町山智浩)めちゃくちゃになっちゃうから(笑)。『これは「デッドプール」だけにしておいてね』みたいなことを言っていてね、おかしいんですけどね。はい。でね、このデッドプールを演じている人はね、ライアン・レイノルズっていう俳優さんなんですけど。この人、あんまりご存知ないでしょ?
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)この人ね、やっとヒット作が出たんですよ。ここで。
(山里亮太)あ、この『デッドプール』ではじめて?
(町山智浩)そうなんです。この人ね、結構芸歴は長くて。過去にですね、アメリカでいちばん売れている芸能誌で『ピープル』っていう雑誌があって。そこで毎年ですね、『世界でいちばんセクシーな男』っていうのを選んでいて。それに選ばれたこともあるイケメン俳優だったんですけど、なかなか、なにをやってもヒットしなかったんですよ。映画が。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、もう本当に後がない感じになっていて。で、今回彼は自分で『デッドプール』をプロデュースして。要するに、自分でこの映画を作って、この一作に最後の賭けをしたんですけど、当たったんですね。
(山里亮太)まさにデッドプール。
(町山智浩)それでよかったなと思って。この人ね、デッドプールっていうキャラクターはね、2009年の『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』っていう映画でもね、同じキャラクターを演じているんですよ。
(山里亮太)へー。デッドプールを。
(町山智浩)そうなんです。ただ、そっちの方の最初のデッドプールは、口がないデザインにされちゃったんですね。おしゃべりなのに。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)いちばんの必殺技を封じられちゃってどうしようもなかったんですけど。で、その後もね、いま、アメコミヒーローブームだからね、『グリーン・ランタン』っていうね、DCコミックスの方のスーパーヒーロー役にレイノルズさん、抜擢されてですね。大作だったんですけど、そっち、大コケしちゃったんですよ。
(赤江珠緒)グリーン・ランタン?
(山里亮太)聞いたことないですけどね。
(町山智浩)聞いたことないですよね(笑)。で、このグリーン・ランタンっていうのは全身緑のコスチュームを着てるんですよね。それがね、このライアン・レイノルズのトラウマになっちゃっているんで。この『デッドプール』っていう映画の中では、セリフの中でね、『俺に緑の衣装だけは着せないでくれ!』っていうセリフが・・・(笑)。
(赤江珠緒)もう、そういう自虐ネタも入ってるんですね(笑)。
(町山智浩)そう。もう楽屋オチやりまくりなんですよ。で、そう聞くともう、ただのコメディーに聞こえるじゃないですか。グチャグチャコメディーに聞こえますよね?でもね、ちょっとね、この映画のメインテーマとしてかかる曲を聞いていただきたいんですが。ワム!の『Careless Whisper』をお願いします。
(赤江珠緒)なんかぜんぜんコメディーな感じ、しませんけどね。
(町山智浩)この映画ね、デッドプールが最初にですね、『この映画はラブストーリーだよ』って言うんですよ。
(赤江珠緒)へー!
実はラブストーリー
(町山智浩)で、『えっ?』と思うじゃないですか。ところが、ちゃんとラブストーリーになっていましたよ。この映画。で、主人公はずーっとジョークばっかり言ってるんでちょっとわからないんですけど。実は、彼は改造手術を受けた時に顔がグチャグチャになっちゃうんです。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、その愛した恋人ヴァネッサに、もう一生会えないと思って、顔を隠してマスクをしてるんですよ。で、顔はグチャグチャで会えないんだけれども、陰ながらずっと彼女を守り続けるっていう、泣かせる話なんですよ。
(赤江珠緒)あ、ちょっと切ないストーリーなんですね。
(町山智浩)そうなんですよ。これね、昔ね、ジョージ秋山先生が描いた漫画で『デロリンマン』っていうヒーローものがあったんですね。で、顔がグチャグチャになっちゃった男が、それでも自分が愛する妻と息子のために戦い続けるっていう話だったんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それだったですね。『デッドプール』は。まさか、この映画で泣くとは思わなかったですよ。
(赤江珠緒)ええーっ!?そうなんですか?
(町山智浩)そうなんですよ。ちょっとびっくりで。アメリカでは、バレンタインデーに公開されたんですよ。この内容で!
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)この内容で。しっかりバレンタイン映画になっていましたね!
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)ということで、大人のカップルだったら見られる映画『デッドプール』でした。はい。
(赤江珠緒)そうなんですね。あ、だからヒットしてるんですね。ただ単にジョークがたくさんあるっていうんじゃなくて。
(山里亮太)ただのコメディーじゃない。
(町山智浩)そう。ちょっと大人のエッチな泣かせるラブストーリーになっていましたよ。
(山里亮太)あと、いろいろ知っていたらもっと面白がれるポイントもいっぱい散りばめられてそうですね。映画のこととかね。
(赤江珠緒)そういうことですね。パロディーとかもいろいろ入ってそうですね。
(町山智浩)まあ、童貞が見てもわからないですけどね。ちょっとね。そういうギャグが多いので。はい。
(赤江珠緒)ええ。そこはドーン!と突き放しましたね。町山さんね。はい。ありがとうございました。
(町山智浩)いえいえ。大人になってから、見ましょう。はい。
(赤江珠緒)今日は映画『デッドプール』のお話でした。町山さん、ありがとうございました!
(山里亮太)ありがとうございました。
(町山智浩)どもでした。
日本公開直前のトーク
2016年5月31日のTBSラジオ『たまむすび』で町山さんがさらに『デッドプール』についてトーク。日本語吹き替え版の話などをしていました。
(町山智浩)ええと、明日ぐらいから『デッドプール』が日本公開かと。
(山里亮太)そうです。あと、『FAKE』とかもたぶん明日から……あ、今週末か。
(町山智浩)今週末ですか。今週、結構見たい映画がいっぱいあると思いますが。『デッドプール』は中学生は見れないのかな? たしかR-15。中学生は見れないですね。かわいそうに。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)こういう時はインチキな方法で何とかして見に行くといいと思いますけども。
(赤江珠緒)なにを推奨してるんですか(笑)。
(町山智浩)僕、でもはじめてピンク映画って見たのは、飯田橋くららっていう劇場で。この間、閉まったらしいですけど。そこで、タジカヤスシくんという、いまNHKに勤めている同級生と一緒に、中学から高校になるぐらいの休みの時に見に行きましたよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)思いっきり大人の格好をして行って。でも、入れなくて。なかなか、怖くて。何度も何度も行って、入れなくて途中でゲーセンに行ったりして。「どうしよう。帰ろうか?」とか言って。「でも、行こう!」とか言って。
(赤江珠緒)初々しいですね(笑)。
(町山智浩)そう。3回ぐらいね、苦労して。結局中に入って見たですけど。いま、ネットで誰でも見れるんだよね。
(赤江珠緒)ねえ。そうなんですよね。
(山里亮太)昔、裸を見ようと思ったら大変でしたよ。土手のところに行ってね、本を探したりとか。
(赤江珠緒)だいたいみんな、土手に行きますよね。
(町山智浩)そうそう。土手でホームレッシーな人たちが読んだ後のエロ本を拾ったりね、するわけですけども。
(赤江珠緒)もういま、タジカヤスシくんがいちばんびっくりしていると思いますけども(笑)。
(町山智浩)ああ、タジカくん? タジカくんは親友だったんですよ。はい(笑)。あの頃って、だからみんな僕たち話し合っていて。「インカ帝国の初代皇帝」とか言ってましたからね。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)ねえ。いま、そういう想像をする余地がない世の中になって、あんまりファンタジーがない、夢のない世界かなって思いますが。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)みなさん、いま検索したら全ての答えは出てきますので。
(町山智浩)そう。いま、ネットで調べるとどんなことも出てきちゃいますからね。つまんない世の中ですよね。
(山里亮太)固有名詞ですからね。
(町山智浩)昔はいっぱい冒険があって。毎日が『インディー・ジョーンズ 魔宮の伝説』みたいなところがあったですけどね。
(赤江珠緒)「謎が解けない!」みたいなのがね。ちょっと調べてみよう(笑)。
(町山智浩)謎が解けないっていうね。
(山里亮太)赤江さんはわかんないの? インカ帝国の。
(赤江珠緒)わかんない。
(山里亮太)調べたら……この流れで言うのは難しいような感じになっています。
(赤江珠緒)ああ、そうなんですか。
(町山智浩)いろんな言い方がありますから。
(山里亮太)男子は1回、行きますね。あそこ、絶対に。
(赤江珠緒)通り道ですか。
(町山智浩)通り道ですね。
(山里亮太)あそことエロマンガ島は。
(町山智浩)『デッドプール』ってそういう……明日から公開の『デッドプール』ってたぶん中学生の人ね、忍び込んで見てもいくつかの会話の内容がわからないと思いますんで。そういう時は、近所の悪いお兄さんに聞くといいと思いますね。はい(笑)。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)かならず、近所に悪いお兄さんが昔いて。悪いことをいっぱい教えてくれたんですけど。そういう文化ももうないのかな?
(山里亮太)昔は部室にね、来て。いろんな経験談を聞かせてもらったもんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。だいたいろくでもない先輩とかから(笑)。
(町山智浩)そう。先輩がね。そうそうそう。いや、『デッドプール』ね、日本語吹き替え版もすごい内容らしくてですね。僕ね、最初日本語字幕の監修を依頼されたんですけど。前も話しましたけど、『テッド』でめちゃくちゃ言われたから、断ったんですね。
(赤江珠緒)(笑)。そうなんだ! いいじゃないですか。町山さん。
(町山智浩)そう。「ネガティブなキャンペーンになっちゃうから。僕はちょっと遠慮します」って遠慮したんですが。なんかね、かなりそういう際どい訳をそのままやっているみたいで。たぶんね、中学生はわからないと思います。はい。
(赤江珠緒)ほー!
(町山智浩)だからメモを持っていって、かならずセリフでわからないことを全部書き留めて。女子大生になっているお姉さんとかに聞くといいと思いますよ。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)「お姉さん、これ『ごっくん』ってどういう意味?」とかね。
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)「『あなたの顔に座りたい』ってどういうことなの?」とかね。「お姉さんも座りたい人とか、いる?」とかですね。そういうことを聞くとね、ぶん殴られると思いますけどね(笑)。
(赤江珠緒)そうなんですね(笑)。
(山里亮太)あと、入れません。
(赤江珠緒)そもそもね。
(町山智浩)そうか(笑)。あと、声優さんがですね、日本語吹き替え版をやっているんだけど。それもかなりすごいらしくてですね。『デッドプール』って映画の中でほとんどしゃべり続けているんですね。戦ってる最中も。だからこれ、声優さんが、加瀬康之さんっていう方がやってらっしゃるんですけど。最初から最後まで、ずっとしゃべっていたらしいですね。
(赤江珠緒)へー!
(山里亮太)セリフ量、すごいんだ。
(町山智浩)ねえ。ギャラ、これで同じだと辛いところがありますよね。はい。
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)『アンパンマン』の犬の声をもう1人の山ちゃんがやってましたけどね。
(山里亮太)そう。山寺宏一さん。チーズ。
(町山智浩)チーズの声ね。あれ、ギャラどうなっているんでしょうかね。わかんないですけどね。
(山里亮太)だって『アンパンマン』の中だけで山寺さん、いっぱいいますからね。カバオくんもそうですからね。
(赤江珠緒)ああ、そうか。
(町山智浩)そっかそっかそっか。じゃあ、イクラちゃんの声の人が不当にいっぱいギャラを取っているのかな? まあいいや(笑)。
(赤江・山里)(笑)
(山里亮太)不当なんかない!
(赤江珠緒)あれはあれでプロの声ですよ。
(町山智浩)すいません(笑)。
<書き起こしおわり>