宇多丸推薦図書『映画原作派のためのアダプテーション入門』を語る

宇多丸推薦図書『映画原作派のためのアダプテーション入門』を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』秋の推薦図書特集の中で波戸岡景太さんの『映画原作派のためのアダプテーション入門 :フィッツジェラルドからピンチョンまで』を紹介していました。

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(宇多丸)じゃあちょっと、最後に私、まさにこの映画化の話とちょうどいいと思うんですけど。私の今回のプッシュ本はこちらでございます。波戸岡景太さんという方が書いた『映画原作派のためのアダプテーション入門 :フィッツジェラルドからピンチョンまで』っていう。この帯にも書いてあるんですけど、「小説が映画になるってどういうこと?」っていう。

で、この波戸岡さんという方は特にピンチョン研究で知られる方なんですけど。原作小説があっての映画っていっぱいあるじゃないですか。それの、原作とこう違うよっていうことがいっぱい書いてある本かな?って思ったら、まあそういうことも書いてあるんですけど。そもそも、小説を映画に置き換えるとはどういうことなのか? みたいな。「アダプテーション」っていう。

(伊藤聡)ああー。アダプテーション。

小説を映画に置き換えるとはどういうことなのか?

(宇多丸)だから「翻案」っていう風に日本語では置き換えられますけども。そういう単純なことじゃなくて。たとえば小説を読んでいた人が「こういうディテールが入ってないからダメだ」とか「こう変えられているからダメだ」とか言いがちだけど……たとえば、これがすごく面白いなと思ったのは、「そもそも原作という概念は映画化されてからはじめて生まれる概念である」と。

(伊藤聡)ああ、なるほど。

(宇多丸)つまり、「最初はただの小説だったものが、映画化されることで原作化するのだ」みたいな。で、様々なそういうアダプテーションの諸相というか。それを具体的な作品で……たとえば、『グレート・ギャツビー』はどういうアダプテーションを行っているか? とかね。あと、それこそピンチョン研究の方ですから、『インヒアレント・ヴァイス』とか。『LAヴァイス』が『インヒアレント・ヴァイス』になる時に、要はどんだけ実はものすごく周到なというか、ポール・トーマス・アンダーソンなりの考え抜かれたアダプテーションなのだ、とか。

(伊藤聡)へー!

(宇多丸)まあ、「絶対に原作を読んでいる人が感じる違和感込みで、これは周到に計算されている話である」とかね。あと、『バードマン』の構造であるとか、いろんなののアダプテーションの構造を明らかにしていて。で、僕はこれを読んでいて改めて思ったのは、もちろん原作小説があってのそういう興味深いものはこれからも……「入門」って書いてあるぐらいで、考え方のきっかけの触りぐらいの薄い本なんですけども。

(伊藤聡)うん。

(宇多丸)たとえば『ブレードランナー2049』は『ブレードランナー』の続編であると同時に、『ブレードランナー』という原作に対するアダプテーションという側面も非常に強く持っているなと。あるいは、『スター・ウォーズ』の『フォースの覚醒』以降の作品は全て、原典としての『スター・ウォーズ』に対するアダプテーションとしての続編であったり。つまり、アダプテーションとしての続編、リブート、スピンオフっていうのがめちゃめちゃ多いと考えると、すごくいろいろと腑に落ちるなと。

(伊藤聡)ああ、なるほど!

(宇多丸)だから『2049』はアダプテーションでもあるというかね。こうアダプテーションしたのだっていうような。だからたとえば、元の捨てられたアイデアをこうやって使っていますよとかっていうのも含めて。なのでいろいろとこれから自分が映画とかいろいろなものを考えるにあたって、すごくいいきっかけで。

映画を考えるいいきっかけになる

(宇多丸)なおかつ、絶対に僕、『バードマン』とかをただ見ていただけでは気づかなかったような様々な、「こういうやり方をしているんですよ」っていうのもすごく詳しく書いていてですね。めっちゃ面白いです。『ギャッツビー』とかも、「ああ、言われてみればそりゃそうだ」って。あるいは、ズバリもう『アダプテーション』ですよね。

(伊藤聡)ああ、はいはい。

(宇多丸)チャーリー・カウフマンの『アダプテーション』の構造とかも。いろいろと、いろんな例で。『オン・ザ・ロード』とか、いろいろと例を出して。あと、『ティファニーで朝食を』。カポーティはさ、「ミス・キャストだ!」って怒っていたじゃないですか。そういう話から始まって、じゃあそのカポーティの……カポーティはカポーティで『ギャッツビー』の脚本を書いて失敗したりしているんですよ。

で、それの経緯とかもいろいろと書いてあって。これは伊藤聡さんにこそおすすめしたい。『映画原作派のためのアダプテーション入門 :フィッツジェラルドからピンチョンまで』。こちら、彩流社という会社から税込みで1944円。これこそタダ同然! 波戸岡景太さんという方が書かれている本です。これは非常にすぐ読めるし、読みやすい。まさに入門というか、サクッと読める本なので。伊藤聡さんの回だから、これがいいかなと思って。

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(伊藤聡)ありがとうございます!

(宇多丸)ぜひぜひおすすめしたいです。

<書き起こしおわり>

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