宇多丸と宇垣美里『虎に翼』終戦と日本国憲法公布を語る

宇多丸と宇垣美里『虎に翼』終戦と日本国憲法公布を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんと宇垣美里さんが2024年6月3日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でNHK朝ドラ『虎に翼』第9週までの内容についてトーク。終戦と日本国憲法公布について、話していました。

(宇多丸)ということで、宇垣さん。ちょっと話すことは溜まってるんですけど。

(宇垣美里)なんか溜まりすぎていて、何もしゃべれない。結局(笑)。

(宇多丸)いっぱい話すことがありすぎるから、もうしゃべらないみたいな、そういう感じになってるっていう(笑)。

(宇垣美里)爆発しそう、みたいな。そういう感じですね。

(宇多丸)まず言えるのは、やっぱり『虎に翼』……。

(宇垣美里)!

(宇多丸)ちょっとね、先週末にお話する機会があって。その時に……で、その時は僕、まだ先週分の全部を見きれてなかったんですよ。

(宇垣美里)すいません。私、それを存じ上げず……。

(宇多丸)で、宇垣さんがものすごい勢いで話すのは僕がものすごく「はあ……そうなんですか」みたいな感じで。たぶんね、さぞかし「こいつの、手応えねえ!」みたいな感じだったと思うんですけど。

(宇垣美里)「今はそういう気持ちじゃないのかな?」って。

(宇多丸)違うんですよ。見てなかったの。あの大事なところを。

(宇垣美里)すいません。確認もせずに。でも本当に皆さんがたくさん、トラつばメールを送ってくださっていて。

(宇多丸)じゃあ、1個だけ読もうかな? いっぱい送っていただいてます。ありがとうございます。「NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』、アトロクでの宇垣さん、宇多丸さんの猛プッシュにより、U-NEXTで僕も見始め、あっという間にリアルタイム放送回に追いつきました。ちゃんと朝どう見るのは初めてですが……」。こういう方もいらっしゃるかもね。僕も含めて。「あまりの面白さにどハマりし、帰宅まで待てず、仕事中にこっそり見ては泣きそうになって一時停止という」。

(宇垣美里)わかりゅ!

(宇多丸)「静かに、しかし確実に忍び寄る戦争が生活のあれこれを変化させてしまう過程は『この世界の片隅に』を連想しましたし、第9週は物語に大きな大きな転換点でしたね。よく『大切な人は心の中でずっと生きている』なんて言うことがありますが、まさしくそれを映像化した川辺のシーンを皮切りに、第1話では到達点だと思われていたあの新聞記事……」。つまり、僕がね、「あのオープニングの時点でもう5億点だ!」って。日本国憲法が公布される、ここまでたどり着くまでにいろいろ……っていうようなことを勝手に想像して、「オープニングの時点でもう涙が目から前に出るほど泣いてしまった」みたいな話をしてたけども。「到達点だと思われていた新聞記事が再起を意味するものだったとわかる展開。日本国憲法の公布を受けて立ち上がる猪爪家。こんなにも心揺さぶられるドラマもなかなかありません。

『すべて国民は、法の下に平等であつて』という憲法に対する寅子たちのリアクションは本来なら『ああ、今では当たり前だけど、戦後の頃にとっては新概念だったのね』という驚き方をしたいものですが、現実は全くそうさせてくれないです。(本当に平等というのが達成されてるのか?)。宇垣さん、宇多丸さんがおっしゃるように確実に今に向けて作られた作品であることを強く強く意識させます。この先もまだまだ修羅の道ですが、寅子、トラちゃんの行く道を見届けたいと思います」。

(宇垣美里)もう会った瞬間に私は「優三さんが、憲法になって帰ってきた!」って言ったんです。

「優三さんが、憲法になって帰ってきた!」

(宇多丸)で、僕はそれを聞いて「はあ……」って。そうだったんですね。そういうことだったんですね。まあ、これはこれからご覧になる方もいるかもしれないけど。日本国憲法のある種の、平等であったりとか。様々なもの。もちろん不戦の誓いを立てて、理想を込めた日本国憲法というものが公布されるオープニングにある意味、戻ってくる。でも、その戻ってきた時に……。

(宇垣美里)いや、まさかこういう風に受け取ってたとは。もっと高らかな気持ちで「よし!」みたいなシーンだったのかと思っていたのに……っていうところがまた。

(宇多丸)でも同時に、悲しくもあり、でもおっしゃる通り、ここから再び立ち上がるというシーンでもあり。あの新聞がなぜ、ちょっと汚れてたのかとか。ねえ。そんなのも全部、込みで。

(宇垣美里)いろいろ、やっとここでがっちりとはまってくるというか。それも含めてですし。「あの学生時代の仲間たちはそれぞれ、あれを象徴していた人たちだったのか!」っていうのがそれぞれ改めて憲法に……。

(宇多丸)それぞれにね。たとえば民族で差別されないとか。

(宇垣美里)身分であるとか。社会的関係性だとか。そういったものも改めて……「ああ、なんてよくできている!」と思いますし。でも、それって女性だけの話じゃないんですよね。「あなたが大黒柱になる必要はない」って弟に……。

(宇多丸)男性性というのかな? そこからの解放というか。

(宇垣美里)でもあるんですね。

さまざまな仲間たちが投影されている日本国憲法

(宇多丸)そんなこともはっきり語られていて。熱かったですよね。あそこね。しかもそれは、なんていうかとにかく大事な話をするところほど、そんなに愁嘆場として描かないっていうか。

(宇垣美里)ドラマチックではないっていうか。

(宇多丸)むしろコミカルみをちょっと、ユーモアを入れてそういうところは語る。でも、ちゃんと高めるところはむしろ……だから僕、朝ドラのその誇張された演技が、なんて言っていたけど。要所要所はちゃんと映像的な演出で全部、語っていたりとか。だから何かの片手間に、要するに朝の準備をしながら見るのにも見れるし。深みもあるっていうね。あと僕ね、そのねちょっと手前のところなんだけども。「あっ!」っていうところがあって。小林薫さんが演じる穂高先生。要するに彼はずっと力になってくれていて。女性たちの法曹界への進出っていうのをすごくバックアップしていて。別にもちろん悪い人じゃないんだと思うんだけど。ただ、そのなんていうのかな? もう露骨にその時代の男の限界というか。今もあるのかもしれないけど。

(宇垣美里)あと「頭数としてしか、見ていませんでしたか?」っていう感じが私はしてしまって。「雨粒!?」みたいな感じが。

(宇多丸)そうだよね。

(宇垣美里)で、いつかは雨だれが石をうがつかもしれないけれども……。

(宇多丸)「私ではうがてないということですか?」っていうね。だからつまり、ずっと全幅の信頼を置いていて。僕もちょっと前、別のところでさ、「どんなところにも小林薫が1人、ほしいものだ」みたいなことを言っていたんだけども。要するにそこで「あっ!」ってなるっていう。こんなピリッとする展開、ある?っていうか。僕、ちょっとあそこにびっくり感心というか。「甘くねえ!」っていう。

(宇垣美里)その後に起きたことももう正直、あり得ないです。今の感覚で言うと、もうあり得ないことです。なかなか一緒に……ちょっとショックを受けてしまって。

(宇多丸)だからやっぱりさ、こういうドラマで……「悪く見えた人が実はいい人でした」っていうのは結構あっても、その信頼が裏切られる感じって結構、ないっていうか。

(宇垣美里)こういう形でね。しかも、決して悪い人ではないっていう。

(宇多丸)そうそう。その時代の限界っていうか、彼の限界っていうか。ということなんで。それをもちろん、その主人公たちはさらに乗り越えていくんでしょうけれども。結構、ドラマ。特にこういうみんなが見えるドラマにおいては結構攻めた作劇だなって思って。あそこに僕、すごい感心しちゃったんですよね。きつい。あれはきつい。しかもさ、やっぱり戦時中だからもうトラちゃんもさ、ほとんど戦時中は笑わないぐらいじゃない? だからちょっともうね……。

(宇垣美里)「勘弁してくれ……」ってなっていたところででも、ここは逆に笑かすんだ、みたいなシーンもあって。

(宇多丸)そうね。あのお父様のところとかね。

(宇垣美里)そう! 素晴らしいバランス感覚!

『虎に翼』の素晴らしいバランス感覚

(宇多丸)ということで『虎に翼』でした。『フュリオサ』の話もあるが……。

(宇垣美里)ねえ、もう『フュリオサ』!

(宇多丸)本日のメニュー、行ってみましょう!(笑)。

<書き起こしおわり>

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