大島育宙 ロバート・ダウニー・Jrのキー・ホイ・クァン無視を生んだアカデミー賞の打ち上げ的ノリを語る

宇多丸とMs.メラニー アカデミー賞演技部門プレゼンター5人体制の弊害を語る 文化放送

大島育宙さんが2024年3月12日放送の文化放送『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』の中で第96回アカデミー賞についてトーク。ハリウッドの1年間の打ち上げ的なイベントであるとアカデミー賞の性格を表現し、だからこそ、ロバート・ダウニー・Jrによる助演男優賞のプレゼンター、キー・ホイ・クァンを無視したかのような態度が生まれてしまったのではないかと話していました。

(西川あやの)で、昨日のヘッドラインニュースでもちょっと取り上げたんですけれども。第96回アカデミー賞が日本時間の昨日の午前中に発表されてましたけども。

(バービー)96回もやってんの?

(大島育宙)そうそう。

(バービー)年イチで?

(西川あやの)96年前からやっているっていうことですね。

(バービー)すごいじゃん!

(大島育宙)えっ、初回を見た人ですか?

(バービー)私、初回レベルです。今年、初めてXのタイムラインにアカデミー賞がこんなに出てきたから。たぶん大島さんをフォローしたからかな?

(西川あやの)今までは日本映画が受賞した時だけ……今回、だいぶ受賞したからかなり報じられるようになったっていうのも。

(大島育宙)たしかにそうですね。日本の映画が1個も引っかかってないと、受賞作品が日本公開されていない作品ばっかりみたいなことも結構あるんで。まだスピルバーグとかね、すごい有名な人がバーン!って入ってる時とかは引っかかりがあるけども。なかなか報道しづらかったっていうのがまあ、いいことなのか、悪いことなのかわかんないけど。今回は少なくとも日本関係の作品が3本、ノミネートされてますっていうので報道しやすかったっていうのはあるし。

(西川あやの)『ゴジラ-1.0』と『PERFECT DAYS』と『君たちはどう生きるか』。

(大島育宙)で、三つとも日本で公開されて、ヒットしてるんで。「あれ、見たけどさ」とか。いろんな人が話題にしやすい環境っていうのはすごいあったと思いますね。

(西川あやの)あと以前、受賞した作品の中でも「サブスクで見られます」みたいな感じのものがここ数年で増えているので。たしか日本にとって身近に徐々になっていっている賞なのかもしれないですね。

(バービー)アメリカでやってるんですって?

(大島育宙)そこから?(笑)。普通にめっちゃアメリカっぽくない?(笑)。

(バービー)映画祭、映画賞みたいなのって、どこでやっているのとか、全くわからなくて。ヨーロッパ系のイメージとかもありますし。

(大島育宙)主な強い映画祭は基本的にヨーロッパかもしれないですね。カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンとかね。フランス、イタリア、ドイツとか。だから、そうですね。だいたいそうかもしれないです。

(西川あやの)そういう中でアカデミー賞って、どういう位置づけなんですか?

(大島育宙)なんかね、これも解釈が結構難しいんですけど。なんか正式には、厳密には映画祭ではないみたいな、そういう風に説明する人とかもいたりして。なんかね、僕のノリですよ? 僕の解釈で言うとハリウッド。だから世界の映画業界じゃなくて、アメリカの映画業界の打ち上げ、忘年会みたいな感じ。だから日本のテレビで言うと『M-1』とか『キングオブコント』とか、そういうのよりも僕的には『オールスター感謝祭』とか、そんなイメージが結構強くて。

(西川あやの)すごい権威が急に下がるんだけど(笑)。

『オールスター感謝祭』のようなイメージ

(大島育宙)そう。権威って、実はあんまりないんですよ。批評家たちとかからすると。でも、やっぱりすごい有名だから。どっちかっていうと、ハリウッドみんなで一丸となって、どの作品を推しますかっていう総選挙みたいな感じで。

(西川あやの)たしかに、山口さんも昨日、そうおっしゃってたかも。その人たちの気持ちの面が映画としての出来とかよりも重要になっているって。

(大島育宙)そうそう。「政治、やってますよ」って全然言うし。M-1とかだったら、そんなの言っちゃダメじゃないですか。「◯◯さんと仲がいいんで。上沼さんの1票は確定してるんですけど」とか、そんなことを言ったらたぶんもう、ドン引きされるじゃないですか。

(西川あやの)アカデミー賞って、そういうこと言うんですか?

(大島育宙)言ってはないけど。誰が何に入れてるかは、だいたいわかりますね。

(バービー)へー! 投票制なの?

(大島育宙)投票制です。業界人が入れる賞なんですけど。全部で言うと、ノミネート作品が何十本もあるんで。正直、見られていない作品もあるんですよ。ノミネートされてるけど見られてなくて。「これは有名で。みんながとっついて見てるから、確定だろうな」みたいなやつもあるんですよ。結構いい加減ですよ、だから。

(西川あやの)だから喧嘩とかするんだ。

(大島育宙)そうそう。だからあれもどこまでガチで、どこまでが本気で叩くべきものなのか?っていうのは結構、難しいところもあって。でもその表で見せるメッセージ込みのものだからこそ、そこは気をつけなきゃいけないっていう部分もあって。

(西川あやの)じゃあ本当に『オールスター感謝祭』じゃないですか。

(大島育宙)そうですね。

(西川あやの)なんか東京03とモメるみたいな。

(大島育宙)ああ、そうね。父ちゃん(島田紳助)ね。

(バービー)(小声で)言っちゃダメだよ……。

(大島育宙)まだ? まだダメなの?(笑)。

(西川あやの)でも、そう考えると身近になりますね。

(大島育宙)そう。だから今回ので言うとロバート・ダウニー・Jrが助演男優賞を取って。前回の受賞者のキー・ホイ・クァンからトロフィーをもらう時に一切、一瞥もくれなかったっていうのがね、めちゃくちゃアジア人差別だっていう風に言われていて。「いや、それは考えすぎじゃない?」っていう風に擁護しようとする向きも結構あるんですけど。「いやいや、ここは考えすぎなきゃいけない場所なんだよ?」っていう。アカデミー賞はみんなが見ている政治的な場所だからこそ、普段のロバート・ダウニー・Jrが……これは、わかんないですよ? 身近なタクシー運転手さんとか、お店に行った時とかの店員さんのアジア人の人とかにどういう態度を取っているかは知らないけれども。少なくとも、あそこは絶対に敬意を表現しなければいけない場だった。それを彼はサボっていたっていうことで叩かれるべきだなと僕は思ってるんですけどね。

(西川あやの)うんうん。

(大島育宙)だから、あそこは社交の場なんですよね。社交を表現する場だと僕は思っているんで。

(バービー)「打ち上げだ」って聞いてから、「だからそういうことが起こったのかな」みたいな感じがしたけど。

(西川あやの)今までのいろんなことも含めて。

(大島育宙)そうね。打ち上げだからこそ、特権側の人は気を抜いてるんですよ。だから、差別をしちゃうんですよね。

(バービー)いつも通りかどうかはわかんないけど。

打ち上げだからこそ、特権側の人は気を抜いている

(大島育宙)そうそうそうそう。だから黒人の人とか、あと病気とかをいじっちゃう(クリス・ロックがウィル・スミスの妻、ジェイダ・ピンケット・スミスの病気をいじった)っていうのもあるんだけど。でも、いじられたくない側とか、虐げられてきた側の人っていうのは「普段よりも平等でいられる場」だと思ってるから。で、「そうであることを世界の同じ属性の人に表現する場」っていう。だからキー・ホイ・クァンっていう去年、助演男優賞を受賞した人とかは「アジア人でここまで頑張ったんだぜ。みんなと対等。白人の金持ち出身のやつらと対等なんだぜ」っていうことを背負ってきてるんですよね。ロバート・ダウニー・Jrはその人をナメちゃいけなかった。ということで、あれはロバート・ダウニー・Jrの表現の失敗だと思うしね。だからウィル・スミスが暴力を振るったのはあれ、ダメなんだけど。でも、その表現の場で「俺はナメられてないんだぜ」っていう表現をしなきゃいけないっていうこともあるんですよね。

(西川あやの)その世へのアピールの場っていうか。注目されてるだけあって。

(大島育宙)そうそう。映画そのものは言い方は悪いけど、ちょい二の次の表現の場でもあるっていうのが僕の解釈ですね。

(西川あやの)ただいつも、ラジオ番組でもアカデミー賞を取り上げるので。結構、今までもね、笠井信輔さんの予想とかを毎年、紹介したりとかしてて。結構、すごい当たり率なんですよ。で、今年も全部、送られてきましたけれども。

(大島育宙)ぶっちゃけ、予想はね、楽なんですよ。結構。まあ、全部当てるとかは難しいかもしれないですけど。だいたい、それまでの直前の前哨戦と言われる映画祭とかでの拍手の勢いとかで。「これ、めちゃくちゃ人気じゃん」とかっていうのもわかるんで。だからちゃんと見てると、賞レースの予想としては結構楽な方で。競馬とかより全然楽だと思います。

(西川あやの)競馬よりも楽なんだ。だから今回も焦って、今日に間に合わせるように『哀れなるものたち』。大島さんが以前にコラムで推してまして。その後にバービーさんもご覧になってましたけれども。見てきました。

(バービー)そうなんだ。今のを聞いたら、見なくてもよかったかも?(笑)。

(西川あやの)でもね、見てよかった。

(大島育宙)いい作品ですよ。

(バービー)私、大好き。

(西川あやの)ねえ。作品として本当に素晴らしいですよね。

(大島育宙)で、中盤に『哀れなるものたち』がすごい連続で賞を取っているところがあって。「これ、作品賞とかも行っちゃうんじゃないの?」みたいな勢いとかもありましたけどね。まあ、主演女優賞までは行きましたけども。「すごい押されているな」っていうのは『哀れなるものたち』でしたね。今回は。

(西川あやの)でもやっぱり「衝撃を与えた」とか「注目を集めた」みたいな映画が選ばれやすいんですか?

(大島育宙)そうですね。で、バービーさんの前で、説明するのはややこしいですけど。『バービー』っていう映画は作り方があざとかったり。「元々あるキャラクターコンテンツを使っていて、ずるいじゃん」みたいなニュアンスとかもあったりして。かなりひがまれている部分はあるんじゃないかって言われてますね。

(西川あやの)それで今回、曲の賞を。

(大島育宙)そうですね。「音楽の部分は評価してやってもいいけど、作品の作り方までは俺らは認めないね」みたいな岩盤があるという。あと「ヒットしすぎていて、嫌だね」みたいなのもあると言われてますね。

(バービー)それもひっくるめて、ハリウッドだね。

(大島育宙)そうなんですよ。すごい嫌なところも出るイベントなんですよ。

すごい嫌なところも出るイベント

(バービー)でもケンが歌って踊ってましたよね?

(大島育宙)そうそう。「ああいうのは楽しむのに、投票はしないんだ?」みたいな(笑)。

(西川あやの)そういうとこも含めて、『オールスター感謝祭』だというね。

(大島育宙)みんなの嫌なところも出るっていうのもあるけど。まあまあ、そうやってちょっとずつ成長していくっていう。「今、こんな感じだよ。アメリカ人の考えてることは」みたいな感じですね。

<書き起こしおわり>

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