宇多丸 2022年に触れて本当によかったと思ったエンタメベスト4を語る

宇多丸 野外フェス『波物語2021』問題を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2022年12月26日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で2022年に遅まきながら触れて本当によかったと感じたエンタメ作品ベスト4を紹介していました。

(宇多丸)ということで熊崎さん、今年もだいぶ終わりに近づいてきましてね。この番組も木曜までという感じなんですね。金曜は裏送り的な感じでしまおさんの番組をやりますので。しかも木曜はしまおさん案内で、豪徳寺散歩というのもありますんで。もうだいぶ、カウントダウンというか、始まってる感じなんですね。そんな中ですね、私もムービーウォッチメンのシネマランキングは水曜日にやりますけども。それ以外にもですね、ちょっとね、いろんな私のマイ年間ランキング。これをちょいちょい入れていこうかなっていう風に思ってるんです。すいませんね。

それで年間ベスト……まず、ちょっと今日、この時間を借りて何をお話しようかと思うと、私がこの番組を通じて。要は予習・復習とか、するじゃないですか。そういう中で「ああ、これ、遅まきながらだけど履修しておいてよかった! 改めてこれに触れておいてよかった。なんなら、これに触れた人生と触れない人生があるなら、触れた人生でよかった。これを知らないでいる自分っていうのが、ぞっとする!」みたいな、そういうもの。

この番組を通じていろいろ勉強させていただきましたってことで。その私、宇多丸が今年、遅まきながら履修しておいて本当によかったと思ったものをベスト4ぐらいかな? 行こうかなと思っております。

(熊崎風斗)お願いします。

第4位:『鎌倉殿の13人』とNHK大河ドラマ

(宇多丸)まず第4位。やっぱり『鎌倉殿の13人』から来る、大河ドラマってこともそうだし。ちょうどこの時代の勉強っていうか。実際はどうだったっけ? みたいなところをやったのは、これはやっぱり履修しておいてよかった。火曜日に宇垣さんにすすめていただいて。なかなか大河ドラマを通しで見る習慣というのがね、春日太一さんとかにいろいろとおすすめいただいてたのに、なかなか定着しなかったところに来て。でも、今年はどうも様子が違うぞということでね。

(熊崎風斗)今年は話題性もね、これまでともちょっと違う感じありましたね。

(宇多丸)僕も全ての作品を見てるわけじゃないけども。三谷幸喜さんのお仕事の中でも結構、これは大きなあれだという風に思いますし。非常に私自身の興味どころとも一致していてですね、非常に良かったですね。この間、一昨日か。RHYMESTER、24日にリキッドルームで、ルーム30周年ライブというのがありまして。その時にDさんがやっぱり歴史マニアなんで。『13人』、すごく楽しんで見てるなんていうので、Dさんの意見なんかもすごく面白かったですよ。「もうめちゃくちゃ良かったのは間違いないし。歴史考証で、この後にどうなるかまでちゃんと、それを暗示させる、わかっている展開になっていて。そことかがすごいんだ」って。

(熊崎風斗)へー!

(宇多丸)それと同時に、Dさん的には「どうせ回想を入れるなら、ここの回想を入れればもっとグッと来るのに。だったらもう、満点だったのに。なんかそれをやんなかったのが、ちょっと残念だったんだけどな……」みたいな。話を聞いていたら、めちゃくちゃ理にかなっていて。「ああ、鋭い!」っていう感じで。さすがでしたね。そんな感じで、第4位は『鎌倉殿の13人』をはじめとした大河ドラマ。これ、履修しておいてよかった。第3位。これは『畜犬談』から始まる太宰治再履修。これですね。

(熊崎風斗)おおー、太宰かー!

第3位:太宰治作品

(宇多丸)この番組、アトロクブッククラブということで出ていただいた、ラランド・ニシダさんのすすめで、太宰治の『畜犬談』、面白いですよと。で、そこからね、最終的にその「笑える太宰治特集」ということで、特集まで繋がりましたけど。なんか、「太宰ってこういう感じでしょ?」って、もちろん結構読んでるつもりだったから。でも、見切ったつもりでいたものが、全然そうじゃなくて。で、なんなら自分の資質とかに結構近いもの、僕が面白いと思うなにかっていうのに非常に近いものがあるじゃないかと。だから、もちろん太宰ファンの方。「なにを今さら」ということかもしれませんが。

ここで今、私が話すのは全然、ファンにとっては「なにを今さら」話なんだけど。でも、何かに触れるのに遅いも早いもないだろうと。触れないよりはマシだろうという。改めて触れたら、本当に……まず『畜犬談』が面白いだけじゃなくて、太宰治のテイストみたいなものが自分に思ってたよりも合うんだ!っていうのは、これは大きな発見でしたね。そこから先、ずっと太宰のいろんなのを読んで、「ああ、やっぱり面白いな」と思いながら。なにしろ太宰の文が好き、みたいなことはすごく思いました。勉強させていただきました。ありがとうございます。

私、宇多丸が今年遅まきながら履修しておいて本当に良かったと思うものベスト4、第2位。『SLAM DUNK』ですね。

(熊崎風斗)ああ、ここで来るんですね!

第2位:『SLAM DUNK』

(宇多丸)1990年から96年まで連載されていた時、やっぱり私は漫画は読んでいたんだけども、やっぱり青年誌だったんでね。ジャンプを読む習慣はだいぶ離れちゃっていた。で、もちろん井上雄彦さんがすごい漫画家だということは、チラリチラリと見るだけでもわかってはいた。でもさ、すげえってわかってても、なかなか手が伸びていないものって、あるじゃん? 逆にすげえとわかってはいるだけに、もうそれでわかった気になっちゃうものってあるじゃない? でも、今回の映画版の『SLAM DUNK』は本当にすごくって。で、改めてそれ用に『SLAM DUNK』はもちろんのこと、『バガボンド』、そして『リアル』という風にちゃんと履修したら、いや、わかっちゃいたけど、でも井上雄彦は自分が思ってるよりもっとすごかったっていう感じで。

そして、そのすごみというところの最新の結晶として、今回の劇場版の『THE FIRST SLAM DUNK』というのがあるというか。これはやっぱり今、日本の現役クリエイターとして、井上雄彦作品にちゃんと……言うてもリアルタイム、切りに近いところで触れるってのは本当にね、これはもう危ういところでした。特に漫画『リアル』はすげえ! あれはすごい作品ですね! ということで触れて本当に良かった。『THE FIRST SLAM DUNK』もひょっとしたらね、今回、ガチャが当たらなければずっと後回しにしてたかもしれない。

あと、周りのこの絶賛がなければ。だから皆さんから常に情報を聞いて「だったら見ようかな」っていうのは、私にとってはとても大事なことだと思います。これはやっぱり触れると触れないのは大違い。『THE FIRST SLAM DUNK』、シネマランキングのどこまで入ってくるのか、入らないのか。こちらも楽しみにしていただきたいと思います。

そして私、宇多丸が今年、遅まきながら……本当に遅まきながら。実に実に遅まきながら、恥ずかしながら、履修しておいて本当に良かったものベスト4のうち第1位は……『鳥人戦隊ジェットマン』。

(熊崎風斗)ああーっ!

(宇多丸)これは本当に恥ずかしい話で。ありがとうございます。『こころはタマゴ』でございます。

第1位:『鳥人戦隊ジェットマン』

(宇多丸)井上俊樹さん脚本のファンだと言ってたけど、結局全ては触れないまま。要するに『アギト』と『555』とあと『シャンゼリオン』と……とか。もちろん、見ているんだけど、なんかやっぱりその戦隊物っていうところで、回数も多いし。ちょっと後回しになっていたこの『ジェットマン』。すごいのは知ってますよ。だいたいどういうシリーズ高、知っているつもりでいたけれども。改めて、今回『ドンブラザーズ』の劇場版をやる時に「まあ、だったら」って見始めたら、まあなんと素晴らしい! もちろん『アギト』『555』『シャンゼリオン』。僕にとって非常に大事な作品たちなんですけど。

そこにさらに加えてというか、なんというか。もう一生物の1作。91年の作品ですよ? 俺はなにをやってたんだ? いや、ラップをやっていたんだ。一生懸命、ヒップホップとラップをやっていたんだ。だからこの頃ね、やっぱり国内のいろんなドメスティックなカルチャーには比較的目が向いてない時期で。リアルタイムで見たら、ファッションとかいろんなものが僕、やっぱり当時の感覚があるから、そういう意味で抵抗があったかもしれないんだけども。でも今はそれも全てすっ飛ばして。あの90年代の……なんなら80年代の匂いがすごく残ってるものとして触れた場合、なんと愛おしい。シリーズの全てのキャラクター……敵役だろうがなんだろうが、全てのキャラクターがなんと愛おしい作品なんだろうという。

もうね、今、僕は結局2周、したんですよ。ノベライズの小説も見たりとか、いろんな資料を集めたりして。で、いろんな他の戦隊物もおすすめいただいて、それも見ますよ。ドロッセルマイヤーズ渡辺さん、ありがとう! 渡辺さんをはじめ、いろんな方からおすすめいただくけど。やっぱりその、たとえば特撮の感じとか、そういうのの全てのバランスを含めて、やっぱり『ジェットマン』が僕にとって、遅まきながらですよ? 「なにをいまさら」ってことかもしれないけど。本当に一生物の特別の作品として、ひとつ加わったというのは間違いないところございまして。

たとえば漫画で言えば、ちばてつやさん『のたり松太郎』が私にとって特別な作品であるように。映画で言えば、わかりません。『ヤング・ゼネレーション』とかが特別な作品であるように。またちょっと1個、そこに加わったっていう。だから「俺はこれを知らないで生きていたのか!」っていう。まして井上敏樹がどうこうとか言ってたのが、恥ずかしい、俺っていう。でも、何かを学ぶのに遅いということはないというか。本当に……3周目、行こうかな?って。そういう……なんなら、最終回はもう何周もしてるんですけど。いや、もう本当に、すいません。いまさら、すいません。遅まきながらでね。

そんな感じで、皆さんにとってこの番組が……私はこの4つを挙げましたけど。皆さんにとっていろんな扉を開いて。全てに触れることは不可能ですけど。全てを掘り下げることは不可能ですけども。1個でもいい。2個でもいい。3個でもいい。開いていって、新たな……「ああ、これに触れられない人生よりも、触れられた人生の方がよかった」というような手助けができる番組になっていれば何よりかと思っている次第です。宇多丸、今年遅まきながら……遅まきながら! 恥ずかしながら! 履修して本当に良かったものベスト4でした。

<書き起こしおわり>

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