堀井雄二・坂口博信・松野泰己「日本人はオープンワールドゲームが苦手」説を語る

堀井雄二・坂口博信・松野泰己「日本人はオープンワールドゲームが苦手」説を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

堀井雄二さん、坂口博信さん、松野泰己さん、鳥嶋和彦さんが2024年2月26日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのkosokoso放送局』の中で「日本人はオープンワールドゲームが苦手」という言説について、話していました。

(鳥嶋和彦)坂口さんに連れられて、シリコングラフィックスに見に行ったのは、あれは?

(坂口博信)あれは7の前じゃないですか? 作ってた頃じゃないですか? なんか一緒に……まあ、リサーチしてたんで。で、スタジオを見に行くと、面白いじゃないですか。いろんなショーがあって。「これは見に行ったら楽しいな」っていうんで。鳥嶋さんを誘って……鳥山さんと行ったのはその後で。桂さんと行ったのはその前かな? 僕、ダメなんですよ。記憶がうつろで(笑)。

(鳥嶋和彦)ああ、そう? 鳥山くんと桂くんも連れて行って?

(坂口博信)連れていきました。あの時期だったかな? はい。

(鳥嶋和彦)じゃあ、それは僕は一緒じゃなくて。Vジャンかなんかに頼んで……。

(坂口博信)モーションキャプチャーなんて知らなかったから。初めて見て……あれ、初めて見ると感動しますもんね。

(堀井雄二)モーションキャプチャーね。

(鳥嶋和彦)ちょうど映画でいうと『ジュラシック・パーク』がそうなのかな?

(松野泰己)『ジュラシック・パーク』が出て、しばらくしてそのショックでやった感じですよね。

(堀井雄二)なんかね、アニメであったよね。モーションキャプチャーを初めて使った……人がヌルヌル動く。なんだっけな? なんかそういうアニメがあったんだよ。

(鳥嶋和彦)今はでも、あれだよね。逆に言うとCGがよくできてるがゆえに、何を見ても同じに見えちゃうっていう(笑)。

(坂口博信)まあ、あれですよね。CGの弱点の部分ですね。触感がどれも一緒っていう。アニメ調とか、いろいろ出てはいますけど。なんだろうね? アニメもCGで動かされるとなんかヌルヌルして、気持ち悪いもんね。最近ね。なんか手付けの方がいいなとか思っちゃう。最近は。

(松野泰己)そうですか。今、でももうディズニー系はね、ほぼCGじゃないですか。

(坂口博信)で、CGを使うとやたらと……戦艦とかが飛ぶ時に、カメラでなめたがるじゃない? 「そのシーンはいらない」とか、思うもんね。

(鳥嶋和彦)言ってること、よくわかるよ(笑)。

(堀井雄二)やりたくなるんだろうね。

(松野泰己)そうですね。パターンになっていますよね。どうしても。

(鳥嶋和彦)だから、あれだよね。そうやって技術が開発されて、それがたくさん使われるようになって、ビジュアルは上がるけど。果たしてそれが本当にね、ゲームの味とかゲームの面白さに繋がるか?っていう。

(松野泰己)それは永遠のテーマですね。ただ、やっぱりビジュアルがいいと、やってみたくなるのは間違いなくありますけどね。それは。

(堀井雄二)最初の引きにはなるよね。

(松野泰己)『レッド・デッド・リデンプション』が出た時に、やっぱり西部劇好きとしては「リアルな西部劇」っていうのが見えたので。Xbox。あれ、やっぱりプレイしましたね。本当に西部劇そのものだったんで、楽しかったですね。

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(鳥嶋和彦)映画で言えば『ブレードランナー』とか『エイリアン』とか『ジュラシック・パーク』とか、そういうのが出ていって。リアルなものを僕ら、見てきた上で。ゲームもその世界だもんね。

(松野泰己)そうですね。

(坂口博信)まあ、システムもそうだね。「リアリティー」という名のもとに、自由度系だもんね。今はね。

(松野泰己)オープンワールドで。

(堀井雄二)オープンワールドって、遊ぶ方に才能がいるんだよ。何をするのか、自分で決めなきゃいけないから。

(松野泰己)それはありますよね。日本って特にある意味、JRPGが……一昔前には「盲導犬RPG」なんて揶揄された時代があって。

(堀井雄二)手取り足取りだからね。そうやって作っていたからね。

「盲導犬RPG」と揶揄されたJRPG

(松野泰己)特に日本のプレイヤーはそれに慣れちゃったんで。ヒントがないと何もできなくて。「日本人はサンドボックス型のゲームは苦手」ってよく言うじゃないですか。海外は違うので。むしろサンドボックス型が主流で。

(鳥嶋和彦)海外は好きだね。オープンワールド。

(堀井雄二)要するにライトユーザーっていうんじゃなくて、みんなゲーマーなんだよね。海外はやっぱりゲーマーが多いから。日本の場合、ドラクエとかだとライトユーザーがいっぱいいたのね。それがゲーマーになっていくと、難しいのは大丈夫だっていうね。

(坂口博信)あいつら、いきなり無茶をしたいんだよね。

(松野泰己)ファミコンの頃に『ミネルバトンサーガ』だったかな? というゲームがあって。ロールプレイングなんですけども。

(坂口博信)それって自由度が高かったの?

(松野泰己)高いんですよ。ノーヒントなんで、なんでもやれちゃうんですよ。ただそれが、僕もプレイした時に……友達から「面白い」ってすすめられたんですけど。ヒントがなさすぎて。「導かないのって、どうなの?」とかって言っちゃったことがあって。それは盲導犬RPGに慣れちゃっていたんで。「なんだ、これは?」って思っていたんですけども。でも、やり直してみたらすごく面白くて。

(鳥嶋和彦)それはね、僕がちょうどゼルダがそうだったね。「焚き火したり料理するのが何が面白いの?」って。だからやっぱり何をしていいかがわかんないから。ある程度、情報を見ていかないと、とっかかりがわかんないんだよね。やれることが多すぎて、どう先に行っていいかがね。

(松野泰己)ファミコンのディスクシステム版のゼルダは本当、大好きで。何十時間も何百時間もやったんですけど。やっぱりあれは今でもお手本だと思ってるんですよね。ヒントの出し方とか、機能の拡張の仕方とか。それはドラゴンクエストもそうなんですけど。心の中にそれはずっとあって。一方で、アメリカとかがよくやってる自由度の高いゲーム。あれはあれでいいなってすごく思っていて。その融合っていうところを見ながら、さじ加減をしながら作っていくっていう感じですかね。最近のソシャゲとかって、よくできてるんですけど。いきなり機能がブワッと解放されちゃうんで、おじさんの僕は割と何をやっていいか、わからなくなっちゃうんですよ。順を追って説明してくれればいいんだけど。ただ、一方でソシャゲは最初からそれでもついてくるユーザーもいるんですよね。そこはさじ加減が難しいところで。

(堀井雄二)あとはね、ゲーム実況とかを見てるからね。ああいうのを見ていて「ああ、こうやるんだ」と思ってやってるからね。

(坂口博信)もう、なんだろう? ネットを見ることがチュートリアルっていう、そういうリズムができてるんで。ゲーム内で同じようなチュートリアルをやられるとうざいっていうのはあるね。それは今時だよね。

(松野泰己)今時だと思います。

(鳥嶋和彦)いやー、本当にゼルダにしても、『エルデンリング』にしても、YouTubeで動画を見ないと無理だね。

(坂口博信)ああ、そうですね。僕、FF14でも動画、見まくってますからね。全部、エクセルに書き出して。タイムライン的なのを。それで予習しまくって、ようやく勝てるっていう(笑)。

(松野泰己)最後はもう、自分の衰えとの戦いですからね。覚えていられるか? そのフェーズまで何をするかを。すごく頭、飛んでくるから。

(鳥嶋和彦)そうだよなー。『エルデンリング』もさ、結局クリアしたんだけど。クリアした時に見たら「299時間」ってなっていて。「えっ、こんなにやってたの?」ってなって。

(松野泰己)おお、そんなにやっていたんですね。

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(鳥嶋和彦)その代わり一通り、全部やったけど。2周目もやって。それでオープンワールドがどういうものかわかったんで、投げていたゼルダをもう1回、やり始めて。「ああ、そういうことね」って。

(松野泰己)ゼルダは本当、完成度が高いですね。

(鳥嶋和彦)1回、わかるとね、コツがわかるから。でも本当、松野さんが言っていたけども。不親切だよね。

(松野泰己)そこがだから、時代が違うのかなっていうところで。じゃあ、作り手になった時にどこにポイントを置いて作っていくのか?っていうところを再構築する必要性があるなっていうのは本当に最近、よく感じていますね。どこまで自由度を上げておいて、どこまでを導いてあげるかっていう。それはチュートリアルのね、スキップする・しないっていうのもそうなんでしょうけれども。なければないで、たぶんつまずく人もいるので。

(鳥嶋和彦)だから堀井さんのドラクエの作り方の親切さとかさ。それに導かれてやってきたから。

物語と自由度の相性の悪さ

(堀井雄二)物語と自由度って、なかなか相性が悪くて。やっぱり物語はちゃんとしようと思うと、ある程度絞らないと話が入れ子になっちゃうんだよね。順番をつけなきゃなんない。だから自由度と……「どこに行ってもいい」っていうと、物語ってぶった切られちゃうから。そういうところのね。だから、それは面白いんだけどね。どっちにするかって決める問題があって。

(坂口博信)オープンワールドはそういう意味では物語の部分はやっぱりちょっと薄くなるのはどうしてもありますね。薄っぺらにはなりますよね。

(堀井雄二)薄く敷いて。

(鳥嶋和彦)だから遊んでる時はそれなりの目的があってやっているんだけど。いろんなことをやって終わってみるともうひとつ、通してやった感が希薄なんだよね。

(坂口博信)だからそれはYouTubeでまとめとかを見てると、すごくおもしろそうに見えるんですよ。

(堀井雄二)いいところをちゃんと取っているからね。

(松野泰己)『ハリー・ポッター』の『ホグワーツ・レガシー』もそうなんですけども。そのイベントしているシーンとかだけを集めてみると、めちゃくちゃ濃厚なんですよ。

(坂口博信)ちゃんと順番にしてね。

(松野泰己)でも、いざ遊ぶと順番はバラバラだし……みたいな。

(坂口博信)あれさ、『Ghost of Tsushima』とか、いい具合じゃなかった? あれ、一応流れに乗っていくじゃない? で、半分オープンワールド的で。

(鳥嶋和彦)あれはね、やっぱり敵がものすごくキチッと描かれているの。

(坂口博信)あれは僕の中では一番、最適解な気が今のところ、していて。

(松野泰己)わかります。

(鳥嶋和彦)それで言うとね、そこなんだよね。敵の描き方が漫画を作ってきた身としてはリアルなのよ。

敵の描き方がリアルな『Ghost of Tsushima』

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(松野泰己)お話だけがすごくよくできてるゲームってのは逆に「ゲームじゃなくていいや」って思っちゃうんですよ。映画で見たいとか。

(堀井雄二)思うよね。それはあるね。

(松野泰己)だから、そのさじ加減も難しいなと思っていて。

(坂口博信)なかなかムズいよね。

(松野泰己)ゲームやってるのに、まるでYouTubeのまとめ動画を見ているような感覚になっちゃうと、たぶんゲームはダメなんだろうってちょっと思っていて。どんなにカットシーンの出来がよくても「長え」とか思っちゃうじゃないですか。だからそこがね、難しいなって思うんですよね。作っていて(笑)。自分で作っていると、長くしたくなっちゃうんで(笑)。

(坂口博信)まあねー。

(松野泰己)でも、遊ぶ側からすると短い方がいいし、みたいな。

(堀井雄二)システムが面白いほど「早くムービー、終わってよ」ってなるよね。

(坂口博信)そうね。「ムービーが始まる前に手に入れたあの装備、早く装備をさせてくれよ! どうパラメーターが変わるんだよ? いいからさ!」っていうね(笑)。

(堀井雄二)それでセーブしなきゃって思うから。

(鳥嶋和彦)飛ばせるのはまだいいけどね。ボス戦をまた最初から見せられるからね。

(坂口博信)「泣いている暇があったら装備させろ!」っていうね(笑)。

(堀井雄二)それで飛ばしたら飛ばしたで、話がわかんなくなるからね。

<書き起こしおわり>

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