坂口博信 日本のゲームメーカーの問題点を語る

堀井雄二・坂口博信・鳥嶋和彦『ウィザードリィ』の衝撃を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

坂口博信さんが2023年12月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中で日本のゲームメーカーの問題点について、話していました。

(鳥嶋和彦)アニメ、漫画、ゲームってよく横並びで言われるけど。やっぱり堀井さん、アニメとか漫画に比べてゲームって、どこが魅力的だと思います?

(堀井雄二)やっぱり自分で動かせるからじゃないの? 自分で入っていけるじゃん? そこだと思うよね。まあ、見るだけでも面白いんだけど。見るだけは見るだけである意味、楽で見れるんだけどね。そういう意味じゃそのゲームもさ、今さ、楽にゲームを見れるゲーム実況とか、流行っているよね。

(鳥嶋和彦)ちゃんと見たりしてるんだ。

(堀井雄二)一応ね。おしゃべり、うまいよね。

(鳥嶋和彦)坂口さん、どうですか? やっぱりゲームには可能性がある?

(坂口博信)ああ、でももうビジュアルはものすごいところまで来ましたしね。ただ、もうちょっと行くんじゃないですか? 今のCGでも、ぎこちないところ、ありますもんね。あれがもっと……リアルにも行けるし。逆に言うとデフォルメも、もちろんやれるわけじゃないですか。だから、なんて言うのかな? 単純に映像だけ取ってみても、ゲームの方がもちろん、堀井さんが言ったみたいに「動かせる」っていう意味でもリアルタイムに描いているわけなんで。

(堀井雄二)この前、裸眼の3Dみたいなのを見て。あれ、すごかった。

(鳥嶋和彦)ああ、すごかったですね。

(堀井雄二)裸眼でモニターで見る3D。

(鳥嶋和彦)ソニーに行ってね。

(堀井雄二)やっぱり、こうやってかけるのは重いから。裸眼で3Dってすげえなって。

(鳥嶋和彦)ヘッドマウントディスプレイしなくてもいいっていうね。ただ一方でね、ゲームがなんかみんな同じようなものしか出てこないっていうね。お二人は言いにくいでしょうけど。スクウェアとエニックスが一緒になって。「ドラクエとFFしかないじゃん」って客観的に僕なんか、思うわけね。どの会社もみんな、ナンバリングタイトルばっかり出して。新しいものが生まれていない。で、坂口さんとか堀井さんみたいな、わくわくするような、「こういう人たちになりたい」っていうようなアイコン的なクリエイターが……それぞれ、ドラクエとFFを作ったところからすると、果たしてクリエイターとかは育っているのか? 「日本のゲーム会社って、ダメじゃん」って感じは、ちょっとしなくはない?

(坂口博信)今の若いクリエイターっていうか、名前がある程度、出てる子がいるじゃないですか。僕は、あんまり覚えてないんですけども。そこまで、本当に若いユーザーにとって憧れではないんですかね?

(鳥嶋和彦)うーん。ない感じ、する。

(坂口博信)ああ、そういう感じなんですか。それなりにあるのかな、なんて思いながら見てたんですけどね。

(鳥嶋和彦)だからアニメにおける新海誠さんみたいな存在。

(坂口博信)ああ、そこまではいってないっていう。

(鳥嶋和彦)それはだから、ゲームで言えば堀井さんだったり、坂口さんだったりしたわけでね。

(堀井雄二)メーカーも個人の名前を出したくならないのかね?

(坂口博信)ああ、出したがらないところも多いですよね。引き抜きとかね、いろいろね。

(鳥嶋和彦)でも、それで言うとね、これだけねユーザーからお金をもらい。それこそ上場して、資金があってどうこうなのに、子供に夢を与える次世代のクリエイターをピックアップするような形のマネジメントをちゃんとしようとしない経営ってね、何なのか?っていうね。だからお二人が現役で作っているのは素晴らしいことなんだけど。それをバトンタッチして追いかける追いかけるような何かっていうのが……任天堂だって、やっぱり結局ほら、宮本さん含め、一部の名前しか出てこないしさ。

(堀井雄二)次の世代って、誰がいる?

(坂口博信)ええと、ゼルダだと……。

(堀井雄二)新しい作品で、新しい名前ってないのかな?

(坂口博信)(ゼルダだと)青沼さんとか、手塚さん……一応、出てくるきますね。宮本さんが、なんだろう? アイコンすぎるんですよ。難しいですよね。

(鳥嶋和彦)でもやっぱりね、いろいろ耳に聞こえてくるのは「中国のメーカーの方が勢いがある。力がある。新しいことやろうとしている」とかね。

(堀井雄二)テンセントとかね。

(鳥嶋和彦)うん。テンセントとか、ネットイースとかね。

中国のゲームメーカーの勢い

(坂口博信)すごい計算づくで彼ら、作っていますよね。その国のマーケティングをして、もう本当にピタッと合わせてくるじゃないですか。あれはすごいですよね。で、日本、中国、アメリカだけじゃなくて、実は「メキシコはシミュレーションが流行ってるから……」みたいな。

(鳥嶋和彦)ああ、そうなの?

(坂口博信)はい。それはこの前、ちょっと某テレビ番組で見たんですけど。メキシコは戦略シミュレーション。だからそれをテンセントは打ち込んでるみたいな。すごいなと思って。

(鳥嶋和彦)ワールドワイドに市場をちゃんと見てるっていうことだね。

(坂口博信)見ている。で、各国に部隊がいて。そこは、すごいっすね。まあ、そういう作り方はあんまり好きじゃないですけどね。計算づくで。

(鳥嶋和彦)計算づくでFFを作り始めたのに?(笑)。

(坂口博信)いやいや、計算づくじゃないですよ。ただドラクエに勝ちたかっただけですよ(笑)。

(鳥嶋和彦)それは計算づくじゃないの?(笑)。

坂口博信 ファイナルファンタジー1ができるまでを語る
坂口博信さんが2023年12月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中でドラクエ1発売で衝撃を受け、ファイナルファンタジー1の制作を進めた話をしていました。

(堀井雄二)バンコクのゲームショウを見に行って。すごい熱気があったね。ただ唯一、ゲームはタイ語じゃないんだよ。

(鳥嶋和彦)何語なの?

(堀井雄二)英語。英語で遊ぶしかない。

(坂口博信)ああ、タイ語までサポートしてないんですね。

(堀井雄二)してない。でも、タイ語でやりたいんだよね。

(坂口博信)繁体字とか、中国語とかはね、台湾ベースとかで……。

(鳥嶋和彦)じゃあ、僕らが『ウィザードリィ』で遊んだ頃の感じなんだ。

(堀井雄二)その感じなんだよね。

堀井雄二・坂口博信・鳥嶋和彦『ウィザードリィ』の衝撃を語る
堀井雄二さん、坂口博信さん、鳥嶋和彦さんが2023年12月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中で『ウィザードリィ』をはじめてプレイした際の衝撃について、話していました。

(堀井雄二)タイ語になればね、もっと行けるんだろうけどね。それはあるよね。

(鳥嶋和彦)逆にタイって今、映画とか独自で作ってるんのかな? タイもたしか、映画あるよね。

(坂口博信)前に「インド用にクリケットのゲームを作らないか?」みたいな話はもらいましたね。クリケット、すごいんですよね。

(堀井雄二)人口、多いからね。

(坂口博信)たしか『巨人の星』もクリケットになっていたんですもんね?(笑)。

(鳥嶋和彦)その通り。巨人の星がクリケットになったのは僕も仰天したけどね。まあ結局、あんまりうまくいかなかったみたいだけどね。

(坂口博信)そう。クリケットゲームも言われたけど、ちょっとピンと来なくて、参加しなかったですね。

(鳥嶋和彦)でも野球の始まりもクリケットだからね。

(坂口博信)そういうところにちゃんと中国は、テンセントとかはピタッと合わせてきますよね。そこが奴らのすごいところで。まあ、つまらないけど。

(鳥嶋和彦)でも坂口さん、ご自分でチームを集めてやられるんだけど。日本のメーカーって、見ていてどうですか? 両方の目で見れるじゃないですか。自分でやっていて、海外のところ見てるわけで。

(坂口博信)優秀な子はいまだにいっぱいいると思うんですよ。で、僕はその優秀な子を3、40人集めて。『FANTASIAN』の時も意外と少人数で作れたし。ただ、だいたいその子たちが終わると、他のメーカーに散っていくんですけど。僕はずっとキープしとかないので。そうすると、だいたいどのプロジェクトもダメなんですよね。みんなが言うにはやっぱり、うまくディレクションできてなくて。ディレクションっていうのは本当の意味での方向性を持たせるってこと。それができてなくて。だから、迷走しちゃってるんですって。船頭がいないっていうか。で、結局長期化して、みんながモチベーションを失っていくっていう。だいたいみんな、そうです。で、今回、新作を作るっていうので「集まらないか?」って言ったら、みんなやりかけのあるにもかかわらず、「今すぐ、辞めて行きます!」みたい。

(堀井雄二)それで、来るわけだ。

(坂口博信)そうなんです。だから、そのプロジェクトの立て方とか……というか、ディレクションなんですけど。が、うまくいってないのが多い印象はありますね。

(鳥嶋和彦)それはなんでそうなるの?

(坂口博信)うーん。なんか、作りたいゲームを作ってるんじゃなくて、儲けたいから作ってるんじゃないですか? だから、そもそものモチベーション自体が実は存在してないっていうか。「作りたい!」っていう動機がない。

(堀井雄二)「作りたい!」っていう人がいないんだ。

(坂口博信)たぶん、そうだと思うんですよね。

(鳥嶋和彦)不幸だね。

不幸なプロジェクト

(坂口博信)そこは不幸ですね。作り手もすごい優秀なプログラマーなんですけど。そうやって不幸なプロジェクトに入ると、自分の人生の中の数年間をムダにするわけですから、もったいないんですね。

(堀井雄二)それで出来上がってもつまらないとかね。もったいないね。

(坂口博信)なかなかうまくいってないのが多いみたいですね。

(鳥嶋和彦)でも、それはなんかゲームに限らず、あちこちにありそうな風景だな。

(堀井雄二)まあ、あるよね。映画もそうだよ。「誰かこれ、途中でストップって言わなかったの?」みたいなのが出てきたりするよね。走ったら止まれないのかな?

(鳥嶋和彦)そうそう。漫画だってさ、絵を見ると上手いのにさ、なんでこの画面構成とこのセリフ回し、このキャラクター設定になるのか。もったいないな!っていうのがあるからね。

(坂口博信)まあ、そこらへんは海外も同じような状況なんだろうけど。なんだろう? やっぱりそこは社会の違いで。ある程度、割り切ってやれるんじゃないですかね。欧米のクリエイターたちは。もしくは、あの連中はもっとわがままさを持っているから。誰かがまあ、言い出すんでしょうね。「いや、こっちに行くぞ!」みたいな。日本人ってやっぱり譲り合ったり、人同士が警戒したりするので。どうしても船頭が現れないっていうか。それはあるんじゃないですかね。ちょっとした差な気はしますけど。別に欧米が優れてるってわけじゃない気はするんですけどね。

(鳥嶋和彦)でも今、やりかけのものをやめてでも坂口さんのところでやりたいっていうのは、坂口さんにとってはいい話だけど、トータルで聞くと「なんだかな……」っていう話だよね?

(坂口博信)そうですね。まあだいたい僕は「どう? 今、幸せ? 不幸?」「ああ、すいません。不幸です」っていうところからスタートするんですよ。「ああ、不幸なんだ? マジ? そういうプロジェクトなんだ。不幸プロジェクトかー。あ、うちで幸せ、つかまない?」みたいな(笑)。

(鳥嶋和彦)アハハハハハハハハッ! 悪い奴だねー(笑)。

(坂口博信)いや、悪くないですよ。うちは全然、本当に幸せにするんで(笑)。

(鳥嶋和彦)一時期、それでさ、あちこちの※※※※を抜きまくってさー。今、誰とは言わないけどさ。六本木の交差点のあたりで説教したこと、あったよね。「お前、いい加減しろよ?」って(笑)。

(坂口博信)「いい加減にしろよ」って(笑)。いやいやいやいや、大丈夫です。うちに来た方が幸せになるんですよ(笑)。

(鳥嶋和彦)今度、その当該選手だった人を呼んで聞いてみよう(笑)。

<書き起こしおわり>

堀井雄二 ゲームの遊びやすさ、親しみやすさの作り方を語る
堀井雄二さんが2023年12月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中でゲームの遊びやすさ、親しみやすさを生み出し方について、話していました。
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