町山智浩 海外ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を語る

町山智浩 海外ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で、アメリカで大人気のドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を紹介。町山さんもオバマ大統領もハマるその魅力を語っていました。

(赤江珠緒)今日はもう、すぐ本題行きますか?

(町山智浩)今日はね、僕いまハマっているテレビドラマがありまして。日本語タイトルが『ハウス・オブ・カード 野望の階段』っていうドラマについてお話します。これ、日本ではね、DVDで出てるんですけれども。これがシーズン3がこの間ですね、一挙に配信されたんで。それをハマって見まくっているんですけど。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)これは、さっき『テレビドラマ』って僕、言っちゃったんですけども。これはね、ネットフリックス(Netflix)というアメリカの映像配信サイトのオリジナルのドラマなんですよ。

(赤江珠緒)ほー。じゃあ、テレビではないんですか?

(町山智浩)そうなんです。レンタルビデオの代わりに、映画のビデオをネットで配信していた会社なんですね。ネットフリックスっていうのは。そこが、独自に作ったドラマなんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)はい。で、いまアメリカはそういったものがどんどん主流になってきていて。いま、Amazon.comってありますよね?あれもドラマを作っているんですよ。現在。で、もうテレビでドラマを作るっていうこと自体がたぶんもう、終わります。もうそろそろすると。

(赤江珠緒)えっ?

(山里亮太)アメリカは?

テレビでドラマを作る時代の終わり

(町山智浩)アメリカはたぶん終わります。はい。決まった時間に家に帰ってテレビを見るっていうこと自体がもう不可能になりますから。みんな、生活がバラバラですから。

(赤江珠緒)ねえ。テレビを持っていない人も多いって先週、おっしゃってましたもんね。

(山里亮太)パソコンでね。

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(町山智浩)テレビを持ってない人も多いんですね。だから、スマホとか、タブレットでドラマを見るという状況になってますし。あとまあ、はっきり言うとスポンサーがついて番組を制作費出して・・・っていうこと自体で、スポンサー自体、要するに広告がどのぐらいそのドラマで商品が売れるか?ってことが計測不可能ですからね。まあ、そこにお金をかけることはなくなるでしょう。今後。

(赤江・山里)はー!

(町山智浩)企業は。ねえ。でも、この直接配信っていう方法でやると、その1個1個のドラマを買うんですよ。2ドルとか3ドルで。だから、確実にその制作費を回収できるんですよ。当たればね。

(赤江珠緒)じゃあ、見たい人が買うと。

(町山智浩)見たい人が買う。もう、見た分だけお金が入るというシステムになりますから。視聴率という非常に曖昧なもので、広告で商品が売れるかもしれないってことでもってお金をあげるという、この曖昧なシステムはたぶん、消えます。

(赤江珠緒)じゃあもう、スポンサーとかいう存在がないってことですか?

(町山智浩)もうなくなっていきますよ。これから。ラジオもテレビも、そこの方向で向かって考えないと。テレビ自体が存在が危ういですね。

(赤江珠緒)じゃあ、このドラマに関しては、自分たちの作品で・・・

(町山智浩)だからニュースもドラマもネット配信でみんなほとんど見ているわけだから。すると、テレビの存在意義っていうんはほとんどなくなってきているんですよ。それがまあ、現在その中で、このハウス・オブ・カードっていうのが、もうめちゃくちゃ面白いんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、スポンサーがないから、とにかくなんでもできるわけですよ。っていうのと、テレビの決まりってありますよね。放送倫理コードみたいなものがね。それも、ないですから。

(赤江珠緒)あー、そっか。

(山里亮太)結構過激に攻めれるってことですね?

(町山智浩)なにしてもいいわけです。スポンサーがいると、結局、一般の人みんなに受けるように、みんなから怒られないようにって内容になりますよね?

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)でもこれ、誰から怒られてもいいんですよ。別に。見たい人だけ見ればいいんですよ。

(赤江珠緒)ああ、なるほど。

(町山智浩)ドラマはそうなりますよ。ねえ。『みんなに受けなきゃ!』とか、『こういうことを言ったら怒る人がいるかも・・・』とか。昔、コマーシャルで『バカが多くて困るのよね』っつったら、すごく抗議が来て中止になったりしましたけど。そういうことはないんですよ。もう。見なきゃいいんだもんっていう話になるから。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、このハウス・オブ・カードっていうのはものすごく過激なんですよ。で、まずこれ、作っている人がデビッド・フィンチャーっていう、『ゴーン・ガール』の監督です。

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(赤江珠緒)うわー!

(町山智浩)その前に、『セブン』とか『ファイト・クラブ』とか作ってきた人なんですね。で、セブンっていうのは連続殺人の話なんですけど、それでものすごい強力なキャラクターをやっているケビン・スペイシーっていう人が、このハウス・オブ・カードの主演で。この人が、民主党の政治家で、大統領の座を目指してのし上がっていくっていう野望のドラマなんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)あの、瞳の奥にある大きな野望のドラマなんですよ。で、『野望の階段』っていうタイトルなんですね。日本語タイトルは。で、このケビン・スペイシーっていう人はアカデミー賞俳優ですよ。

(赤江珠緒)ほー。

(町山智浩)あの、『アメリカン・ビューティー』っていう映画でですね、オナニーしているところを奥さんに見つかって逆ギレする演技でアカデミー賞を取った人ですけども。

(赤江珠緒)そうでした?

(山里亮太)それが決め手だったってことじゃないと思いますけどね。

(町山智浩)それが決め手ですね!で、この人は、見た目は小日向文世さんにそっくりですね。

(山里亮太)あー!似てます!

(町山智浩)そう。小日向文世さんを凶悪にした感じですね。小日向文世さんがグレちゃった感じですよ。ちょっと。はい。で、この人がですね、民主党の下院議員なんですけども。まあ、トップの座を目指して。トップっていうのは大統領。世界最高の権力者を目指してですね、仲間の民主党とかをどんどん裏切って。民主党議員とか政治家とかを。どんどん裏切って陥れてですね。時にはもう絶対にいけないことまで足を踏み入れてですね、蹴落としていくというドラマなんですね。

(赤江珠緒)へー。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、もうこのドラマ、ハウス・オブ・カードのいちばん面白いところはですね、悪いことをしながら、要するに、いい人のフリをするわけですよね。人を騙すわけですから。この主人公のケビン・スペイシーは。フランクという名前なんですけども。でも、『騙してますよ』って観客に言うんですよ。視聴者に向かって。

(赤江珠緒)へー?

(町山智浩)だから、なんか上手いこといって騙しているところで、パッと視聴者の方を向いてですね、『バカは騙されるんだよな』って言うんですよ。

(赤江珠緒)あー!

(山里亮太)こっちに語りかけるような感じで。

(赤江珠緒)視聴者にしか見えないようなっていう演出になっている。

(町山智浩)そう。視聴者に向かって言うんですよ。いま、まさに騙しているその場で言うんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからたとえば、『権力の階段を上るゲームにルールはひとつだけ。狩るか狩られるかだ。狩るか狩られるかっていうルールがわかってないやつは、こいつみたいなやつは、死んでいくんだ!』みたいなことを言うんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)で、ニコッとしながら、『あのですね・・・』って言いながら、握手したりするんですね。

(赤江珠緒)あ、なるほど。心の声の部分も演技で入ってくるんですね。

(町山智浩)演技で入ってくるんですよ。クルッとこう、観客を振り向いてですね、『いま、俺はこいつを騙そうとしているんだ』とか言うんですよ。そこがすごく面白いんですよ。これは、シェイクスピアのですね、『リチャード三世』っていうお芝居がそういうお芝居なんですね。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)リチャード三世っていうのは権力を握るために、王様になろうとするためにですね、仲間をどんどん蹴落として殺していった男の話なんですけども。たとえばお姫様を口説く時にですね、お姫様をめちゃくちゃ、『あなたのために私はこんなに権力を握ろうとしているんですよ!』とか、『あなたの美しさに、私は負けたんです』って言いながら、パッと観客の方を向いて、『なかなかいい口説き文句だろ?』って言うんですよ。

(山里亮太)あー、面白い。

(町山智浩)それがリチャード三世なんですけど。それが元になってるんですね。これ、ハウス・オブ・カードっていうのは元々はイギリスの小説とドラマが元になっていて。イギリスなんで、そのシェイクスピアをちょっと使っているんですよ。話に。で、それはアメリカに持ってきているんですけども。もうひとつ、要素があって。これ、このフランクという主人公に加担してですね、彼が権力の座を上っていくのを応援して煽り続ける奥さんが出てくるんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)まあそれ、奥さんをロビン・ライトっていう女優さんが演じてますけども。この人はクレアっていう名前の奥さんでですね。まあ、時にはその、フランクっていうのは悪いことをいっぱいしてるんだけども、壁にぶつかって落ち込んだりする時があるわけですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)そうすると、『あんた!権力握るためなんだから、がんばりなさい!このくらいでくじけちゃダメよ!』ってやるわけですよ。だからそのへんはちょっとね、『マクベス』なんですね。

(山里亮太)はあ、ほう。

(町山智浩)シェイクスピアのマクベスっていうお芝居があって。それはスコットランドの王様になるためにマクベスっていう男がですね、裏切って裏切っていくんですけども。それを奥さんが、『あんた、もっとこうやりなさい!もっとひどいことをしなさい!』っつって、煽っていく話なんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)それをちょっと加えてるんですね。このハウス・オブ・カードには。だからこれね、ちょっと『半沢直樹』にも似てるんですね。

(赤江珠緒)あの、日本の?

(町山智浩)だからあの、上戸彩ちゃんがすごく半沢直樹をいろいろサポートするじゃないですか。

(山里亮太)ハッパかけますよね。がんばってきなよ!みたいな。

(町山智浩)ハッパかけたり、いろいろ裏で動いてあげたりするじゃないですか。で、あれはいいことをするためなんですけど。半沢直樹は。こっちはその、権力を握るためにですね、その奥さんが後ろでいろいろと煽るわけですよ。励ましたり。あと、もう落ち込んでいると、上にまたがってフンフンしながら、『がんばりなさい!』とか言ったりするシーンもありますけど。そういう奥さんなんですね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)美魔女ですけど。で、この話がね、アメリカでもうめちゃくちゃに人気なんですよ。ハウス・オブ・カード。

(赤江珠緒)いや、でも面白そう。悪い半沢直樹って感じですもんね。

(町山智浩)悪い半沢直樹。これね、リチャード三世って元のシェイクスピアの話は、日本でね、『白い巨塔』っていうお医者さんの話があったでしょ?陰謀を巡らせて、どんどんどんどん医者の中で出世していく話。あれの元がリチャード三世で。あと、『銭ゲバ』っていうマンガがあったんですね。昔。最近もなんかドラマ化されたと思うんですけども。それはもう、金のためだったらなんでもする男の話なんですね。で、社会の階段をのし上がっていく男で。これもリチャード三世が元になっているんですけど。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それも、原点なんですよ。そういう、のし上がりものの。ただ、このハウス・オブ・カードのフランクは、その、のし上がりものの中では最強最悪なんですよ。

(山里亮太)最悪?

(町山智浩)最強最悪なんですよ。っていうのは彼ね、軍人でもあるんですね。素手で人を殺す能力も持っているんですよ

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)政治家としての陰謀を巡らすだけだったらわかるんですけども。それ以上のことができる男なんですよ。

(赤江珠緒)うわっ、怖いですねー。ええ。

(町山智浩)ものすごく怖いんですよ。でね、しかもね、モラルが全くないんですよ。

(赤江珠緒)は、はい・・・

(町山智浩)要するに、自分以外の人間はみんな犬か虫だと思っているんですよ。で、冒頭でいきなりその、車ではねられて、虫の息の犬をですね、殺すところから始まるんですよ。『私は役に立たないものは嫌いだ』って言って、殺すんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)それで始まるんですよ。ドラマが。それが彼の行動の全てを象徴してるんですよ。で、しかもですね、要するに自分の父親がなんか良くない父親だったんですね。その父親への反発から、彼はその、こういう人生を送っているんですけど。父の墓に行ってですね、墓石におしっこを引っかけるんです。『俺はあんたみたいにはならないぜ!』とか言いながら、お父さんのお墓におしっこを引っかけて。

(赤江珠緒)でもね、こんなにダーティーな主人公で。それがのし上がっていって、見ている人は、『ああ、いいな!』っていう風になってくるんですか?

(町山智浩)これはね、ピカレスクロマンと言われているもので。悪漢が全くモラルも無しに自由自在に好きなことをやってのけるっていうドラマっていうものは、やっぱり人はみんな好きなんですよ。結構、昔から。

(赤江珠緒)はー。それはそれで。ええ。

(町山智浩)こういったものは、日本でも伝統的に、歌舞伎とかでもあるんですね。悪漢をヒーローとして描くっていうものがね。で、ただ内容はこれ、だってテレビで放送できるか?って言ったら、できない内容でしょ?どう考えても。

(山里亮太)オープニングからダメですもんね。もう。たぶん。

(町山智浩)オープニングもダメだし、しかも彼、バイセクシャルなんですよ。

(山里亮太)っていう役ですか?

(町山智浩)そう。男もオッケーなんですよ。

(山里亮太)はー!すごい・・・

(町山智浩)ね。しかもですね、なんか教会に行くとですね、神父さんにね、『あなたは神を信じるか?』って言われて、『私はね、旧約聖書の神様は好きなんだよ。暴力と恐怖で人を支配したから、私は好きだなー!』とか言うんですよ。フランクが。すると、神父さんがびっくりして、『いや、キリストはそうじゃない。イエス・キリスト様は愛でみんなを救おうとしたんです』って言うんですよ。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)そうすると、主人公フランクは、『ちょっと私と、十字架のイエス・キリスト様と、2人だけにしてくれないか?』って神父を退けるんですね。外の部屋に出すんですよ。で、いきなり十字架にかかったキリストの顔にツバを引っかけるんです。ペッ!っつって。『なにが愛だよ?』って言うんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)それがフランクで。しかも、それが彼がどんどんどんどん大統領の座を目指して上っていくんですよ。で、イギリスの元の原作になったドラマっていうのは、その首相の座につこうとしたところで、やっぱりこれだけ悪いことをやっているから、まあ因果応報ってやつで破滅して終わるんですね。イギリス版、原作版は。ところが、アメリカのドラマっていうのは人気がある限り、延々と続くんですね。

(赤江珠緒)ほう、ほう。

(町山智浩)だから彼、今シーズンっていうか前のシーズンの終わりで大統領になっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)すごいですね。悪事を重ねるだけ重ねて。

(町山智浩)悪事をどんどん重ねていって、この野望の階段っていうタイトルなのに、いきなり野望の階段を上りつめちゃうんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。大統領ですもんね。

(山里亮太)これ、悪いやつがトップになったら、今度はそいつが敵になって倒しに来るいいやつがいっぱい出てくるとかってことでもないんですよね?別に。

(町山智浩)そうじゃないんですね。これね、大統領になっちゃったら、どうなるだろう?って思ったんですよ。これ、話終わっちゃうじゃんって思ったんですよ。ね。したら、そうじゃなくて。大統領になったら、敵がいっぱいいるんですよ!

(赤江珠緒)はあ。

(山里亮太)大統領になったからこそわかる。

(町山智浩)これね、そうなんですよ。それまでは要するに敵は全部民主党内だったんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)で、民主党の人たちはみんなスイートなんですよ。甘いんですよ。あの、草食動物ですよ。はっきり言って。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だからもうコロコロ騙されて、みんなもう、潰れていくんですよ。主人公に。もう主人公は1人で草食動物の檻に投げ込まれたライオンみたいなもんですから。彼は民主党の中で暴れているっていうのは。だから、片っ端から潰していって、大統領になるんですけど。彼は。大統領になったら、敵がいっぱいいたわけですよ。

(赤江珠緒)そうですね。共和党もいるしね。

(町山智浩)で、いちばんの敵は共和党ですよ。で、この話の中では共和党は議会を全部多数で支配していて。で、大統領が、主人公がいくら法案を出しても、全部潰すんですよ。党議拘束ってやつで。

(赤江珠緒)ふん。

(町山智浩)これ、実際にオバマさんがやられていることなんですよ。

(赤江珠緒)ああ!

(山里亮太)リアルにリンクするんだ。そこと。

(町山智浩)そうなんですよ。たとえばオバマさんは要するに、予算とかをいっぱい出して。その、たとえば雇用を促進するための景気刺激策とかを出しても、全部潰されちゃうんですね。あと、予算案を出しても、それを潰されたためにですね、アメリカは債務不履行に陥ったりしたんですよね。債務不履行寸前まで行ったんですね。共和党が予算案を通さないから。

(山里亮太)ああ、ありましたね。ええ。

(町山智浩)で、それだけじゃなくて、予算案を通さないもんだから、政府自体が一時、機能停止まで行ったんですよ。だからいま、共和党っていうのは国益に反してでも、オバマ大統領の邪魔をするっていうのを続けているんですよ。

(山里亮太)はいはい。

(町山智浩)で、その状況っていうものと戦わなきゃなんないんですよ。この主人公フランクは。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)だからこれ、すごくよく出来ていて。現在起こっていることを・・・要するに現在起こっていて、オバマさんが上手く戦えてないことっていうものを、最強最悪の男フランクに戦わせているドラマなんですよ。

(山里亮太)ちょっとスッキリするんだ。もうオバマが、もうちょっとこうやっていたらできていたのに、うまく勝ち取れないものをやってくれるんだ。

(赤江珠緒)それはなんか、リアルですね。

(町山智浩)そう。だから大人気なんですよ。

(山里亮太)はー!すごいな、これ。

(町山智浩)これ、すごいんですよ。それで、彼はその右とも戦うんですけど、左とも戦うんですよ。で、左で足を引っ張っている人たちは、やっぱり教員組合とか、アメリカの学校制度っていうのは良くしようとしても、教員組合が邪魔をしてて、なかなかできないんですね。だからその教員組合と戦ったりですね、あとまあ、日本でも問題になっていますけど、年金ですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)とにかく高齢者の方が増えていって、若い人たち、働く人、税金を納めてる人の人口が減って。で、もう国自体が破綻しかけているという状況とか。そういったものに対して、このフランクっていうのは全くモラルもなければ、道徳もなければ、なんにも、イデオロギーすらないんですよ。全く、政治的な思想とかがなくて。ただ、徹底的な問題解決能力だけが高いんですよ。

(赤江珠緒)はー!(笑)。

(山里亮太)いや、すごいな。それは。

(町山智浩)それで全部敵を蹴散らしていくんですよ。右も左も全部蹴散らして。もう政治的な解決をしていくっていうドラマなんですよ。

(山里亮太)うわー、たしかにスッキリしそうだな、それ。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)だからこれね、オバマ大統領が大ファンなんですよ。このドラマ(笑)。

(赤江珠緒)えっ?オバマさん自身が見ているんですか?

(町山智浩)オバマさん、大ファンなんですよ。これの。でね、それはね、マズいんじゃないの?とか言われてるんですけど。『早く新しいシーズンがみたいな』とか、そんなことばっかり言ってるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)ちょっと参考にしちゃったりとかしてね。

(町山智浩)そうなんです。そんなこと言っている場合じゃないだろ!って言われてますけどね。

(赤江珠緒)じゃあもう、設定自体も民主党、共和党ってはっきり。文字ったりとかじゃなくて?

(町山智浩)はっきり言ってます。だからほとんど実際の政治的な問題っていうものを、そのままドラマにぶち込んでるんですよ。

(山里亮太)へー!面白そうだなー。

(町山智浩)これはね、すっごいですよ。だから、強力なリーダーシップなんですね。主人公は。で、しかも彼にはモラルがなくて。宗教もなくて。道徳も、イデオロギーもないんですよ。だからこれはすごく、なにを言おうとしてるのか?っていうと、『マキャベリズム』と言われているものなんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)昔、イタリアにマキャベリという人がいてですね。元々は非常に民主主義的な理想を持っていたんですけど、挫折したんで。政治的に。で、そうじゃなくて、実際にいま必要なのは、実際に国を運営するためには、道徳はいらないんだ。どんなに悪辣な手段を持ってしてでも、実際に政治的な実行力が必要なんだってことを本にした人なんですよ。

(赤江珠緒)ああー、そうかー。

(町山智浩)マキャベリっていう人は。だから、それをマキャベリズムって言うんですけど。まさにその、マキャベリズムそのものなんですね。この、ハウス・オブ・カードっていうのは。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)だからこれはものすごい皮肉な、なんて言うかまあ、だからこれがいいんだって言ってるんじゃなくて、皮肉ですよ。一種の。

(赤江珠緒)そうですね。いい人でも、なにもできないのも困るし、と。

(町山智浩)そうそうそう。でも、いい人じゃなくて、じゃあ本当に完全にいい人じゃない人が、本当にできるのか、政治を?っていうことも、まだ話の途中なんでどうかわからないんですけども。っていうのは、ハウス・オブ・カードっていうタイトルの意味はね、これね、トランプのカードを組み立てて家を作ったもののことをハウス・オブ・カードって言うんですね。

(赤江珠緒)うん。じゃあ、脆いですね。

(町山智浩)だから、風で簡単に倒れちゃうんですよ。だから、砂上の楼閣みたいな意味があるんですけど。それがタイトルになっているから、この彼の全くモラルのない、実行力だけの政治っていうものは本当にいいものとして最後まで行くのかどうか、わからないんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)そのへんはわからないんですけどね。

(赤江珠緒)なるほどー!深いテーマですね。

(町山智浩)非常に深くて、ひっくり返っていて、皮肉でですね。まあ本当によく出来たドラマで。しかも、小日向さんがですね、もう3Pしたり、大変なんですよ。悪くなっちゃって。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)どうしてこの人、こんな悪うなっちゃったんだろう?と。大変な事になってますけど。

(赤江珠緒)大変なことになってますね。

(山里亮太)小日向さんの3Pか・・・

(町山智浩)はい。非常に、それでいてもう、セクシーなドラマでもあってね。で、監督とかがすごくて。映画界の監督の一流の、ジョエル・シュマッカーとかですね、ジョディ・フォスターまで監督してるんですね。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)ジョディ・フォスターさん、映画監督でもあるんですけど。これもう、本当にハリウッドの一流どころが集まってですね、やってるんですよ。

(赤江珠緒)へー。で、もうシーズン3まで来ているんですね。

(町山智浩)もうシーズン3、いま、一挙配信したんで、一気に見てるんですけどね。

(赤江珠緒)へー、そっかー。じゃあこれ、また人気だと、続いていくっていうことですか。

(町山智浩)続いていくんですね。いまね、最大の敵がね、ロシアのプーチンそっくりの大統領なんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)拡張主義の覇権主義をやっているロシアと、アメリカが戦っていくっていう。もう、共和党との戦いの次は、世界戦争ですよ。もう、今度は。

(山里亮太)でも、本当のいまとリンクしているから。

(赤江珠緒)逆に一歩前に行っちゃってるみたいになるかもしれませんね。

(町山智浩)そうなんです。しかも、このロシアの大統領はスケベ野郎で。この大統領夫人を狙っていたリするんですよ!

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)パッとキスしちゃったりするんですよ。思いっきり。舌入れたりしてるんでね。『この野郎!殺してやる!』っていう話になっていてね。さあ、どうなるんだ?っていうね。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)うわーっ!見ちゃうな、これは!

(町山智浩)っていうのがね、ハウス・オブ・カードですね。

(赤江珠緒)ハウス・オブ・カード。はー!

(町山智浩)これやられたら、テレビ、見ないですよ。

(赤江珠緒)そうですね。で、これ、見だすと本当に次が、次がって気になるしね。

(町山智浩)はい。もう、仕事ができないんですけどね。見ちゃってね、はい。

(山里亮太)してくださいよ、町山さん。

(赤江珠緒)いや、オバマさんもハマっているって。ねえ。面白いですね。

(山里亮太)参考にしようとしてるんじゃない?オバマさんも。こうしたらよかったんだ!みたいな。

(町山智浩)そうそうそう(笑)。オバマさん、でもこれに影響されて、変なことをすると困るんですけどね。はい。

(赤江・山里)(笑)

(赤江珠緒)今日は海外ドラマ ハウス・オブ・カードを町山さんにご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)はい。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした!

<書き起こしおわり>




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