町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、増補新装版が出たばかりの切通理作さんの名著『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』を紹介。リスナープレゼントをしていました。
(赤江珠緒)まずは今週はね、町山さんからプレゼントがあるということで。また、本をプレゼントしていただける。
(町山智浩)なんかいつもプレゼントしているような気がしますが(笑)。
(赤江珠緒)ありがとうございます!
(町山智浩)何回か来てもらったですね、切通理作くんの本が出ましてですね。『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』という本なんですけど。それをプレゼントしたいんですが。これはですね、僕が20年ぐらい前に編集した本なんですよ。
(赤江珠緒)へー。そうでしたね。
(町山智浩)あの評論家の切通理作くんの最初の本だったんですけれども。それが20数年ぶりにやっと復刻になりまして。
(赤江珠緒)復刻版。
(町山智浩)はい。そうです。それで4万字も書き足してるんで、ぜんぜん違う厚さになって。
(赤江珠緒)書き足しただけで4万字プラスなんですか?すごいですね、これ。
(町山智浩)そうなんです。1センチぐらい厚くなってるんですけど。元の本より。で、どういう本か?って言うと、ウルトラマンっていうのは僕が幼稚園の頃に放送が始まったんですけども。これ、タイトルがですね、『怪獣使いと少年』という本のタイトルが、帰ってきたウルトラマンっていうウルトラマンシリーズ3作目の中のひとつの話のタイトルなんですね。
(赤江珠緒)うん。
帰ってきたウルトラマン『怪獣使いと少年』
(町山智浩)それはね、川崎の工業地帯を舞台にですね、1人の少年がみんなに『日本人じゃない』って言われて。すごい差別されて虐待されるっていう話なんですね。
(赤江・山里)えーっ!?
(町山智浩)で、それは彼が宇宙人とかと仲良くしているからっていう理由なんですけど。河原に住んでいるんですけども。その話っていうのは、実は川崎の工業地帯に昔ですね、在日朝鮮人とか沖縄系の人がですね、労働者として暮らしていたんですよ。いっぱい。で、その人たちに対する差別をその、ウルトラマンの怪獣の物語の中に織り込んだ話だったんですね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)でもその中で一言も、沖縄人であるとか、朝鮮人っていう言葉は出てこないんですけども。だけど、そのシナリオを書いた人っていうのは上原正三さんっていう方で、沖縄出身の方だったんですよ。
(赤江珠緒)ふーん。
(町山智浩)だからそういった形でウルトラマンシリーズには、もともと始まった段階から、いろんな民族差別の問題とかが織り込まれていたんですね。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)隠す形で。で、もともとウルトラマンっていうもの自体を考えついた人っていうのは金城哲夫さんっていう方で。この人は沖縄の人で、沖縄の凄まじい地上戦を経験しているんですよ。子どもの頃に。それでまあ、戦争とかそういったものをなんとかしようってことで、ウルトラマンを考えたんですけど。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)彼が考えた話で、ウルトラセブンの話で『ノンマルトの使者』っていう話があってですね。それもこの本に書いてあるんですけども。それは、ノンマルトっていう海底人がいて、それを地球人が侵略者だと思って滅ぼそうとするっていう話なんですけど。
(赤江珠緒)うん。
ウルトラセブン『ノンマルトの使者』
(町山智浩)ところが、ウルトラセブンの星では、ノンマルトっていうのは地球人のことなんですよ。
(赤江・山里)ほう!
(町山智浩)で、実はノンマルトっていうのは、もともと地球にいた先住民で、いまの地球人が侵略して乗っ取っちゃったんじゃないか?っていう話になってくるんですよ。
(赤江珠緒)ええーっ!?そっちが先に?
(町山智浩)それは、その沖縄っていうところが昔、日本とは全く別の王国だったのを日本が占領したっていう事実とか、あとまあ沖縄系の人たちとかアイヌ系の人たちが縄文人と言われる日本の先住民で。そこにあとから、大陸の方から朝鮮半島を通って渡ってきた弥生人っていう人たちが日本を支配したっていうような歴史のいろんな部分が反映された話なんですね。
(山里亮太)ふんふんふん。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)だからそういうことをウルトラマンシリーズっていうのはやっていたんだっていうことを、脚本を書いた本人たちにインタビューしていって。まあ、金城さんだけは亡くなっていたんですけど。他の方々、上原さんとか、佐々木守さんとか、市川森一さんとか。みなさん、お元気だったので、切通理作くんが直接インタビューして、本当はなにをウルトラマンで言おうとしたのか?ということを聞いていった本が、この『怪獣使いと少年』なんですよ。
(赤江珠緒)いや、これは読み応えありますよ。でもね、子ども向けにって作るウルトラマンシリーズで、そんなに現実世界を実は反映していたことだったんですね。
(町山智浩)だから僕たちも子どもの頃は気がつかなかったんですけど。ずっと心の中に残っていて。で、本当はなにを言おうとしたんでしょうか?っていうことを、書いた本人たちに聞いていった本なんですよ。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)だからこれはもう、本当に名著なんでって、テメーで編集してるのに名著とか言って、図々しいんですが(笑)。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)自信作ということですよ。
(町山智浩)あの、ぜひ読んでいただきたいということで。ちょっとね、分厚くて高い本なんで、3冊しかプレゼントできませんが。ぜひ。
(赤江珠緒)はい。わかりました。『怪獣使いと少年』。洋泉社からですね、2592円で4月3日から発売になっていますね。復刻版ということでございますが。この本を3名の方にプレゼントさせていただきます。
(中略)
(赤江珠緒)うん。伝説の名著ですよ。これ。ねえ。
(町山智浩)そうですか?ありがとうございます(笑)。もう20年以上前に作った本ですけどね。はい。
<書き起こしおわり>