大島育宙さんが2024年2月6日放送の文化放送『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』の中でドラマ『セクシー田中さん』の原作漫画の作者・芦原妃名子さんが亡くなってしまった問題についてトーク。この一件によって浮き彫りとなった原作を映像化する際に生じる様々なトラブルについて、話していました。
(西川あやの)そして火曜クリエイティ部、今日のピックアップニュースはこちらです。原作と映像化で起きるトラブルについて。『セクシー田中さん』の原作者で漫画家の芦原妃名子さんの死去を受けて今、改めて注目されている原作と映像化の間で起きるトラブルについて、様々なクリエイターたちが問題提起しています。これ、先週のピックアップニュースで大島さんと取り上げましたけれども。いろんなトラブルが表面に出てきていて。
記事でもいろんなことが語られているっていう例がこの1週間の中で、多く取り沙汰されていたわけですね。たとえばこの原作を映像化する際、作品はもちろん、その原作者さんにお支払いする金額についての問題を指摘する声っていうのが多くあがっていて。たとえば『海猿』とか『テルマエ・ロマエ』とか。あとは『銀魂』の映像化について、いろんなところで原作者の方がコメントをしてらっしゃったりするんですけれども。
これ、「そもそも金額の設定は契約の問題である」っていうことなんですって。たとえば映画化……なわち原作を翻案するにはどのような契約がなされているかがポイントになるっていうことで。たとえば小説を映画化とか、あとはゲーム化をしたりする行為。それから1話完結形式の漫画の連載において、同じキャラクターを用いて新たな続編を創作する行為などがこの「翻案権」っていうところが重要になってくるっていう話なんですよ。ただ、そういう中でその原作者の方がどういう契約をするのか?っていうのは結構、個人でやられてる方が多いので。本人があんまり詳しいことがわからずにサインしてしまって。「ああ、ぜひぜひ映画化を進めてください」っていう話になったりとかして。その後、結構苦労されてる方が多いっていうお話なんですよね。
(バービー)個人だからね。そこでね、強大な組織というか企業と個人で契約を結ぶってなると、個人はかなり立場が弱いですよね。
(西川あやの)自分の作品の翻案に関する交渉を弁護士に行ってもらうということまでするかどうかはともかく、自分の権利をしっかりと主張できなければ、その金額も安く設定されてしまうというケースがあるってことなんですね。ただ、こういった中で原作者の方たちをどう守るか? 原作者の方たちがどう行動していくのか?っていうところが今、改めて注目されているっていうことですね。
(大島育宙)そうですね。どういう問題によって今回の訃報の引き金となったのかについては、具体的にはまだ遺書とかの中身が発表されてないので、これは全然わからない部分です。なのでみんなが想像で「これはこういう問題があった」とか「実はこう思っていたんじゃないか」っていうことが広がりやすい状況になっていて。なので、いろんな原作者の方が言葉を出していて、それが議論に繋がっているという状況なんですけれども。その中で議論がいろいろと錯綜してるというか。その「権利」と言ってもいろいろあるよねっていうお話で。お金の話も……それは「使用料の安さ」っていう話とかで。
安すぎる原作使用料問題
(大島育宙)それは映画の会社とか出版社とかはたくさん儲けていたとしても、原作者には「割合」で入らないっていうことですね。たとえば「映画は何十億円ものヒット作となっているのに、原作者に支払われたのは最初の定額の使用料100万円だけだった」みたいなお話とか。それは「『売上に応じて◯%』というような契約だったら、原作者に支払われるお金はもっと増えていくはずだったのに、そうではなくて最初に支払われるお金のみの契約になっていた」っていう風に告発している原作者の方とかもいたりして。それは使用料、お金の問題ですよね。
(西川あやの)「原作使用料」っていうものが先に支払われて、興行収入とは関係ない契約になっていたりするみたいですね。
(大島育宙)そうですね。それからあとは「内容を変更していいかどうか?」っていう、その「翻案権」の部分の話というのもあって。その二つの話が同時にされるというだけでも、それまで社会人として生きてきた経験がなく、夢を追いかけて基本的に1人で部屋の中で漫画を書くっていう創作活動をずっとやってきた原作者の方。それがやっと、初めてのドラマ化作品、映画化作品ってなった時に、契約書とかをちゃんと読んで、契約内容をきちんと精査したりできるのか?
「そもそもそういう仕事ができないから、漫画家をやってるんですけど……」みたいな人も漫画家さんとかにはいっぱいいるわけですよね。そういうものを見させられる時間って、1分でも1秒でもつらくなってしまって。「ああ、もういいです、いいです。よきようにしてください……」っていう風に原作者の方、なってしまう可能性もあると思うんです。
クリエイターを守るのは誰?
(大島育宙)だから「漫画家とかクリエイターたちはダメだから、話しても通じないんですよ」「漫画家と契約をするの、大変なんですよ」っていう言い分は、出版社の方にはあると思うんですよ。で、それは漫画家を縛っちゃう……漫画家さんが契約によって縛られちゃうと、「締め切りを守る」とか、ちょっとした融通の話とかによって苦労するのは漫画家さんの方だったりもするっていうこともあるとは思うので。そこでなあなあになっていた部分もめちゃくちゃ多いとは思うんですけど。
でも、それも踏まえて、そんな人たちにもわかるように「契約にはAパターン、Bパターン、Cパターンがあって。Aパターンだとこういう特と損があります。Bパターンはこうで、Cパターンだとこうです」みたいな。そんな人たちにもわかるように懇切丁寧に説明するところまで含めて、それが出版社側の義務なんじゃないの?っていう風に僕は思うので。だから大変だとしても出版社の方、これからは少なくとも今まで以上には絶対、頑張ってくださいよって僕は思いますし。
あとは日本漫画家協会。ちばてつやさんが会長なんですけど。その協会が「先輩の漫画家さんとかがサポートしますので、契約で悩んでる人とかいたら相談してください」っていうことを今回の件をきっかけにして声明を出しているんですけれども。そういう縦の繋がりみたいな、知見のノウハウみたいなことも1人で活動してきている人たちだから作りづらい世界だとは思うので。そういう、助け合う気持ち……気持ちだけのことではないですけども。一発、人に相談すれば「ああ、なんだ。そんな簡単なことだったのか」みたいなことっていうのも多々あると思うので。そういう相談しやすい空気とかも……だから制度の問題、空気の問題、いろいろあるけれども。今回の件で、少しでもよくなったらいいなと思いますよね。
(西川あやの)とか、やっぱり個人的にお話が来た時の平均とか……周りのこととかって、わからないし。聞きづらかったり、話題に出しづらかったりしませんか?
(大島育宙)そうですね。だから同期ぐらいの仲間の方とは絆があったりするんだけど、同期の人とかにちょっと、その自分だけにいい連載が来た時とかに、自慢みたいになっちゃうみたいな。だから話しづらいみたいなのもあると思うんですけど。だから、そんな時はちばてつやさんに聞けばいい、みたいな。まあ、それは冗談ですけども。なんていうか、その縦横の繋がりと、あとは大きい企業はコミュニケーションをさぼらないでくださいよっていうことは強く思いますかね。
(バービー)なんか今回の件で明るみに出たからこういう話になっているけど。これが明るみに出なかったら、私は漫画家さん側が知識を持ってたり、誰かにフォローをしてもらっていたとしても、対等の契約って難しい状況なんじゃないかな?っていうのはちょっと思っていて。一部の芸能事務所とそこに所属するタレントとかでも、いまだに対等契約じゃないところって、たくさんあるじゃないですか。これはそれのひどい版だと思うんで。漫画家さんも今、すごいたくさん卵の方がいる中で。「契約を結べただけでラッキー」って思ってる人も多いと思うから。「対等契約をしよう」って、企業側の方が思ってほしい。
(西川あやの)そうですね。結局、こういうこと考えた時に原作者の方がどこかに所属してマネジメントしてもらうとか、やり取り。契約のことを手伝ってもらうとか、いろんな方法が考えられるんですけれども。やっぱりまずは実写化をしようとした局なのか、出版社なのか。そういうところで会社として、しっかりその著作権とかライツの問題を提示するっていうことをやらないと。それがまず必要だなと思いますね。
(大島育宙)そうですね。クリエイター側が提示できる発想って、すごい少ないと思うから。局や出版社の側がクリエイターが言ってないところまでフォローした選択肢を出さなきゃいけないとは思います。まあ、正直この時間でしゃべりきれる内容ではないですね。もっとたくさんの問題をはらんでいると思います。すいません。長くなりました。
(中略)
(西川あやの)今、ピックアップニュースで漫画の話をいろいろとしていたんですけれども。大島さんが前回、お話された時に「原作が終わってない時点で実写化をしようとして、その作品の取り合いになっている」っていうお話をされていましたよね。
(大島育宙)しました。もう深刻な事態ですよ。本当に。
(西川あやの)私も深刻に感じてる。
(大島育宙)ですよね?
(西川あやの)つらい……。