町山智浩『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を語る

宇多丸『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を絶賛する こねくと

(町山智浩)背景とかも6のパターンの絵柄があって。6つのパターンが、さっき言ったようにバラバラの絵柄なんですね。で、ほとんどの色を塗る時に……要するに、アニメーションというのは素体という、人間の軸になる。何も絵が書いてない人物が動くんですけれども。それに色を塗るわけですけど。普通はコンピュータで自動的に色を塗るんですね。そうじゃなくて、これは手書きしてるんです。手塗りしているんですよ。

(石山蓮華)ええっ? なぜ?って思っちゃうけど……。

(町山智浩)これはそのタッチを楽しむんですよ。その筆でこすったみたいなタッチって、あるでしょう?

(でか美ちゃん)だし、その作品でね、マルチバースを描くなら、そうした方がいいですもんね。絶対に。

(町山智浩)そうなんですよ。だからやっぱりアメコミの手作り感っていうのを生かすために、手塗りにしてるんで。多くのシーンを。さて、アニメーターは何人でしょう?

(石山蓮華)ええーっ? じゃあ今日、手元に別のコーナーで使ったクイズ用のマシンがあるので。これを……(ピンポーン!)。

(でか美ちゃん)蓮華ちゃん。

(石山蓮華)2000人!

(町山智浩)おおーっ!

(でか美ちゃん)でもね、日本のアニメ業界の話とかだけだと結構厳しいと聞きますから……。(ピンポーン!)。ちょうど240人。

(町山智浩)そう考えますよね。1人ずつね、タッチを変えるっていうね。実際はね、1000人だそうですよ。1000人にほとんど同時に発注して。だからね、期間は短いんですよ。製作期間は。

(でか美ちゃん)そうか。キュッと作れるわけですもんね。

(町山智浩)全員にバーッとばらかして発注して。ただ、それをまとめるのは大変だと思った(笑)。

(石山蓮華)だってひとつの作品に集合させるってなったら、1000人の中でも進捗、様々ありそうじゃないですか。

(でか美ちゃん)しかも、修正もあるだろうしね。

1000人のアニメーターたちが描くスパイダーマン

(町山智浩)修正もあるだろうし。ひとつの画面に違うタッチのキャラクターと違うタッチの絵が紛れ込んでくるんで。すごい大変だろうなと思いましたね。これは。

(石山蓮華)なんかアニメ映画とかを見に行くと、スタッフロールがものすごく長いじゃないですか。今回の『スパイダーバース』も長そうですね!

(町山智浩)すごく長かった(笑)。日本の人も、いっぱい参加してます。全世界の人にね、もうできる限りね、仕事を分けてるんで。日本の方もすごく参加してます。あと面白いのは、インドのシーンとかはインド系の人がやったりとかして。。それぞれの民族の人に任せたりするところも面白いですね。

(石山蓮華)なんか映画の作り方としても、その世界をグルッと巻き込んでやるっていうのは素晴らしいですね。今っぽいなとも思いますし。

(町山智浩)そうなんですよ。スパイダーマン自身にいろんな人種の人がいるんですよ。主人公はプエルトリコとアフリカ系だし。そのインド系の人もいるでしょう。あと、メキシコ系とアイルランド系の人が出てきたり。ほとんど、あらゆる人種が出てきますよ。日本人ももちろんいますし。

(でか美ちゃん)なんか、勇気をもらえるだろうな。自国のスパイダーマンが出たら。

(石山蓮華)なんか自分に近いスパイダーマンを探したくなりそうですね。

(町山智浩)そう。まさにそういうことなんですよ。全ての国の人たち、全ての……あと、ゲイの人も出てきます。あと車椅子の人もいます。車椅子のスパイダーマンもいます。

(でか美ちゃん)それが今回、大集合するんだ。

(町山智浩)だからどんな人でも、自分を投影できるスパイダーマンがどこかにいるっていう。すごい世界ですよ。

(石山蓮華)めっちゃいいな。

(でか美ちゃん)ラジオパーソナリティーのスパイダーマン、いるかな?(笑)。

(町山智浩)いるんじゃないですかね?(笑)。

(石山蓮華)電線が好きなスパイダーマンも、いるかな?

(町山智浩)いるかもしれないですね(笑)。妊娠してるお母さんのスパイダーマンも出てきましたよ。お腹が大きくて。

(でか美ちゃん)奥が深いですね。スパイダーマンは本当に。

(町山智浩)何でもいるんですよ。すごいんですけど。あとすごいのはね、音楽がいいんですよ。さっきからずっとかかってる曲が、『スパイダーマン』の今回の音楽なんですよ。

(でか美ちゃん)なんかおしゃれじゃないですか?

(町山智浩)ものすごいおしゃれなんですよ。今回。アニメソングのようなものとは全然違う、今一番おしゃれな曲が使われてますね。メトロ・ブーミンという人が作っているんですけども。この人も若いんですよ。まだ29歳かなんかなんですけども。すごいよ、この人は。天才で。どの曲もね、でもなんかちょっと寂しいんですよ。美しくてね、切ない曲ばっかりなんですよ。ヒップホップですけど。それで、実はこの話は結構楽しそうなんだけど、切ない話なんですよ。

(でか美ちゃん)やっぱりスパイダーマンって、使命っていう感じがしますもんね。背負わされる感があるというかね。

(町山智浩)そう。スパイダーマンって必ず、自分の両親だったり、お父さんやお母さんやおじさんや愛する恋人や、誰か愛する人を失ってるんですよ。全員。

(石山蓮華)なんかそのシリーズ、切ないイメージがありますね。

(町山智浩)そうなんです。それが運命なんすよ。スパイダーマンの。で、今回のポスターに書いてあるのは「運命をぶっ潰せ」ってなってますよね。主人公のマイルズがその運命に逆らうことで、240人のスパイダーマンを全部、敵に回します。

(石山蓮華)ええっ?

(でか美ちゃん)大丈夫?

(石山蓮華)『ジョン・ウィック』みたいなことになっているっていうことですか?

(町山智浩)そう(笑)。『ジョン・ウィック』みたいに。その、いろんなスパイダーマンが出てくるんですが……全員敵です!

『ジョン・ウィック』的な全スパイダーマンが敵の世界

(でか美ちゃん)でもたしかに日本版のポスターの構図、不思議だなと思ったんですよ。どういうことだろう?って。なるほどね!

(石山蓮華)スパイダーマンが1人でいろんなスパイダーマンに立ち向かって、飛んでいくようなポスターですね。

(町山智浩)スパイダーマンの掟に主人公が逆らってしまうんで、全スパイダーマン対主人公の戦いになっていくんですよ。

(でか美ちゃん)面白そう!

(町山智浩)めちゃくちゃ面白そうでしょう?

(石山蓮華)いろんな世界の自分たちと出会ったり、戦ったりするってのは『エブエブ』っぽいなとは思ったんですけども。

(町山智浩)そうなんですよ。その通りですね。今、作られる映画なんだなと思いましたね。でね、これは本当にもうすぐ公開なんですけども。1作目を見てなくても、大丈夫。今回。これだけで大丈夫。ただ、もしスパイダーマンの世界に入りたいんだったら、実写版の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は見てほしいです。実写版も実はこの『スパイダーバース』の中に入ってくるんですよ。大変なものになっていますので。

で、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がそのさっき言ったスパイダーマンの使命についての物語なので。犠牲とか、ヒーローとは何か?っていう物語で。それをある程度、受けてる作品なんで。今回は。ぜひ、それを見てもらうとわかりやすいかなと思います。いうことで、はい。

(でか美ちゃん)今週金曜日に公開ですからね。

(石山蓮華)これはちょっと……。

(町山智浩)もう本当に子供から、本当に60歳の初代『スパイダーマン』世代、池上遼一世代まで楽しめる映画になってます。はい。

(石山蓮華)町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

<書き起こしおわり>

石山蓮華とでか美ちゃん『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を語る
石山蓮華さんとでか美ちゃんさんが2023年6月20日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』について、町山智浩さんと話していました。
宇多丸『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を絶賛する
宇多丸さんが2023年6月6日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を公開に先駆けて一足早く見たことについてトーク。「前作を超える」と絶賛していました。
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