鳥嶋和彦と堀井雄二『ジャンプ放送局』を語る

鳥嶋和彦と平信一 エンタメの生み出す価値を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

堀井雄二さん、鳥嶋和彦さんが2025年1月25日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』で榎本一夫さん、土居孝幸さんと『ジャンプ放送局』時代を振り返り。『ジャンプ放送局』の立ち上げ当初の話や単行本化などについて話していました。

(鳥嶋和彦)でも遡って言うと、そのさくまくんから始まっているんだけど。『ジャンプ放送局』をやる時。それまで読者ページが本当につまんなくてさ。で、やりたくないけどやらなきゃいけない羽目になって。「どうせやるんなら漫画をぶっちぎりで抜こう」っていう風にさくまくんと話をして。で、さくまくんがちょうど堀井さんもやっていた『OUT』で同じように読者ページをやっていて。

(Naz Chris)「でたとこまかせ」。

(鳥嶋和彦)そうそうそう。「じゃあ、どうやったら抜けるか?」っていうんで始まるわけだけど、ネタないところからどうやって募集するか? で、さくまくんがやっている読者ページの常連にダイレクトメールを送るわけ。「こういうのが始まるから、投稿してね」って。で、土居くんを呼んで話をして。その頃はね、『セブンティーン』でね。

(土居孝幸)そうですね。その頃は『セブンティーン』とかで仕事してたんで。そこで佐久間さんと知り合って。で、引っ張られて。

(鳥嶋和彦)で、土居くんに予告ページから……要するに漫画を抜くためにアピールしなきゃいけないから。「バン!ってやるから大きな絵、書いて」って言ってさ。

(土居孝幸)読者ページの予告編があったんですよ。漫画の予告編だったらわかるけど。それもすごいことだなと。

(Naz Chris)そうですね。

(堀井雄二)あれはね、『OUT』でもやったんだけど、読者を載った回数で集計していたの。で、読者から有名人を作ろうっていうので、それが受けたんだよね。

(鳥嶋和彦)だからちょうど、今に至るオタクとかハガキとか……そういう人たちが出始めたものをジャンプは掴んでなかったけど『OUT』っていう雑誌は掴んでいた。で、僕はさくまくんとか堀井さんとかを通じて、そういう読者を掴みに行ったのね。

(Naz Chris)はい。すごいですね。そうか。『ジャンプ放送局』、82年からか。ファミコンの1年前からか。

(鳥嶋和彦)それでさ、今だから言うわけじゃないけどジャンプの編集部ってさ、閉鎖的で。フリーの人を使ったことがないわけ。僕の前は。それで「フリーの人を使う」っていうね。それが副編との条件だったから。「そうじゃなきゃ僕はやりません」って言ったから。1人じゃ無理だからさ。そしたら「いいけど」ってなっていたんだけど、それを会議にかけたら僕よりも年下の若手のやつらから反対が出て。

なんでかって言うと「ジャンプのアンケート情報が漏れる」っていう……あのさ、外から来る人はジャンプのアンケート、興味なんかないよっていう。そんな心の狭いことを言ってさ。後から考えると星矢の担当とかジョジョの担当とか、そういうやつらがさ……。それで、会議室で作業することになるわけ。で、『ジャンプ放送局』が始まってね、ものすごい人気だったんですよ。漫画半分、抜いたんだから。

『ジャンプ放送局』が読者アンケートで連載漫画の半分より上位になる

(榎本一夫)新しい読者ページとしてね、それまでなかったあれだから。それまではなんか、似顔絵を書くようなコーナーでしたもんね。あれって?

(鳥嶋和彦)その時に俺さ、自分の漫画の新連載があって。ずっと『ジャンプ放送局』に抜かれてて終わっちゃったんだよ。

(Naz Chris)マジですか?

(鳥嶋和彦)(規制音)っていう……。

(Naz Chris)私、ジャンプを買ってまず『ジャンプ放送局』から読んだりしてましたもんね。『ファミコン神拳』から。

(鳥嶋和彦)これね、さくまくんに「読者ページの本を出したい」って言われた時にね、「えっ? マジで!?」って。

(Naz Chris)普通、そう思いますよね。

(鳥嶋和彦)それ自体はよかったんだけどね、何が大変だったかっていうとハガキ。読者投稿のOKを取ってないから。だから単行本にするにあたっての……。

(榎本一夫)許可取りだ。

(Naz Chris)それ、どうやったんですか?

読者投稿ページの単行本化への許可取り

(鳥嶋和彦)会社の中でこれを全部、オーソライズして。で、連絡先がわかるものには全部、送ったのよ。「著作権放棄をしてくれ」って。で、たしかシールかなんかを作って。「これで」っていう。その後からは応募の決まりの時にも書くようになって。

(堀井雄二)書いた、書いた。

(鳥嶋和彦)というのがあって。

(榎本一夫)それで最初、あのシールがあったんだ。

(土居孝幸)それも新しいことですよね。それまでなかったことだから。

(鳥嶋和彦)もう全部、新しいことだから。で、さくまくんがそういうことでやりたいって言って。「えっ!?」っていう顔をすると……。

(榎本一夫)ああ、なんとなくわかる。

(鳥嶋和彦)わかるでしょう? それでやらざるを得なくなって。でも、そのおかげでいろんなことを……こちもだんだん勉強していくじゃん?

(Naz Chris)ちなみにその『ジャンプ放送局』の単行本って、どれぐらい売れたんですか?

(鳥嶋和彦)20万ぐらい?

(堀井雄二)10万部は超えてますね。

(Naz Chris)マジですか? いやいやいや……。

(堀井雄二)他の出版社がそれに目をつけて僕のところまで聞きに来たぐらいで。

(鳥嶋和彦)でね、たしか……これ、土居くんに印税、行ってないよね?

(土居孝幸)印税、行ってないんですよ。

(Naz Chris)そうなんですか? ええっ?

(土居孝幸)うん。「こんなもん、売れないから土居くん、原稿料だけでいいよね?」とか言われて。

(鳥嶋和彦)で、それが頭にあって次、『ファミコン神拳』の時に「土居くんに行かないのはおかしいよね?」って。やっぱり6:4とか7:3で……少なくとも6:4で土居くんにお金が行くのが当然だと思っていたから。それがあったから、『ファミコン神拳』の時にちゃんと土居くんに行くようにして。

(土居孝幸)ああ、なるほどね。これが伏線だったんだ。よくわかんないけど(笑)。

(堀井雄二)土居くんがさ、ちょっと不満足そうな顔してたからよかったんだね(笑)。

(土居孝幸)それは鳥嶋さんにいろいろと気を遣ってもらって。

(鳥嶋和彦)というのがあったんだよな。

(土居孝幸)あったね。そういうのが。

立ち上げた読者投稿ページが大人気になってしまい、連載中の漫画の半分よりも読者アンケートで上位につけてしまうなんてすごすぎる! たしかに当時、ワクワクしながら読んでいたのを思い出したました。そして当初、想定もしていなかった単行本化への許可取り……めちゃめちゃ大変だったんだろうなと思ってしまいますね。僕らが楽しんでいた裏にはそんなご苦労もあったんですね。知らなかったー!

TOKYO M.A.A.D SPIN・2025年1月25日放送回

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