(町山智浩)で、またこの25人の花嫁っていうのはお金目当てのね、それでもって自分が美人であることを利用して社会でのし上がろう、玉の輿を狙っているっていう、すごく嫌な人たちだと思うじゃないですか。でも、そうじゃなくて。この『アンリアル』っていう番組は、その人それぞれに人生があって。理由があって。決して馬鹿ではないんだってことをちゃんと描いていくんですよ。
(赤江珠緒)ほー!
(町山智浩)で、レイチェルっていうスタッフはそれを知って、だんだん『この人たち全員を勝たせてあげたい』って思っていくわけですね。
(赤江珠緒)うんうんうん。
(町山智浩)ねえ。で、いろいろやっていくんですけど、でも、彼女の使命は演出なんですよ。たとえば、1人すごく嫌われている女の人がいるんですね。ちょっと意地悪だから。で、すごく嫌われているんだけれども、本当はこの人は実はすごく傷つきやすい人で。いろいろあって、こんな人になったってことをレイチェルは分かるんですね。なんとなく。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、彼女に『あなた、実はすごく意地悪なふりをしてるけど、実は本当は、いろいろ辛いことがあって。傷つきやすかったのよね』って、ふと話しかけるんですよ。カメラのオフの感じのところで。で、それを聞いた意地悪だった出場者は涙をポロポロポロと流すんですね。『そんなことを言われたの、初めて』みたいな感じで。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)すると、レイチェルはパチーン!とやって、『はい、カメラ!』って言って、その瞬間をカメラで撮るんですよ。彼女がポロポロと泣いたところを。で、これは意地悪だった女の人が実はそんなでもなくて。いい人だってところを撮ることで彼女を助けてはいるんですけども、でも、その人の心をコントロールしていることにもなっているんですね。
(山里亮太)そうだ。
(町山智浩)だから、いいことなのか悪いことなのか、非常に微妙なラインのところをこのレイチェルは進んでいくっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)はー!複雑ですね。
(町山智浩)で、泣いたその彼女も、カメラを回しているってことはわかって。『あんた、人の心を何だと思ってんの!?』っつって、レイチェルに唾をペッとかけるんですよ。でも、トップのチーフプロデューサーは『いやー、なかなかいいシーンだったわー!』とか言うわけですよ。
(山里亮太)なるほど。いまのペッと吐くところなんて。
(町山智浩)『レイチェル、あんたにボーナス払うわよ』とか言うんですよ。
(赤江珠緒)うわー・・・
(町山智浩)これはね、テレビ業界がひどいんだっていうことを描いてはいるんですけど、でも、そこにも真実があって。そこで働いている人たちは一生懸命やっているし・・・みたいなとこで。出てくる人たちも、だいたいリアリティー番組に出てくる人ってみんな、なんとなく嫌いじゃないですか。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)『はい』とか言ってますけども(笑)。
(山里亮太)あ、僕、『はい』って言っちゃいけないんだった。僕、こっちでリアリティー番組、やってるんでした(笑)。日本でやってますよ。町山さん。『はい』って言っちゃいましたけども。
(町山智浩)(笑)。『なんでこんなの出てんのかしら!?』とか『カネ目当てよ!』とかね。みんな思いながら見てて。半分嫌いながら見てるんですよね。
(山里亮太)っていう人も多いですよね。ええ。
ヘイト・ウォッチング
(町山智浩)そうそう。『ヘイト・ウォッチング』って言うんですけど。まあ、嫌いながら見る楽しみみたいなのがあるんですけども。それも覆していくところがあって。すごく深い深いドラマになっているんですよ。
(赤江珠緒)たしかにね。かと言って、なんにも事件が起こらない、凪のやつを映されてもね・・・みたいなの、ありますよね。
(山里亮太)大変よ。
(町山智浩)そう。だからね、『あの人が悪口言ってたわよ』とか、そういうのを吹き込んで、仲を悪くさせたりするのもあるんですよね。
(山里亮太)ええーっ!?
(町山智浩)で、女の人同士でいて、女の人同士でいちばん怖いのって、相手を褒めている時がいちばん怖くないですか?
(赤江珠緒)ああー。
(山里亮太)心こもってない感じの。
(町山智浩)ねえ。『あなた、本当にお肌がきれいね』とか言って褒めている時って、実はいちばん憎んでいる時なんだよね(笑)。
(赤江珠緒)へっ!?
(山里亮太)あ、赤江さん、そういうのあんま、ちょっとわからないタイプなんで。
(町山智浩)赤江さんはそういうところないんでね、あれですけど(笑)。そういう人が多いんですが。で、それを上手く利用してですね、テンションを高めていくんですよ。そこが怖い感じなんですよ。だから、スタッフも全員女の人なんですよ。この番組のすごいのは、実際にこの『アンリアル』っていう番組を作っているスタッフも全員女の人。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)で、この番組の中で作っているリアリティー番組のスタッフも女の人ばっかりなんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、出場者も女の人ばっかりっていうね。しかも、この番組が放送されているのはLifetimeというケーブルチャンネルなんですけども。女性のための女性によるチャンネルなんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、全てのドラマが女性が主人公なんですよ。放送される。
(赤江珠緒)そうか。でも不思議ですよね。やっぱり人間って深く知れば、ある一線を超えると、それこそ嫌いだと思っていても、なんか変わったりするじゃないですか。『ああ、この人にはこんな事情があったんだ』っていうことで変わってきたりするし。その事情を知らなかったら、全くイメージが違うように受けたりもするじゃないですか。だから、これがドラマとして続けば続くほど、そのイメージも変わっていったりするでしょうしね。当然ね。
(町山智浩)そうなんですよ。だからね、みんなが思っている表側のその、『リアリティー番組ってくだらねえな!』とかみんな、思ってるじゃないですか。それをまたね、覆していったりするんでね、これ、面白いですね。こういう番組、嫌で辞めた人がスタッフなのに、『でも、この番組にも良さがあるんだ』みたいにしていくんですよ。
(赤江珠緒)結局ね。
(山里亮太)不思議だね。なんでなんだろ?
リアリティー番組出演者たちのリスク
(町山智浩)でね、ただね、リアリティー番組って日本ではわからないですけど、アメリカの番組では、出演者、出たことのある人たちの間に自殺者がものすごく多いんですよ。
(赤江珠緒)うわっ!
(町山智浩)これ、やっぱりものすごくテンションの高い状態で何ヶ月も一緒に共同生活をして。しかも、生活を全部見られているっていう形じゃないですか。で、精神がかなりやられるみたいなんですね。
(赤江珠緒)いやー、でもそれは・・・なるほど。
(山里亮太)相当図太くなきゃできないのかな?
(町山智浩)しかも、自分が有名人になったような気になって田舎に帰るんだけど。そのうちに自分が有名人じゃなくなっちゃったりするわけですよね。
(山里亮太)ああー、そうだ!
(町山智浩)で、嫌われ者として扱われた人は、地元に帰っても嫌われ者になったりするんですよ。生活ができなくなったりするんですよ。
(赤江珠緒)うわー!リスクも高いですね。
(町山智浩)そうなんですよ。だから、こういうリアリティー番組に出演した人たちの中で、本当に自殺者が多いんですよ。
(山里亮太)大丈夫かな?『テラスハウス』・・・
(町山智浩)で、まあこれでそういう話になっていくんですよね。怖いんですよ。で、まあ中でですね、いろんな事情がある人たちが出てきてですね。たとえば、なんか花嫁候補になるはずなのに、彼氏の花婿の方と接すると、なんか逃げちゃう人がいるんですね。で、なんだろう?と思ってたら、番組の中で突然、『ごめんなさい!私、本当はレズビアンなの』って告白しちゃうんですよ。
(赤江珠緒)えっ!?