タモリさんと星野源さんが2023年2月18日放送のニッポン放送『タモリのオールナイトニッポン』の中で「幸せ」について話していました。
(タモリ)オマリー、すごいな。これを発売するっていう。
(星野源)いいですよねー。なんかそういうのは最近……やっぱり発売するのは減ってきてますよね。そういうことを。YouTubeとかにはいっぱいあるかもしれないですけど。でも、それこそタモリさんも新宿ゴールデン街の曲とか。
(タモリ)ああ、そうです、そうです。
(星野源)タモリさんのオールナイトニッポンでかけて、話題になって再販したんですもんね。
(タモリ)これ、再販してね。ああ、これ。これ、45回転のやつなんですけども。
(星野源)元々、ドーナツ盤なんですよね。
(タモリ)ドーナツ盤で。1975年に発売されて、まあまあヒットしたんですけどね。これを45回転を33回転でかけるとこう……。
(星野源)ゆっくりして(笑)。
『新宿ゴールデン街』(33回転)
(タモリ・星野)フフフ(笑)。
(タモリ)いいですねー(笑)。
(星野源)これ、歌がないんですよね。ずっと語りなんですよね。
(タモリ)そう。語り。で、再販の時にジャケットの下に「33回転でもお聞きください」って。
(星野源)それ、すごいですよね。これって、最初のきっかけって何かあったんですか? その33回転にしたきっかけっていうのは?
(タモリ)これ、僕らが飲みに行ってたところで誰かが間違えてかけたやつなんです。
(星野源)最高ですね(笑)。
(タモリ)昔はレコードの回転数を切り替えるので……。
(星野源)たぶんLP盤をかけた後に、33回転のままで(笑)。
(タモリ)そのままにしてかけて。で、俺が行った時はもう盛んに33回転を……もう、こういうもんだと思ってたのよ。「面白いレコードがあるな」って思ったんだけども、違ったんだよね。
(星野源)なるほど。じゃあ、そこではよくかかっていたものだったんですね。
(タモリ)変わった店も、最近はあんまりないね。そこはね、すごい変わった店で。カウンターがあって。カウンターに5人か6人座って。後ろに長椅子があって。これにも5人か6人。2列になってあって。それである日、俺が言い出したのか何か知らんが。「この並び、ちょっとおかしくないか? バーとして」って。全部、こっちの方を向いて座ってるっていう。
(星野源)同じ方向を向いて。
(タモリ)「これ、フルバンドみたいだな」ってなって。「じゃあ、フルバンドをやろう!」っていうことになって。「じゃあ、俺たちはサックスな」って(笑)。
(星野源)アハハハハハハハハッ! それはもう、そこから練習が始まって?
(タモリ)そうそう(笑)。それで全部、そのサックスが立ち上がって。「バラディディッディッディ、ドゥディドゥディ……♪」ってやったら向こうで「ジャラーンラララ♪ パララララッ♪」って(笑)。
(星野源)最高ですね(笑)。それはでも、誰も見てないってことですよね? やる人しかいないっていう(笑)。
(タモリ)そうそう。やる人しかいない(笑)。
(星野源)カウンターというか、奥の酒瓶とかに向かってやってるっていうことですよね?(笑)。
(タモリ)そう。向かってやってるんだよ(笑)。そこで、「バスを借り切って、温泉旅行に行こう」って話になって。お金を払った人には旅館からもらってきて浴衣を領収書がわりにあげるんですよ。で、新宿の西口にバスが来て。「○時集合」ってなっていて。で、そこに浴衣で行かなきゃいけないの。
(星野源)ああ、もう最初から浴衣で?
(タモリ)最初浴衣で。浴衣で新宿の街を歩いて、バスに乗り込むっていう(笑)。
(星野源)なんか、いわゆるお祭りとかに着ていく浴衣じゃないっていうことですね?
(タモリ)ない。「○○屋」とか書いててあるやつ。
(星野源)「あれ? この人、どこかの宿から抜け出して、そのまま来ちゃったのかな?」みたいな(笑)。
(タモリ)恥ずかしいんだよ。それが(笑)。
(星野源)なんかタモリさんって、そういう遊びのプロフェッショナルっていうイメージがすごくあるんですけど。最近ってなんか、遊びってあったりしますか?
(タモリ)最近は、ないね。ちょっとコロナで飲みにも行ってないし。
(星野源)そうですよね。なんか最近はムダなことをしている時間がすごく楽しくて。必要だなと改めて思うんですけど。最近、なにかタモリさんはムダな遊びっていうか……。
(タモリ)ムダな遊びっていえば、全部ムダかな? なんだろうね? ムダっていえばムダだよね。
(星野源)たとえば、生きてることっていうか。なんか、そういうのも含めて日々の……。
(タモリ)「ちゃんとしなきゃ」とは思うんだけどね(笑)。
(星野源)そうですか。タモリさんも「ちゃんとしなきゃ」って思うんですか?
(タモリ)でも、あれだよ。歳を取ってくるとね、まあ簡単なこと言えば高校の頃に桜が咲いてたって、何も思わないでしょう?
(星野源)そうですね。なんか「ああ、咲いてるな」っていう。
(タモリ)「桜、咲いてるな」って。で、その桜に感情がずっと入ってきたりなんかするんだよね。
(星野源)ああ、歳を重ねていくと。街に咲いている桜とか?
(タモリ)桜とか。俺、よく環八にある砧公園の桜……ひと山で10何本あるんだけど。あそこって、元ゴルフ場なんだよ。で、そこでそれぞれの家庭であり、なんとかかんとかがそこで飲んだり。子供たちはボールを投げたり、なんかしてるのを見てると、「これが極楽だよな」とか思うんだよね。
(星野源)ああ、うんうん。
(タモリ)そんなこと、高校の時には思わないじゃない?
(星野源)そうですね。
(タモリ)それから、物に対する感情移入で。たとえばこれ、コップかなんか、あるじゃないですか。で、こいつはいつもなにかを注がれて、飲まれて。
(星野源)唇をつけられて(笑)。
(タモリ)文句も言わず。それで洗われて。よく、こうやって自分の日使命を果たしてるな、とかね。
(星野源)そうですね。たしかにその、全部の気持ちになってみると楽しいですね。
(タモリ)そうそう。そういうことはずいぶん変わったね。
(星野源)へー! じゃあ、やっぱり若い時はやりたいこととか、「こういうのが好き」とかっていう思いがどんどんあったけど。今はそれ以外の、常にあるものとか?
(タモリ)そうだね。普通のもの……「普通」がすごい貴重というかね。そういう風な感情になってくるね。
(星野源)うん、うん。なんかよく「幸せになりたい」とか、「幸せってなんですか」みたいなの、あるじゃないですか。僕も相談コーナーみたいなのをやったりとかしてたりするんで。それでなんか、思うんですけど。何も考えないでいられるのが一番幸せだなって思いますよね。
(タモリ)そうだよね。
(星野源)だからそれこそ、本当に公園でボーッとしてて。「はー」っていう。ただ、風がピューッと吹いていて。でも、それを「幸せだな」って別に思わなくてもいいかもしれないけど。それがたぶん、幸せなんだよなっていう。それこそ本当、極楽っていうのは、見た目もそうでしょうね。なんていうか……。
(タモリ)そう。一瞬、「ああ、極楽ってこういうことを言うんだろうな」っていう風に思ってね。高校の時は、そういうことは思わないよな。
(星野源)そうですね。それはお一人で散歩しに行って、なんか腰かけてみて、みたいな?
(タモリ)そう。ずっと。桜の季節になると、ボーッと見ているんだよね。その盛り上がっている……それぞれが関係ないことをやっている。関係も持たずに。で、向こうに桜があって。
(星野源)それぞれで。
(タモリ)幸せなんて「ケッ!」って思っていたよ。
(星野源)うん、うん。そうですよね。でも、そんな発言もいっぱいあったし。
(タモリ)「なにを言ってんだ? 幸せなんか、あるわけねえじゃねえか」って。そう思っていて。で、それからひとつ、「『幸』っていう字は『辛』っていう字に似ている」なんて。あれ、字の成り立ちが違うんだってね。
(星野源)ああ、そうなんですか。似てるけど、違うんですね。じゃあ。
(タモリ)あれは「辛」っていう時は柄のついた針。で、罪を犯した者に刺青入れるやつなの。
(星野源)へー! 「辛」は。
(タモリ)で、「幸」は似ているけど、あれは手枷なんだってさ。
(星野源)えっ、「幸」は手枷なんですか?
(タモリ)うん。
「幸」は手枷
(星野源)なんで、手枷なんですか? 要は、手錠みたいなものですよね?
(タモリ)それは、罰だよね。これは死罪になるところが、これで済んだっていう。それが幸せらしいんだよ。
(星野源)なるほど!
(タモリ)それから考えると幸せっていうのは前の上を見て願うものじゃなくて、後ろの下を見て感じるものだっていう風に考えが変わっていって。そしてまた、最近だと幸せっていうのは、自分で言ってもいいんだという風に思うんだよな。
(星野源)ああ、なるほど。前は言ったらちょっと、自分でも恥ずかしいと思っていたことが……たしかに。
(タモリ)変わってくるんだよね。
(星野源)「死ななくて済んだ」っていう。その死のちょっと前にあるんですね。
(タモリ)そう(笑)。
<書き起こしおわり>