細野晴臣さんが2023年1月22日放送のInterFM『Daisy Holiday!』の中で高橋幸宏さんを追悼。幸宏さん楽曲を選曲しながら、幸宏さんとの思い出などを話していました。
(細野晴臣)はい。高橋幸宏が、宇宙に帰っていっちゃいました。まあ宇宙の根源っていうのは、ある種の、何て言ったらいいんだろう? 量子の海の中で、ゆりかごのような場所だと思うんですね。今、後ろで流れてるのは子守唄なんですけども。
1月11日に亡くなって、翌日その訃報を聞いたんです。遅ればせながら、追悼をやっとできる時間になりまして。それまで、ずっと言葉にならなくて。なんて言うんだろう? 考えが全然まとまらない時期がずっと続いてたんですけど。まあ沈黙してるわけにもいかないんで。今日はそういう特集をしたいと思います。
思えばですね、幸宏が16歳の時から、54年の付き合いでした。軽井沢で初めて会って。先日は軽井沢のお宅でお別れをしてきたというわけです。軽井沢なんですね。とにかく幸宏の発表したアルバム、楽曲の多いこと。ですから、まあ今日は自分に多少関係ある楽曲をかけていきたいと思いますが。時々思い出を交えながらですね。
まず、最初ですけど。スケッチ・ショウの後に幸宏が作ったソロ、『BLUE MOON BLUE』という。これは2006年ですね。その表題曲『BLUE MOON BLUE』。
高橋幸宏『BLUE MOON BLUE』
(細野晴臣)いやいや、これはもう本当、スケッチ・ショウより深く洗練されたサウンドになってますね。それにしても、英語がよく似合うシンガーだとは思ってます。で、幸宏はミカ・バンドで世界のセンスを身に付けて。その後のサディスティックスではドラムの腕を磨いて。そしてYMOで才能開花させたと思ってます。そのポップセンスっていうのがまた、とても優れていまして。1978年の最初のそのソロ、『サラヴァ!』から『C’EST SI BON』。
高橋幸宏『C’EST SI BON』
(細野晴臣)これ、僕はベースで参加してます。ところで、彼のソロに数曲、提供したことがあって。1985年の『Once A Fool,…』アルバムに収録した『昆虫記』という曲があるんですね。これ、作詞は吉田美奈子でした。では、『昆虫記』。
高橋幸宏『昆虫記』
(細野晴臣)幸宏は、スターですね。ハリウッドでもそうですけど。スターたちの映画っていうのは、もう永遠に生きるわけですね。音楽もそうだと思うんです。人生、一生を終えた後にですね、永遠になるという。そういう宿命があるんですね。うん。まあだから、いなくなったわけではないんですね。
では、曲をかけたいんですけど。やっぱりYMOは外せません。僕たちが一番思い入れのあるアルバムというと『BGM』なんですけど。その中から僕は幸宏の最高傑作だと思います。『CAMOUFLAGE/カムフラージュ』。
YMO『CAMOUFLAGE/カムフラージュ』
(細野晴臣)僕が思うにですね、やはり幸宏は世界一、スマートなミュージシャンだったという。これは本当に言い過ぎではないと思ってます。幸宏に比べたら、みんなダサく見えちゃうんでね。隣には、いにくいです。それぐらい、まあダントツですね。なんていうんだろう? あの審美眼っていうのかな? たぶん僕の才能とか、そういうのをね、ずっとその厳しい目で見てたんだと思うんですけど。でもやっと、認めてもらえたような気がします。では、次の曲は明るいです。本当にポップセンスの輝きを聞くことができます。『サラヴァ!』から『PRESENT』。
高橋幸宏『PRESENT』
(細野晴臣)あっという間に30分、経ってしまいますね。まあ、この続きというわけではないんですけど。月初め、来月2月初旬で、フォトジャーナリストのトシ矢嶋を招いて、80年代のお話をしたいと思います。さて、最後の曲はですね、人が星になるという歌を。僕の曲なんですけど、幸宏が歌ってくれてます。スケッチ・ショウの時のレコーディングで『STELLA』。
スケッチ・ショウ『STELLA』
<書き起こしおわり>