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町山智浩 韓国映画『国家が破産する日』を語る

町山智浩 韓国映画『国家が破産する日』を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で1997年のアジア通貨危機で経済的に破綻しそうになった韓国の状況を描いた映画『国家が破産する日』を紹介していました。

(町山智浩)ということで、今回は11月8日に公開される韓国映画で『国家が破産する日』という映画をご紹介します。これは1997年に韓国が実際に経済的に破綻しそうになったことがあるんです。覚えてますか?

(赤江珠緒)ちょうど入社した頃だったんで。そういうニュースは……。

(町山智浩)僕はこれね、アメリカに来て1年目か2年目ぐらいだったんですけども。アジア通貨危機でアジア各国が全部ダメになったんですね。当時ね。で、その時にシラキュース大学っていうところの寮にいたんで、アジア系の人たちとよくお付き合いして、バーベキューやったりしていたんですけども。突然ある日、全員が「国からお金を打ち切られちゃったから、帰らなきゃ」って帰っちゃったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)みんな企業と政府のお金で来ていたから。で、みんな慌てて帰ったから鍋とか包丁とかをいっぱい置いてってくれて。それ、いまも使ってますよ(笑)。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)その時にもらったやつ。いいやつだったんで。

(赤江珠緒)もうそんなにみんな、急に帰らなきゃいけなくなったんだ。

(町山智浩)そう。みんないろんなものを置いていったんで、僕は生活がすごく助かったことがあったんですよ。当時、お金がなかったんで。韓国の人たちももうみんな、生活に必要な物をいっぱい持っていたんですけど、全部置いていっちゃったんでね。慌てて帰って。で、その時の話が『国家が破産する日』という映画なんですけども。これ、韓国はその頃、すごい景気がよかったんですよ。もう、ものすごい高度成長で。お金がガンガン、ヨーロッパやアメリカから投資で入ってきていて。いろんな企業に。お金がもう有り余るような感じになってたんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)ところが、「これはヤバい」っていうことに気付いた人がいるんですよ。これね、主人公は3人いまして。1人は韓国銀行……日本でいうと日銀にあたる韓国銀行の通貨政策チームのリーダーで女性なんですが、ハン・シヒョンさんという人で。キム・ヘスという女優さんが演じているんですが。非常に凛々しい、余貴美子さんみたいな感じの方ですけども。で、彼女がいろいろと調べていくと、「これはヤバい」と。

なぜなら、韓国経済はその時、外国からのお金がどんどん入ってくることによって、その企業がまたさらにそれをいろんなところに流して……銀行であるとか、その下にあるノンバンクとかに流したり。大企業の下にいっぱいちっちゃい会社がありますよね。中小企業。そういったところに全部お金を流してて、それで韓国経済が成り立ってるっていう状態になってるんですけども。これ、お金を入れてるそのアメリカやヨーロッパの資本家たちが、そのお金を引き上げちゃったら一瞬で崩壊するんですよ。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)要するに韓国国内のお金でやっているわけじゃないから。コントロールができないんですよ。で、外貨もその頃、韓国ってそんなに持っていないんですよ。だから支えられないんですよ。で、いろんな国が金儲けしようとする目的もあるんですけども、そのアジアの各国からお金を引き上げるということが始まっていくんですよ。そうすると結局、自分たちの力で支えている経済じゃないから崩壊をしていくんですね。それがじわじわと進んでいることがわかったので、そのキム・ヘスさんが財務局の方に言うわけですよ。「これは大変なことになります。これ、崩壊しますよ」って。ところが、そうすると財務局の次官は「いや、それは国民には言わないでおこう」と。

(赤江珠緒)えっ、言わないでおく?

(町山智浩)そういう風に言うんですよ。それには2つ、理由があって。その時、大統領は金泳三大統領という保守党の大統領なんですね。で、12月に大統領選挙があって。それでもし経済の崩壊すると、その選挙で保守党は負けちゃうんですよ。与党だから。だから「その大統領選挙に影響を与えるから、言わないでおこう。12月まで持てばいいんだ」っていう感じなんですよ。

(赤江珠緒)うわーっ!

(町山智浩)で、間に合わないんですよね。

(赤江珠緒)危機であるということはその人たちも気づいているんだ。気づいているけど、言わずにおこうっていう?

(町山智浩)言わない。国がパニックになるから。で、もうひとつ、言わない理由というがあって、それはそのまま韓国の経済を破綻させようと思ってるんですよ。その財務局次官が。

(赤江珠緒)えっ、なんで? 財務局が?

(町山智浩)ある理由で。で、もう1人、それに気付く人がいます。それが2人目の主人公で、若い証券マンです。ユ・アインっていう俳優さんが演じているんですけども。彼は証券マンなんで、いろんな企業に金融関係で出入りしているから、中小企業がちょこちょこと手形が不渡りになったり給料が未払いになったりという事態が起こっていることに気がつくんですよ。「これはお金の流れがどこかで途切れている」って。それで証券マンを辞めて、自分の顧客たちを連れて。「これからデカい儲けをします」って言うんですよ。で、さっき言ったように「いま、お金の流れが途切れはじめている。韓国経済は崩壊します。だからみなさんのお金の全額でドルを買いましょう!」って言うんですよ。

(山里亮太)おおーっ!

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「韓国経済は破綻するからドルを買う」

(町山智浩)そうするとみんな、「えっ、そんな崩壊するの? 信じられない」って言ってなかなか言うことを聞いてくれないんですけども。これね、2008年のアメリカで起こったサブプライムローン破綻のことを映画化した『マネー・ショート 華麗なる大逆転』っていうのがあるんですね。前に紹介したと思いますが。

町山智浩『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、サブプライムローン破綻の際に空売りで大儲けした投資家たちを描いた映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を紹介していました。

(赤江珠緒)はい。そうですね。

(町山智浩)あれも「サブプライムローンというのはデタラメだ。これは払えない人たちがいっぱいいる不動産ローンだからいつか崩壊するぞ」って気がついた人たちが「空売り」というのをやる話でしたね。要するに株とかそういったものが全部下落するという方に賭けるという。で、アメリカとか世界全体が経済崩壊した時に彼らだけは大儲けしたっていう実話の映画化が『マネー・ショート』なんですけども。それにちょっと近い感じなんですよ。この証券マンのやることは。「この国が滅びることで儲けようぜ!」っていう人なんですよ。

(赤江珠緒)逆張りをしていこうと。

(町山智浩)で、もう1人の主人公は町工場……本当に末端の町工場で、デパートから受注したんで工場の規模を拡大するため、設備投資をするためにノンバンクからお金を借りて……っていう町工場のおじさんです。この人がいちばんヤバいことになっていくんですけどね。要するにね、担保とか全然なしでデタラメな融資をしてるんですよ。その頃の韓国って。

(赤江珠緒)日本のバブルの時と一緒ですよね。

(町山智浩)全くその通りなんです! 1989年から90年にかけて日本のバブル経済は崩壊したんですけど。崩壊した後、ずっと10年、15年ぐらい「なぜバブル崩壊したのか?」っていうテレビドラマやドキュメンタリーや映画がいっぱい公開されたじゃないですか。で、その内容は全部、デタラメな融資だったですよね? 韓国はそれ、見ていなかったの?って思いましたよ。本当に。だってこれ、1997年ですよ? 日本のバブル崩壊は1989年から90年だから……なんで? 日本で起こったことなのになんで気がつかないの?っていうね。

(山里亮太)全く同じことが起きているのに……。

(町山智浩)全く同じなのに。だから、なんなんだろうな? 「人っていうのはやっぱり『自分だけは違う』と思っちゃうんだろうな」と思いましたよ。それで結局、大崩壊が始まるんですよ。1997年の秋に。で、もうめちゃくちゃになっていって崩壊していくんですけども。さっき言った証券マンはもういきなり、ドルとウォンの価値がドルの方が3倍に値上がりしちゃうんで大儲けするんですよ。

で、彼の仲間は儲けてみんな喜んでるんですけど、「お前らな、バカじゃねか? こんなんで喜んで……これからなんだよ、勝負は!」って言うんですよ。「その儲けた金、使うんじゃねえぞ? これで儲けた金で株と不動産を買うからな!」って言うんですよ。で、もう底値なんですよ。株も不動産もその時。タダ同然なんですよ。それをバーッと買い漁っていくんですよ。彼は。で、さっき言った韓国銀行のキム・ヘスさんは「とにかくこれは大変な事態になった。どうしたらいいか?」っていうことで、「債務が払えない」という宣言をする……いわゆる破産状態に持ってくしかないんじゃないかということまで考えるわけですけども。そこにさっきの財務次官が出てくるんですよ。

「これは潰しちゃえばいい」って言っていた人ですね。で、「IMF(国際通貨基金)からお金を借りよう」って彼は言うんですよ。国際通貨基金はどこかの国の経済が崩壊していった時に、それが連鎖的に他の国に及ばないようにお金を貸す銀行ですよね。国を相手にした。で、そこからお金を借りようって言うんですよ。ところが、そのIMFというのはお金を貸すためのものすごい条件を出してくるんですよ。で、その条件というのはまず「ノンバンク全部潰せ」っていうんです。そうすると、中小企業は全部潰れるわけですよ。だから「中小企業を全部潰せ」っていうことです。

(赤江珠緒)つ、潰す……。

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IMFから出された条件

(町山智浩)そして「大量解雇をしろ、大リストラをしろ」って言うんですよ。大企業にも。で、「不正規雇用、非正規雇用の枠を広げて、簡単に派遣社員ができるようにしろ」って言うんですよ。

(赤江珠緒)じゃあ、人件費をどんどんカットしろと?

(町山智浩)「人件費をカットしろ」っていう。「その条件を飲んだら金を貸してやるよ」っていう風にIMFが言うんですね。で、それを聞いたキム・ヘスさんは「それをやられたら中小企業が全部潰れます! 大企業だけが生き残って、しかも雇用が不安定になって。韓国という国はものすごく金持ちの人たちだけがどんどん金持ちになって、貧乏な人たちにはチャンスのない国になってしまいます!」って言うんですよ。

(山里亮太)その通りですね。

(町山智浩)それが財務次官の目的だったんですよ。これはね、映画の中では説明されないんですけど、韓国の高度成長って一体何だったかっていうと、70年代、80年代、90年代って高度成長していったんですね。それは製造業なんですよ。町工場なんです。町工場や鉄鋼なんですよ。ところが、町工場や鉄鋼っていうのはもともとは世界の国でどこの国がいちばんやってたかというと、日本なんです。日本は1960年代から70年代にかけて、高度成長期の間にそういう町工場であるとか鉄鋼とか製鉄とか。そういった製造業で大きくなっていった国なんですよ。ところが韓国がそれよりもさらに安い人件費でその仕事を日本から奪ったんですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、日本はその製造業とか製鉄とかはどんどんと縮小していって。もう業務を変えちゃうわけですよ。で、その次の段階に進むんですけど。アメリカとかもそうなんですが。製造業の次の段階っていうのは情報産業とか金融とかITとかそういった、ものを作らない仕事なんですよ。そこに進化していかなければならないんだという考え方があるんですよ。要するに、どうしてかというと最低賃金の問題があるんですよ。その国の労働者……製造業とかそういうのをしている人たちの給料をどんどんと上げていかなきゃならないわけですよ。このまま国が成長をしていくと。それは、企業にとって大きな重荷になっていくんですよ。だから、全部切っちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)で、製造業はさらに人件費が安い外国にアウトソースするんですよ。そういった形で国は次の段階に進まなきゃなんないんだという考え方があるんですよ。で、アメリカは実際にそうなったんで、その製造業とかの労働者の人たちが仕事を失って、いまトランプ政権を支持したりしてるんですけどね。

(赤江珠緒)そうか。そレもつながっていますね。

(町山智浩)そう。その次の段階に進まなきゃいけないんだと。「農業であるとか工業であるとか製造業とか町工場の時代はもう終わるんだっていう。韓国という国が次の段階に生まれ変わるチャンスなんだ!」っていう風にその財務次官が言うんですよ。だから、「潰れてしまえばいい」って言っていたんですよ。

(山里亮太)ああ、なるほど。成長のためには必要なことなんだと。

(赤江珠緒)でも、いまとなってはそれがいいのか?って思いますけども。

(町山智浩)それで大企業……サムスンであるとかヒュンダイとか、巨大企業に富を集中させて。それで世界的な企業にしていくと。

(赤江珠緒)まあ実際に韓国、そうなりましたもんね。

(町山智浩)実際にそうなったんですよ。で、その時にもうひとつ、IMFは条件に出すんですよ。「いま現在、韓国における外国人が韓国企業の株を所有する限度額っていうのは7%。それを50%まで上げろ」っていう。そうすると、彼らは大企業の株を所有して、その大企業が巨大化していってそこに富が集中していって、外国に利益が吸い上げられていくんです。売国ですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)そういった国に作り替えるという条件を出されて、このキム・ヘスさんが「それは絶対にできない!」と戦い続ける話なんですよ。

(山里亮太)はー、なるほど!

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IMFとの交渉期間は7日感

(町山智浩)でも、時間がないんです。たった7日間でこのIMFとの交渉にケリをつけないと韓国は完全に破綻するんです。という話がこの『国家が破産する日』という映画なんですよ。ところが、そのIMFの条件を飲めば、さっきの安値になっちゃった大企業の株とか不動産を買い漁っている証券マンは大儲けするんですよ。その代わり、あの町工場のおじさんは破産するんですよ。という話でしたよ。これはすごいなと思って。「1997年の韓国の話」っていうことではないんですよね、だから。さっき言ったみたいにアメリカでも全く同じことが2008年に起こってるわけですから。

(赤江珠緒)そうなんですよね。アメリカもね。

(町山智浩)で、1990年に日本でも起こったんですね。バブル崩壊で。これ、なんで人間は繰り返すの?

(山里亮太)自分のところは違うって思っちゃっているんですかね? 自分は成功例を新しく作れるって思っているんですかね?

(町山智浩)なんで次々と同じことを繰り返すんだ?っていう。で、そういうことが起こった時に損をするのは庶民で、大企業は絶対に損をしないんですよね。それはそういう破綻が起こった時にバーッと金を失うのは庶民だけで、大企業だけは政府の支援を受けて生き残るんですよ。

(赤江珠緒)いやー、でもそれで治安とか悪くなったら、大企業にいる人だって同じですけどね。

(町山智浩)韓国ではその時に大リストラが起こって暴動になりましたけどね。でね、これは森永卓郎先生がこの映画に対してコメントを出してるんですけど。これは……「IMFの背後にはアメリカは存在していた」って書いてるんですよ。つまり、さっき言ったみたいに「アメリカの資本家のためにIMFはああいう条件を出したんだ」という。

(赤江珠緒)アメリカにとってはそうだ。有利ですもんね。条件が。

(町山智浩)そうなんですよ。だからIMFは操り人形だったんですよ。これ、森永卓郎さんが書いていて。「それは公然の秘密だった。それを暴いた映画がこの作品なんだ」と書いてるんですね。で、森永さんはこうも書いてます。「この物語は日本人にとっても他人事ではない。韓国ほどではないにしても小泉内閣の構造改革によって日本でも同じような変化がもたらされたからだ」って。IMFに関係なく、日本は勝手にやったんですよ。韓国と同じことを。日本もいま、外国企業による株の所有率って30%を超えてますからね。で、非正規雇用ばかりになって。みんな派遣社員になって。全く同じ。で、その森永卓郎先生は「本作は経済を扱った映画の中でも最高傑作と呼んでも過言ではない」って言っていますね。

(赤江珠緒)ほー! そうですか。

(町山智浩)だから「これ、韓国の1997年の経済破綻なんて関係ないわ」って、「いや、全然関係あるよ!」っていうね。

(赤江珠緒)そうですね。資本主義の国ってどこでも陥る可能性があるというか。

(町山智浩)そうなんですよ。

(赤江珠緒)そして結果、いまとなってはジリ貧になっていく道でもあるような気がしますね。

(町山智浩)結果は金持ちだけがさらに金持ちになる世界。貧乏人は貧乏のままで……という大変な格差社会。だから韓国の格差社会っていま、ものすごいんですけどね。日本以上なところもあるんですよ。少子化とか。これね、経済破綻で儲けて格差社会を作ろうとする証券マンを演じているユ・アインっていう役者さんはこの前に出た『バーニング 劇場版』という作品では格差社会の中で落ちこぼれてしまった農民で金持ちを憎む青年の役をやっているんですよ。

(山里亮太)真逆すぎる(笑)。

(町山智浩)そう(笑)。だからね、僕ね、すごくおかしくて。「俳優ってすごいな。本当に正反対の役をやるのか!」って思って。それもおかしかったですね。まあ、でもこの映画『国家が破産する日』はね、徹底的に庶民のために戦うこのキム・ヘスさんが本当に凛々しくて素晴らしいですね。ということで、日本にとって全然他人事ではない、森永卓郎先生曰く最高傑作の経済映画『国家が破産する日』、11月8日公開なんでぜひご覧ください。

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『国家が破産する日』予告編

(赤江珠緒)はい。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした!

<書き起こしおわり>

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