堀井雄二と鳥嶋和彦『ドラゴンクエスト1』ができるまでを語る

堀井雄二・鳥嶋和彦・橋野桂「ドラクエらしさ」を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

堀井雄二さん、鳥嶋和彦さんが2023年8月28日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中で『ウィザードリィ』や『ウルティマ』の影響を受けて『ドラゴンクエスト1』を作ろうとしたことについて話していました。

(Naz Chris)私、世代的にRPGの原体験、最初が『ドラゴンクエスト3』だったんですけど。遡って1、2とプレイして。あとは12を待つのみだな、みたいな感じで今、いるんですけど。橋野さんもRPG原体験って実は『ドラゴンクエスト』の初代だったんですか?

(橋野桂)僕はドラクエ1なんですよ。中学生ぐらいの時にやって。で、パソコンとかを持ってなかったんで、本当に「ロールプレイングゲーム、面白い!」って思ったんで。『ドラゴンクエスト1』。今でも本当に覚えてますね。今、それを作った方々が目の前にいらっしゃるので、ちょっとどうしようかって感じなんですけど。

(Naz Chris)その時っておいくつでしたか?

(橋野桂)中学校。13とか14じゃないかな?

(鳥嶋和彦)あの当時、ファミコンのソフトは、僕とか堀井さんもあの頃、たくさんいろいろやって。採点を付けてたんだけど。ドラクエを選んだ理由ってなんだったの?

(橋野桂)口コミっていうか、友達が「やってみろ」って。

(鳥嶋和彦)ゲーム仲間がいた?

(橋野桂)ゲーム仲間、クラスメイトから「やってみろ、やってみろ」って。

(鳥嶋和彦)どういう風に面白いとか、なんかコメントはありました?

(橋野桂)コメントがね、なかったんですよ。「まあ、とにかくやりゃわかるから」って(笑)。

(鳥嶋和彦)「やりゃわかる」(笑)。説明しにくかったんだな?

(橋野桂)ただ、画面を見てもウィンドウと字だけそうだったから。僕なんか、わかんなかったんで。「これ、面白いのか? 字ばっかりだけどな」みたいな。

(堀井雄二)ゲームにはすぐ入っていけた?

(橋野桂)最初はだから「うん?」ってなったけど。レベルが上がり始めてしばらくしたら、「おや?」みたいな。で、洞窟でたいまつをつけて「おや?」みたいな(笑)。

(鳥嶋和彦)アハハハハハハハハッ! なるほど(笑)。

(橋野桂)「面白いかもしれない?」みたいな感じでしたね。

(Naz Chris)そのドラクエ1を体験するまではどんなゲームやっていたんですか? 結構、ファミコンとかアーケードゲーム世代かなと思うんですけど。

(橋野桂)アクションゲームとかですよね。ゲーセンでもロープレないから。

(鳥嶋和彦)RPG自体がドラクエ1で初体験?

(橋野桂)たぶん初体験で。

(堀井雄二)パソコンを持ってないっていうことは、じゃあファミコンでゲームをやっていたんだ。ドンキーコングとか。

(橋野桂)そうですね。ゲームセンターとファミコンだけしかなくて。

(平信一)ドラクエの前に『ポートピア』とか、アドベンチャーゲームはやってたんですか?

(橋野桂)『ポートピア』の方が『ドラゴンクエスト』より前ですか? じゃあ、やっていましたね。

(鳥嶋和彦)割とじゃあ、そういう頭を使うものに比較的興味があるというか、適性があったんだね。

(橋野桂)そうですね。僕、田舎で。とにかく周りに全然、すぐ近くに友達も住んでなかったんで。もう学校帰りは家でゲームするぐらいしか、やることがなかったんですよ。

(Naz Chris)堀井さん、RPG原体験って『ウィザードリィ』ですか?

(堀井雄二)『ウィザードリィ』ですね。『ウルティマ』と『ウィザードリィ』。ハマったよね。

(鳥嶋和彦)ハマった、ハマった(笑)。あの頃ね、前もちょっとここで話したけど。坂口さんとか、あとKOEIの襟川とかね、Appleの海賊版とかを買って『ウィザードリィ』をやったっていう。だいたい同じ時系列でやってる人たちなんですよ。

(Naz Chris)『ウィザードリィ』とか『ウルティマ』がなかったらドラクエはないレベルの影響の受け方というか?

(堀井雄二)そうだね。元々ね、僕は漫画家になりたかったのね。で、漫画家になりたいんだけど、たまたまコンピュータと知り合って。ロールプレイングと知り合って。「ああ、このシステムを使って漫画みたいなことをできないかな?」と思って作ったのが『ドラゴンクエスト』なのね。

(Naz Chris)漫画っていうのもひとつ、あるんですね。

(堀井雄二)だからドラクエの物語って全部、セリフで進んでるのね。地の文でなくて、人のセリフだけ。要するに吹き出しなの。

「このシステムを使って漫画みたいなことをしたい」

(鳥嶋和彦)だからさっきもね、ちょっとこのブースに入る前に話していたんだけど。堀井さんのあの言葉遣い、セリフ遣いって、あれはやっぱりね、ゲームを作る人の文章じゃなくて。ライターとか漫画をやったことのある人の言葉遣いなので、すごく生な感じ。それぞれのキャラがしゃべってる感じだし、すごく耳に入ってきやすい。目に優しいセリフなんですよ。だから味があるんですよね。手触り感。それがねやっぱり他のRPGのセリフと違うんじゃないかな?

(Naz Chris)『ウィザードリィ』とか『ウルティマ』で一番、どういうとこにハマったというか?

(堀井雄二)やっぱりね、『ウィザードリィ』のあれだね。戦うと強くなる。レベルが上がる。もうそこだね。はっきり言って。ボスなんか知らなかったもん。とりあえず強くしようと思って。キャラを強くするのに精一杯で。で、『ウルティマ』は『ウルティマ』で、その世界を冒険するっていう。そうそう。

(鳥嶋和彦)だから漫画で味わえる、あの強くなってる感じとか、ドライブ感。冒険していく感じがゲームで味わえるっていうのは、堀井さんが言う通りだね。それがすごく新鮮だったんじゃないかな? あとね、たしかに死ぬは死ぬんだけど、「頑張ったことが次に報われる」っていうのがRPGの良さでね。失敗が次の成功に繋がるっていう。これがやっていて、新鮮だったんだね。

(Naz Chris)平さんってRPG原体験って何ですか?

(平信一)でも僕も、それで言うとたぶんドラクエ1ですね。はじめてやったRPG。僕はパソコンは持ってなかったので、最初のゲームはやっぱりファミコンから入っていて。当時、お金持ちの友達がいて。だいたいファミコンのゲームは……。

(鳥嶋和彦)素晴らしい! 昔から人脈を築くのがうまいね(笑)。

(平信一)だいたいゲームはその子に借りて。ファミコンのゲームは本当にその子のおかげでほぼ全部、遊べたみたいな。

(鳥嶋和彦)それ、ドラクエをやったのっていくつぐらい時?

(平信一)ドラクエはたぶん小学校2、3年とか。

(鳥嶋和彦)2、3年?

(Naz Chris)その1をやった時って、どういう面白さを小学校の時、感じましたか?

(平信一)でも、なんか徹夜でやった記憶はあるんですよ。朝方、竜王を倒した記憶が……(笑)。

(鳥嶋和彦)朝方。逆に言うと、朝方までやってたんだね?(笑)。

(平信一)そうそう。朝方、倒して。窓を開けたら明るかったみたいな(笑)。

(鳥嶋和彦)それはドラクエあるあるだね(笑)。

(平信一)その体験込みでドラクエっていうのを記憶してるんで。すごく印象に残っています。

(Naz Chris)さっき鳥嶋さんや皆さんがおっしゃっていた「強くしていくのが面白い」っていうのと「ボスを倒す」っていうのって別物なのかな?って今、すごい疑問が……「強くするのはボスを倒すため」って思っちゃっていたんですよ。それは強くならないと、レベルを上げないとボスに勝てないから。でも、お話を聞いてるとボスを無視してレベルを上げていたっていうか。ボスはどうでもよかったっていう。そのへんは、どうなんですか?

(堀井雄二)なんだろうね? そういうの、あるよね?

(鳥嶋和彦)あるある。

(堀井雄二)強くしたいっていうね。

(Naz Chris)あります?

(鳥嶋和彦)あるある。

(堀井雄二)まあ、強くした結果として、ボスも倒しちゃうみたいな(笑)。

(鳥嶋和彦)そうそう。まあ、「ボスを倒す」っていうのは一応目的なんで。だけどやっぱり楽しいのは、強くなっていく過程なんでね。

楽しいのは強くなっていく過程

(平信一)なんか特に初期のRPGって、そんなにお話がそこまで押し出されてなかったんですよ。特に『ウィザードリィ』とかもそうですけど。なので、とにかく戦って強くなって、戦って強くなってっていうのを繰り返すのがとにかく楽しい。たぶんそういうところからみんな、入っているんじゃないかな?

(Naz Chris)橋野さん、どうですか?

(橋野桂)ドラクエをやった時は……それ以外のアクションゲームって、死ぬじゃないですか。で、自分で頑張らないと絶対飛び越えられないけど。ドラクエはやっぱり繋がっていく。やめられなくなるんですよね。ちょっとずつ強くなっているから、どんどんどんどん続くっていうか。そこが強かったのかなって。

(鳥嶋和彦)そう。経験値は残るし。堀井さん、優しいからお金も半分だし(笑)。

(Naz Chris)そうだ。『ウィザードリィ』の時は全部なくなっちゃうんだ。

(堀井雄二)あれ、石になったりするからね(笑)。大変だったよね。

(鳥嶋和彦)大変だった(笑)。

(Naz Chris)でもドラクエからですよね? そうやって、復活の呪文だったり、冒険の書でセーブしてやって。お金は半分になるけど、レベルはそのままで続けられるっていう、その希望のある設定というか。

(堀井雄二)他のロープレでもね、そうじゃないのも結構あったよね。セーブしたところに戻っちゃうとか。セーブしたところから先の経験値はなくしちゃうっていうのはあったんだけども。

(鳥嶋和彦)FFは結構厳しかったもんね。

(堀井雄二)そうそう。

(Naz Chris)FF、そうですね。たしかに。

(平信一)でも一応、ゲームの歴史っぽい話をちょっとすると、やっぱりそれまでのアクションゲームとかシューティングゲームって、プレイヤーが頑張って上手くならないと先に進めないゲームだったんですけど。ドラクエみたいなロールプレイングって、やっぱりレベル上げればどんどんどんどん先に進める。プレイヤーがうまくなってなくても、ゲームの中のキャラクターが強くなっていけば、先に進めるっていうのがそれまでの、難しくてゲームが遊べない人でも楽しめるようになったっていう。そういうきっかけにはなったのかなと思います。

(鳥嶋和彦)そうそう。

(平信一)それで言うと、それこそ『ウルティマ』と『ウィザードリィ』を遊ばれて、ドラクエを堀井さんが作られるわけですけど。正直、『ウルティマ』も『ウィザードリィ』も結構小難しいゲームなんですよ。それをやっぱりファミコンで出すっていう判断がちょっと面白いし。小学生に向けて作るっていうところで……逆にその時、どういう風に考えたんだろうというのはぜひ聞いてみたいなとは思いますけども。

(堀井雄二)強くなっていくのが楽しくて。「こういうゲームを作れば、絶対に受ける」と思ったんだよね。で、ファミコンが出てきて。「じゃあ、ファミコンを使ってこういうゲームを作っちゃえ」って思って。まあ、容量はないんだけど、いろいろ省けはできないことはないかと思って。1人プレイにして、とにかく強くなるっていうのを最初に遊ばせて、冒険をする。竜王の城をすぐに見せて。「あそこに行けばいいんだ」っていう。そういうところから、入りやすくして。とにかく敷居を下げて。

(鳥嶋和彦)だから堀井さんがファミコンでRPG、ドラクエをやるって聞いた時にはね、何の違和感もなかったよね。「ああ、いよいよ」っていう感じで。全然。

(平信一)でも、なんか当時のゲーム……そのパソコンでRPGを作ってる事例っていうのは先にあったと思うんですよ。だけど、その『ウィザードリィ』とかを遊んで「自分もRPGを作ろう」っていう人たちって、たぶん自分と同じ世代の人たちに向けて。あるいは自分とその仲間というんですか? 他のパソコンゲームを遊んでるような仲間に向けて作っていたところがあると思うんですけど。でも、堀井さんだけが子供に向けて作っていたっていう。結構、ここは違うところというか。

(堀井雄二)まあ、自分が子供だからね(笑)。

(一同)アハハハハハハハハッ!

「堀井さんだけが子供に向けて作っていた」

(鳥嶋和彦)いや、今のポイントは大きいポイントで。あと、堀井さんと僕はずっとジャンプの誌面でパソコンゲームを紹介したり、それからファミコン神拳でファミコンの紹介を子供たちにしていたんで。やっぱり子供たちの感性とか、興味の持ち方っていうことに僕らは触れいてたんだよね。だから全然、みんなは「子供」と思うけどある意味、大人の僕れるね鋭い連中だから。だから子供向けに作った方が面白いし、ぜひ伝えたいし、彼らにはわかるはずだっていうのがあったからね。だから、自然な流れでしたよ。

(堀井雄二)だから、どれだけわかりやすく作るか?っていうのは、すごい気を遣ったよね。ぶっちゃけ。だいたいゲームをやる時にマニュアルを読まない人たちなんで。マニュアルを読まなくてもわかるように作ろうと思って。

(鳥嶋和彦)わかる。説明書を読んでやりたくないもんね。

(堀井雄二)そういう意味でペルソナ5もね、最初はカジノから逃げるところだっけ?

(橋野桂)はい。

(堀井雄二)あれもすごいね、マニュアルを読まなくてもどんどん行けたからね。よくできているなと思いましたよ。

(鳥嶋和彦)やってくれたんですね。素晴らしい。

(平信一)たしかに。掴みがいいですよね。

(堀井雄二)掴みがよかった。

(橋野桂)ありがとうございます。

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