大島育宙 NHK朝ドラ『虎に翼』を語る

大島育宙 NHK朝ドラ『虎に翼』を語る こねくと

大島育宙さんが2024年4月15日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でNHK朝ドラ『虎に翼』についてトーク。ドラマの注目すべきポイントを紹介していました。

(石山蓮華)今月に入って新しいドラマが始まってきていると思いますので。新ドラマでおすすめ作品、大島さん、なんでしょうか?

(大島育宙)はい。NHK見放題、使えます。朝ドラ『虎に翼』でございます。これは近年の朝ドラの中でもかなり話題になっている、初速が速い作品ですね。

(菅良太郎)ちょこっと見たんですよ。でも、1話見たとかじゃなくて、NHKをつけた時に「ああ、なんか新しいドラマ、やってるな」と思って。

(大島育宙)「見かけた」って感じですか?

(菅良太郎)見かけた。

(大島育宙)これはでも、ぜひとも線で見ていただいた方が楽しいと思いますね。伊藤沙莉さんが主演をしていまして。日本で初めての弁護士・裁判官となったですね方をモデルにしたドラマなんですけれども。面白いポイントとしては、もちろんその女性の社会進出っていうことは朝ドラのテーマとして毎回、必ずありますよね。なんだけど、見たことないところまで踏み込んでいるなっていうところがありまして。「女性だからダメなんだ」っていう風に男性社会から排除される、ナメられるみたいな構造というのは今までにも、あったんですけど。

そこに女性が入っていくことによって、より得をする、より損をするみたいな、いろんな要素がバーッて出てくると思うんですよね。それを細かく細分化して。「ここは得だし、ここは損だ」みたいな。その問題の切り分けがすごくきれいなセリフの中で行われていくっていうところが見てて気持ちいいし、感動的でもあるしっていうところで。実際にフェミニズム的な作品として、朝ドラの歴史がちょっと一歩、進んだなっていう音が聞こえるような作品になっています。

(石山蓮華)へー!

朝ドラの歴史が一歩、進んだと感じられる作品

(大島育宙)それで僕は結構、毎回泣いちゃうようなセリフがあるんで。朝型の普通の生活をされてる方って、どうやって見てるんだろう?って思うんですけど。

(菅良太郎)そんな感動作品なんだ。

(大島育宙)主人公の伊藤沙莉さんが弁護士になるための学校に入りたいということを、お母さんに隠して。それで学校に入ろうとしてたんですよ。で、翌年から女性も司法試験を受けられるシステムが導入されるっていうことがほぼ確みたいな状態なので。その勉強をする学校も開かれているっていう状態なんですけど。お母さんは「女の幸せっていうのは、きれいに着飾って結婚することなんだ。そうじゃないと、幸せになれないんだ」っていう。そういうお母さんにはお母さんなりの……石田ゆり子さんが演じているんですが。そんなお母さんの側の論理があるんですけれども。「それは言っても通じないな」っていうので伊藤沙莉さんが隠していたら、それがひょんなことからバレてしまう。

で、バレてしまった時のセリフで、伊藤沙莉さんがなぜ、その学校に入ろうと思ったか?っていうきっかけで「責任能力」っていう法律上の言葉がありまして。「女性には責任能力がない」っていう言葉をその学校の前を通った時に、聞いちゃうんですよね。で、「いや、私の母は責任能力を持って家の家事を取り仕切ってますけど?」みたいな。それでその学校の先生と論戦になるんですよ。そんなことは、ありえないんですけど。で、そこで小林薫さんが演じてる教授が、普通だったら「黙れ! 女が調子に乗るな!」みたいな風になるじゃないですか。でもそこで「面白い。もっとしゃべってみなさい」と言うんですよ。

それで、それきっかけで「君はこの学校に入りなさい」っていう流れになっていくんですけど。その時のことを、伊藤沙莉さんはお母さんの前で吐露するんです。「先生は私の言葉を遮らなかった。遮らなかったどころか『もっとしゃべってみなさい』っていう風に言ってくれた。法律のことはまだ全くわからないけれども、そういう風に話を聞いてくれる人のところだったら、私は一生懸命勉強できるかもしれないと思えたんです」っていう風にお母さんに向かって言うんですね。そこで、僕は泣きました。

(石山蓮華)いやー、これ、聞いてるだけでグッと来ますね!

(大島育宙)そう。だから「みんな、朝はどうしてるんだろう? この後、仕事に行けるのかな?」って思うんですけども。

(菅良太郎)みんな、録画して夜に見ているんじゃない? 「次の話は危ないな。録画にしておこう」みたいな。

(大島育宙)そんな予感を感じたりするのかもしれないですけど。

(菅良太郎)だからそこで、やっぱり時代がちゃんと切り替わってるよね。お母さんと娘の。お母さんはお母さんなりに、ちゃんと娘のことを考えていたっていうね。

(大島育宙)で、その次の話が……僕、4話、5話と連続でちょっとやばかったんですけど。その後に松山ケンイチさんが演じている、またちょっと別の嫌な男社会の人がいるんですけど。「いや、君は学校には入らない方がいい。君が先陣を切って傷ついたとしても、世の中は何も変わらない」みたいなことを言うんですよね。

(石山蓮華)今でも言われそうなことですよね。

(大島育宙)そこなんですよ。まさにその「今でも感じることがセリフに入っている」っていうのがグッと来るところなんですけども。すいませんね。僕、『虎に翼』は今、結構ホットなんで熱くなっちゃっていますけども。

(石山蓮華)私も伊藤沙莉さん、大好きなので。すごい聞きたい!

今、大島育宙の中でホットな作品

(大島育宙)ぜひ見ていただきたい。で、その状況では学校に入ることがほぼ確定してるんですけど。伊藤沙莉さんが「母親を説得できてないんです」っていう話をしているところに松山ケンイチさんが「男社会に出たら、もっと大変だぞ? 母親1人を説得できない、そんなやつが男社会に入って、男のうるさいやつと肩を並べて戦えないぞ?」みたいな、ちょっとそれっぽいことを言うんですよ。それに対して伊藤沙莉さんが「はて?」って。これ、伊藤沙莉さんの口癖みたいな感じで。「じぇじぇじぇ」みたいな感じで流行るかもしれないんですけども。

(大島育宙)「はて? それは別の話じゃないですか? 男社会では男社会の論理があるから女の話を聞いてもらえないだけで。私の母親はあなたが今、たぶん思っているよりも数倍、優秀です。非常に賢いです。だから結構、うちの母親って手ごわいんですよ? それって全く別の話じゃないですか?」って言うんですよね。

(石山蓮華)ううっ、沙莉ちゃーん!

(大島育宙)これ、すごくないですか?

(菅良太郎)「論点をすり替えるな」っていうね。

(大島育宙)そうなんですよ。「それっぽいことに流されてたけど、それって違う話ですよね?」みたいな。その時点でかなり弁護士の素質があるっていうことが、まだ勉強を始めてないタイミングなんだけど、わかるというセリフになっていますね。

(菅良太郎)なんか、ちょっとひろゆきさんみたいなね。

(大島育宙)いや、もっとちゃんとしてます。あんなにめちゃくちゃじゃないですよ。だから「ひろゆきさんみたいなやつと戦ってほしいな」とは思いますね。

(石山蓮華)そうですね。そのうち、どんどん毎回、いろいろな相手が出てくると思いますけども。詭弁で論破したように思えるけれども。「本当はそれ、違くないですか?」って言えるような……。

(菅良太郎)「それ、論点が違くないですか?」ってね。

(石山蓮華)寅子さん。

(大島育宙)寅子がそこで松山ケンイチさんにまた、グッと来られたところでお母さんが立ち聞きをしていて。「おだまりなさい!」って言って。それでお母さんが「ちょっと、ついてきなさい」って言って、その足で六法全書を買いに行くんですよ。

(石山蓮華)かっこいい!

(菅良太郎)ああ、もう認めたんだ。

(大島育宙)認めたんです。「私には私の幸せがあると思っていたけど、あなたにはあなたの幸せがあるということに、賭けてみたくなっちゃったの。ごめんね」みたいな。もうパッションの人で。だから4話、5話とちょっと僕、やばかったですね。

(菅良太郎)えっ、どうする? なんか飲み物、頼む?(笑)。

(石山蓮華)ちょっとこれ、絶対に今日も時間、こぼれますよ? 面白すぎて。

脚本:吉田恵里香

(大島育宙)でも『虎に翼』はめちゃくちゃに熱いんで。脚本の吉田恵里香さんという方、僕はかなり注目してる方で。『チェリまほ』っていう民放のドラマがありまして。それの脚本家としてまず、有名になった方なんですけれども。NHKでいうと『恋せぬふたり』っていう高橋一生さんと岸井ゆきのさんがやっていたアロマンティック・アセクシュアルっていう、その恋愛とか性的なことに全く興味がないし。体の体質として、心としても合わないっていう。

だから「あんた、結婚しなさいよ」とか「あんた、いい人、見つけなさいよ」とか「最近、ご無沙汰なんじゃないの?」とかっていう風に言われたりすることがあっても、そもそもそういう発想とか感覚がない人たちがいて。そんな人たちが社会でいかに生きづらいか?っていうことを描いた、すごく短いドラマがあるんですけれども。それで僕、毎話号泣してたんすけど。僕はセクシュアリティはマジョリティー側なんですけど。でも、このドラマを見たことによってその自分が恋愛のトークとか、セクシャルなトークとかをする時に「僕はマジョリティー側の人間なので、この感覚がありますけど」っていう風な枕詞をつけないと、ちょっと我慢ができなくなっちゃったぐらい、価値観がすごく変わった作品だったので。そういう作品の脚本をやられていたり。

あとは『生理のおじさんとその娘』っていう、原田泰造さんが生理用品のメーカーの人気者の社員さんみたいなのをやっていて。でも、娘的にはそれがすごい嫌だみたいな話の単発のドラマがあったんですけど。それも吉田恵里香さんなんですよ。この人、すごく「女性と社会」っていうことを今までにない形の深さで描くことにすごく信頼のおける方で。ちょっとね、よかったら朝ドラは毎日15分しか進んでいかないので。毎日、「ううっ、もどかしい!」ってなってる方はちょっと『恋せぬふたり』とか、『生理のおじさんとその娘』とかを見てほしいなと思います。

『恋せぬふたり』『生理のおじさんとその娘』もおすすめ

(菅良太郎)そちらも……だから、もう全ドラマがおすすめなんだ。

(大島育宙)もうこの方はすごいですね。本当にとてつもない、国民的な作家になっている方だと思います。向田邦子賞とか、30代でもう取っているんですけどね。

(石山蓮華)えっ、お若いのに。楽しみですね。

(大島育宙)すいません。熱くなっちゃいました。『虎に翼』はマジで熱いんで。ぜひともよろしくお願いします。

(菅良太郎)今、何話?

(大島育宙)今、11話かな?

(菅良太郎)じゃあ全然、追いつけるね。まだ2時間ちょいっていう?

(大島育宙)そうです。余裕です。まだ映画1本分、行ってるか、行ってないかぐらいで。

(石山蓮華)じゃあ、まずU-NEXTでNHK見放題パックをポイントで入って、見てっていうことですね。

(大島育宙)そうですね。すいません。忙しくさせてしまって。

<書き起こしおわり>

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