2025年2月22日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』で鳥嶋和彦さんがジャンプ副編集長時代を振り返り。当時、見ていた売上の指標「回読率」(1冊の本をどれだけ回し読みされているかを示す指標)について話し、回読率を下げて売上部数を増やすために行った施策を話していました。
(鳥嶋和彦)それであの時、副編で……今、話をしながら思い出したんだけど。苦労したのは週刊誌だから、月刊誌と違って付録つけられないの。原価の問題もあるし。今やなくなっちゃったけど、郵便で本を贈呈するのプラス、昔は国鉄のJRで運ぶからいろんな規制があったのよ。
(Naz Chris)だからプレゼント企画だけだったんですか。ジャンプさんは。
(鳥嶋和彦)だからそのファミコン神拳の時、袋とじ……あれはだから折り紙をする機械が共同印刷っていうジャンプ本体を刷っている印刷会社になくて。凸版かな? それが凸版にあって。そこで刷ったものを共同印刷に搬入してもらって綴じ込むっていうやつだったから締め切りが早いのよ。
(Naz Chris)へー! あの4分の1のサイズの袋とじ?
凸版で刷った袋とじを共同印刷に搬入して綴る
(鳥嶋和彦)そう。だからそこから始まっていつも印刷所に「ねえねえねえ、新しい折り紙ない?」とか。なんか新しいシールとか、いろんなものがないか?っていうのを印刷所の営業の人に聞いて。場合によっては技術者がいるところに行って。いわゆる新しい、「前付け」っていうんだけども。前につけられるものを見せてっていう。そういうこともよくやっていて。
(Naz Chris)そんなことまでされていたんですか!
(鳥嶋和彦)そうしないと企画を立てていけないんで。
(Naz Chris)週刊でこれをやってくって、ちょっとすいません。放送も毎週ですけど、ちょっとそれとは訳が違うなっていう。ブイさん、これって週刊でこの作業……みんな、休みとかなくなっちゃいますよね? 時間が足りないんじゃないかっていう。
(サイトーブイ)そうですね。でも……鳥嶋さんとか三条さんの時代よりは編集部の人数、増えていて。一応、班体制になってるんですよ。で、校了しなきゃいけない週はもちろん忙しいんですけど。4班あれば、他の週は自分の作品の校了を見つつ。でも、それぞれ忙しいんで時間を見つけながらやっているのはありますかね。
(鳥嶋和彦)週刊少年ジャンプの副編の時にそういうことを散々、やったいんでVジャンプを創刊する時にはもっと自由なわけ。カードもつけられるし、いろんなことができる。でね、そうそう。今じゃ「何銭」っていう単位、みんなわかんないだろうけど。あの頃は何円何銭なのか?っていう、その銭が大事なのよ。400万部とか500万部の原価だから。「もう◯銭、下げられない?」って、そういうやり取りになるのよ。
(Naz Chris)なるほど! すごいな。連載だけの話でも漫画家さん、命を削る作業だなと思ってたけれど、編集者さんもそうですよね?
(鳥嶋和彦)だから副編が何をやってるか?っていうと、予算管理もそうだけれども。この号には巻頭カラーでこの漫画を載せます。どういう順番で並べますっていう、その編成も決めるわけです。それと同時にお盆の時期とか、いろんなポイントの時期には前付けの企画を豪華にしたりして、ポイント作りをして。店頭で子供に「えっ、この号は買わなきゃ!」って思わせる。で、あの頃は「回読率」っていう言葉があったんだよね。1冊のジャンプを何人が読むか?
(三条陸)「回し読み」の「回読」。
(鳥嶋和彦)だから400万部刷っていても、最初1冊当たり3人、読んでいるとすれば1200万の需要があるっていう。そうしたら、この1200万を手に入れるために、要するに回し読みを防止すればそれが上がるという。
(Naz Chris)回し読みの計算ってどういう風に……?
(三条陸)アンケートですね。
(Naz Chris)そんなこと、書いてありましたっけ?
(三条陸)書いてあるんですよ。「友達とジャンプを読んでますか?」とか「あなたのジャンプを友達に読ませたりしますか? 何人に読ませますか?」っていうのがあるんですよ。
付録をつけて回読率を下げ、発行部数増加を目指す
(鳥嶋和彦)それで前付けで「この号はきょうだいでも共有したくない」っていう風に持っていけば……普段は一家に1冊なのがこの号に関しては2冊。「お母さん、どうしてもこの付録がほしいから、お兄ちゃんと共有したくない」っていう風になれば、もう1冊売れるわけ。
(Naz Chris)大人ってすごい!(笑)。いや、そのアンケートの記憶は全然なかったですね。そんなこと、聞かれていたんだ。
(鳥嶋和彦)そこを狙っているわけ。そうそう。思い出すね。こうやって話していると。回読率(笑)。
(Naz Chris)すごいな!
当時、たしかジャンプには応募者全員プレゼントみたいなものがあったと記憶しています。1冊にひとつついている応募券をハガキに貼って送るともらえるみたいなやつ。あれも回し読みをさせず、1人に1冊買わせるための施策だったんだろうなと今になって理解できました。いろんなことを考えてジャンプのあの400万部、500万部という発行部数は達成されていたんですね!