宇多丸『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を絶賛する

宇多丸『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を絶賛する アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2023年6月6日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を公開に先駆けて一足早く見たことについてトーク。「前作を超える」と絶賛していました。

(宇多丸)日曜日のそのアトロク映画祭で2018年の『スパイダーマン:スパイダーバース』という、本当に文字通り世界のアニメーション界に革命を起こした……。

(宇垣美里)もう「前・後」ですよね。

(宇多丸)本当にそういうことです。アフター『スパイダーバース』の時代に本当に入ってるという感じの作品で。本当に、後になればなるほど価値がすごくわかってくるし。あと、もうその映像技術はもちろんのことだけど、それと完全にリンクしたストーリーテリングっていうか。素晴らしいですね。

(宇垣美里)そう! あのメッセージ性が本当に大好きっていうところもあります。

(宇多丸)まあ、ほとんど非の打ち所がないような大傑作『スパイダーバース』。

(宇垣美里)みんなの背中を押してくれる作品だと思ってます。

革新的な大傑作だった前作

(宇多丸)で、メールをいただいて。2018年『スパイダーバース』の日本公開時に宣伝に関わられてた方。「この作品の真価を当時、十分に伝えきれてなかったかもしれない。難しかった」っておっしゃっていて。でも後になって皆さん、ソフトとかになってご覧になって、すごくその反響が大きくて。後から価値を発見されてきた作品でもあるというか。それの証明であるかのようにですね、現在アメリカで『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』、続編が公開されておりまして。オープニング興収がなんと、前作の3倍以上という。

(宇垣美里)フゥーッ! そりゃそう!

(宇多丸)つまりこれってやっぱり前作を見て。前作が要するにそこまで数字がバカ高いわけじゃなくて。前作を見た人誰もがぶっ飛び、その影響力の大きさとか、「じゃあその次はどうなるんだ?」みたいな、その期待がぐっと高まってという、その表れだと思うんですね。要するに、本当に実力がある作品の数字の出方というか。なのでですね、だからアメリカ本国でさえそういう感じがあるんだよという話でございまして。日本では先ほどね、宇垣さんもおっしゃった通り、6月16日に続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が公開されるんですね。

(宇垣美里)楽しみ!

(宇多丸)これをお聞きの方、本当に僕、「『スパイダーバース』はすごいんだ」っていう話をしてますけど。やっぱりね、見てないものを想像できないという問題というか。

(宇垣美里)革新的すぎて。

(宇多丸)そうなんですよ! 革新的すぎて。どういう映像なのか。「今までの3DCGの常識を破るんだ」なんて言っても……口で「2Dのレイヤーが」とか「コミックが本当に動いてる感じで」って言ったって、なかなかわかりづらい。あえて言えば、『THE FIRST SLAM DUNK』というのは明らかに『スパイダーバース』以降のアニメ表現ですよ、みたいなことは言えると思うんだけど。

だからそれこそ、宇内さんとかはさ、今回初めて見て。で、「これを自分が見てない人生なんて、ぞっとする」みたいなところまでおっしゃってくれて。「2500年代の映画かと思った」なんて言っていて、あれ、最高でしたよ(笑)。

(宇垣美里)そう、言ってた! 「なんのこっちゃ?」って(笑)。

(宇多丸)あと、やっぱりその初めて見る衝撃みたいな。日比ちゃんがね、「海馬を取り替えたい」とかね、日比ちゃんワールドを出してましたけども。そうなんです。だからこれをお聞きの方でまだご覧になっていない方は、できる限りいい上映環境……今だったらね、ソフトとか配信になると思いますけど。ソフトでも一応ね、3Dブルーレイとか出てるんですよね。私も持ってますけど。それこそ3D再生機というかね。テレビが3D対応じゃないと見れないから。ただ、3D、よかったっすよね!

(宇垣美里)よかったです。私、もちろん何回もこれ、見てるんですけど。3Dで見たのは初めてだったので、こんなに……逆に洗練されたというか。あのゴチャッ! ギュッ!って感じも大好きだったんですけど。

(宇多丸)情報量過多なのが整理されましたよね。

(宇垣美里)そう。ちゃんと奥行きが出たことによって、すごく取捨選択しやすくなったっていうか。

(宇多丸)見やすくなるというかね。なので、なんていうかな? 言っちゃえば、これ用だったていうか。そんな感じがしましたよね。なので、上映形式。今回の『アクロス・ザ・スパイダーバース』。続編がどういう形式なのか、まだ発表されてないだけど。3Dで見られる限りは……で、やっぱりドルビー3D、すげえクリアでよかったんで。結構おすすめかもしれないですね。で、あのですね、そうなんです。『アクロス・ザ・スパイダーバース』。これから公開で。あの、ちょっとすいません。一足先に拝見しまして……。

(宇垣美里)なんだって!? どうして声をかけてくれなかったんだい?

(宇多丸)あなた、忙しいから。なかなかちょっとタイミングが合わず……。

(宇垣美里)くぅーっ!

(宇多丸)タイミングが合わなかったんですが。これ、あんまり言うとまたハードルが上がっちゃってね。「なにを大げさなことを言ってるんだ」と言われるかもしれませんけど。もうね、オープニング数分ではっきりするのは、「えっ? 1作目をガンガン、超えてきてんだけど」っていう。

(宇垣美里)ええっ? あれを超える!?

(宇多丸)もうとにかくね、「なんなの? なんなの、これは?」っていう。だから1作目って、言っても5年前ですから。ある意味、『スパイダーバース』の影響を受けた様々な作品っていうのが今、出ている状態じゃない? それをさらに10年ぐらい引き離す勢いですね。今回は。

(宇垣美里)「次はこちらでーす」って?

(宇多丸)「次はこちらでーす」(笑)。なんていうのかな? もちろん、だからたぶん予算感もアップしたのもあるだろうし。あと、その方向性として確信……「これでいいんだ」っていう。要するに前はあんなのがなかったから。あれはある種、実験的に作ったわけなんだけども。それを確信を持って、その方向へさらに進んでるからっていうのもあるんでしょうけど。もうね、オープニングシーンだけで……だから、そのエンターテイメントとかも全部ひっくるめて、全てのアニメーション表現。だから実験アニメとかも含めても、その中でも一番最先端を行っていると思う。

「全てのアニメーション表現の最先端」(宇多丸)

(宇垣美里)うわーっ、早く見たい! グウェンは出た?

(宇多丸)グウェンのシーンから始まります。で、グウェンの世界って1作目でも、ちょっとなんかポップアート風っていうか。

(宇垣美里)ちょっとね、お菓子みたいな色味をしていて。かわいかったですからね。

(宇多丸)色もすごい綺麗だし。言っちゃえば、水彩画的というのかな?

(宇垣美里)ちょっとマカロンカラーみたいなイメージ、あります。

(宇多丸)とにかく筆のタッチというか。絵の感じなんです。コミックというよりは、モダンアートの世界なんですけど。それが全面展開ですよね。

(宇垣美里)ええーっ!

(宇多丸)しかもそこで語られるドラマがやっぱり、そのアート性と完全に一致してるんですよ。というね……。

(宇垣美里)スタン・リーの精神を受け継いで。

(宇多丸)だし、そうね。この作品全体に言えることですけど。やっぱりそれぞれの世界のスパイダーマンというのがいるんだけど。それぞれにやっぱり自分の人生の問題っていうのを抱えていて。今回は、前回もその話をちょろっとしていたけど。やっぱりスパイダーマンの話っていうのが定番的に語ってきたことに対して、正面から……っていうか、もっと言えばそのヒーローとかのそういう大変な話というのを我々は消費しているけど、それってどういうことなのかな?って。

キャラクターってコマみたいに……なんか「フラグ」とか言ったりするけど。「死亡フラグ」なんて言葉がありますけど。そういう風に、なんていうか、弄んでいいものなのかな、みたいなところまで考えを至らされるみたいな。まあ『ノー・ウェイ・ホーム』とかも、そういうところに踏み込んでるところ、ありましたけれども。物語論といいましょうか、ヒーロー論というか。今回、さらにそこっていうのもあるし。映像表現ももちろんそうですし。

(宇垣美里)絶対に見たい!

(宇多丸)本当にすごい! 「あれを超えるって……またまたまた」と思うかもしれないけれども。最初の5分で言った通りになりますんで。しかもまた、音楽演出とそれが一致してるんで。マジ最高なのよ!

(宇垣美里)音楽がいいじゃないですか。

(宇多丸)元々ね、サントラをすごく気に入っていただいて。

(宇垣美里)大好き。ずっと聞いてました。

(宇多丸)それでヒップホップが好きになったっておっしゃっていて。今回、グウェンだから。グウェンって、ほら。バンドをやってたでしょう?

(宇垣美里)ああ、ドラムをやってた!

(宇多丸)そうそう。その話から始まるんで。いいでっせー! もうこれ、びっくりよ?

(宇垣美里)早く見たい!

(宇多丸)うん。だからその宣伝の方向ね、もちろんこれだけ革命的な作品だと大変だっていうのはわかるし。もちろん、若年層には「スパイダーマンのアニメーションですよ」って、これでいいと思うんだけど。やっぱり大人向け宣伝として、「アニメーションの歴史的革命のさらにその先なんだ」っていう、その作品的位置づけを俺、もうちょっと宣伝で強く言っていいんじゃないかな?って。

(宇垣美里)「これが最先端なんですよ」っていう。

(宇多丸)そう。だから「スパイダーマンとか、アメコミヒーロー物には興味がなくても、その映像表現の最先端としてこれは必見なんだ」っていう言い方をしていい。俺、もっとそこをすべきだっていう気がしますね。ということで、この番組の繰り返し、お伝えしていきたいと思いますし。もちろんムービーウォッチメンにも入れさせていただいて。

(宇垣美里)早く見たい!

(宇多丸)あとはもう入れ代わり立ち代わり、たぶんこの番組のアニメについて語る人が触れないわけないと思うんですよね。

(宇垣美里)触れざるをえないですね。

(宇多丸)繰り返し話題になるかと思います。

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』予告

<書き起こしおわり>

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