松野泰己『伝説のオウガバトル』開発を語る

松野泰己『伝説のオウガバトル』開発を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

(坂口博信)でも、なんだろう? ちゃんとした英語だから、プロっぽくて。当時は。すごいあれが印象にあって。

(松野泰己)洋ゲーが好きだったっていうのはありますね。我々、全員が。

(鳥嶋和彦)だからさっきから坂口さんが言っているように、いろんなところが小洒落ているんだよね。だから結構ね、「えっ?」っていう感じはあるんだよね。

(松野泰己)ありがとうございます。少しでも、その他社さんの作品と差別化っていうのを一番、重点に置いて作ってたんで。それはありますね。だからバトル画面も斜めにしたのは、斜めにした方がかっこよく見えるし。それは他社さんがやってないんで。やってないっていうのは、やりづらいところがあるのはわかってはいますけど。

(坂口博信)そうそう。作りづらいから、やってないんだよね。

(松野泰己)でも、そこに挑戦していこうっていうのはありました。

(坂口博信)ドット絵であれは、すごいですよ。

(鳥嶋和彦)で、中身の方はほら、戦えばいいってもんじゃないっていう風になっていて。

(坂口博信)あれは松野節ですね。

(松野泰己)そこは狙ったわけじゃないんですけども。

(坂口博信)善と悪みたいなね。

(鳥嶋和彦)あの概念がなくて。

(松野泰己)あれはどちらかというと、バランスが取りづらかったので。難しくしちゃうと、ほら。シミュレーションって、初見の人がプレイできないじゃないですか。やっぱり大戦略もファミコンウォーズも面白いんだけども、最初のステージで「無理!」ってなっちゃう人がすごく多かったっていう印象が僕はあって。だから基本的にレベルさえ上げていけば勝てちゃうっていう風にはしてあるんですよ。だけど、それだとゲームはただ「俺TUEEE」で終わっちゃうゲームになっちゃうんで。あえて、カオスフレームというものを入れて。強くやっていくとフレームが下がっていくことによってバッドエンディングになっていっちゃうというシステムにして。

(坂口博信)カオスフレームだ。そうだそうだ。思い出した。

(鳥嶋和彦)あれがね、結構衝撃だったんだよね。

カオスフレームという概念

(松野泰己)それによって何回でも繰り返し、遊べるように作っていこうという。

(鳥嶋和彦)だから、戦えばいいってもんじゃないのと、マルチエンディング。戦っていくとバッドエンディングに繋がるっていうのがね、結構あれがそそられるんだよね。

(松野泰己)さっきの「裏と表」じゃないけど(笑)。

(中略)

(松野泰己)当時、その90年代の前半のファミコンというのが王道なストーリーが多くて。ヒロインも、なんだろうね? 当時のね、ナウシカとかクラリスみたいな、かわいくて、ちゃんと強めの女性っていう。

(鳥嶋和彦)えっ、ナウシカの頃?

(松野泰己)ナウシカは84年かな? まあ、ちょっと前ですね。それに我々が影響を受けたっていう意味で。だから作っている人たちも皆さん、ヒロインってそんな感じで、強かったじゃないですか。だから、その王道からちょっと外そうというのがひとつ、ありました。王道から外したゲームって、たくさんあったと思うんですよ。ただ、あんまりヒットはしなかったんで。ただ、グッドとバッドを連れて遊ばせるようにしようというところがあったっていう感じですね。

(鳥嶋和彦)やっぱりメッセージとか世界観がね、結構ダークなところがね、大人っぽいっていうか。

(松野泰己)そうっすね。どうなんすかね? わかんないすけどね。

(坂口博信)まあ、それは性格ですよね。

(鳥嶋和彦)だよね(笑)。

(松野泰己)これもたぶん当時、80年代の後半にCNNが始まって。日本のメディアが伝えない情報っていうのを見れるようになったんですよ。80年代の半ばぐらいでしたっけ? 始まって。かつ、ニューズウィークの日本語版っていうのが出たのが80年代終わりだと思うんですけど。それをずっと僕、買っていて。日本の新聞には伝えない海外の情報っていうものに触れた。さらに湾岸戦争が起きたのがデカくて。あれによって一気に戦争というものがテレビを通して……リアルじゃないですか。

(鳥嶋和彦)狭い日本の視点じゃなくて、もっとリアルな。

(松野泰己)まだ舛添さんが政治家じゃなくて、大学の教授で。軍事評論家だった時代だったんですけども。面白かったですね。あの頃の朝まで生テレビとか、すごく面白くて。「いつ、湾岸戦争に踏み切るのか?」とかやっていて。めちゃくちゃ面白くて、見てましたね。

(鳥嶋和彦)そういうのを見て、要素を入れていって。

(松野泰己)もちろん、西洋史は好きだったんですけど。そこにやっぱり現代的なエッセンスを入れていかないと。ユーザーさんは西洋史を知っている人ばかりじゃないですから。できるだけわかりやすくしようと思ったので。そういうものを……当時、米ソっていう冷戦の状況がありましたし。そういうのもだいたい、何となく日常的に聞いていると思うので。そういう知識だけで遊べるゲームしようってところはありましたね。

(鳥嶋和彦)じゃあ、結構あれだ。西洋史って、ローマ帝国から始まって。

(松野泰己)大好きですね。

(鳥嶋和彦)あのへんの中央アジアの興亡とか。

(松野泰己)大好物です(笑)。

(鳥嶋和彦)あのへんのめんどくさいところを(笑)。

(松野泰己)そのへん、正確に知っているわけじゃないですけども。大好物ではありますね。

(鳥嶋和彦)なるほどね。どうでした? そのへんのシナリオの片鱗は。坂口さん、プレイされていて?

(坂口博信)松野作品のシナリオですか? そうですね。さっき言っていたみたいにたしかに、ナウシカとかにね、僕らは高校時代とかに頭を殴られてるんで。だいたい、そうなんですよね。僕なんかもバカにして映画館に行って、立ち見で見たらつい泣いちゃったみたいな。

(鳥嶋和彦)意外とよく泣くね(笑)。

(坂口博信)そうですね。そこから違う方向に行ったっていうのは、よかったんだね。

(松野泰己)それがたまたま、はまったタイミングだったんだろうなとは思いますね。やっぱりコンシューマーの市場が熟成をし始めた時だったんで。そういうものがあっても、許される環境にはあったという気がしますね。

(鳥嶋和彦)ちょうどドラクエ、FFが出てきて。RPGがメインになって。やっぱりそういうのがもう、知識として、テイストとしてわかってるところにアンチを出したっていうことだね。ちょっと苦いものをね。

(松野泰己)まあ、たまたまヒットしたんだとは思うんですけど。そこは当たったなとは思ってますね。

(鳥嶋和彦)爪痕を残せたんだね。やっぱり。

(松野泰己)ああ、おかげさまで。ありがとうございます(笑)。そういう意味では、会社のオーダーはクリアしたと思ってます。

(坂口博信)でも、売り上げ的にも結構、行ったしね。逆にユーザーもそこは理解したっていうか。あのテイストをみんな、楽しんだわけですもんね。

(松野泰己)だといいんですけどね。

(鳥嶋和彦)出て、反響はどうでした?

(松野泰己)やっぱり「難しい」っていう声が一番……あの頃って本当に何でもやってるんで。電話が来ると、サポートは僕が全部やっていたんで。

(鳥嶋和彦)堀井さんみたいだね(笑)。

「難しい」という反響が多かった

(松野泰己)修理とかも、いろいろやったりとかしていて。そういう生の声も聞いてましたけど、大半はクレームじゃないですか(笑)。「わかんない」っていうのが多くて。ひどいのは問屋さんが夜、電話をかけてきて。「エンディング、全部教えろ」って言われて。「いや、それは申し訳ありませんけど」って言ったらその問屋さんが「取引をやめるぞ」とまで言われて。仕方なくFAXで流したりとか、ありましたけどね。

(鳥嶋和彦)本当に?

(松野泰己)ありました、ありました。

(堀井雄二)なんで知りたかったんだろう?

(松野泰己)それはわかりませんけども。

(坂口博信)職権乱用的な。

(鳥嶋和彦)それは専門誌……ファミ通もファミマがもあるし。

(松野泰己)そうですね。でも、そのエンディングのフラグみたいなものまでは公表してないんで。もう、かなり強く言われましたね。

(鳥嶋和彦)すごい話だね。

(松野泰己)今だったらそのなの、たぶんつっぱねるんでしょうけど。当時やっぱり若くてびびったんで。「わかりました」って言ってそのまま資料を流しましたね。FAXで。

(坂口博信)まあ、それはなにかに使われてたね。

(鳥嶋和彦)で、そこで「第2作を作る」っていう風にはならなかったんだね?

(松野泰己)なりませんでしたね。

(坂口博信)タクティクスオウガまで、道のりはあるの?

<書き起こしおわり>

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