でか美ちゃんさんが2024年4月9日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『アイアンクロー』について話していました。
(でか美ちゃん)それで私は『アイアンクロー』を見に行きまして。でも『アイアンクロー』もその「運命」という視点で見た時に、何だろうな? 実際に起きた話で、悲しい死を遂げている人が何人もいるので。なかなか感想の言葉が難しいけど……もうなんか、プロレスというもうひとつの夢に呪われた一家というか。それも、ちょっと運命っぽさもあったし。町山さんがおっしゃる通り、本当にやっぱりお父さんがね、アイアンクローという技を生み出した伝説のプロレスラーが……。
(町山智浩)フリッツ・フォン・エリックですね。
(でか美ちゃん)それが毒親であるということがめちゃめちゃ伝わってくる映画だったんですけど。なんか、この運命とか呪いの解き方って、お父さんの考え方。お父さんががんじがらめになっていることを解かないと無理だったから。結局、そこに寄り添ってあげる人がいなかったんだなって結構、思いましたね。何て言ったらいいんだろうな? なんか、もっと選手としてすごくちゃんとサポートしてあげてたら、一家全体がこうはならなかったんじゃないかなとかは思いました。「お父さんが悪い、悪い」っていうメッセージっぽくも見えてたから。
(町山智浩)そうですね。フリッツ・フォン・エリックっていう人は世界チャンピオンになりたくて、なれなくて。それを息子たちに託してですね。もう息子たち……この映画では実際の人数よりも減らしてはいるんですけれども。
(でか美ちゃん)そこもね、ちょっと怖いなと思ったし。
(町山智浩)そう。実際に子供は4人、いたんですね。で、その4人をレスラーにしたんですけれども、次々と死んでしまうので。まあ、自殺が多いんですが。監督が「これ以上、こんなに酷い話を全部、映画にするのは不可能だ。あまりにもひどすぎる」っていうことで1人、減らしてるんですよ。存在を。
(でか美ちゃん)ねえ。末っ子がないことになってるんですね。
あまりにも酷いので兄弟の数を1人、減らす
(町山智浩)そうなんです。もう地獄のような繰り返しだから、作る方も耐えられないっていう。見る方も耐えられないだろうという。でも、現実にはその耐えられないが起きていたんですね。これ、どうでした? きょうだいって、います?
(でか美ちゃん)お兄ちゃんがいるんですけど。
(町山智浩)何人ぐらい?
(でか美ちゃん)2人兄妹です。で、本当にそれぞれ全然違う人生を歩んでるから。なんか、その共感みたいな部分ではあんまりできなかったんですけど。やっぱり育つ環境とかって、ちっちゃい時からだったら逃れられないから。なんか無責任な大人の視点だけで考えると、「えっ、とはいえ自分の夢を持って、プロレスをやめたらいいじゃん?」とかって思いかねない展開もあるんですけど。でも、ちっちゃい時からだと、逃れられないなって。
(町山智浩)そう。洗脳されちゃっているから、無理ですよ。
(でか美ちゃん)そう。だからそのお父さん自身のものを誰かが……もっと寄り添えるような人がね。その、家族じゃなくとも、プロレスという団体の中にいたらとか、すごい思っちゃいましたね。
(町山智浩)このフリッツ・フォン・エリックが一番恐ろしいなと思ったのは、子供たちを競争させるんですけれども。
(でか美ちゃん)そう。冒頭からすごい嫌な描写あるんすよ。
(町山智浩)すごいんですよ。食卓でね、「今日の1番の息子はお前だ。2番の息子はお前だ。3番の息子はお前だ」ってやるんですね。「この順位は毎日、変わる」みたいな話をして。子供ランキングを発表してるんですよ。
(でか美ちゃん)最悪……。
(石山蓮華)絶対嫌ですね。
(町山智浩)そういうこと、しました? 親がきょうだいを比べたり、した?
(石山蓮華)いや、なかったですね。
(町山智浩)こんなの、絶対にやっちゃダメだよね。
(でか美ちゃん)ちょっとチクッとね、「お兄ちゃんはこんなことをしないのに、あんたは……」みたいな怒られは発生したことあるけど。順位とかはなかなか……。
(石山蓮華)ないですね。
(でか美ちゃん)ただ、なんか広告とか、『アイアンクロー』の宣伝とかを見ていて思ったんですけども。「プロレスの知識がない人でも、見に行けますよ」って言おうって思いました。結構、プロレスファンは見に行くだろうなって感じするけど。全然、何の知識なくても……私はアイアンクローだけなぜか、局地的に知っていましたけども。それ以外、特に何も知らないけど。すごい映画として見る分には、全然プロレスを知らなくても大丈夫だよという風に思いましたね。
(町山智浩)僕は見ていて……ケビンっていうの次男が主人公なんですけれども。長男が早く亡くなっちゃったんで実際、長男みたいにして一番のリーダーであるべきなのに、すごく気が弱い人なんですね。で、マイクパフォーマンスが全然できないんです。で、あんまりそのプロレスラーとしての才能がないんだけれども、この人はすごく真面目で。お父さんに好かれようとして、一生懸命になってるところに、奥さんが現れるんですね。結婚をするんですよ。そうすると、その奥さんによって父親の洗脳が解かれていくんですよ。
(石山蓮華)おお、自由になっていく?
(でか美ちゃん)サポートというか。
(町山智浩)そうなんですよ。それで、彼だけは脱出できるんですよ。その地獄のような洗脳一家の中から。
(でか美ちゃん)そこが唯一の救いというかね。でもエリック家が気になって、映画を見終わった後に調べてみると、そのケビンのお子さんも……とか、あるから。ちょっと一瞬、びっくりしちゃうんですけど。
(町山智浩)そう。ケビンのお子さんもプロレスラーになってるんですけど。
(でか美ちゃん)でも、洗脳とかじゃないんですもんね?
(町山智浩)ケビンは「やめろ」って言ったのに自分で「やりたい」って言ってやっているので。
(でか美ちゃん)そう。だから「ああ、よかった。危ない……」ってね。
(町山智浩)そう。誰も死んでないです。
(石山蓮華)呪いではなく、自分で選んだっていう?
最終的に解けたエリック家の呪い
(町山智浩)エリック家の呪いは解けたんですね。ただね、この映画の中では描かれてない部分では、お母さんは結局、自分の息子たちをいじめ殺したみたいな形になったんで、やっと洗脳が解けて。お父さんの元を離れて、ケビン……自分の息子の家に同居しましたね。で、孫たちと幸せに暮らしたんですけど。それでたった1人、残されたそのDV男のフリッツ・フォン・エリックは1人寂しく、何もかも失って死んでいったみたいですけどね。まあ、さっき「誰か、助けてくれる人はいなかったのか?」っていう話ですけど。テリー・ファンクは面倒を見たりしてたみたいですよ。
(でか美ちゃん)ああ、そうなんですね。
(町山智浩)キン肉マンのテリーマンのモデルになったテリー・ファンクは。
(でか美ちゃん)ああ、そうか。だからやっぱり戦った仲間たちの中では、ちょっと手を差し伸べる人はいたのか。
(町山智浩)かつては「エリック帝国」と言われるようなものをテキサスに築いていた人なので。ただ、あまりにもこういうことをしてしまったのでね。子供たちがみんな死んでしまうというね。で、見捨てられていったんですけど、最後にテリー・ファンクは会いに行ったみたいですけれども。まあね、すごいんですよ。この映画の中でひとつ、描かれてないのはね、デヴィッドっていう息子さんが死んだ後。みんなが悲しんでるのに「男は泣くな! 兄弟が死んでも泣くな!」っつって、親父が世界チャンピオン戦を組むんですよね。あれでね、父親は莫大なお金を儲けてるんですよ。4万人もそれで客を入れてるんですよ。自分の息子の追悼試合で。まあ、ひどい父親ですけどね。ちゃんとその報いを受けましたけどもね。まあ、強烈な映画でしたよね。
(でか美ちゃん)強烈でした。
(町山智浩)ぜひ、親子で見るといいと思いますよ。うちは娘を連れて行ったんですけど。これを見た後、「うちの父ちゃんはこれに比べると何百倍もいい父ちゃんだな」っていう気持ちになったみたいですから。
(でか美ちゃん)絶対にそうなりますね(笑)。
(町山智浩)お子さん連れて行くと「ちの父ちゃん、これよりはマシだな」って(笑)。
(でか美ちゃん)親の株が上がる(笑)。
(町山智浩)親の株が上がるんで。まあ、この親父に比べれば誰でもマシなんで(笑)。
(石山蓮華)じゃあ『アイアンクロー』はぜひ家族でご覧ください。
<書き起こしおわり>