大島育宙『セクシー田中さん』芦原妃名子の訃報と漫画原作ドラマ量産問題を語る

大島育宙『セクシー田中さん』芦原妃名子の訃報と漫画原作ドラマ量産問題を語る 文化放送

大島育宙さんが2024年1月30日放送の文化放送『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』の中でドラマ『セクシー田中さん』の原作漫画の作者・芦原妃名子さんの訃報についてトーク。さらにテレビ各局のドラマ枠の増殖と漫画原作ドラマが粗製乱造されている現在の状況についても話していました。

(西川あやの)そして火曜クリエイティ部、今日のピックアップニュースはこちらです。「『セクシー田中さん』原作者・芦原妃名子さんが死去」。小学館姉系プチコミックで連載中の『セクシー田中さん』などで知られる漫画家・芦原妃名子さん(50)が昨日、1月29日に亡くなっているのが見つかりました。現場の状況から自殺を図ったとみられるということです。捜査関係者によりますと、芦原さんの知人らが28日、『連絡が取れなくなった』と警視庁に行方不明届を提出。行方を捜していました。芦原さんは1994年、『その話おことわりします』でデビューされていて、少女が大人になるまでの恋模様などを描いた『砂時計』という漫画。これ、私も大好きで全巻持ってるんですけれども。ドラマ化や映画化もされてますよね。

(大島育宙)大人気ですね。

(西川あやの)それで今、連載中の作品『セクシー田中さん』は去年の10月から12月の2ヶ月間、日本テレビでドラマ化され、放送されていました。この作品の映像化をめぐり、原作者と制作サイドの間で意見が食い違ったりとか、脚本の一部を芦原さんが直接、執筆する事態になるなど、トラブルがあったようなんですね。で、SNSで原作者の方が「私が9話、10話の脚本を書かざるをえないと判断した」などとする書き込みがあったりして。その後、連絡が取れなくなっていて。最後、X(Twitter)には「攻撃したかったわけじゃなくて、ごめんなさい」と投稿されていて、その後にお亡くなりになったということなんですね。

(大島育宙)そうですね。非常に痛ましいニュースなんですけれども。亡くなられた直接の遺書のようなものが見つかっているという報道はされているんですけれども。具体的な、直接のご本人の心の引き金というものはちょっと、わからない部分が大きいので。で、今年は特に、その時代の空気というのも本当にいろいろな暗いニュースから始まっている年でもありましたので。そういったことも全部、折り重なってっていうようなことも推測できちゃうので。そこは言ってもしょうがないかなと僕は思っていて。やっぱり今、表から推測できる情報っていうのは脚本家の方と原作者の人、双方の言い分が食い違っているということが双方の主観の言い分でわかるという、それだけの情報なんですよね。で、その投稿の一部っていうものは削除されているんですけれども。

SNSで加熱する「どっちが悪いか?」議論

(大島育宙)それを見て「どっちが悪い」っていう議論をSNS上でしている人がすごく多いんですよね。で、それは訃報をきっかけに白熱している議論なんですけれども。それは僕はもう、本当に論外だなと思っていて。それは、これから日テレが中心となって、第三者を入れた委員会とかを作って調査するべき事項であって。それを現時点で、SNSで一般の人が勝手に判断して攻撃する正当性っていうのは全くないです。それは何も知らないくせに勝手にしゃべっているだけでしょう?っていう。それはもう、ただの「私刑・リンチ」になりますので。それは本当に絶対、やめた方がいいし。ほとんどそれは正しくないと思いますよ。

(西川あやの)根拠のない憶測で。あと今、謎の昔の作品批判みたいなのとかも。

(大島育宙)はい。それはまた、切り離して議論しなければいけないことだと思うので。そういったことをやりたくなる感情っていうのはそもそも、SNSに載せられている機能ですので。そういった機能に踊らされて人間を勝手に悪魔扱いするのはやめましょうというのが僕が強く言いたいところです。で、僕は元々、エンタメの解説をする仕事をしている立場としてちょこっと言える部分があるとするならば、これは今回の訃報とは全く別の問題でもあるという風に思っていて。この訃報がなかったとしても、そもそも構造上、めちゃくちゃ問題がありましたよっていうことを指摘するタイミングになったと言えると思うんですよね。

(西川あやの)それは元々、お感じになったことだった?

(大島育宙)そうですね。というのは、僕もテレビドラマ、基本的に地上波で放送されているものを全部、見た上でコメントをしなきゃいけないっていう、そういうフジテレビの番組に参加しているんですけれども。そこで毎クールのようにドラマの枠が増えていく。そして「今季も原作物ばっかりだよね」みたいな状況になっていて。

(西川あやの)本当に多いですね。あと、早い。前は完結した物語とかのドラマ化作品が多かったですけど、連載中からすぐ、話題になった漫画とかがドラマ化されていて。

(大島育宙)そうですね。それは、他の局の他の枠に取られちゃうと、ドラマ化するというきっかけがなくなっちゃうので。「まだこれ、ドラマ化する機は熟してないでしょう?」みたいなタイミングの作品も早く取るという状況に完全になっているんですよね。

(西川あやの)それって、やっぱり枠が増えてるからなんですか?

サブスク時代と増え続けるドラマ枠問題

(大島育宙)はい。そして、その枠が増えてるのはなんでか?っていうと、もうサブスク時代になっちゃって。テレビの地上波の広告費が落ちちゃって。たとえば、日テレさんで言ったらHuluであるとか。フジテレビで言ったらFODであるとか。そういう自社の絡んでいるサブスクサービスにコンテンツを流し込むっていう際に、報道番組とかバラエティ番組とかだと、そんなに昔のものはわざわざ見ないんですけれども。テレビドラマだったら、出ていた俳優さんが出世したりとか、原作者の人が有名になったら、その人の過去作特集みたいなので組めたりするんですよね。

(西川あやの)それ、まんまと見ちゃっています。

(大島育宙)そうですよね。それを見ちゃうのは、別に悪いことじゃないですけど。でも、そこに依存してとにかくテレビドラマを予算も少なくなってる中、量産しようというめちゃくちゃ無理な体制がまず、あるわけですよね。

(西川あやの)たしかに多いですね。最近、増えてますね。

(大島育宙)多いです。その中で、脚本家さんの育成も正直、間に合ってないですし。原作も取り合いになっている。スタッフさんのリソースも足りないという状況の中で、クリエイター……特に尊重されなければいけない原作者っていう人に対する敬意が、今回の件に限らず、その敬意を割く余裕がなくなっている体制っていうのがあって。それをどこの局も、歯止めをかけなかった状態で。これは僕、今回の訃報とは別で、批判できるポイントだと思っていたし。僕はもう3年ぐらい前からこれをずっと批判してるんですけれども、一向にその流れは止まらなかった。という中で不幸にも、特に齟齬が起こった状態でSNSの加害欲というか、正義感の爆発っていうところが乗っかってしまって。だから、構造的問題とSNSの食い合わせというものが最悪だったところでこういった結果になってしまったということで。だから、その結果のみを議論するのではなくて……ということをぜひとも、考えてほしいし。そしてあんまり考える余裕のない人は、無理に意見を発信しないということが僕は知性だと思います。

(西川あやの)そうですね。

(大島育宙)あと、こういう報道があるとネガティブな空気に引っ張られて……こういった気持ちっていうのが人を引っ張るということがありますので。メンタルが弱ってる人っていうのは、そういった報道を見ないとか、SNSを見ないとかっていう、その自分を守る行動というのもぜひともしてほしいなという。いろいろと言わなければいけないことがたくさんあるんですけれども。

自分を守るため、報道・SNSから距離を置く

(西川あやの)そうですね。結構、メディア関係者にも報道の仕方について注意喚起されたりとかしてるので。そのあたりは気持ちを引っ張られないようにっていうところと、それとは別に今のドラマ制作のあり方みたいな背景もあるという。

(大島育宙)それも見直されなければいけないですね。「過去の名作ドラマをガンガン再放送しなさい」っていう風に僕はずっと、言ってるんですけどね。あんまりされないですね。

(西川あやの)はい。放課後ヘッドラインでした。

<書き起こしおわり>

大島育宙『セクシー田中さん』問題が浮き彫りにした原作の映像化トラブルを語る
大島育宙さんが2024年2月6日放送の文化放送『西川あやの おいでよ!クリエイティ部』の中でドラマ『セクシー田中さん』の原作漫画の作者・芦原妃名子さんが亡くなってしまった問題についてトーク。この一件によって浮き彫りとなった原作を映像化する際に生じる様々なトラブルについて、話していました。
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