高田文夫 坂本龍一を追悼する

高田文夫 坂本龍一を追悼する ラジオビバリー昼ズ

高田文夫さんが2023年4月3日放送のニッポン放送『ラジオビバリー昼ズ』で亡くなった坂本龍一さんを追悼していました。

(高田文夫)いやー、まあね、なにがそうって、まずヤクルト。ありがとうございます。もうね、来たよ。ヤクルト3連勝だよ!

(松本明子)すごいですね!

(高田文夫)そうだよ。山田も来たし、村神様も復活して。WBCで。もう、明るくて楽しい。野球が始まると嬉しいなって思うけどさ。でもやっぱり、あれだね。本当に、世代も一緒だから。坂本龍一さん。教授。亡くなっちゃってさ。ずっとガンで苦しんで。結構ね、つらい思いしてたけどさ。だって幸宏さんが亡くなったのも、今年でしょう?

(松本明子)1月ですね。

(高田文夫)ああ、そう? じゃあ、残っているのは細野さんだけか。かわいそうだな。細野さんも大変だな。やっぱり仲間が……3人組で、2人亡くなっちゃうとな。俺なんか、覚えているのはやっぱり83年かな? 古いラジオのファンの人は知っていると思うんだけど。ビートたけしのオールナイトニッポンっていうのをやっていてさ。たけしさんと俺で。ちょうどたけしさんが初めてさ、大島渚さんから声がかかってさ。「映画、やらないか?」「いや、僕は素人ですから、できません」って。(ものまねで)「いやー、おいらはね、芝居なんかできないんだよ。漫才師ですからね」なんつってたんだけどさ。

大島さんがさ、「いや、僕は役者が嫌いなんだよ。大嫌い。変に作ってお芝居をするだろう? だから僕は役者じゃない人だけに出てもらいたい」って。で、たけしさん、坂本龍一さん、デヴィッド・ボウイだよ。そうしたら、(『戦場のメリークリスマス』が)あれだけ当たっちゃってさ。すごかったんだよ。

で、それが撮影がラロトンガ島っていう島で。もうここで古い人はみんな爆笑するんだけどもさ。そこで撮影するっていうんだよ。それで「たけちゃん、どうするんだよ? 毎週木曜、オールナイトがあるんだよ?」「ああ、おいら通うよ」「通うって、無理に決まっているだろう?」「だって大島さんにつかまってさ。世界の坂本龍一がいるんだよ?」って。「おう、坂本っちゃんだろう?」って……まだ親しくないだろ? 知らないだろ?っていう(笑)。

「おう、デヴィッド・ボウイだろ? ボウイだろ、ボウイ」なんて(笑)。知っているけどさ、そんなラロトンガ島から通えないんだよ。で、どうしようか?ってなって。もう苦肉の策だよ。もう俺が海底トンネルを掘ってさ、ダーッと通ってラロトンガ島から中継するって……もう全部嘘なんだけどさ(笑)。これがみんな、全員騙されたんだから。時々、「ジー、ガガガ……こちらラロトンガ島の高田文夫です。あっ、坂本龍一さんが今、通りましたよ。通りました。あっ、ヘーイ! デヴィッド! ヘイ!」なんてやって(笑)。

(松本明子)みんな騙されて(笑)。

ラロトンガ島からの中継

(高田文夫)「ラロトンガ島から中継です」っつって(笑)。たけちゃんと俺がそこにいるっていう設定でさ。「ラロトンガ島で今、あっ、大島さんがトガケにキューを振っていますね!」なんつってさ、わけのわからないことを言ってさ。もうバカウケしたんだよ。で、その時にたけしさんから坂本龍一さんの話をいっぱい聞いてさ。だからすごい親しみっつーかさ。「この人、すごい人なんだけどさ、本当はスケベなんだよ」とかさ(笑)。面白いんだよ。話がさ、人間くさい話をするんだよ。

だから結構親しみがあったね。たけしさんがずっと一緒にいてさ。これ、お互いに気難しい3人だからね。デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし。それがあんな、素晴らしい映画を作ってさ。それが83年だよ。それでYMOが来てさ。いろんなことがあってさ。71って、俺より三つ下だからね。

(松本明子)お若い。

(高田文夫)俺は長生きすぎよよ。行って帰っちゃとはいえ……行って帰ってきたとはいえさ。長生きしすぎだよ。本当に。

(松本明子)本当にずっと闘病をされていて。

(高田文夫)それで、お前あれだって? いたんだって? 言えよ(笑)。

(松本明子)立川流の明治座。

(高田文夫)だって昼間、お前、名古屋だったんだろう? ゴゴスマだったんだろう?

(松本明子)はい。もう名古屋からすっ飛んでいきました。で、6時20分ぐらい。もう談春さんのが始まっていたんですけども。

(高田文夫)じゃあ、俺のおもしろトークは聞いてないんだろう? みんながワクワクしたっていうおもしろトークは。

(松本明子)談春さんの噺の時に入ってきまして。

(高田文夫)それで最後まで見れたっていうこと? おかげさんで、ありがとうございます。本当に。

(松本明子)超満員で! もうすごい。

(高田文夫)落語って普通、ああいう大きいところでやるとポツンと座ってさ。3席なら3席やっても地味じゃない? だから俺がオープニングに出てきてさ、みんなで立ってワーワーしゃべって。動き回ってしゃべってさ。エンディングでもそうだけども。そうすると、それがバラエティショーになるんだよな。ワクワクするんだよ。大舞台、動くから。俺がマイク持って走ったり、突っ込んだりなんかしてさ。それでワーワーやって。それでまた、エンディングでいろんなこと言うじゃない?

だから、普通の落語会とは違うじゃない? それで始まると3席、ちゃんとやるからさ。それでショーとして面白いんだよ。バラエティショーとしても。それで大舞台を使うという。でも、しみじみしたよ。徳光さんもラジオで言っていたけども。「あんなに入った明治座は見たことありません。氷川きよしくんだってあんなには……立ち見までびっしり入れて」って。あの歌謡曲に一番くわしい徳光さんが言っていたもん。

「どこに行ってもね、結局高田文夫さんがね、愛されてるんですよ。声援が一番大きかった」って。やっと世間、わかったな。やっとわかったな。

(松本明子)先生、だってこの3人会なんて……。

(高田文夫)でも談志と客が喜べばいいなって思ったんだけども。結局喜んだのはこの3人だったね。終わってから。

(松本明子)談春さん、はしゃいでましたね(笑)。

(高田文夫)打ち上げ、もうぐちゃぐちゃしてたもん。3人で。ああ、よかったなって。

(松本明子)談志師匠の話が……会場でも休憩の時に「あっこちゃん! ビバリストのイワダテです。今日は夢のような会に来れて、よかったよ!」って。もうビバリストの方がすごかったですね。大喜びでした。

(高田文夫)ああいうのでみんながちょっとでも談志のことを思い出せば……今年、もう13回忌なんだよ。談志、実はね。まあ坂本龍一さんもそうだけども。談志師匠は11月だね。でも一瞬でもさ、ああやって思い出したり、しゃべったりすると……これは俺、永六輔さんから教わったんだけど。(ものまねで)「あなた、言っておきますけども。人間というのはですね、2回死にますからね。

最初、死ぬ時は肉体が亡くなって。その時に死ぬ。その後はね、まだ魂が残っていますから。だから人がね、噂をしてあげること。その人の話をして、笑ってあげること。そうしていう間は、まだこのへんにいますから。それで、33回忌じゃないけれども、ある程度年が経って、人の噂にならなくなる。誰も思い出してくれなくなった時に、人は初めて死にます」っていう。

(松本明子)なるほど!

(高田文夫)「永六輔、坊主の子です」(笑)。そう教わったよ。なるほどなって。

(松本明子)みんながお話をしたり、思い出を語って。

誰もその人のことを思い出さなくなった時、本当に死ぬ

(高田文夫)噂をして。「あの人は、面白かったな」とか「あの人のこれが好きだったな」とか、そう言ってるうちはまだ、このへんで生きてるんだって。で、みんながビタッと、一言もしゃべらなくなって。忘れちゃって、もう33回忌も過ぎてさ。だから33回忌って、たぶんあるんだと思うんだよ。ちょうど人の思い出がね、もうだいたい、よく知ってる人がいなくなっちゃうから。32、3年も経つとさ。だからその間は、人の噂っていうのはしてあげた方がいいんだよ。

だから俺は「景山民夫がさ」とか、必ず入れるでしょう? 言ってあげるっていうことは、思い出すんだよ。パッと。だから今度、右朝の会もやるけれども。あれはな、俺の大学の同級生の23回忌なんだけどもさ。その瞬間でもさ、舞台でワーワー言ってあげるとさ、その時に思い出すし。そうなんだよ。生きてるんだよな、まだ。きっと。

(松本明子)森田芳光さんのことも先生、いつも語ったり。

(高田文夫)そう。だからかならず、死んだ人。仲間のことを言ってあげるんだよ。さりげなくね。そうすると、みんなもフッと思い出すじゃん? その人のことを。その瞬間、生きているんだよ。いるんだよ。(ものまねで)「永六輔です。あのね、高田くん。職業にね、貴賤はないんですよ。どんなお仕事でもいいんです。自由です。職業に貴賤はないですけれども、生き方に貴賎はあります」「はい、わかりました」「ひどい、みっともない生き方はやめなさい」「はい、わかりました!」って。いつも怒られるんだよ(笑)。

たしかに、生き方にはあるよな。いくら偉い作家になってもさ、セコかったり、ケチだったり、ちょっといやらしかったりさ。やっぱり生き方は美しくなきゃいけないんだよ。生き方に貴賤っていうのはあるんだよ。いやらしい生き方もあるんだよ。だから坂本龍一さん、「芸術は長く、人生は短し」って言って。そんな名言を残してね。だから芸術……あの人の場合は音楽だから、いつまでも残ってくれるんだよ。そのためにみんながさ、聞いて、思い出してくれれば、それでいいんだよ。そしたらまだ、みんなの心の中で生きているんだ。

音楽家っていのは、音楽だから、残るからね。いいんだよ。その点、俺らは笑いに携わっているんだから。笑ってなきゃいけないから。人を笑わせて「あいつ、こんなバカだったな」って(笑)。それだから、バカっ話は大事なんだよな。そんなのを言ってさ、「あいつはどんだけバカなんだ」っていうのでさ、ゲラゲラ笑うっていうのが大事なことなんだよな。そう思うな。(ものまねで)「生き方に貴賤はありますよ」って。で、俺は言ったんだよ。俺はこう思う。「鳥は鳥ガラ。人は人柄」っていう。これ、俺の名言ですからね。

この商売、人柄ひとつですよ。人柄が悪いやつとかね、社交性がないやつは芸能界、ダメだよ。芸能っつーのはさ、人と人が携わる仕事だからね。たくさんの人に見てもらう職業だから。そういうことだからね。

(松本明子)「人は人柄」。

(高田文夫)まあ、洒落ですけどね。「あきんどは商売柄」って(笑)。「あきんど」って古いね。そういうことですね(笑)。

(松本明子)本当にいい会でした。

<書き起こしおわり>

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