町山智浩 テレビドラマ『アンリアル(UnREAL)』を語る

町山智浩 テレビドラマ『アンリアル(UnREAL)』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、リアリティー番組の内幕を描いた人気テレビドラマ『アンリアル(UnREAL)』を紹介していました。

(町山智浩)本題に入るんですけど、いまアメリカね、映画がないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういう時期なんですね。

(町山智浩)新作映画がなくて。9月の半ばぐらいまで行くと、アカデミー賞狙いの映画がどんどん公開されるんですが。ちょっと間が空いているので、テレビの話をします。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)今回ご紹介するのは、アメリカのリアリティー番組というのの内幕を描いだドラマで『アンリアル(UnREAL)』という番組を紹介します。これ、変なのは、リアリティー番組っていうのはリアルな普通の人の・・・なんだろうな?『ビッグダディ』とかそういうやつですね。あと、『テラスハウス』。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)とか、そういう普通の人たちとか芸能人も含めて、台本なしでただ生活してたりするのをビデオでずっと撮影して。それを放送するっていうのをリアリティー番組っていうんですけど。日本では、なんか特別な呼び方、あります?

(山里亮太)いや、特に。言い方はないですよね。

(町山智浩)リアリティー番組とか?

(山里亮太)『リアリティー番組』とも言われてないですね。その言葉もあんまり定着してないです。

(赤江珠緒)あんまりないですね。

(町山智浩)あ、定着してないんだ。まあ、これの内幕。実際に作っている人たちはどういう風にやっているのか?っていうのを描くドラマがこの『アンリアル』っていう・・・『Unreal』っていうのは『リアルじゃない』っていう意味で、ひっくり返ってるんですけどね。意味がね。

(赤江珠緒)うん。

人気リアリティー番組『The Bachelor』

(町山智浩)で、これはね、アメリカですっごい人気のね、『ザ・バチュラー(The Bachelor)』っていうシリーズがあるんですよ。10年ぐらい続いているやつで。これはね、1人のイケメンの、ものすごいハンサムで大金持ちの王子様がいるんですね。未婚の。で、『Bachelor』っていうのは『独身男』っていう意味ですけど。で、その人の花嫁になりたい人が25人集まって、1人の花婿と25人の花嫁が一緒に暮らすっていう番組なんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)すごい豪邸みたいなところに一緒に暮らすんですけど。暮らしながら、大金持ちの玉の輿になる条件っていろいろありますよね。たとえば、マナーであるとかね。パーティーをコーディネートする能力だったり、社交だったり、ダンスだったり。あと、大金持ちになったら実際に経営とかにも関わらなきゃならないから、そういう知識であったり。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)そういういろんな、社交界で生活するための能力を毎週毎週、コンテスト形式で競い合って。で、毎週何人かを脱落させえていくっていうゲームなんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)で、最後に何人かが残るわけですよね。そうやっていくと。最後に残ったうちの1人に、その花婿候補がプロポーズをするという。本当に結婚しちゃった人も、いままでに何人かいるっていうことで。

(赤江珠緒)うわー、これはちょっと興味深いです。見ちゃうかもね。面白そうだもん。

(町山智浩)そうなんです。しかも、かならず超イケメンで。貴族だったり大金持ちの御曹司っだったりですね。まあ、めちゃくちゃ成功している実業家だったりして。そういう人が、最高の花嫁がほしいからっていうことで、この番組に出演するっていう形式なんですね。で、まあいろいろ叩かれているわけですよ。

(赤江珠緒)ええ。

(山里亮太)叩かれる?ほう。

(町山智浩)まず、これ差別じゃないの?みたいな話がありますよね。

(赤江珠緒)25対1っていうところがですか?

(町山智浩)そう。で、それをひっくり返してね、花嫁が1人で。大金持ちのお嬢さんとか実業家のすごい美女が25人の花婿から選ぶっていう逆パターンもあるんですよ。

(赤江珠緒)おおー!

(町山智浩)はい。まあでも、これって一種、カネ目当てで一生懸命がんばるみたいな世界で。結婚っていうものを、愛よりも金を優先している感じがするじゃないですか。

(山里亮太)はい。モロですよね。

(町山智浩)それで結構叩かれたりしてるんですけども。それだけじゃなくて、すごく叩かれているのは内部告発で、出演した人たちがですね、『これはヤラセだ!』って言ってるんですよ。

(山里亮太)うわー!

(町山智浩)たとえば、すごく嫌われた人がいるんですね。番組の中でもう、『なんて嫌な女!』みたいな感じで、視聴者がみんな、『この女、意地悪で嫌いだわ!』みたいなことになるわけですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)でもそれはまず、『演出でそういう風にでっち上げられちゃったんだ。自分は悪役にされちゃったんだ』みたいな話をしてるんですね。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)たとえば、誰かが何か失敗するじゃないですか。たとえば、料理をみんなでコンテストでするという状況で、誰かがひっくり返しちゃったりするでしょ?したらそれを、『ははっ』って鼻で笑った女の人がパッと編集でカットインで入ると、『なんて嫌な女だろう!』って視聴者はみんな、思うじゃないですか。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)ねえ。『でもそれは全然違うシチュエーションで私が笑ったカットを、編集で入れられちゃったの!』とかいうことになっているんですよ。

(赤江珠緒)あ、そういうヤラセ?なるほど。

(町山智浩)そう。全然違うところで起こっているのを入れたりですね。そういうことで、編集のマジックで、善玉と悪玉を作っているということでまず、内部告発があったんですね。

(赤江珠緒)はー!そりゃ印象、変わりますね。

(町山智浩)そりゃあもう、変わっちゃうんですよ。本当に。だから、ちょっと泣いたりしているところで、全然関係ないところで、たとえばお化粧を直していて目にゴミが入ったみたいな状況でも、それを誰かのちょっと身の上話を聞いてるところにそのカットを入れるだけで泣いた感じになって。その人は結構いい人みたいに見えるんですよ。

(赤江珠緒)ああー!

(町山智浩)単に目にゴミが入っただけだったりするのを。それを撮ってるんですよ。全部ね。それでまあ、怒られたり。あとは、『あなた、ちょっと来なさい。あなた、全然目立ってないわよ』っていう風にディレクターに言われるんですよ。1人の出場者が。花嫁候補がね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、『えっ?そうなんですか?』『あなたね、あの人とケンカしなさい!』とか言うんですよ。

(山里亮太)(笑)

(赤江珠緒)ほうほうほう。

(町山智浩)『そうしないと、あなた、残れないわよ』っていう話になってくるんですよ。

(赤江珠緒)まあ、そりゃちょっとドラマチックなこともないと。

(山里亮太)演出という。まあ、ね。

(町山智浩)そう。台本があるわけじゃなくて、演出があるんですね。で、その演出を受けたとか、やられたとか言ってる出場者の人たちがその後にいろいろ告白して。問題になっているんですが。最大の決め手は、これを作っていて実際にこの番組のディレクターとかプロデューサーとして番組作りをやっていた女の人が、『もうこんなことには耐えられない!』って辞めちゃって。で、その内幕を暴露した短編映画を作っちゃったんです。

(赤江珠緒)えっ!?

(山里亮太)いや、いちばんダメな・・・(笑)。

(町山智浩)裏切りみたいな感じですけど。

(赤江珠緒)内部告発的な。

(町山智浩)内部告発ですね。これ、サラ・ガートルード・シャピロ(Sarah Gertrude Shapiro)っていう女性がですね、ずっとスタッフで関わっていたのに、我慢できない!って辞めて、暴露映画みたいなのを作りまして。自主制作で。それがこの、今日紹介する『アンリアル』っていうドラマの原作なんですよ。

(赤江珠緒)へー!

リアリティー番組の元制作者が原作を担当

(町山智浩)内部情報を持っている人がずっと原作者として『アンリアル』についてやっているんで。非常に正確だって言われてるんですね。

(赤江珠緒)リアルだと。

(町山智浩)これはその、25人の花嫁が1人の花婿に殺到して、一緒に暮らすっていうですね、番組の現場からの中継みたいなドラマになっているんですよ。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)主人公はレイチェルさんっていう、その番組の下っ端プロデューサーですね。プロデューサーっていうと偉い人ばっかりだと思うんですけど、下っ端プロデューサーっているわけですよ。

(赤江珠緒)うん。

(山里亮太)はいはい。『APさん』っていいますね。

(町山智浩)で、その人がレイチェルなんですけども。この人がまずですね、金がなくて、スタジオに暮らしてるんですね。で、お風呂とか入れないから、洗面所で脇の下を洗ったりしてるような『汚ギャル』ですね。いわゆるね。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)で、ボロボロなんですけども。とにかくこの番組を続けないと、家賃も払えないと。家賃が払えなくて家を追い出されちゃったんで。この番組になんとかついて行こうとするわけですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)その花婿探し番組。これ、『Everlasting』っていう番組になってますけど。ところが、これがまたとんでもない内容でですね。花婿候補として出てくるアダムっていう男はですね、イギリスの貴族の家系で。しかも、全世界にホテルチェーンがある大企業の御曹司ってことになってるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、まあみんな玉の輿に乗りたくて殺到するんですけども。実は彼は破産してるんです。

(山里亮太)おおっ!

(町山智浩)っていうのは、女狂いで、セックス中毒なんですよね。この人は。で、すごくハンサムなんですけど、めちゃくちゃやっていたんで、親から財産分与権を奪われちゃってるんですよ。で、自分でやったビジネスも失敗してて。これはヤバい!ってことでこの番組にパブリシティーのために出演してるっていう秘密があるんですね。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、すっごいハンサムで優しいんですけれども、この番組に殺到している25人の花嫁にちょこちょこ手をつけたりしてるんですよ。セックス中毒だから(笑)。で、それをこのレイチェルさんっていうヒロインは隠さなきゃなんないわけですよ。この番組を成功させるために。

(赤江珠緒)うん。

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