渡辺志保 ドレイク VS ケンドリック・ラマー 2024年5月6日現在の状況を語る

渡辺志保 ドレイク VS ケンドリック・ラマー 2024年5月6日現在の状況を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんが2024年5月6日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中で『Like That』に端を発するケンドリック・ラマーとドレイクのビーフについてトーク。どんどんディス曲・アンサー曲が発表される状況をまとめていました。(ケンドリック・ラマー『Not Like Us』までについて言及しています)

(渡辺志保)というわけで、ゴールデンウィークも今日で最終日ですし。いろいろ、あれやこれやくっつけて長いお休みを取ってらっしゃる方もいるんじゃないでしょうか。明日から現実が始まりますね、という感じなんですけれども、いかがお過ごしでしょうか? ヤナさんもね、すごく連休は忙しそうで。稼ぎ時みたいな。

(DJ YANATAKE)いや、なんですけど……もう大変なことが起きまくりなんで。もう何をしてても、それどころじゃないし。ちょっと仕事してちょっとSNSに戻るともう、次の出来事が起きてるみたいな。大変でしたね、これ。

(渡辺志保)私も実家の広島に帰っていて。昨日、東京に戻ってきたんですけど。子供をイオンで遊ばせていたら、どんどんどんどんディス曲とアンサー曲が出てきいて。もう本当に、イオンところじゃねえわという感じで、慌てて何とか追いついていってるのかな?っていう感じなんですけど。なので今日は本当に渦中のドレイク、そしてケンドリック・ラマーの一連の騒動についてみっちりお話したいなという風に思っております。

この番組でもちょいちょいキャッチアップしておりますけれども。ちょっとズルズルっと本題に入っていくわけなんですけれども。そもそも3月26日。今から1ヶ月半前ぐらいですかね? メトロ・ブーミンとフューチャーのコラボアルバムの中に収録されていた『Like That』という曲の中でケンドリック・ラマーがめっちゃディスっていた。で、誰をディスっていたかというと、主にドレイク、そしてJ・コールでして。「現代のラップシーンにおけるビッグ3なんてクソだ。ビッグなのは俺だけがいればいいじゃないか」という風に切れ倒したんですよね。

で、その後にちょっとしばらく音沙汰がなくて。ただ、世界中のヒップホップヘッズはこの『Like That』の余波っていうので。「この後、どうなっちゃうんだろう?」っていうことを戦々恐々と見守っていたわけなんですけれども。先日、4月19日にドレイクの『Push Ups』という曲でドレイクがケンドリックをはじめ、他のラッパーたちに対するアンサーをリリースしました。最初にリークバージョンが出ていたんですけれども、その後に正規バージョンとして正式に各プラットフォームにも配信されて。で、その『Push Ups』が出たその後に、今度は『Taylor Made Freestyle』というAIの技術を使った、「なんじゃ、これ?」っていうような感じの……これ、『Taylor Made Freestyle』はディス曲っていうか。ディスはディスなんだけれども、『Push Ups』がいろんなラッパー……リック・ロスとかエイサップ・ロッキーとか、いろんなラッパーに対してのディスも含めていたんですけども。

この『Taylor Made Freestyle』というのは基本的にドレイクがケンドリック・ラマーに対して「お前、早くアンサーを返してこいよ!」みたいなな感じで、ケンドリック・ラマーに対してけしかけるような曲だったんですよね。なんだけど、それはちょっと2パックの遺族の方から訴えられたりもして、その曲は取り下げられたわけなんですが。ドレイクとしては『Push Ups』と『Taylor Made Freestyle』の2曲を同じ日、4月19日に出して。一応、アンサーを返して。「俺はバリバリ戦闘態勢だぜ!」というところを示したわけなんですね。

それで私は本当に「私、何年ヒップホップを聞いてきたんだろう? それでも私の目は節穴だったんだな」って自分に対して心底、がっかりしたんですけれども。前回の『INSIDE OUT』で「これでもう幕引きなんじゃないか?」みたいなことを言ってしまっていて。「ケンドリックはもうアンサーを返さないんじゃないか?」みたいなことを言っていて。

(DJ YANATAKE)いや、や俺もここにケンドリックがまた乗っかってくるとは全く予想をしてなかったよね。

(渡辺志保)そうですよね。しかもドレイクの『Taylor Made Freestyle』、先週の放送でも言ったけれども。その2パックの遺族から正当な訴えがなされて、尻すぼみみたいになった時なった感じが私にはあったのね。ファイティングポーズを取ってはみたけれども「いやいや、ちょっとドレイクさん。これでは困りますわ。やめてください」という風に言われて、シュルシュルシュル……ってなっちゃった感じがあったから。もうこれでひとまず終わりなのかな? 落ち着いたのかな?って思った矢先、4月30日……これは全部、日付を言っているのはアメリカの時間になっておりますが。4月30日になんとケンドリック・ラマーが『euphoria』という6分ぐらいの長いアンサー曲をリリースして、世間をあっと言わせたということになりました。

で、先にしゃべっておくとケンドリック・ラマーが『euphoria』を出した。その後にさらにケンドリック・ラマーがそこに追い打ちをかけるように6時16分……『6:16 in LA』という曲を出した。で、その後、同じ日にドレイクが『Family Matters』というアンサーを返して。で、そのさらに20分後にケンドリック・ラマーがまたアンサーを返して。アメリカ時間だと5月4日。日本だと5月5日の午前中でしたけれども。『Not Like Us』という、さらに追々々撃を出したっていうことになっておりまして。もうしっちゃかめっちゃかなわけなんですけれども。ちょっとここでは4月30日以降にリリースされた楽曲について、簡単にかいつまんで解説しながら、この後どうなっちゃうのかな?っていうことをこれからお話したいと思います。

で、先ほども話したように4月30日にケンドリック・ラマーが『euphoria』というアンサー曲を返したんですね。で、私がまずびっくりしたのは、ケンドリック・ラマーがアンサーをしたということ自体にもびっくりしたんだけど。よく「マルシー・©」「マルピー・(P)」表記っていう風にも言うんですけれども。「C」っていうのがコピーライツで原盤権がどこにあるか?っていう表現なんですね。で、「P」の方はパブリッシング。出版権がどこに帰属するか?っていう表記。で、CとPの表記っていうのはだいたい、たぶん全てのDSPプラットフォームでも……たとえばApple MusicとかSpotifyでも記載されているんですよね。で、メジャーレーベルに帰属している曲はもちろん、そのメジャーレーベルの名前が書いてありますし。自分のインディペンデントのレーベルであれば、そのインディーのレーベル名という、しかるべき所属団体が記載されてるわけなんですけれども。今回のこの『euphoria』に関しては、この原盤権(C)も出版権(P)も並んで表記されているんですが。それが2つとも、ケンドリック・ラマー本人の名前になっていたんですよね。

原盤権も出版権も全てケンドリック・ラマーでクレジット

で、これまではTDEであるとか、その後にUMG(ユニバーサルミュージック)傘下の曲ですよというような表記があったんですけれども。今回はケンドリック・ラマー本人の名前が入っていて。その後に「この曲はUMG、ユニバーサルミュージックグループにライセンスされている曲ですよ」という表記になっていて。一連の『Push Ups』のディスなんかでもドレイクがケンドリック・ラマーに対して「お前の曲って出版権も自分のボスに渡さないといけないんだろう? 自分の楽曲の売り上げの50%はボスに取られてしまうような契約なんだろう?」っていうようなことをラップしていたわけなんですけれども。

そこをちゃんと自分の行動を伴って、ケンドリック・ラマーはひっくり返したんですよね。「いや、俺のマスター(原盤)は俺が持ってる。俺の出版権も俺が持ってるんだからな」っていうことを、ここのテクニカルな表記をもってして。そしてご自身の行動も伴って、「そうじゃないぞ」ということを証明してみせたっていう。で、これは本当に私のGuessでしかないんですけど。ここのその契約書の問題なのか、レーベルのそういう表記の問題をクリアするために『euphoria』のリリースにちょっと時間かかったのかな?っていうようなことも考えたりしました。で、「Z」っていう名前で知られているaudiomackの代表の方がいるんですよ。Brian Zisookさんっていう方がいて。彼のXのポストによると、ケンドリックが表記、この体制で楽曲をリリースしたのは初めてなんですね。で、このケンドリック・ラマー本人のマスターですよということに関して、今回のリリースに関して、(ケンドリック・ラマーの会社である)pgLangは関係ないそうなんですよね。なので本当に自分1人でリリースしましたというような主張になっているっていう。

で、この『euphoria』がリリースされた直後、Rap Geniusのサイトが一時的にクラッシュしたということで。もう本当にたぶん世界中のヒップホップファンが「ケンドリック、何を言っているんだ?」ということでみんなが一斉にリリックを調べたみたいなんすよね。で、このタイトルの『euphoria』って「多幸感」っていう意味なんですけれども。たぶん、アメリカのポップカルチャーを追っている人にはおなじみだと思うけど。これってかつて、HBOが作った同じタイトルの『ユーフォリア』っていうドラマがあって。それはドレイクがエグゼクティブプロデューサーに名を連ねているドラマなんだよね。でもドラマ自体は結構、すごく暗くて。それがしかも青少年に悪い影響を与えるんじゃないか?っていうことで。そういう意味でも問題になったドラマ作品でもあります。

それでここでも本当に、もうケンドリック・ラマーは心底、ドレイクのことが嫌いなんだなっていうことがわかる長いバースがラップされているわけなんですけれども。たとえば最初の方でも「You’rе not a rap artist, you a scam artist with the hopes of being accepted(お前はラップアーティストじゃなくて詐欺アーティストだ。認められたいと願っている、そんなふりをしているんだろう?)」みたいなことをラップしていて。で、「トミーヒルフィガーをお前が着ることはあっても、FUBUは絶対に着ない」っていう風にラップしてるんですよ。で、トミーヒルフィガーってかつて、ラッパーたちも特に90年代とかね、たくさん着ていたブランドですけども。創設者のトミーさんは白人なんですよね。それで何度か、そのトミーさんのすごくレイシスト的な発言とか言動が問題になったようなこともあって。

で、FUBUは逆にブラックのデザイナーの方が作ったブラックのためのブランドということで。そういうところでもドレイクのことを揶揄しているとか。あとは、ドレイクの子役時代について「あんなにださかったよな」みたいなことも言ってるんですよね。あとはドレイク、カナダ出身ですから。カナダにはカナダの方言というかアクセントがあるんですけれども。そういうところもいじっているし。極めつけはですね、「I hate the way that you walk, the way that you talk, I hate the way that you dress」っていうことで。ケンドリックはドレイクの歩き方も気に入らないし、話し方も気に入らないし、服の着こなしも気に食わないっていう。

(DJ YANATAKE)もう生理的にダメっていうことじゃんね(笑)。

(渡辺志保)もう全部、受け付けないっていう。で、「お前が俺にフィーチャリングを頼んできてびっくりしたよ」っていうこともラップの中で言っていて。これも、その火種のひとつになった『First Person Shooter』という、ドレイクがJ・コールをフィーチャーした曲なわけですけども。あれは元々ドレイク、J・コール、ケンドリックの3名でドレイクは曲をやりたかったらしいんですよね。で、それをケンドリック・ラマーが断ったっていうようなことをここで暴露しているという流れもあります。「pushin’ P」というスラングが去年でしたかね? ガンナが発したスラングが非常に入りましたけれども。「pushin’ Pもクソ」みたいなことを言っていて。

別にこれ、たぶんガンナに向けたラインではなくて。「P」っていうのはあと、ファレル・ウィリアムズの頭文字も「P」だから。ドレイクがファレルにすり寄るのも気に入らないっていうようなことをたぶん、ここで言ってるのかなと思います。で、その後に「let me see you push a T」って言っていて。「Tをプッシュしろ」って言っていて。これはプシャ・Tとかけている。ラインなんですね。で、プシャ・Tは元々、ドレイクのことが……彼もまた、ドレイクのことが大嫌いですから。そういうことを引っ張ってきたリリックになっております。で、その後ですね、全てが……ドレイクのあれもこれもが気に食わない。そして一番気に食わないとケンドリックがおそらく思っているのがですね、「Nワードを発すること。それが本当に我慢ならん」ということをラップしていて。「本当にNワードを使うのをやめてくれ!」っていうことをずっと、ラップしています。

で、この曲の一番最後も「We don’t wanna hear you say “n*gga” no more(俺たちはお前がNワードを発するのをこれ以上、聞きたくないんだ」っていうことをラップしているっていうのと。あとはですね、前回も『Push Ups』の時に話したかと思うんですが。結構、みんながドレイクに対して集中攻撃していて。カニエもポッドキャストのインタビューで「みんながドレイクをEliminate(排除)しようとしている、そのエネルギーがやばい」みたいなことを言ってましたけれども。ケンドリックもその話題をリリックの中に盛り込んでいて。20対1……この「20」は大勢ですね。フューチャーとかメトロとかを含めた20と、ドレイクが「1」になってるわけですけど。ケンドリックは「これは20対1の戦いじゃなくて1対20なんだ」っていう風にラップをしていて。で、この1対20の「1」っていうのは今度はケンドリックなんですよ。それで「20」っていうのがドレイクの数字になってるわけなんですが。

それはなぜかというと、ドレイク1人の後ろにいくつものゴーストライターがいるわけで。かつ、ドレイクはAIも使っていて。ケンドリック的には「俺は人間とラップしてるのか? それともAI相手にこのバトルをしているのか? わかんなくなっちまうよ」っていうような。その今までのドレイクのバックグラウンドであるとか、『Taylor Made Freestyle』でラップしたこと。『Push Ups』でラップしたことっていうのが本当に綺麗にオセロがひっくり返るような感じで1個ずつ、ケンドリックが反撃しているっていう。で、『Push Ups』でもドレイクがケンドリック・ラマーの家族のこともネタにしていて。ケンドリック・ラマーは『euphoria』の中でも「俺は子育てに忙しいんだ。俺は面倒を見なきゃいけない息子がいる。でもお前はそんな子育てのこと、何もわかってねえだろう? 俺は自分の息子に品格であるとかモラル、ディシプリン……ストリートでの品格などを教えなきゃいけない。俺はそれに忙しいんだ。でもお前はそんなこと何も知らねえだろう?」っていうようなことをラップしていて。

本当にドレイクに対する全方位ディスになっているんですね。で、本当にリマーカブルな部分だらけなんですけどもひとつ、覚えておいていただきたいのはケンドリックはドレイク以外のことはディスってないんですよね。ドレイクは『Push Ups』でエイサップ・ロッキーとかリック・ロス、ザ・ウィークエンドのことなんかもディスっていたけれども。ケンドリックはあくまでドレイク1人のことを標的にしてラップをしているというような感じなんです。というのがざっくり、4月30日のケンドリック・ラマーの『euphoria』の内容でした。

(DJ YANATAKE)一旦、お疲れ様です(笑)。

(渡辺志保)じゃあ一旦、聞いてもらいますかね? どんな感じかっていうのを。最初、すごく静かに始まっていきます。じゃあ、お願いします。『euphoria』です。

Kendrick Lamar『euphoria』

(DJ YANATAKE)今、聞いてもらったのはケンドリック・ラマー『euphoria』でした。

(渡辺志保)この怒りみたいなエナジー、皆様も感じられたんじゃないかなと思います。で、この『euphoria』を出してドレイクがアンサーを返さぬうちに、なんとこの3日後かな? アメリカ時間の5月3日なんですけれども、今度ケンドリック・ラマーが『6:16 in LA』という、更なる追い打ちをかける曲をリリースしました。これが「6時16分 in LA」っていうことで。「LA時間で6時16分」っていうタイトルなんですけれども。これもさ、すごいびっくりするぐらい、皆さんの素晴らしい考察がなされているわけなんですけれども。

タイトルとURLをコピーしました