宇多丸とMs.メラニー アカデミー賞演技部門プレゼンター5人体制の弊害を語る

宇多丸とMs.メラニー アカデミー賞演技部門プレゼンター5人体制の弊害を語る アフター6ジャンクション

Ms.メラニーさんが2024年3月11日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』の中で宇多丸さん、宇垣美里さんと同日に行われた第96回 アカデミー賞を振り返り。男優賞、女優賞など演技部門の発表の際、プレゼンターが5人登場する演出によって生じた弊害について、話していました。

(宇垣美里)それで(プレゼンターが)5人、出てくる演技部門ですね。

(宇多丸)先週もおっしゃってましたけど。過去の受賞者たちが今年のノミニーの人たち全員に語りかけて。「この人は……」って。まあ「あんたは偉い」ってことを言うみたいなくだりですけども。先週の放送でね、「これ、ごちゃごちゃしないか?」みたいな話をしましたけど。まあ、「サービス満点」っていう言い方もできるし。「5倍5倍で楽しいっていう言い方もできるし……まあ、「ごちゃごちゃしてるな」っていうのも。

(宇垣美里)助演女優賞だとアメリカ・フェレーラを(ヒスパニック系俳優の大先輩の)リタ・モレノが紹介するとか。あとはダヴァイン・ジョイ・ランドルフはイェール大学の先輩が紹介するとか。ちゃんと関係性があるところはすごく見てて楽しかったかなと思いましたけども。

(Ms.メラニー)ああ、そうですか。私は本当に15年前に同じことをやった時にも全くいいとは思わなくって。

(宇多丸)15年前に同じテイでやったのね。

(Ms.メラニー)そう。15年ぐらい前。ちょっと何年前だか、覚えてないですけども。

(宇垣美里)『おくりびと』の滝田洋二郎監督の時もそうだったっておっしゃってました。

(Ms.メラニー)だから本当にたぶん15年ぐらい前……もうちょっと前かな? その時も全然いいとは思わなくて。今日もやっぱり、全然いいと思わなかったんですけど。それはいくつか理由があって。やっぱり一番大きい理由としては、本来は俳優賞を紹介される時に、その人たちがそれぞれ出た映画の一番いいシーンの抜きが流れるんですよ。「この人はこの作品でこういう演技をしてる」っていうのを見た後で、「受賞者は◯◯です」っていう風になるんですけども。

(宇多丸)それが定番ですよね。

ノミネートされた俳優の演技シーン映像がカットされる弊害

(Ms.メラニー)でも、それが今回はないんですよ。なぜなら、そういう紹介の仕方をしないから。1人ずつ、メッセージを伝えるみたいな紹介で。それで最後に「受賞者は……」ってやるので。だから、何て言うんだろう? 「これ、映画と関係ないじゃん」というか。「映画のシーンが出てこない」っていうのはアカデミー賞の演技の賞をもらうのに、その人の演技がどうだったのか?っていうのが見えないって……なにそれ?っていう。

(宇多丸・宇垣)たしかに!

(Ms.メラニー)これは全然よくない。

(宇垣美里)たしかに。それは見たかったです。

(宇多丸)言われてみれば。

(Ms.メラニー)結局、なんで5人、集めてくるか?っていうと、それは「視聴率を上げるため」っていう。「豪華にするため」っていうだけのことなので。ただ、見ていてそんなに豪華だとも思わなかったんですよね。私は。

(宇垣美里)まあ、豪華ではあったけども……。

(Ms.メラニー)「えっ、この人選?」みたいなのが結構……なんか微妙な人とかも多くて。

(宇多丸)だから「出てくれる人を」って……言い方、悪い! ねえ。

(Ms.メラニー)そうなんですよ。なんかね、シャーリーズ・セロンとか何人かは「ああ、すごい! この人、出てきたんだ」ってなって。そういう人ばっかりだったらまだ、意味があるような気がする。

(宇垣美里)関係性がある人とかね。

(Ms.メラニー)関係性がある人とか。そうそう。そうじゃないと、あんまり意味がないなって前にも思ったんですけど。それがまた、今日も同じことを感じたので。やっぱり私は1人のプレゼンターの方が……去年の受賞者の人の方がいいんじゃないかなと思いました。

(宇多丸)だし、「この仕事をした人です」を見せてほしいっていうのは、これはもう全くおっしゃる通りで。たしかに。アカデミー賞って、それだわ。

(Ms.メラニー)そうなんですよ。俳優賞なんて、そこが一番大事なわけじゃないですか。そのクリップを見ると……だいたい一番いいところが抜かれるから。それを見て、その映画を「見たい!」と思うわけじゃないですか。それが全然、台無しになっちゃうなっていうところがあって。私としては全く賛同できない感じです。

(宇多丸)でもね、視聴率がもし目当てなんだったら、それはもう数字次第でこの形式が残るかどうか、決まっちゃうかもしれないけどね。

(宇垣美里)来年、どうなるかっていうところで。

(宇多丸)去年のシャンパン色カーペットが不評で、レッドカーペットに戻しましたとかね。よくないやつは「戻しました」ってなるみたいなね。

(宇垣美里)スタイリストが困ったみたいですね。やっぱり赤のカーペットに合う服をみんな、わかっていたのに。あと、床がだんだん汚くなっちゃう問題とか。

(宇多丸)汚れが目立たないっていうのもレッドがよかったっていうことなんだ。

(宇垣美里)なので今回、戻りましたね。脚本賞とか、脚色賞もだったかな? それはスクリプトをあえて上に出していたので。ちゃんとそのセリフというか、言葉に対するリスペクトがあるなと思ったんですけども。ねえ。それを見せたんだったら、たしかに。俳優のトレーラーも見たかったですね。

(Ms.メラニー)そうなんですよ。

(中略)

ロバート・ダウニー・Jr&エマ・ストーン問題

(宇多丸)アカデミー賞に関して、こんなメールが来てました。「今日はSNSでアカデミー賞受賞の情報を追って見ていました。楽しんでいたんだけど」ということを書きながらも「今、話題になってるのがロバート・ダウニー・Jrやエマ・ストーンをはじめ、俳優や制作陣の立ち振舞いを見て、好きな作品に対しての気持ちがなんだかモヤっとしてしまいました」っていう。これ、僕もあんまり詳しくないけど。なんかアジア人差別的な振る舞いをしたんじゃないか?っていう。

(宇垣美里)ノミネーションで受賞者が発表されて。そのオスカーを受賞者が受け取る時に、ロバート・ダウニー・Jrには去年の助演男優賞の受賞者のキー・ホイ・クァンが渡す。もしくはエマ・ストーンには去年のミシェル・ヨーが渡すっていうことだったんですけども。そこでのオスカーの受け取り方がぞんざいだった。もしくは、ちょっと無視をしてるように見えたという風な声が上がっていたみたいなんですが。個人的に、私が見ていた感じだとロバート・ダウニー・Jrは全員に対して失礼だった。つまり、盛り上がってたというか。彼は……もちろん失礼だったと思いますが。おそらく、その現場で誰から受け取るかっていうのもちょっとよくわかっていなかったんじゃないかな?って。

(Ms.メラニー)やっぱりね、さっきも言ったプレゼンター5人体制がよくないと思うんですよ。その形じゃなければ……キー・ホイ・クァンだけがプレゼンターとしていたら、絶対にそういうことにはならないわけで。だから、アジア人軽視とか、そういうことではなくって。単純に混乱している状況だったっていう風にしか、私には見えなかったので。

(宇垣美里)エマ・ストーンもジェニファー・ローレンスが紹介をしていたので。その、彼女から……まあ、お友達だったっていうのもあったんだろうけども。

(Ms.メラニー)私たちだってたぶん、人生でなかなか取れないような賞をもらって。壇上に上がって。ものすごい嬉しくて興奮してて。そこにお友達がいたら、そこに行っちゃうと思うんですよ。単純にそこで、そっちに向かっていっちゃっただけのことで。そんなでもなかったんじゃないかな?って。

(宇垣美里)もちろん、潜在意識の中にはあったかもしれませんけどね。

(宇多丸)まあでも何にせよ、あの人たちでも緊張しているっていうのもあるからね。

(Ms.メラニー)そう。まさにそうだと思います。

プレゼンター5人体制が生んだ「混乱」

<書き起こしおわり>

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