細野晴臣と星野源 仕事へのモチベーションの維持の仕方を語る

細野晴臣と星野源 仕事へのモチベーションの維持の仕方を語る 星野源のオールナイトニッポン

細野晴臣さんと星野源さんが2023年7月11日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で「仕事に対するモチベーションの維持の仕方はどうしていますか?」というリスナーからの質問に回答していました。

(星野源)さあ、リスナーからいっぱい質問メールが届いてるので、ちょっとそれをどんどん読んでいきたいと思います。岩手県の方。「私は天気や気圧の変化で頭が痛くなったりして『働きたくないな』と思うことがあります。長年、創作活動を続けていらっしゃる細野さんはどのようにして仕事に対してのモチベーションを維持しているのでしょうか?」という。仕事のモチベーション、どうですか?

(細野晴臣)モチベーションね……(笑)。

(星野源)なんかちょっと、ビジネスパーソン向けの番組のメールみたいな感じですけど(笑)。

(細野晴臣)「モチベーション」っていう言葉、使ったことないんだよな。

(星野源)ああ、そうですか。

(細野晴臣)ないんじゃないかな?

(星野源)モチベーションなしってことですか?

「モチベーションは、ない」(細野晴臣)

(細野晴臣)前にほら、この話、ブロスで話したね。なんか、傍から見ると遊んで見えるんだよね。

(星野源)そうなんですよ。僕が締め切りでちょっと大変な時に、なんていうか、「やることが決まっていて、それをやれば終わり」っていう仕事のタイプじゃない時。創作活動だったりすると、たとえばインプットも必要だし。で、自分から出てくるまで結構、読めなかったりするんですよね。で、そういう時に映画とかを見てると「何を遊んでるんだ」って言われちゃうっていう話をしましたね。

(細野晴臣)そうそう。そういう風に見えちゃうんだけども。まあ、モチベーションがないわけじゃない。やっぱり、溜めてるんだよね。そうやってね。

(星野源)ああ、うんうん。

(細野晴臣)その、モチベーションって、なに?(笑)。

(星野源)アハハハハハハハハッ! いや、モチベーションってなんでしょうね? 「やる気」みたいなことなんですかね。

(細野晴臣)ああ、そうね。動機。

(星野源)でも、やる気がない時だって、ありますよね?

(細野晴臣)ほとんどやる気がない……(笑)。

(星野源)アハハハハハハハハッ! いや、そうなんですよね。

(星野源)だからね、今ソロの準備をしてて。本当は、もうとっくに締め切りが終わっているんだけれども……もう外してもらっちゃったのね。締め切りを。そしたら、なんにもやらないんだよ(笑)。

(星野源)フハハハハハハハハッ! いや、そうなんですよ。なんかやっぱり締め切りがあると、心が苦しくなってくるので。周りの人もやっぱり苦しんでいる姿は見たくないから。「じゃあ、ちょっと一旦、この締め切りを外して。ちょっと解放したらまたなにか、ワッと出てくるんじゃないか」って思うんだけども……やらなくなっちゃうんですよね(笑)。

(細野晴臣)そうなんだよね(笑)。

(星野源)すごいわかります(笑)。なんなんですかね? やっぱり締め切りは必要ですよね。

(細野晴臣)絶対に必要だね。それがないと作らないんで(笑)。

(星野源)そのモチベーションも大事かもしれないけど、やっぱり締め切りが大事ってことなのかもしれないですね。

(細野晴臣)自分でね、作ればいいんだろうけどね。僕は作れないんだ。

(星野源)作れないですね。夏休みの宿題とか、本当にやれないタイプだったんで。最後の方まで。

(細野晴臣)全く! 8月って何日? 31日? その日にやるんだよね。まとめて(笑)。

(星野源)そう(笑)。最後の日、泣きながら。「イーッ!」って言いながらやるっていう(笑)。

(細野晴臣)で、31日分の新聞を取っといてもらっているから。なんか天気をつけなきゃいけないんだよね?(笑)。

(星野源)もう見て。「◯月✕日・晴れ」って(笑)。

(細野晴臣)あれは大変だったね。なんの仕事をしているんだか、わからなくなっちゃう。

夏休みの宿題は最終日に追い詰められてやるタイプ

(星野源)そうですね。いや、頭ではわかってるんですよね。それこそ「1日に全部やっちゃえば、もうあとは遊んで暮らせるじゃない」ってみんなは言うんですけど。

(細野晴臣)本当にそうだよね。たしかに。でも、できない。やったことないね。

(星野源)やったことないです。でも、きっと世の中にはしっかりそれができる人も多いじゃないですか。

(細野晴臣)いるんだろうね。きちんとしてるね。それは。

(星野源)きちんとしてますよね。

(細野晴臣)どうしたってその、つらいことは先延ばしにする癖があるよね(笑)。

(星野源)そうですね(笑)。つらいことを先延ばしにしていると、こんな感じになるっていう。

(細野晴臣)こんな感じになっちゃうね。うんうん(笑)。

(星野源)アハハハハハハハハッ! でもだからもし、「こんな感じ、いいな」ってこの方が思っていたら、そんなにモチベーションを維持しなくていいんじゃないかっていうことかもしれないですね。

(細野晴臣)そうね。本当にそう思う。

(星野源)「働きたくないな」って、やっぱりありますよ。ずっとそう。みんな、たぶんそう(笑)。それは変なことじゃないですよ。

(細野晴臣)そうだよ。人間っぽいね。

(星野源)そうですね。ありがとうございます。

(中略)

(細野晴臣さんとの収録パート放送を終えて)

(星野源)さあ、たくさんメールいただいております。「先ほど、細野さんと源さんのモチベーションのお話、とっても勇気が持てました。私は漫画家で今、まさに締め切りと闘いながら仕事をしています。私は社会に出て、うまく働けなかった人間です。ですが唯一、絵や漫画を書くのが好きで、それで生きていけたらと漫画家になったので、これからもこの仕事を続けていきたいのですが、漫画家生活も10年経って、最近なんだか疲れてしまって。創作活動という名のお仕事がこれからも続けられるのか不安でしたが、お二人のお話を聞いて、とてもほっとしました。細野さんの『モチベーションは、ないね』の一言に救われたクリエイターはめちゃくちゃ多いと思います。ありがとうございます」ということで。ありがとうございます。

そうね。いや、そうか。漫画家さんなんですね。じゃあ今、たぶんこういう風にラジオを聞きながら書かれたりもするんだろうし。ねえ。締め切り、頑張ってください。本当に。なんかやっぱり僕も、話しながら救われますよね。やっぱりああいうお話を聞けると。「モチベーション、ないね」とか「やる気、ないね」っていう(笑)。やる気ないまま、ずっと来られてるっていうようなニュアンス。でもなんかそこの……なんですかね? 「やる気がない」っていうのと「物を作らない」っていうことはイコールじゃなくて。

物を作りながら、やる気がない。すごい没頭して物を作りながらも、やる気はないっていうことが成立するんだっていうのを、なんか細野さんを見ていて思うんですよ。なんか細野さんが「やる気だ! うおーっ!」って言ってる姿を見たことないんだけど、やっぱり着実に着実に、他の人にできないことをずっとやり続けているっていう。なんか、そういうのって見ていて……それをいろんな人ができるわけじゃ、もちろんないのはわかっているんだけど。「これでいいんだ」っていう風に思えるような気がして、すごく嬉しいのと。

あと細野さんって、やっぱりそのディスコグラフィーというか、残されてきた作品を見ると、もう本当にいろんな顔があるじゃないですか。それこそ、最初はロックがあって、フォークがあって。テクノがあって。その前にトロピカルがあって。いろんなものを……ソイソース・ミュージックがあって。その後、アンビエントがあって。それこそアンビエントの頃とかはもう10何年とか、結構の間、歌わない時期が長かったりとか。でもその間でちょこちょこ、プロデュースとかでたまに歌うとかはあったけれども。ちゃんと、改めて歌い始めたのってたしか、そのハイドパーク・フェスで久しぶりに『HOSONO HOUSE』の頃曲をやったのがたしか、58歳とか57歳とかなんですよ。

57とかですよ? で、そこからまた、歌うアルバムをたくさん作り始めて。で、さらにその全ての時期が……それこそYMOもそうだし、トロピカルもそうだし。僕は高校の時に……だから16とか17とかですよ。その時に『HOSONO HOUSE』を聞いて「これだ! 俺の音楽は、これ!」ってなって。その後、トロピカル三部作を聞いてさらに「これじゃーっ!」ってなるみたいな。それこそ僕は10代の出会いだったし。周りにはいなかったですが。その時は。

でも今は、その頃の音楽を10代の子が聞いたりとか、それこそ40代で初めて聞きましたという人もいっぱいいるし。全ての時期が、全ての年代の人を刺激し続けているっていうのって、すごくないですか? でもその人が「やる気は、ないね」って言ってるのが……(笑)。だから、細野さんってやってない時間、めちゃくちゃいっぱいあるんだよ。なんか、やっぱりいろんな顔を、いろんな音楽を残されてるから、ずっと忙しいようなイメージがあるけど。やってない時期とか、表に出てない時期、細野さんはめちゃくちゃあるんだよ。

それこそ、YMOが散会して、とか。再結成もあったけども。その後から、しばらく歌っていなくて。10何年経って、改めて歌いだしたのが58とか、50代後半っていうことを思うと、なんかもう、未来っていろんな形があるなって思うし。勇気をもらえますよね。だからこの方も、そういうたとえばモチベーションがないっていう時期って、なんか後ろめたいじゃない? 物を作ってる者としては。やっぱり、好きとか……僕もそうだけど。社会では生きていけないから。社会の仕組みの中の仕事としての役割っていうのを僕は担えないっていうところからこの仕事をスタートしてるから。

そういうのってやっぱり「好き」とか、「これならできる」っていうモチベーションみたいなところからスタートするじゃない? でもそれが、なくなってきたりとかっていう。なんていうの? それって、生きる意味を失うじゃない? で、俺もそういう時期あるし、すごいわかるんですよ。怖くなる。でも、そういう時期を細野さんも……わからないけど。どのぐらいのシリアスさで乗り越えたかは、わからないですけど。細野さんもずっとそういう風にいろんな時期を越えて。いろんな地平に立ってっていうのを繰り返してきていて。

だからやっぱり細野さんのいろんな作品を見たり、聞いたりすると、より勇気をもらえると思うので。ぜひ細野さんのディスコグラフィー、いっぱい聞いてみてください。またその時その時で自分に一番フィットする細野さんの時期の音楽ってあると思うんですよね。なのでぜひ、チェックしてみてください。

続いて、秋田県の方。「今までは仕事に対してやる気が出ないと『こんな自分ってダメだな』と思っていましたが、お二人が『やる気がない時もある』とおっしゃって、少し気持ちが軽くなりました。これからは、ちょっと手を抜く時もあっていいじゃん」という。そうですね。本当にそうだと思う。うん。手を抜いていこう!(笑)。みんな、手を抜いていこう。俺も抜いていくっ! アハハハハハハハハッ!

「みんな、手を抜いていこう。俺も抜いていくっ!」(星野源)

<書き起こしおわり>

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