星野源 最後の空耳アワー収録で感じた『タモリ倶楽部』の本質を語る

星野源 最後の空耳アワー収録で感じた『タモリ倶楽部』の本質を語る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんが2023年3月28日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で最後の空耳アワー収録についてトーク。収録後に感じた『タモリ倶楽部』の本質について、話していました。

(星野源)メールが来ています。東京都の方。「『タモリ倶楽部』、見ました。空耳アワー、最後まで本当にくだらなくて、本当に面白くて。こんなことを25年も続けてきている番組スタッフがすごすぎると、笑いながらも感動してしまいました。特に、せっかく送ってくれたネタを成立させようと、飽くなき挑戦を繰り返しているVTRには、いろんなアイディアや可能性を試したからこそ、いくつもの傑作が生まれたんだなと感慨深い気持ちになりました。収録の時はどのような感じでしたか? スタジオの様子などお話、聞けたら嬉しいです」ということで。

そうなんです。先週の金曜日に……『タモリ倶楽部』、今週の金曜で最終回なんですけど。その1週前ですね。「空耳アワー新作スペシャル」ということで。そのゲストに呼んでいただきまして、参加してきたのが放送されましたね。皆さん、見たでしょうか? 面白かったですね。作家の寺ちゃんも見た?

(寺坂直毅)拝見しました。

(星野源)面白かったよね。で、前に「『タモリ倶楽部』、終わっちゃうんですね」なんて話をこのラジオでした日が、3月の頭ぐらいだったと思うんだけど。それの放送後に「実は空耳アワーでオファーいただいてます」って聞いて。「えっ、マジ? やります、やります!」なんて言ってたんですけど。で、なんかその週の週末にもう収録とかだったのかな? たしか。なんかそれぐらい、近かったんですよ。で、割と僕のスケジュールが詰まってたんですよ。詰まってたんだけど、その日は空いてたの。で、「嬉しい! 空いてるし、ぜひ出させていただきます。もちろんです!」なんて。

でもマネージャーさんがね、ちょっとなんか申し訳なさそうな顔で。「大丈夫ですかね?」「いや、全然大丈夫。もちろん出る、出る」なんて言ったら「収録が、朝9時からなんです」って。「ええっ? 早くない?」って。今まで、僕が参加した『タモリ倶楽部』って、だいたい1日に2本収録で。お昼過ぎぐらいに始まって。で、2本目はたとえば3時ぐらいとか、4時ぐらいから始まって……みたいな。そんな感じだったんですけど。

今回の収録はもう午前中に1本終わって。たぶん、お昼を挟んで2本目を撮るみたいな。で、その2本目が最終回の収録だったんですよ。だから、「めちゃめちゃ早いね。でも、もちろん出る、出る。そんなの、出たいから。入り時間とか、もちろんいいですよ」なんて言っていたんだけど。まあ、ありがたいことに忙しいのと、夜型なもので。かつ、その週が花粉マックスの週だったんですよ。

花粉マックス週で、僕の花粉症マックス週でもあったんすよ。で、結果、その日の収録は完全徹夜の、花粉マックス、鼻づまりマックスの状態で行って。でも、収録はめちゃめちゃ楽しかったんですけど。この間の金曜日の放送を見たら、もうとんでもない顔してましたね(笑)。もう、なんか……粘膜という粘膜が腫れまくっていた時だと思ったんですね。ほぼ目が見えてない状態っていうか。もうずっと、目を細めてるみたいな。眠そうな顔になってしまっていて、非常に申し訳なかったですね。

眠いとかじゃなくて、すごい楽しかったんですけど。ただただアレルギー反応がすごかったのと、全く寝れていなかったっていう感じだったんですけど。いや、でもね、なんか……まず呼んでいただいてすごい嬉しかったっていうのと。僕は一番最初に出してもらったのが、もうすごい前で。一番最初は、なんだっけ? なんか春画とか、そっち系の企画だったんですよ。で、エロを真面目に語っていくみたいな、そういう企画に一番最初、呼んでいただいて。

で、その後、また別の企画で呼んでもらって。で、空耳アワーのアワードに呼んでいただいて、みたいな。で、空耳アワーの企画に呼んでもらうのも何回目かに呼んでいただいて。で、最終回のちょっと前でっていうのもあって、すごく嬉しかったんですけど。でも全然、いつもとちょっと空気が違ったんすよ。で、なんで違うか?っていうと、スタッフさんの量がいつもの2、3倍いて。やっぱりその日が収録最後ってことだったんだと思うんですよね。

で、「ああ、こんなに人がいるな」と思って。で、楽屋からスタジオまでご案内してくれる人とか、いるんですよ。で、だいたいそういう方って、APさんとかADさんとかで、若い方が多いんですけど。入り口のあたりで「こちらへどうぞ、お越しください」みたいな感じで案内してくれた方が、結構年配の方だったんですよ。で、お話を聞いてたら、もう今はあの『タモリ倶楽部』じゃないんだけど。もうすごい、偉い方なんですよ。偉い方なんだけど。「僕が新入社員で、一番最初に入った現場が『タモリ倶楽部』で。一番最初のADの頃から、お世話になってます。勉強させてもらいました」っていう人で。

その人が「こちらへどうぞ」って役をやってたりとか。あと、本当にたぶん今まで参加してた人とかも来てて。で、なんかすごく活気が……いつも、スタッフさんがすごい楽しげな現場なんですよ。でも、それ以上にちょっと活気みたいなのもあって。なんかちょっと、じんわり胸が温かくなるような状態で収録がスタートして。で、、すごい楽しかったんですね。で、放送を見てくれた方はね、面白かったと思いますけど。とにかくあのスタッフさんが、打ち合わせに来た時から自信がなさげで。「空耳の映像がとにかく、新作なんで。期待しないでください。面白くないかもしれませんけど……」みたいな。

で、台本にも、その台本って内容が書いてるだけわけじゃなくて。とりあえず進行の大まかなのだけ書いてあるような台本なんですね。いつも。で、その通りに行くことはなかなかないんですけど。その進行台本の後半に「後半、疲れてくるかとは思いますが。よろしければ、笑ってください」みたいなことが書いてあって(笑)。「ちょっと待って? そんなに自信がないの? いや、絶対そんなことはないだろうな」と思っていたら、やっぱりめちゃめちゃ面白くて。最後まで面白かったです。

(星野源)で、収録が終わりまして。終わった後に、みんなはけていくんですけど。午後の収録がね、皆さんはあるから。普通に、空耳のセットも素早くばらすわけです。で、僕も「楽屋に帰ろう」と思って歩いてたら、カメラマンの方に呼び止められて。「星野さん」「あ、はい」お疲れ様でした。いや、実はうちの子供が、芝幼稚園なんです」みたいな。で、そこは僕が行っていた幼稚園で(笑)。そこにそのカメラマンの方のお子さんが通っていて。「同じ幼稚園ですよね?」みたいな話をしていただいたりとか(笑)。

で、「ああ、そうですか! あのへんに住まいなんですね」みたいな話をして。お話をいろいろして。で、また行こうとしたら今度、照明さんに呼び止められて。女性の方で。「あの、お久しぶりです」って言われて。最初、わかんなくて。「あの、どの現場でお会いしましたっけ?」って言ったら、『アキハバラ@DEEP 』っていう、すごい昔に出させてもらったドラマの照明さんだったんですよね。

で、当時は2人ともすごい若くて。その時、漫画を貸し借りとかするぐらいで。現場的には、なんて言うかちょっと過酷な現場だったのもあったんですけど。みんな、仲良くなったんですよ。結構、もうそのスタンバイ場所とかもスタッフさんも役者も全員一緒で、みたいな。なんかそういう感じだったので「おおーっ! うわっ、久しぶりです!」みたいな。なんだか知らないけど、『タモリ倶楽部』に関連するスタッフさんがいっぱい来てる。で、アットホームである。それとは別の、俺となぜか、たまたまそのスタッフさんのアットホームさみたいなのが別に生まれていて。

なんかちょっと、そのアットホーム感の中に混ざれたような気が勝手にしちゃって、すごい楽しかったりとか。で、すごい嬉しいな、なんて思ってるうちに、出演者の方がみんな、いなくなっちゃったんですよ(笑)。で、結局タモリさん僕、挨拶できなくて。タモリさんっていつも、すぐ出られるので。「ああ、最後だったけど結局、ご挨拶できなかっな。まあ、でもしょうがないか」って思って楽屋に帰ったんですよ。

で、台本をね、改めて見たら『タモリ倶楽部』っていうロゴの下に「FOR THE SOPHISTICATED PEOPLE」って書いてあったんですよ。で、俺、「あれ? こんなこと書いてあったっけ? でも、書いてあったわ」と思って。それが、なんか副題っていうか。『タモリ倶楽部』の。それは「洗練された人々へ」っていう意味だったのね。ティーチャー岩田、合ってる? ああ、合ってるね(笑)。

「FOR THE SOPHISTICATED PEOPLE」

(星野源)それで、『タモリ倶楽部』ってさ、まさにそういう番組だったじゃない? で、その「洗練された」っていうのが、なんて言えばいいんだろうな? ちょっと「洗練された」にひねりがちゃんとあるっていうか。『タモリ倶楽部』ってすごい教養番組じゃないですか。いろんな方面の、細かいこととか、マニアックなこととか。あとは、なんだろう? ちょっと偏愛的なところとか。そこを、すごく真面目ではあるんだけど、くだらないっていうところまで見せていくっていうか。「どうだ、すごいだろう?」っていう方向じゃなくて、「くだらねえ!」っていうところで見せていくっていう。で、それって洗練だよな。そして、それを受け取る側も洗練されてないと受け取れない。だからそういう、送り手と受けての条件が一致している数少ない番組っていうか。

番組の送り手が、視聴者をバカにしてないっていう。そこがすごくかっこいいし、好きなところで。「これは多くの人に伝わらないよな」じゃなくて、信頼してるかどうかはちょっとわかんないけど。まあ、好きなことをやっていらっしゃって、それが多くの人に伝わっている。で、その番組が終わるってことは、洗練された人々がいなくなったのか、洗練されたことがもう、満足したのか。「もういいか」ってなったのか。まあ、ただただ終わっていくのか。そんなことを、台本を見ながらいろいろ考えちゃって。「なんて面白い番組なんだろう」と思ったんですよ。

で、これが何十年も続いていたわけじゃないですか。それって、すごく素敵だなと思ったし。で、日本人ならほぼ、知らない人はいないみたいな人がそれを長年ずっとやっていて。それって、すごい面白いよな、なんて思いながら。ちょっとトイレに行こうかな、なんて楽屋を出た時に、もうみんな帰っちゃってると思っていたんですよ。そしたら、安齋さんが呼び止めてくださって。「星野さん」って言ってくれて。カレンダーをくださったんですよ。安齋さんがイラストを書いてるカレンダーと、安齋さんの奥様が写真を撮られてるカレンダーを二つ、いただいて。「ありがとうございます!」なんて言って。そこでちょっと、立ち話をしたんですよ。

「終わっちゃいますね」なんていう話をして。すごく、その安齋さんのもとにも、いろんな連絡が来たそうなんですよ。「やめないで」とか。あと、たとえば「空耳を映像として残せないですか?」とか。で、なんかそういうのもあって。「そんなことも言われるんだけどね」って言って。それでタモリさんの方の楽屋を指さして。「あの人、残さない人だからね」って言うんですよ。「本当ですね」って話をして。

「あの人、残さない人だからね」(安齋肇)

(星野源)だからなんか、本当にそれってタモリさんを全部、表してるっていうか。タモリさんって、本当に残さない人だし。帰り際も、いろんな人がいっぱい集まってるけど普通に「ああ、どうも、どうも」って挨拶して。で、もちろんそっけないとかじゃなくて。思い出話をしている人に対しては「ああ、そうだったね」なんて話をして。「じゃあね」って言って、スッと次の現場に行く。

なんかその生き方みたいなのと。で、番組も「空耳アワーが最後だから。総集編で今までのベストです」とかじゃなくて、新作で終わるじゃないですか。ほぼ新作だけで終わるっていう。で、僕と松たか子さんのベストっていうのは、あれは保険っていうか(笑)。「もし、つまらなかった時のために一応、聞いていいですか?」っていう連絡が数日前に来て。それで「いや、もちろんです」なんて言って選ばせてもらったんですけど。

でも、もちろん面白くなかったわけじゃなくて。たぶん、その番組の流れとして必要だったから、残したんだろうなとは思うんですけど。でも、やっぱり「総集編」とか、「最後の空耳アワー」とかじゃなくて、ただただ放送していく。で、結果的におそらくもう……わかんないけどね。急に復活するかもしれない。全然、その可能性もあると思うけど。ただ、終わっていく。

で、たぶん……わかんないけど、今度の金曜日の最後の『タモリ倶楽部』も、もしかしたら「最後です」とか言うかもしれないけど。たぶん、スッと終わっていくんだろうなと思うんですよ。なんかその、色即是空っていうか。なんだろう? 残さないっていうか、「残そう」っていう気持ちをあまり番組からも感じないし。なんか、たとえば「DVD全集が出ます」とか。わかんない。出るかもしれないけど。それをやろうとか、あと番組本があるっていう感じでも、ないよね? たしか、あんまないよね。

ただ、タモリさんを好きな人が、タモリさんを研究する本を出してたりとか。空耳大好きな人が撮りためてたりとか。たぶんデータベースとかを作っている人とか、いるだろうけど。そうだよね。なんか自ら、己が残していくんじゃなくて、人の心にただ残して。その人がまた何かを……いろんなところに「残したい」と思った人が各自、残していくみたいな。

なんかそれがタモリさんだなと思ったし。タモリさんの番組なんだなっていう。すなわち『タモリ倶楽部』なんだなと、すごく思ったんですよ。だから、挨拶できなくてよかったなと思ったというお話でした。それでは今日の1曲目。The Royal Teensで『Short Shorts』です。

The Royal Teens『Short Shorts』

(星野源)ねえ。今週金曜日、おそらく最終回であるとは思いますが。皆さん、ただただ見ましょう。私も見ます。めちゃめちゃ面白そうな企画なんですよ。これ、たぶんもうネットで発表されていると思うんだけども。放送最後の予告編ですごく見せないようにしていたんですけども。

(寺坂直毅)ミステリアスでした。

(星野源)ミステリアスだったよね? でも、ネットには調べたら普通に出ていて。タモリさん、料理が上手いじゃないですか。で、そのタモリさんのレシピみたいなのが、いろんな番組とかでその時に紹介したのがネットとかに載っているじゃない? で、そのネットに載っているタモリさんのレシピを、タモリさん自身が直していくっていう(笑)。「ここ、間違っているよ」っていうのをタモリさんが料理しながら直していくみたいな企画らしいんですよ(笑)。

で、もうそんな企画、めちゃくちゃ面白いじゃん!って思って。非常に楽しみにしています。みんなで見ましょう。ということで、お送りしたのはThe Royal Teensで『Short Shorts』でした。

<書き起こしおわり>

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