(町山智浩)『私は田舎で貧しくて、お母さんが病気だから・・・』。これ、ギャラも出ますからね。『お金目当てでこの番組に出たの』って。しかも、『地元でレズビアンっていう噂が立つと嫌だから、この番組に出れば噂も消せるから。でも私は、嘘は言えません!』って突然、告白しちゃうんですよ。
(赤江珠緒)ええ、ええ。
(町山智浩)すると、スタッフがみんなちょっと感動して。『いや、悪くないよ』っつって、拍手するんですけど。したらその後、レズビアンの彼女のガールフレンドから、『あれ、絶対に放送しないで!』って言われるんですよ。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)『そんなの放送したら、南部では私たちは生きて行けないわ』って。それをまた隠蔽したりとかですね。
(山里亮太)あ、なるほど。
(赤江珠緒)ドロドロしますね、これは。
(町山智浩)そういうアメリカのいろんな生活も描かてるのがね、この『アンリアル』っていう話なんですけども。これは面白いのは、主人公のレイチェルっていう人はすごく悪い番組を作っていて、人の心をコントロールしてるんだけれども、決して悪い人じゃないんですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
近年のアメリカドラマの傾向
(町山智浩)で、このへんがね、アメリカのテレビドラマの主流になってきているんですよ。っていうのは、『ブレイキング・バッド』っていう、日本でも人気のテレビ番組、ありますけど。あれ、主人公、覚醒剤の密造をしている高校の化学の先生ですよ。ねえ。しかも、ものすごい人、殺すじゃないですか。でも、決して悪い人だと思えないんですよね。見てると。
(山里亮太)そうなんですよね。なんか、『バレちゃう!捕まっちゃう!』って心配しちゃったりするから。
(町山智浩)それなりのいい人なんですよ。あと、『ハウス・オブ・カード』。日本でも人気、出てきていると思いますけど。
(赤江珠緒)見てますよ。
(町山智浩)ねえ。これ、大統領の座をつかむためだったら、殺人でも平気な政治家が
主人公ですよね。
(山里亮太)ケビン・スペイシー。
(赤江珠緒)あの手この手で。
(町山智浩)あの手この手で。しかも、スケベで男も女もイケちゃうというですね、ケビン・スペイシーですけど。この人、普通だったらものすごく悪いやつじゃないですか。でも、見てる人、みんな応援して見てるんですよ。
(赤江珠緒)たしかに。その人の目線で見ちゃっているからね。
(山里亮太)ちゃんとその人に理由があるって裏打ちをしっかり教えてもらえるから、なんかそれで納得できちゃっているんですよね。
(町山智浩)だからね、すごく善悪の境界線のギリギリのところを綱渡りしてくようなドラマがアメリカでは主流になりつつあって。だから、日本だとたとえば『半沢直樹』とか、悪人はみんな悪いじゃないですか。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)『花咲舞』とかも、悪い人は最初からもう、すごく悪くて。悪いしゃべり方をして、悪い目つきをして。もう、本当にわかりやすい、なんて言うか『水戸黄門』の世界じゃないですか。
(山里亮太)勧善懲悪。
(町山智浩)勧善懲悪の。それに比べるともう、アメリカのドラマはかなりすごいことになっているなと思いますよね。
(山里亮太)悪の中になにか、仕方なく悪になっている理由とかもちゃんと知っちゃうと・・・
(町山智浩)そう。だから芸の世界みたいなもんですね。芸事とか見世物とか芸能とかですけど。まあ、基本的にみんな、ひとでなしじゃないですか。
(赤江・山里)(笑)
芸の世界に生きる人々の性
(町山智浩)ねえ。要するにまあ、人にひどいことをして、それを歌にしたりして。演歌にして歌ったりするわけじゃないですか。捨てた女のことを歌ったりね。それで、本当に人としては最低なんだけれども、素晴らしい芸術や芸能を生んでいくというね。ピカソが自分の捨てた女の人が目の前で泣いているのを見ながら、『いい顔だね!』っつって。『スケッチさせて』って言って、『泣く女』っていう絵を描いたんですよね。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)まあ、そういう世界みたいなものが描かれていくんでね。まあ、『風立ちぬ』もそういう話でしたけれども。映画でしたけども。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)まあ、すごい世界に入っているな、アメリカと思いますが。それが『アンリアル』っていう。これいま、アメリカでいちばん面白いテレビドラマですね。日本でも放送するといいと思います。
(赤江珠緒)やっぱその深層心理のぶつかり合いみたいなところがね。
(山里亮太)そうなのよ。結局悪い人、誰もいないんじゃないか?って一瞬思っちゃう時あるもん。
(町山智浩)でも見ている人は、もう誰を応援しよう?誰が勝ち残るんだろう?ってハラハラしながら見ていくんですけど。最終回、あっと驚く展開でしたね。
(山里亮太)えーっ!もう最終回まで行ってるんですね。
(町山智浩)1シーズン目の最終回がね。
(赤江珠緒)なるほど。
(町山智浩)日本もね、だから『テラスハウス』のドラマ版っていうのを作るといいと思うんですよね。
(赤江珠緒)そうなのよね。もともとの番組があって、それのドラマ版なんですもんね。
(町山智浩)そう。『ビッグダディ』を作っている人たちの話っていうのをドラマにすると面白いと思います。はい。
(赤江珠緒)不思議な展開になってますね(笑)。
(山里亮太)ダディに『ここで土下座して!』とか言ってるの、あったのかな?(笑)。
(赤江珠緒)今日はアメリカで今シーズンいちばんのドラマと言われている『アンリアル』についてお話いただきました。町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)ありがとうございました。
(町山智浩)どもでした。
<書き起こしおわり>