宮藤官九郎とパンサー向井『池袋ウエストゲートパーク』を語る

宮藤官九郎とパンサー向井『池袋ウエストゲートパーク』を語る パンサー向井の#ふらっと

宮藤官九郎さんが2023年3月1日放送のTBSラジオ『パンサー向井の#ふらっと』に出演。パンサー向井さん、三田寛子さんとドラマ『池袋ウエストゲートパーク』について話していました。

(向井慧)でも宮藤さんとお会いできるのがすごい嬉しい理由の中に、僕は本当に『池袋ウエストゲートパーク』が大好きで。

(宮藤官九郎)ああ、ありがとうございます。今ね、Netflixで……。

(向井慧)今年のお正月に配信されて。

(三田寛子)えっ、本当? もう1回、見たい!

(向井慧)そうなんですよ。改めて僕、今年に入って見たんですけど。あれ、よく金曜日の夜9時にやっていましたよね?

(宮藤官九郎)あれ、だから毎週抗議の電話がじゃんじゃん……あの頃って、ネットがまだそんなでもなかったから。Twitterとかもなかったから、もう直接局にかけてくるんですよね。だから、なんか結構やってる間はずっと電話、鳴ってたらしいです。

(向井慧)やっぱり結構グロテスクな描写もありますし。ちょっとエロの描写も多かったじゃないですか。

(宮藤官九郎)はい。だって巡査がヘルスに行きますからね(笑)。

(向井慧)そうなんですよね(笑)。

(宮藤官九郎)浜口巡査は毎週、ヘルスに行っていましたからね。

(向井慧)でもそれって、その当時も抗議なりクレームがやっぱりあって。今のドラマを書く時と、あの当時で書く時ってブレーキのかけ方でもちょっと違いますか?

(宮藤官九郎)あれはでも僕、正直言うと連続ドラマ1本目だったので、わかってなかったんですよね。尺のこともわかってなかったし。表現のいい・悪いもわかってなかったんで。とにかく書いて、やってもらって。で、抗議が来たら「ああ、これはダメなんだな」って学んでいくっていう感じでした。

(向井慧)なるほど。でもやっぱり今はそういう抗議とかに非常に敏感じゃないですか。そこのある種の窮屈さって言ったらあれですけど。それって感じること、あります?

(宮藤官九郎)まあ全然ないと言ったらあれですけど。でも、やっぱりみんな、やってみないとこれがいいか悪いかってわかんないところもあって。とか、やっぱりこっちはこっちでそのテーマがに興味があるから書いてるわけで。嫌いなことを書いてるわけじゃないから。基本的には好きなものを書いて、最近気になることを書いているので。その表現の仕方がよくなかっただけで、それを扱うことは別に悪いことじゃないって思っているので。そこで「ああ、このテーマって今、デリケートだからやめとこう」っていうのは一番よくないかなって思いますね。

(向井慧)ですよね。言葉使いとか、使う言葉とかもなかなかね……。

(宮藤官九郎)でも『池袋』はたしかにやってる時に、途中で豊島区の方かな? 池袋の方かな? 忘れましたけど。「こんなドラマだとは思わなかった」っつって。西口公園を貸してくれなくなったんですよ(笑)。

(三田寛子)ええーっ?

(宮藤官九郎)そうなんですよ。だから、よく見ると『池袋ウエストゲートパーク』の後半、池袋じゃないんですよ(笑)。いまだにそれは言われますけども。

最終的に池袋西口公園で撮影できなくなる

(向井慧)そうですよね(笑)。やっぱり僕、名古屋の少年として見てたんですけど。やっぱり「怖え!」って思っちゃったんですよね。「池袋ってこんな怖いところなんだ!」っていう。もちろんかっこいいドラマではあるんですけど。でも池袋的には「いや、そんなことをやられちゃうと……」って(笑)。

(宮藤官九郎)そう。「豊島区、そんなところじゃないよ!」っていう(笑)。悪いことしたなと思います。

(向井慧)でも今、10何年とか20年とか経って。それで今年のお正月に配信されて、Netflixのランキングでもかなり上位に来ていたじゃないですか。それはどう感じられてます?

(宮藤官九郎)でもやっぱり生まれてなかったような子がたぶん見てるんだろうなとか。僕もだってやっぱり後からハマるドラマってあるじゃないですか。

(向井慧)はいはい。リアルタイムでは見れてなくて。

(宮藤官九郎)そう。生まれてなかったとか。だから山田太一さんのドラマとか。僕は『ふぞろいの林檎たち』とかって、ちょっと早いんですよね。自分からすると。それを大人になってから改めて見て、面白かったんです。やっぱり今、『池袋』を見てハマってくれる世代がいるっていうのは嬉しいことだとは思いますけどね。

(向井慧)やっぱりかっこよさは不変というか。長瀬さんと窪塚さんのあのかっこよさ。当時感じてたかっこよさが今、見ても「すごいかっこいい!」とか。で、逆に今見たからこそ、わかることもあったりして。なんか、その若者たちのどこにも行き場のないエネルギーだったんだなって。あの中学生の時に見てても、それはあんまりよくわかってなくて。ただただかっこいいドラマとして見ていて。

(宮藤官九郎)憧れの対象として。

(向井慧)だけど37になって見ると、「ああ、なんか悲しいエネルギーでもあるんだ」みたいな。

(宮藤官九郎)そうですね。ああ、たしかに。僕ちょっと自分じゃさすがに見れないんですよね。恥ずかしくて。

(向井慧)そういうもんですか?

(宮藤官九郎)ちょっとやっぱりイキってるんですよね(笑)。脚本家としてもちょっとイキっちゃっているのが恥ずかしくて。

(向井慧)それは、どういうところに感じます?

脚本家としてちょっとイキっていた

(宮藤官九郎)なんかね、ギャグですね。むしろ。「ああ、俺がやりたいことをここに勝手にぶち込んじゃってるな」っていうしどころとかが気になっちゃって。恥ずかしくて止めちゃうんですよね。もうちょっと自然に……今はもうちょっと自然にっていうか、余裕を持ってできているのかなとは思うんですけど。

(向井慧)「これ、おもろいっしょ?」っていう感じがちょっと……?

(宮藤官九郎)なんか「ここに爪痕を残さなきゃいけない」みたいな感じが、やっぱり恥ずかしくなっちゃうですね。自分でわかるから。

(向井慧)年齢重ねると、作り方とか、忍ばせ方もやっぱり多少変化は?

(宮藤官九郎)そうですね。そこまで、前みたいに「どうしてもこれをやってくれ」みたいなのはあんまりないかな? 今は、やっぱり役者さんの気持ちもわかるし。でも、こだわるところは今も変わらずありますけど。『池袋』の頃は本当にたぶん、ちょっとオラオラしてたんだと思います。自分でも。

(向井慧)だからこそ、書けるものがもちろんあるっていうことですね?

(宮藤官九郎)そうですね。だから今、それを真似してもしょうがないなとは思うんで。はい。

<書き起こしおわり>

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